『エースコンバット』シリーズ25周年記念インタビュー!波乱に満ちたシリーズをいまこそ振り返ろう【前編:初代~『ZERO』】 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『エースコンバット』シリーズ25周年記念インタビュー!波乱に満ちたシリーズをいまこそ振り返ろう【前編:初代~『ZERO』】

『エースコンバット』シリーズ25周年記念インタビュー前編。前編は90年代の初代『エースコンバット』からPS2時代の『エースコンバットZERO』までを開発スタッフと共に振り返ります。

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『エースコンバット』シリーズ25周年記念インタビュー!波乱に満ちたシリーズをいまこそ振り返ろう【前編:初代~『ZERO』】
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奇跡の作品となった『エースコンバット04』―三部作それぞれ特色が現れたPS2時代


――あの『ACE3』の「衝撃の結末」は1度だけなら何とか許容できるという気持ちもありますね。さて、この衝撃の『ACE3』の後に河野さんが『04』開発に挑まれた時はどんなお気持ちだったのでしょうか?

河野氏: そもそも『ACE3』には52ミッションがあって、SFで、主人公は〇〇だし、全部架空機だし(『3』の登場機体は全機コフィン搭載のオリジナル)、なので非常に困った。どうするのって(笑)


ただ、PS2に置き換わるいいタイミングだったよね、PS2第1弾だったので。PS1からの延長には一旦区切れをつくれる瞬間で、例えばミッション数においてもリッチなグラフィックなぶんミッション数や機体数へのリソース配分を見直して最適化できるじゃないですか。良い切り替わりのタイミングだったので頭を切り替えました。あの当時色々新しい技術を取り込んだよね。衛星写真も『04』からでしょ。


菅野氏: そうですね。無線と幕間(カットシーン)を感性で乗り切り……。

河野氏: カットシーンは予算が限られていたからね。

菅野氏: 『3』が凄くお金を使っちゃったので……。河野さんってアートディレクターでありながらお金周りのことを把握されていたので、「本編でこれぐらい(予算が)かかるのなら、補足するカットシーンはこれぐらいで抑えこめなきゃ」と割と早い段階で言っていたのを思い出します。

河野氏: そうだっけ?無線も一段新しい技術に進化したよね、割り付けの無線から状況に応じた無線システムに変わったでしょ。『04』は技術革新があったよね。「雲」が初めて雲らしき姿となったのも『04』でしょ。世界観もあそこで新たに仕切り直したのもそうだよね。菅野が「隕石を落とそう!」と衛星写真にクレーターができたのをレンダリングしていたね。

菅野氏: やっていましたね。それで周りのアーティストから驚かれた思い出があります。河野さんの「目立つものを背景にもたらしたい」という方向性の一方、「普通のミリタリー物を望んでいる人達からすると、もしかしたら余計なものかもしれない」と当時他の開発者から言われたことも思い出されます。

でもやっぱり作り手って「リアルにしなくちゃ」と「もっと外連味を」を、行ったり来たりするものだと思うのですよ。当時から図らずもエンバイロメント(環境)ストーリーテリングというのをやっていたと思います。


河野氏: あの時クレーターを作っていなかったら他のフライトゲームと同じになっていたと思うよ。糸見はあの時何やってたっけ?

糸見氏: 『04』はちょっと後から入っているんですよ。幕間の制作前ですね。当時はアニメ―ション会社さんもよく知らなくて、河野さんと「どうしよう……」と話していたのを覚えています(笑)

河野氏: 「どっか飛び込むか!」と言ってね(笑)

糸見氏: そうそう。「戦争写真のような一枚絵を繋げてナレーションを重ねよう」と幕間の演出は決まっていたのですが、制作をお願いする会社は決まってなかったんですよね。「どのアニメ会社が好き?」と聞かれたので、Studio 4°Cさんとお答えしました。

河野氏: (4°Cを)タウンページで調べたもんね。

糸見氏: それでStudio 4°Cの田中社長にお会いして、片渕監督をご紹介いただきました。(音楽に)小林啓樹が入ったのも『04』からだよね。

河野氏: 小林の音楽も『04』で苦労したなあ!それも変わってない(笑)「なんでこの曲がこのミッションに割り当てられてるの?」みたいな。

玉置氏: 「コーラスをやってみたい」は無茶ぶりだったんですよね?

