4月25日に配信されたINDIE Live Expoにて、Sukeban Gamesは『.45 パラベラム ブラッドハウンド』の新たなトレイラーと、夏「ごろ」に発売予定であることが明かされました。
この度Game*Sparkでは、開発者のChristopher Ortiz(クリストファー・オルティス)氏にメールインタビューを実施。開発体制や、トレイラーを見て気になったこと、また影響を受けた作品について聞きました。どうやらクリス氏の筆が乗ったようで、途中では須田剛一作品に関するお話も広がる、フリーダムなインタビューとなっていますので、ぜひお読みください。
――『.45 パラベラム ブラッドハウンド』の1st Trailerを見てから発売を楽しみにしていたので、もう少しで遊べるのがとても嬉しいです。2024年に本作が発表されてから2年の時が経ちましたが、開発には何年ほどかけていたのでしょうか。
Christopher Ortiz氏(以下、クリス):そうですね、コンセプト自体は僕が2019年頃にミランあたりを旅行していたときに思いついたものです。
メランコリックな音楽が流れる街並みが語りかけてきたというか。そのときの自分の心情を映し出したような何かをしたいなと思ったのと、当時のプロジェクトが思ったように動いていないことが相まって、この45pbプロジェクトの開始をチームに提言したという感じです。そのときは開発期間2年として開始しましたが…… まあ、既にお分かりの通り、予定はずれています。ゲーム自体のリブートは二回行っていて、現バージョンとして開始したのは2023年からですね。
――Christopher Ortiz氏やプログラマー兼ライターの友人氏、デザイナーのMerengedoll氏、BGMやSE担当のJuneji氏が関わっているそうですが、他にはどのようなメンバー、また何人の方がプロジェクトに参加しているのですか?
クリス:はい、その4名+マネージャーとしてTaku(山中氏)です。一部3Dモデルやアニメーションのサポートをしてもらったフリーの方々はいますが、基本的な日々の業務はこれらのメンバーで行っています。
――主人公の「レイラ」は「人生に疲れた殺し屋」という背景を持っています。なぜ主人公を「殺し屋」にしたのでしょうか。また、キービジュアルに映る手は生身のものではないように見えるのですが……。

クリス:彼女の生まれた環境は、肉体改造も日常という、なかなかにシビアなものでした。あと、彼女が元兵士だというのももちろん影響しています。戦闘に耐えうる、そして生き残れるよう鍛え上げなければいけません。そんな彼女がなぜ殺し屋になっているのか…それは後々遊んで知ってもらいたいところです。
――バトルについてですが、ストアページには、「初心者に優しく、ゲーマーはやりこめるアクティブタイムアクションシステム」とあります。左上に表示されるバーを管理しながら戦うのだと思われるのですが、どのような面白さ、奥深さを目指していますか。また、難易度設定などはあるのでしょうか?

クリス:プレイヤーにはスペル(バトル用の魔法のようなもの)、インプラント(装備できるアビリティのようなもの)、武器の組み合わせを色々と試してもらいたいです。是非、僕らも気づいていないおもしろい戦略を見つけ出してほしいですね!
それもあって難易度設定は考えていません。自分に合うバトルスタイルを突き詰めていけば、それで攻略しやすくなる、はずです。銃メインで進めるのか、スペルのみで進めるのか、攻撃こそすべてなのか防御重視なのか。スペル強化はせず、肉体の力のみで進めるか、銃の強化はせずにその分をアーマーやスペルの強化に回すか…?こういった取捨選択というプレイヤーの協力があってこそ、ゲームは更に面白くなるんじゃないかというのが僕の考えです。
――武器や能力の種類は、どれくらいありますか。銃は架空銃なのでしょうか。
クリス:銃は全て架空銃ですね。現実世界とは違う世界なので。種類などは実際に遊んで確かめてみてください!
――本作のゲーム画面のアートは「ローポリグラフィック」的ですが、こちらを選択した理由は何ですか。『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action(以下、VA-11 Hall-A)』も「ピクセルアート」だったので、少しレトロさを感じるようなアートがお好きなのかなと。

クリス:実は、『VA-11 Hall-A』リリース後はずいぶんとPS1スタイルのグラフィックを色々と試していました。blenderとunityを触り始めたのはそのためですね。そして、これをこっそりマスターしていくことで逆に時代の先を行って、みんなを驚かせられるんじゃないかな、と。
あと、多分ですがこの90年代3Dゲームリバイバルの流行りを作ったのは『Back in 1995』なのでは、と思っています。実際僕も子供の頃には分かってなかった、不完全な映像美の良さというのがわかるきっかけになったと思う。PS1の頃はまだガキだったこともあって、このゲーム、映像キレイだなーと思い始めたのはせいぜい『FF8』の頃だったはず。『Back in 1995』のおかげで、アーティファクトの美を嗜む方法が身についたんです。

