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『オリジンズ』や『オデッセイ』と違い、参照できる資料が少なかった―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part2

『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッション第2部は、参考にした資料についてです。

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『オリジンズ』や『オデッセイ』と違い、参照できる資料が少なかった―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part2
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第1部では、『アサシン クリード ヴァルハラ』の企画を立ち上げるに当たりどのような過程を経たかについて語られました。第2部のテーマは、方向性が定まってからどのように考証を進めていったかについてです。

第1部の内容については以下のリンクからどうぞ。

ヴァイキングを題材に選んだ理由とは?『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part1


第2部:ヴァイキング世界の歴史的再構築について

司会:Juria Hardy

登壇者

Thierry Noel:歴史考証

Darby McDevitt:ナラティブディレクター

Philippe Bergeron:レベルデザインディレクター

Lucie Malbos:仏ポアティエ大学にて中世史のクラスを持つヴァイキング時代の専門家

Ryan Lavelle:英ウィンチェスター大学教授、アングロサクソン時代のウィンチェスターや、アルフレッド王について世界的に有名な中世初期の歴史に関する専門家

世界構築に当たりどのような資料を参照したか

Thierry Noel最初にお断りしておきたいのが、参照できる資料が少ないことです。多すぎるくらいだった『オリジンズ』や『オデッセイ』と違い、『ヴァルハラ』の源になる文書がわずかしか残っていません。「サガ」などの年代記や考古学の資料も皆無で、専門家に直接訪ねるしかありませんでした。

Ryan Lavelle大枠を作る上では歴史の出来事における様々な可能性を提案しました。ある年に特定の人物が死ぬと結果はどうなっていたか、などを想定する作業は楽しかったです。ときには名前や日付だけ、運がよければ場所しかわからないこともあるので、それらの隙間を埋めていきたい気持ちはよくわかります。そういった人物の周辺から世界を構築していこうと考えました。

Raphael Lacosteまずは空白のページを埋めることから始めたのですが、ロケーションではより信頼できる手法をとりました。先にそれぞれの場所で異なる自然環境を作成したんです。多くの問題を解決できる専門家と密に話し合えたおかげで、ロケーションに役目を割り振る作業がスムーズにできました。私たちの知らなかった社会階層も興味深いですし、多層的なイングランドなのでローマの遺跡とサクソン人の建造物を対比させ、その衝突がゲームに躍動感を与えてくれたと思います。

全体の地図ができるとスケール感が掴め、異なるロケーションをどう繋げるか、自然の風景から生活のある場所へどう移行していくか、地図をベースにして計画していきました。

居住地における人々の生活デザインについて

Ryan Lavelleイングランド側にとても役に立つ資料がありました。11世紀の「ドゥームズデイ・ブック(ウィリアム1世による検地台帳)」は、ちょうどノルマンコンクエストの初期と重なり、イングランドにある全ての村、居住地の調査が記録されています。規模、世帯数、労働者数など、おかげでその場所の大まかな様子が把握できました。ウェセックスの南部も含まれており、そこはヴァイキングが入植した「デーンロウ」と呼ばれる地域で、居住地の規模も違いがありました。

私がアングロサクソンの時代で好きなのは「Charter(勅許状)」ですね。土地の所有権に関する文書で、古い木から小川へ、古い十字路を渡る、などの道順や目印が言葉で書かれていました。

Juria Hardyまるで宝探しみたいですね!

ゲームに登場する実在の場所について

Juria Hardyストーンヘンジをはじめとした、ゲームで行くことになる多くの場所は実在の場所から着想を得ています。訪れたからには何かしらせずにはいられないと思いますが、Ryanはストーンヘンジへの取材に同行したそうですね。

Ryan Lavelle魅力的なロケーションを巡る旅で、ストーンヘンジが最後に訪れた場所だったのですが、たくさんの人が周囲にいるなかで他よりもちょっと浮いてしまいました。ストーンヘンジはサクソン人の時代よりも古く、場所の名前は古英語で「吊されている石」を意味します。当時の人々になったつもりで、「ヴァイキングやサクソン人はこれを見てどう思ったんだろう?」と想像しました。

Juria Hardyここにいくつか画像があるのですが、現実のノルウェーとゲーム内のノルウェーを比較したものです。1番目を引くのはオーロラの画像ですね。

Raphael Lacoste旅の途中でオーロラを観に行く機会があったのですが、いい時間を過ごせた素晴らしい光景でした。実際には極めてまれにしか出会えませんが、ゲームの中では毎晩起こるように設定したので、数時間待てば観ることができますよ。

Juria Hardy現れるか分からなくても、休暇に大枚をはたいてオーロラを観に行く人もいるのに、ずいぶんサービスしましたね(笑)。次にスターヴ教会(北欧の木造教会の様式。ゲームのモデルはホッペルシュタ・スターヴ教会と思われる)です。こちらも驚くべき建築物ですが、Lucie、詳しい説明をお願いできますか?

