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『サイバーパンク2077』のような全身サイボーグは可能なのかー臓器から見る“身体改造”の未来

私達が生きている間に“身体改造が当たり前の世界”は来るのか。

家庭用ゲーム PS5
『サイバーパンク2077』のような全身サイボーグは可能なのかー臓器から見る“身体改造”の未来
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ついに発売を迎えた『サイバーパンク2077』。本作の舞台となっている「ナイトシティ」は、身体改造なんて当たり前の世界。見た目のみならず、腕に武器を仕込んだり、人工肺や血液ポンプで身体機能を向上させることもできます。

まさに“サイバーパンク”なあこがれの世界ですが、実際のところ、身体改造ができる未来というのは訪れるのでしょうか。特に、人間の複雑な臓器を、改造したり強化するといったことは可能なのでしょうか。

横浜市立大学 大学院 生命ナノシステム科学研究科 准教授・小島伸彦氏

今回は、横浜市立大学 大学院 生命ナノシステム科学研究科 准教授・小島伸彦氏をお招きし、『サイバーパンク2077』に登場する人工臓器などのお話を交えながら、現在そして未来の身体改造についてお話いただきました。

ーー小島さんは、どのような研究をしているのでしょうか。

小島我々の身体を形作る細胞を、バラバラに培養し、それらをもう一度三次元的に組み立て直すような研究をしています。将来的には、臓器をまるまるひとつ作り上げられるようになるかもしれないのですが、現段階では技術的に難しいので、1ミリの半分以下、例えば300ミクロンといったサイズの「ミニ臓器」を作っています。

このミニ臓器は、もちろん移植に使うということも考えていますが、薬の効果を調査するためにも注目されています。動物実験は倫理的な問題がありますし、現代の薬はとても複雑になっているので、ヒトと動物では効果が変わってくることもあります。だからといって、人体実験をすることもできません。そこで、ヒトの組織や臓器の細胞を培養して小さなチップの上に並べ、血液を模倣した培養液を巡らせることで人体を一部再現する「ヒューマン・オン・チップ」という技術が、創薬の世界では実現しつつあります。それぞれの臓器は小さくても、その機能は再現されているので、このチップに薬剤を使うことで、人体への影響を調査することができるのです。

我々は、まずは小さくても精密で役に立つ臓器を作ろうと、日々研究を進めています。

ーーチップの上に人体を。そのような技術があるとは知りませんでした。

小島試験管の中で本物同様の臓器を作る、というのが我々の目的なのですが、仮にそれが実現したとすれば「もっといいものを」という話になると思うのです。例えば、本来存在しない機能が追加された臓器などですね。それが発展すると、この『サイバーパンク2077』のように、身体を自由にカスタマイズできる未来が来るかもしれません。流石に、ナイトシティのような危ない世界は困ってしまいますが(笑)。

ーー夢がありますね……!小島さんは、どのようなきっかけからこの分野に進んだのでしょうか。

小島80年代のマンガやアニメ、映画を見てきたのですが、サイボーグやロボットものが好きだったんです。映画「ターミネーター」を観て、生体組織を使ったロボットや、培養した生体組織のみで人造人間を作り上げるような未来が来たら面白いのではないかと思っていました。

そして決定的だったのが、高校3年生のときに読んだ「攻殻機動隊」です。この作品の中で、作者の士郎正宗さんが「完全機械化サイボーグは難しい」と書かれていたんです。なぜかというと、内分泌系や肝臓が複雑すぎて機械では再現が非常に難しいのです。特に、肝臓は同時に約500種類もの反応を処理しているのですが、これを機械に置き換えようとすると東京ドーム一杯分のプラントが必要になると言われています。ならば、その部分だけ培養した臓器を使ってみるのはどうか、と考えたのがこの道に進んだきっかけでした。好きだったアニメやマンガ、ゲームの世界を、自分だったらどう実現するか、というのを考えたのかなと思います。こういうお話をすると、「そんな動機で良いのか」と言われるのですが(笑)。

ーー良いと思います……!それでは、『サイバーパンク2077』と絡めたお話をできればと思います。まず、ゲームの印象としてはいかがでしょう。

小島まさしくサイバーパンクの世界ですよね。質感もリアルで、非常に面白そうだなと。それと、個人的なお話ですが、フィクサーのワカコ・オカダが京都弁で喋っているのはすごいセンスだと思いました(笑)。殺しの依頼をするエージェントは標準語ではなく、生きたローカルの言葉で喋っている方がリアルです。自分も関西出身なのですが、特に関西弁は生活感があり、どこかアンダーグラウンドな響きがあると感じているので。。

ーー身体改造なんて当たり前という世界、現在の技術からは大きく進んだまさにサイバーパンクな世界ですね。

小島現在ですと、軟骨や骨、歯といったマテリアルに関しては、例えば3Dプリンターで製作して移植するような技術は、ほぼ実用化されていますね。また、最近では弱った心臓にシート状の心筋を貼り付けて補強する技術などもあります。『サイバーパンク2077』の様に、人工的に肺を作り上げて移植するような技術は、まだまだ発展途上で、10~20年かけて進んでいくとも言われています。