で、自分で作っているというのとは別にしても、レトロ風のビジュアルは好きですね。個人的な好み、作りやすさもあるけど、高解像度ではないグラフィックが、プレイヤーの想像力を刺激する仕組みがおもしろくて。存在しないピクセルやポリゴンが情報を補完してくれる、それが僕にとっても、作品にとっても重要な魔法なんです。
――トレイラーやスクリーンショットの“格好良さ”から本作に興味を持った方も多く、2nd Trailerでの新映像も更に見ていて期待が高まる映像でした。『VA-11 Hall-A』が全体的にカラフルな色合いだったのに対し、本作は冷たく落ち着いたトーンで、「静」の美しさを感じさせます。アート方面で目指したものや、意識したことを聞かせてください。


クリス:温かみが「ない」ゲームを作りたい、というのが狙いでした。『VA-11 Hall-A』での季節は冬でしたが、ゲームの設定やキャラクターたちのやり取りに温かさは十分にありました。『45pb』では、人生から失われてしまった温かみ、それを探し求めたい、と思っている人のお話です。その探究心を色合いにも反映させた結果、こうなりました。
――2nd Trailerで髪をなびかせる主人公のレイラなどから、モデルの動きもしっかりと作り込んでいるのがうかがえます。苦労したところや、注目してほしい部分などはありますか。
クリス:これが上述の外注したモデルですね。そして、外注会社って多くの場合樽とか車のホイールとかそういう単純なもののモデルの作業をやりがちなんです。だから、こんなかっこいいキャラクターのデザインをできるのはモデラーにとってチャンスではないかと思い、あえてコンセプトアート以外には渡さず、且つ1000ポリゴン以内という要求をお願いしました。できあがったモデルを見ると、髪の毛にもしっかりとボーンが入っていたので、物理プラグインのサポートも入れた上で、走るときに髪がなびくようにしました。
ただ、このなびかせについてはちょっとズルしたことがあって… 最初のものと最新のPV、どちらにも髪の毛がもっと詳細に描かれているシーンがありますが、実はこのレトロ調を逆手に取ったものなんです。もしゲームが高解像度だったら、2019年にテストで作った手描きのアニメが混ざってるのが簡単にわかったでしょうね。


――キャラクターと会話しているシーンや、カットシーンの構図にこだわりを感じました。構図について意識したこと、また本作に影響を与えたかという部分に関係なく、構図やアートの美しさという点でゲーム以外にもアニメや映画などで好きな作品、または監督はいますか?
クリス:僕はいつも、会ったことがないいろんな人たちの弟子みたいな思いを感じてます。例えば押井守さん。ベネズエラの小学生だった自分が攻殻機動隊とパトレイバーの映画を見たとき、自分の脳みそに不可逆的な変化を与えたのを感じました。それのおかげか、重要だと思わせるポイントの感じやビジュアルがどのようなものかが理解できるようになって、アニメだけじゃなく映画という素晴らしい世界の発見にも繋がりました。
そして、その勢いで大量のコンテンツを享受していく中、徐々に僕の脳に知識が蓄積されていき… いわば脳内図書館といったものが、『45pb』の美術や構図といったものを作り出すためのリファレンスになったのかなと思います。


構図で印象的な監督というと… 少し難しいですね。構図にひたすらこだわる監督もいれば、そのあたりは撮影監督に任せている監督がいるのもわかってます。例えば最近、ウォン・カーウァイ監督の「繁花」を見たんですが、正直映像で好きなところはなかったです。監督の作品は好きなのに。となると、彼の初期作品の映像面が特に印象的だったのはなぜなんだろう?と考えてみた結果、クリストファー・ドイルという才能の賜物、あと香港という街が持つ魅力だったんだろうなと思いました。
というわけで、かっこいいカットを作った人が好きだというのを踏まえた上で好きな作品を作った監督は、以下に挙げる人たちですね。
押井守
ウォン・カーウァイ
須田剛一(『killer7』は古今東西のゲームの中で最高のビジュアルです)
新房昭之
是枝裕和
ヴィム・ヴェンダース
アキ・カウリスマキ
黒沢清
アンドレイ・タルコフスキー
庵野秀明
岩井俊二
そして、もちろん黒澤明
まだまだ挙げられるけど、ここで書いておきたいのは、ここに挙げた監督の皆さんはキャラクター同士の距離を描くのに長けているということ。物理的にも、精神的な距離という意味でも。皆さんも彼らの作品を思い返してみると、確かに、と思ってくれるんじゃないかな。こういうスタイルは本当に僕が子供の頃から心の中心に打ち響いていて、その頃はまだその感覚や、作品が僕に与えてきた衝撃を表現出来ませんでしたが、今こうやってようやく表に出せるようになったんです。
――Juneji氏のチャンネルにて、すでに多くの楽曲が公開されています。ゲームに音楽を合わせるうえでの方向性や、どのような雰囲気を意識したかという話を聞かせてください。
クリス:方向性がどうというよりは、合体呪文を唱えているようなものかもしれない。僕がゲームの背景を作ってると、それを見たJunejiがイカした曲を作ってくれたり。僕が好きな映画やゲームの1シーンや曲を共有すると、そこから似たヴァイブを持った曲(模倣という意味ではないです、もちろん)を作り出してくれたり。逆も全然ある。彼の作曲したものを聞いた僕が情景や会話を思いついたり。そんな感じに、お互いの開発が制限なく、自然に発生するようになるやり方を心がけてて、今のところそれが上手くはまってます。
――ファミ通.comでのインタビューでも触れられていましたが、殺し屋の主人公に「第三の目」が……という点や、真ん中分けの黒髪にクールな表情と白黒な服で「クロヤナギ シンコ」を想起したりと、グラスホッパーのゲームが好きなことが伝わり、双方を好きな側としてはニヤリとしてしまいます。