河野氏: オーケストラとコーラスをやってみたかったんだよ。『04』最終ミッション18「メガリス」でそこまでは決まっていて、それで終わるつもりだったんだけれど、小林も締め切りを守らないタイプで「最後、トンネルに入ったら曲を変えたい」と言い出したんだよね。


玉置氏: 最後のところあれは良かったですね!逆に静かになるんですよね。

河野氏: その時小林に対して信用が全然なかったので。(笑)「小林に任せるけれどダメだったらスグ差し替えるし、絶対に良い物を作らなきゃ許さないからね」と。あれで結果良くなったよね。それにいろいろあったけれど『04』に憧れて色々な人が入ってきたのは、とても『エースコンバット』にとって良かった事実。

――なるほど。ところで『04』発売当時のユーザーからの感想とかはどうでした?

菅野氏: 発表当初はプレイヤーの間で『ACE3』のトラウマがあったみたいで、BBSで「今回もアニメがあるんじゃないのか?」と戦々恐々とされていたのを覚えています。

河野氏: 最初にビジュアルを出したときに安心されたよね。「PS2の『エースコンバット』はスゲェ!」と。

菅野氏: あれもずっと河野さんから空のことについて色々言われていた記憶が……。それと『04』はゲーム本編以外に、「AC04Web」で派生の情報・二次情報による世界構築をしたはしりでしたね。(※AC04WebのホームページはPDFという形で残されている)

河野氏: 手作り感凄かったよね。

菅野氏: 『5』の「ACESweb」の時もそうだったのですが、いろんなCGイラストや壁紙は、ゲーム用の作業がひと段落着いたアーティストやムービー班とともに技術研究として作っていましたね。


河野氏: 結論、『04』は「仕切り直し!」だった。

井本氏: タイトルが『4』じゃなくて『「0」4』だったのは何か意味があるんですか?

河野氏: 『ACE3』であったことを一度ゼロに戻してから「新しく作るぞ!」という意気込みだけど……本当の話は1から10に桁があがると右にズレるのが嫌だったから。

玉置氏: 当時2桁表示にはまっていたと昔Twitterで言われていましたね。

河野氏: 10で1桁増えるところが嫌いなの。だから、俺がHUDのデザインをしているとき「1」じゃなくて「001」になっているじゃない。今考えると(UIの)桁が減るのはお客様へのサインとなるんだけどね。

――仕切り直しとしての『04』表記の存在は大きいですよね、ありがとうございます。それでは『5』のお話に入ろうかと思います。『04』と『5』では、『04』がストイックで多角的な視点で物語を表現する一方、『5』が単一の視点でハリウッド映画的に大きく盛り上がる表現を主にするなど、『04』と『5』で視点と表現が大幅に違います。『5』におけるユーザーの感想ではどんなものが印象に残っていますか?

菅野氏: チョッパー(ダヴェンポート大尉、ウォードッグ隊の3番機)が死んだってことは悲しがられたし、「全機生き残っているルートがあると信じて、プレイし直して何回も泣いてる」というの声がありましたね。演出もだいぶ方向性が変わったので反応は大きかったです。『04』って精進料理的な楽しませ方でしたが、『5』はフルコース料理的な豪華さで。



河野氏: フルコース食べた後に「二軒目行こうか?」みたいなイベントも。

菅野氏: 「二軒目行こうか?」みたいなイベントを当時やり過ぎましたね。

河野氏: 『04』と『5』は「タケノコ」と「キノコ」だから決着が付かないよ。『ZERO』も混ざるけれど。

井本氏: 『5』で一番ハマりましたね。有名なセリフ周しが多かったかなって感じがしますね


河野氏: 『5』派の人はそう言うし、『ZERO』の人は名言が多いと言う。『04』派の人は「『04』が至高」だと言うし、決着が付かないよね。

玉置氏: 逆に似ている名言がないのが凄かったですよね。それに、当時は年単位で発売されていて、ほぼ翌年や翌々年にでていましたもんね。今から考えたら凄いですよね。(※補足: 『5』が2004年、『ZERO』と『X』が2006年、『6』が2007年とゼロ年代ではコンスタントにリリースされた)