ひとつ、ブタを使った臓器培養の方法というのが提案されています。例えば「膵臓を作れないブタ」の受精卵を遺伝子工学で作り出し、それが受精卵から胚盤胞という状態に進んだ段階で、「健康なブタ」の胚盤胞から細胞を移植します。そうすると、いわゆる「キメラ動物」というものになるのですが、産まれてきたブタの膵臓を調べると、100%「健康なブタ」の細胞から作られていることがわかるのです。これを応用して、移植する細胞を「ヒトのiPS細胞」に代えると、「100%ヒトの細胞で作られた膵臓を持つブタ」が産まれてきます。

ーーなるほど……。
小島こうして作られた臓器をヒトに移植する研究も進んでいます。まだ課題は多いようですが、そう遠くない未来に実用化できるのではと言われています。

ーー例えばより優れた臓器を作れるような細胞から臓器を作り、移植すれば身体強化もできるかもしれませんね。

小島基本的には医療に使われる技術ですが、例えばアスリートの細胞を使ったり、あるいはゲノム編集技術が発展すれば、自分自身の細胞を操作して、より優れた臓器を作り出すことも可能になるかもしれませんね。

ーー確立されると『サイバーパンク2077』のような未来にも少し近づくかもしれませんね。

小島ただ、ブタの命を使うことになるので、やはり倫理面での問題は残っていますね。また、何かの間違いでヒトの細胞の寄与率が目的臓器以外で高くなってしまうと大変です。例えば、人の顔をしたブタが産まれてきたり、脳がヒト化してしゃべるブタが産まれてきて「死にたくない」と言い始めたら……大変な問題になります。もちろん、病気の人間が救われることは尊いことであり、実用化の際にはいくつものフェイルセーフが掛けられると思います。それでも、人が踏み入ってもいい領域なのか、と考えることはありますね。

ーーバイオパンクめいたお話ですが、そう考えると恐ろしさもありますね。

小島意外と、SFやサイバーパンク、バイオパンクな世界というのは、我々の世界と地続きになりつつあるのです。倫理面の話も、どこかの国が許可を出せば、少なくともその国ではクリアになりますし。

ーーとなると、例えば「身体改造特区」のようなものができたとしたら、『サイバーパンク2077』の舞台となる「ナイトシティ」のような都市になるかもしれませんね。

小島技術的には、軍事に流用したり、ゲームのように戦闘に特化したものを作れるようになる可能性はあります。本当にそういう特区ができたとしたら、「ナイトシティ」のようになるかもしれませんね。

ーー本当にゲームの世界は近くなっているんですね。逆に生体組織ではなく機械で置き換える技術というのは進んでいるのでしょうか。

小島心臓は埋め込み式のものがありますね。肺に関しては、体内に埋め込むのは難しいかもしれませんが、ガス交換装置を背負って動けるようになれば、激しい運動をしても息があがらなくなるような身体にできる可能性はあります。ただ、電源の問題や、機械と人体の接触面が炎症を起こすと言った問題もありますので、そこがクリアにならないと長期間の利用は難しいと思います。

我々もまだ、細胞を自在に動かして望み通りの組織を作ることはできませんが、技術が蓄積されてくると身体に本来存在しない機能を付け加えることができるようになるかもしれません。もし、それが実現して、かつ機械が小型化されてくると、サイバーウェアの「マンティスブレード」や「モノワイヤー」のように身体に武器を埋め込むような身体改造という未来も見えてくるのではないでしょうか。

ーーゲームの世界は近くなっているけれど、そのものになるにはまだまだ時間がかかりそうですね。倫理的にも技術的にも。

小島あとは、「元に戻せるかどうか」というのもありますね。身体を置き換えても、満足いかなかったときに元に戻せるのであれば、試してみたくもなるのではないでしょうか。
ーー確かに、安心感は必要ですね。しかし、本当に『サイバーパンク2077』のような世界が実現したら、差別や偏見はなくなりそうですね。「ナイトシティ」のように危険な世界にはなるかもしれませんが……。

小島ゲームのように、自由に変えられるようになったら、元々の肌の色や目の色も関係なくなりますね。やりすぎると、それこそ「攻殻機動隊」のように「自分は本当に自分なのか」という疑問も出てくるかもしれませんが。

ーーそのような未来に備えて『サイバーパンク2077』で予習するのは良いかもしれませんね。あるいは、こういう自分になりたいというのをゲーム内で作り上げてみるとか。ちなみに、小島さんは「液体肝臓」というものも研究されているとのことですが、これはどのようなものなのでしょうか。ワードだけだと非常にSFチックと言うか、それこそサイバーパンクな世界にも存在しそうなのですが。