Lucie Malbosここはノルウェーの教会でも最も見事なものの1つで、北欧圏の木彫の技術が使われた木造建築の代表です。本来はキリスト教の建物ですが、ゲームの中ではキリスト教のものではなくなっています。ですが大きな講堂は美しい木彫で満たされていて、とても立派にできていますよ。

Juria Hardyディーンの森など自然のロケーションも登場します。雄大な自然の情景をどのようにゲームへ盛り込みましたか?

Thierry Noelイングランドで魔法のような場所を挙げるとしたら絶対にディーンの森で、これは何よりも最優先でした。きっとヴァイキングも素敵な時間を過ごしたでしょうから。フィールドワークで訪れたときも、区画の中は魔法のような場所に満ちていて、きっとローマ人が訪れたときもそうだったのでしょう。ゲームの中でもローマ人の痕跡に出会いますが、実はイングランドはちょっとした聖域のように、今でもローマの遺跡がたくさん残されているんですよ。

Juria Hardyこれらのロケーションはゲームの物語を作るのにどんな影響がありましたか?

Darby McDevittイギリスの歴史は7つの層で成り立っていると言われます。ストーンヘンジを建てた土着のブリテン人、侵略してきたローマ人、キリスト教に改宗したアングロ・サクソン人、そして一番上になるヴァイキング。ゲームの中ではそれぞれ違う場所に住み、物語上で光が当てられます。ディーンの森にはブリテン人が暮らし、アングロ・サクソン人への侵攻に腐心していて、土着の信仰と古のイングランドの神秘をゲームに取り入れました。

叙事詩「サガ」について

Lucie Malbos「サガ」はとても重要なもので、歴史書でもあり伝説でもあります。しかし数世紀下ったキリスト教の時代に書かれたもので、ヴァイキング時代のものとは違います。それでも歴史書としての「サガ」はノルウェーを統一した美髪王ハーラルなど、王や酋長について知るには欠かせません。ハーラルについては手がかりが少なく、どんなに情報を集めても大きな空白が出てきます。

Juria Hardyハーラルはゲームの中でも重要な役を担います。空白がある中でどのように物語をまとめたのですか?

Darby McDevittこれは説明しづらいですね。「サガ」でも扱っている決定的な歴史の出来事も、信じられないような冒険譚になっているので、歴史的な正確さと言う点では信頼できませんが、ストーリーテラーとしては大いに影響を受けました。ゲームのオープニングでノルウェーに降り立つとき、ハーラルの先祖を使って勢いをつけたんです。彼のことはあまり知られていませんから。

企画の最初の頃は様々な「サガ」を調べ、北アメリカのヴィンランド(ヴァイキングが入植したとされる土地)にしようとも話しました。「ヴィンランドのサガ」はヴァイキングの物語を作るには小さすぎて断念しましたが、北米に入植した10年の記録があり、あらゆる資料が基礎を作るのにとても役立ちました。

Juria Hardy歴史的な情報を集めるときにはどんな資料を使ったのですか?

Darby McDevitt「古エッダ」や「散文のエッダ」にも当たりましたが、こちらは神話についての資料だったので、オーディン、トール、フレイヤなどの神々について、神話の世界を作るのに役立ちました。しかし歴史的資料としては難しいですね。

Lucie Malbos「エッダ」をヴァイキングを知るための歴史書とすることはできません。書かれたのはキリスト教時代の13世紀で、9~10世紀における土着信仰についての内容です。年代的にも、精神性においても大きく乖離があります。

Darby McDevittヴァイキング本人が書いたものといったら、せいぜい10ページ程度のものぐらいです。岩や木に彫ったルーン文字ばかりですから(笑)。数世紀の後に書かれたキリスト教徒のものに頼らざるを得ないんです。

Ryan Lavelleそれでも、彼らが少ない手がかりから考古学的にどう考えたのかを考察するのも面白いですよね。当時の信仰を反映していますから、ヴァイキング時代を理解するためのよい見本です。


歴史学者が「暗黒時代」と呼ぶヴァイキングの時代は記録文書が少なく、古代文明の調査よりも難航したようです。一方で「大きな余白」があるが故に、より大胆な解釈で物語を構築できたともいえます。

第3部では現代のヴァイキング流行、モーションキャプチャーの様子などについて語られます。

『アサシンクリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート 第3部:ヴァイキング人気と制作秘話

《Skollfang》

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