河野氏: 酷い目にあったよね(笑)『5』はさ、コンセプトに迷うことも無かったし、ビジュアルも「3DCGのレンダリング技術を皆身につけないと次の開発に耐えられないぞ」と作ったことないのに挑戦したじゃん。

糸見氏: 『04』と『5』の違いでは開発規模一気に大きくなりましたよね。『5』は『04』に比べて3倍ぐらいになったんじゃないかな?

河野氏: 最大200~300人ぐらいいたよね。

糸見氏: 名前が覚えきれなくなっちゃうぐらい人が増えた。『5』はほぼ内製ですしね。

河野氏: よくCG映像作れたよね。


糸見氏: それまで知見もあまりなく、人を集めてなんとか作り上げましたね。

河野氏: 片渕監督から糸見が褒められたよね。

糸見氏: ありがとうございます(照れ)『04』と『5』で3年ほど時間が空いていますよね。その間は『ヴィーナス&ブレイブス』(2003年に発売されたPS2向けRPG)を小林と一緒に作っていました。

河野氏: 『04』は作っていたら「ミッション足りない!」ということで、菅野が技術研究で作ったミッションを足したんだっけ?

菅野氏: 『04』は仕様では元々15ミッションだったんですよ。「ミッションが足りない」というか「せっかく背景を作ったのだから、ミッションを作ってくれよ」と無謀なお願いをして、鬼頭君(鬼頭雅英:『ACE7』でも無線を担当)が急遽2日ぐらいでシナリオを全部書いてきてくれたのを覚えています。

玉置氏: どのミッションか気になる!

河野氏: ナガセの旅客機のミッション。

玉置氏: ああ!あの旅客機のミッション!(※補足: ミッション11「エスコート」ストーンヘンジ開発に関わった技術者とその家族を救出する内容)


河野氏: あそこは地上に何もないじゃん。技術研究ステージだから。それに対して『5』は「最初からこれだけミッションが必要です!」と決まっていて、でも作り始めたら「増やさないと無理だ…」って、最後の方でさ「ミッション27+(プラス)」ってわからない単語が付いていたじゃん。

菅野氏: これがよく分からないですよね「ミッション27+(プラス)」の「+(プラス)」ってなに?「B」とかね。

河野氏: 「ミッション11A」とか。


玉置氏: なんで微妙にコインの表裏で途中分岐するところがあったんですか?

菅野氏: 「(コインの裏表で)振り回されているって印象を与えたい」と河野さんが言ったんですよ。それでチョッパーが凄く怒っていましたけれど。自分で選んだ分岐じゃなくて、「選ばされてしまった」というやるせなさを表したかった。それでミッションが増えるのは開発側にとっても大変なことですよ。

河野氏: あそこ(分岐ミッション)のお話の整合性を取るの大変だったよね、でも片渕監督がアイデアをくれて「片方で起こっていることは別の世界線のことだから、本人たちは知らなくていい」っていうので、あそこだけ実はパラレルワールドなんだよね。まぁ今後は、『5』を超えるような大変なのはいいなもう……(笑)下元も、幕間全部オールリアルタイムで2時間以上、ミッション30以上とか言われたらねぇ……。

下元氏: そうですね、泣いちゃいそうです。

――そろそろ『エースコンバットZERO』のお話に移りたいと思います。『ZERO』は当時最後のナムコブランドでのタイトルで、発売直後は厳しい意見が多かったタイトルですが(一方で各エース戦との熱さから再評価も早かった)、開発に関わった糸見さんはこれらの感想をみてどう思われました?