小島なんじゃそれは、という感じですよね(笑)。冒頭お話した通り、肝臓というのはひとつの化学工場のようなものです。なぜ、肝臓がこれほどまでの機能を内包してるのかというと、化学反応を起こしやすくする「酵素」を持っているからなのです。「酵素」には沢山の種類があるのですが、そのひとつが欠損してしまう病気が多数あります。そのうちのひとつ「フェニルケトン尿症」という病気では、食餌中のタンパク質に含まれる「フェニルアラニン」というアミノ酸を「チロシン」という物質に代謝できなくなってしまい、フェニルアラニンが血中に溜まってしまいます。そうなると、脳や中枢神経にシビアな影響を与えてしまうんです。

先天性の病気であり、発病すると一生にわたってタンパク質を含む食べ物、つまり肉や魚を食べられない人生を送ることになってしまいます。原理的には肝臓移植で治療できますが、患者にもドナーにもリスクがあるものなので、フェニルケトン尿症の場合は肝臓移植は選択されません。食事制限と一生付き合うしかないのです。確率的に国内で毎年15名前後の方が罹患する病気ですが、あまりにも不公平です。フェニルケトン尿症で問題となるのは、フェニルアラニンというアミノ酸が肝臓で代謝できずに血液中に溜まってしまうことです。体中に無数にある赤血球に肝臓の酵素を埋め込んだものを注射し、フェニルアラニンを血液中で代謝することができれば、という考えで研究を始めたのが「液体肝臓」です。

そんなに簡単には実用化できるものではないと思いますが、なんとか治療法として確立できるように、クラウドファンディングで研究資金を集めて、挑戦を始めています。

ーー血液に、肝臓の機能を一部肩代わりさせるということですね。

小島そうですね。ソリッドなものではなく、リキッドな肝臓なので「液体肝臓」というわけです。これは「フェニルケトン尿症」だけでなく、血液中に物質が溜まって病気の原因となるものには応用が効く可能性もあります。例えば、痛風や二日酔いもそのひとつですね。

ーーある意味、血液の改造、というようなものですよね。

小島毒物に暴露されたときに、血中で素早く分解できるようにしたり、『サイバーパンク2077』で言うところの循環器スロットに装着するサイバーウェアのように、回復力を高めることもできるかもしれません。

ーー注射だけでできるというのは負担が軽くていいですね。

小島実際に作ってみないとわからないところですが、理想としては月1回や月2回の注射だけで済むようにできればと思っています。赤血球は最長でも120日ほどで壊れてしまうのですが、逆に「やめたくなったらやめられる」というメリットもあります。

それこそ『サイバーパンク2077』でサイバーウェアを付け替えるように、「一度、お肉を食べてみたかった」「お酒を飲んでみたかった」という自分の思い描くライフスタイルを手軽に体験できるツールのような使い方ができれば、社会はより公平に、より楽しくなるのではないのかと思います。

ーーそれが実現すれば、また一歩『サイバーパンク2077』の世界に近づきますね。それでは最後に、小島さんが考える「2077年の世界」をお話しいただければと思います。

小島難しいですね(笑)。当たり障りのない話にはなってしまいますが、治療用の人工臓器等は、一般化しているのではないかと思います。そして、『サイバーパンク2077』のように、無秩序な世界が来ているかはわかりませんが、「より高機能な臓器を」という世界になっていた場合、臓器のデザインを変えていくことになると思います。5年で交換が必要ですが、小型で高機能な臓器、といった具合ですね。

そうなると、身体にスペースができ、そこに何かを埋め込む形で機能を追加するようなことも出てくるかもしれません。例えば、甘いものは別腹の「別腹」を本当に用意してしまったりとか(笑)。機械化よりも先に、生々しい身体改造をしていく未来、というのは予想以上にあり得るのかなと思います。

ーー非常に興味深いお話でした。ありがとうございました!


世界は着実に、『サイバーパンク2077』や、今までSFでしか見ることのできなかった領域へと進んでいます。いつか、身体改造が当たり前になる日が来るかもしれません。今のうちに、ゲームで「なりたい自分」を考えておくのも良いのではないでしょうか。

《Takuya Suenaga》

ソウルシリーズ大好き Takuya Suenaga

1990年3月、神奈川県生まれ。パズル誌の編集を経て、イードへ。「Game*Spark」「インサイド」の編集業務に携わり、同社のアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」も経験。幼少期よりゲームに触れ、現在はCS機・スマホを中心にプレイ中。好きなジャンルはアクションやFPS・TPSなど。『デモンズソウル』を始めとしたフロム・ソフトウェアの「ソウルシリーズ」や、2020年にサービスを終了した『ららマジ』に特に思い入れがある他、毎年の『Call of Duty』に一喜一憂したり、『アクアノートの休日』『FOREVER BLUE』の新作を待ち望んでいたりする。

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