クリス:実は、レイラのゆるいインスパイア元は、梶芽衣子さんなんです。「女囚さそり」、「修羅雪姫」、「野良猫ロック」が特に好きですね。彼女の眼差しは実に強烈で、次回作の主人公には是非同じような鋭い目つきのキャラクターを抜擢したかったんです。
でも、クロヤナギシンコを思い起こさせるというのは嬉しいですね。僕もゲームキャラクターの中でトップを争うくらい好きなキャラクターですので。例えば彼女はゲーム内では和製ダーティハリーと呼ばれていて、そのタフな外見と、ネット上でのおふざけキャラが魅力的だった。いわゆるギャップ萌えというのかな。須田剛一さんの意図したものなのかどうかはわからないけど。


――ちなみに、『ROMEO IS A DEAD MAN 』はもうプレイされましたか?
クリス:これは初代『ノーモア★ヒーローズ』、そして『Travis Strikes Again』に続くグラスホッパー・マニファクチュア(以下、GhM)の最高傑作ですね。確実に。
正直、ノーモアヒーローズのあとの作品についてはあんまり公の場では語りたくないですが……須田さんを招待したラジオ番組とかならともかく。そうじゃないと、陰口を言うようなことになってしまうので。それはともかく、『ROMEO』はとても良かった。プレイしたあとも友人と考察で盛り上がりましたが、今にも崩れてしまいそうなあやふやな人間関係と過去を断ち切って進む物語の妙に感激しました。
特に若い頃によくあると思いますが、自分の人生にとって明らかにプラスではないのに、その人が自分に恋愛感情を向けてくれた唯一の人だからという理由だけで、その人と離れられないという状況。その気持ち、関係を断ち切るのは難しい。人間として当たり前の欲求なのに、虐待に耐えてまでそれを求めざるを得ない人がいるっていう事実は本当に悲しいことです。だから、ロミオが前を向いて進めたこと、少なくともそう見えたことは幸せだと思います。

また、友人も言ってたんですが、ロミオが「悪い」ジュリエットたちを意地でも本物と認めなかったのが、彼女を神格化したあとでは彼女に暗い面など存在しないと信じてたからじゃないか、と。これは本当に考えさせられる話で、とにかく好き過ぎるエピソードですね。あとはSteam Deck対応さえしててくれれば、ベッドで寝ながら実績コンプを目指せたのに、というのが唯一の残念ポイントかな…
私信になりますが、GhM様!次回作ではライトベイクをして、ルーメンは捨て去り、どうかSteam Deckで遊べるようにしてください!
あと言っておくこととしては、GhM作品で最高のバトルシステムでしたね。バスタードシステムは本当に良かった。ずっと夢中になってバトルしてました。
質問されてないのは承知だけど、GhM作品のトップ7を紹介しておきます。
シルバー事件
シルバー事件25区
killer7
花と太陽と雨と
ノーモア★ヒーローズ
ROMEO IS A DEAD MAN
Travis Strikes Again: No More Heroes
――2nd Trailerに一瞬映る「FAUST」の姿に「攻殻機動隊」の「バトー」らしさを少し感じました。「サイバーパンク」としては外せない作品ですが、その辺りの影響もあるのでしょうか。

クリス:これはもう、僕が「ごついサイバーパンク男性」キャラが好きというのに限りますね。『サイバーパンク2077』のジャッキーもそうだし、もちろんバトーも。その良さをファウストに適用させたかったんです。でも、最終的にはあの丸メガネは外させるかもしれない。確かにちょっとバトー過ぎるのでw
――様々な作品の影響も感じつつ、『.45 パラベラム ブラッドハウンド』独自のクールな世界が出来上がっていることが見え、プレイできる日が待ち遠しいです。発売に向けて、ファンになにかひとことお願いします!
クリス:どうも期待値が天井超えしているように感じることも多々ありますが、ファンのみんなが脳内で作り上げた最高のゲーム!の半分くらいでも達成できるようにがんばってます。
とにかく、時間はかかったけど、ようやくスケバンゲームズの新しい世界を見せられるのが楽しみです。スケバン再生の瞬間を是非見届けてください!
本作の世界観や背景、またChristopher Ortiz氏のゲームだけにとどまらない作品への造詣の深さがこちらのインタビューでみられたのではないでしょうか。発売までに『VA-11 Hall-A』をプレイしながら、挙げられた作品に触れていくのもいいかもしれません。
『.45 パラベラム ブラッドハウンド - サイバーパンクアクティブタイムアクション』は、PC(Steam)向けに2026年の夏ごろ発売予定です。