糸見氏: 『5』と比べると確かに物量は少なくなっていると思うんですけれど、元々のコンセプトが違うんですよ。お客様が『5』と同じものと思ってプレイすると少し物足りないかもしれないですね。

『ZERO』は空戦に特化して、何周も繰り返して楽しめるようリプレイアビリティを高めた構成で考えていたので、根本的に『5』とは違うんですよね。そのため長く壮大なストーリーに期待されると、確かにそれは存在しません。『5』が「ハリウッド映画」であれば、『ZERO』は「記憶に残るミニシアター映画」にしようと、ディレクターの前田直人さんと話してました。



河野氏: 『6』を目指した訳じゃ無いからね。

糸見氏: そうですね、『5.5』と呼ばれていましたもんね。

河野氏: でも『ZERO』は空戦の評価が一番高いんじゃない?

糸見氏: 対地などのバリエーションを少なくして、その分、空戦に集中させてます。

河野氏: バリエーションを作るのが難しいシステムでよくあんなに空戦パターンを作ったよね。

糸見氏: (ディレクターの)前田直人さん凄いなと思いますね。

河野氏: 『エースコンバット3』の話に戻るんだけど、前田が『3』の配置をやっていてさ、確かジオペリアが朝日の方向から飛んできて、パッと散開するというテーブルを組んでいて、その時に才能あるなーと感動したんだよね。

『3』ゼネラルルートの最終ミッション「GEOPERIA」より

玉置氏: 『ZERO』のラストもそうでしたけれど、画的に映えるAI挙動を作るのって凄いですよね。

糸見氏:前からしか討てないって面白くないですか!?」と。ヘッドオンは画的に映えるんだよね。あれはみんな頑張ったなあ。

河野氏: 部隊の挙動に差を付けるってどうやったの?

糸見氏: 全員でネタ出しをやっていましたね。登場数は先に決めてました。「これぐらい敵エースがいないと何回もプレイしてもらえない」と構成が先行してました。


河野氏: そんなに広くバリエーションを作れなかったんじゃない?

糸見氏: 長距離攻撃とステルス機部隊と……最初の3部隊はそれほど差が無いはずなんですよね。兵装ぐらいの差ぐらいで。後半になると敵エースが強くなってきてバリエーションも差が強くなるという作りになっているはずです。

河野氏: それで最後「カモーン!!」になるのね。

――最後のピクシーの「カモーン!!」は熱さに拍車をかけた演出で痺れました!

河野氏: 俺は『ZERO』の調整に加わったんだけど、「カモーン!!」で「インテークを撃て」って言われた時「何でだよ!」って思った(笑)

糸見氏: そこはいいじゃん(笑)


菅野氏: そこは河野さんから「こんなんありえるの!?」って言われてたのを思い出します(笑)「エアインテークにコンテナが付くってありえるの?」みたいな。

糸見氏: あれは一騎打ちをどうやってやらせるかで結構悩んで出た答えでしたよね。

河野氏: 『エースコンバット』の一騎打ちって本当に鬼門だからなぁ。

糸見氏: ヘッドオンのすれ違いをどうやってゲームで体験させるかで調整にものすごい時間がかかりましたから。


河野氏: 敵機もそんなにこちらが思っているように飛んでくれないしなあ。

糸見氏: 全然飛んでくれないしねぇ。最初、本当に飛んでくれなくて、「カモーン!!」って言っているのに明後日の方向へ飛んでいっちゃった(笑)



以上が前半です。後編となる、HD機時代の『6』と『アサルトホライゾン』、『インフィニティ』、そして『7』に関する内容はこちらのリンクからどうぞ。
《G.Suzuki》

ミリタリーゲームファンです G.Suzuki

ミリタリー系ゲームが好きなフリーランスのライター。『エースコンバット』を中心にFPS/シムなどミリタリーを主軸に据えた作品が好みだが、『R-TYPE』シリーズや『トリガーハート エグゼリカ』などのSTGも好き。近年ではこれまで遊べてなかった話題作(クラシックタイトルを含む)に取り組んでいる。ゲーム以外では模型作り(ガンプラやスケモ等を問わない)を趣味の一つとしている。

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