Game*Sparkレビュー:『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』

『ドラゴンクエスト』ナンバリング最新作がPCへ移植。PCならではの環境によるプレイはおおむね満足ながら気になる点も。

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2017年7月、国民的RPGと名高い『ドラゴンクエスト』シリーズの最新作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(以下『DQXI』)が発売されました。2年後の2019年9月にはニンテンドースイッチで追加要素を含めた完全版とも言える『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』(以下『DQXIS』)が発売。そしてついに今年、2020年12月4日に『DQXIS』がPlayStation 4、Xbox One、そしてPCにも移植されました。

なんと、PCのソフトウェアとしてドラゴンクエストの本編が販売されるのはオンラインゲームでもある『ドラゴンクエストX』を除くと1988年に発売されたMSX版『ドラゴンクエストII』以来、32年ぶりとなるようです。ということで、久しぶりともいえる「PCで遊ぶドラゴンクエスト」は一体どのようなものか、という部分も含め、レビューをお届けします。

辺境の村から物語は始まる

物語の舞台は「ロトゼタシア」とよばれる世界。イシの村で暮らす主人公は、16歳の誕生日を迎え村の掟である「成人の儀」に臨みます。成人の儀のために向かった神の岩で起きた事件によって、主人公は勇者の生まれ変わりであることを知らされ、北の大国デルカダールへと旅立つことに。

無事デルカダールへとたどり着いた主人公。デルカダール王への謁見を許されますが、王は「勇者こそ、この大地に仇をなす者、勇者と魔王は表裏一体」と、主人公を牢へ…。

牢で出会った青年、カミュ。この出会いをきっかけに主人公の長い旅が始まります。

この後壮大な物語が展開する本作。発売こそ2017年の作品ではありますが、その仔細についてはPC版を新鮮な気持ちでプレイしているだろうユーザーに配慮し避けておきます。あえて言うなら、勇者の旅路には思いも寄らないドンデン返しが何度も待ち受けています。『ドラゴンクエスト』という言葉からステレオタイプの古臭いRPGを連想してしまうようなユーザーならば、きっと大いに驚かされることになるでしょう。個人的には、過去10作のナンバリングと比べても、ストーリーラインの壮大さは圧倒的に『DQXIS』が上だと感じています。

詳細に再現された鳥山デザイン3D

ドラゴンクエストシリーズは『DQVIII』からキャラクターモデルの3D化が行われています。今作でもキャラクターモデルは進化し続け、キャラクターデザインの鳥山明氏の設定画の可愛さ、カッコよさが存分に再現されています。

4人パーティ制ですが、新たな仲間がゲストキャラとして付いてくるシーンでは5人での撮影が可能

ちなみに、『DQXIS』では新たにフォトモードが追加され、気軽に仲間たちの写真が撮れるようになったのですが、それに加えPC版では時を止めて、自由に3D空間を動かしながら写真が撮れるGeForce ExperienceのAnselという機能に対応しています。内蔵のフォトモードよりもキャラクターに寄った写真なども撮ることができるのは、PC版だけのうれしいポイントです。

また、戦闘中にもAnselは使えるので、カッコいい瞬間を切り取り放題です。

限りなくストレスフリーを目指した作り

今作は『DQXI』のPS4版で遊べた3Dモードと、3DS版で遊べた2Dモードがひとつになっており、教会でいつでも切り替えが可能です。なので、どれだけ3Dで鳥山世界が再現できていたとしても、「やっぱりドラクエは2Dだよなー!」という方にも対応した作りとなっています。3Dモードの戦闘はシンボルエンカウントで、戦いたい敵を選びやすく、2Dモードでの戦闘は歩いていると不意に発生するランダムエンカウントに切り替わるのが特徴です。持ち物やパラメータなどを引き継ぎつつも、過去の冒険の任意のタイミングから再開できるので、ある程度レベルを上げた状態で2Dモードに切り替え、ゲームの冒頭から開始するといった「強くてニューゲーム」的な遊びも可能になっています。

主人公たちはレベルが上がると「スキルポイント」が手に入ります。このスキルポイントで各キャラクターに用意されたスキルパネルを解放していくことで、新たな力が使えるようになります。『DQVIII』から『DQX』におけるスキルシステムからさらに自由度を高めたような作りとなっており、パネルをまんべんなく解放して様々なシチュエーションに対応させたり、一直線に奥の方のスキルを解放させ序盤から強いスキルを使いまくる、といったスタイルを選ぶことができます。『DQXI』では中盤以降まで開放されないスキルリセットも『DQXIS』では序盤のかなり早い段階で可能になるので、様々なスタイルを試せるのはいい変更点です。

シリーズ伝統のターン制コマンドバトルである戦闘のバランスは易しめ。新たなフィールドに降り立った際に、「知らないモンスターがいるからとりあえず戦っておこう。」をなんとなく繰り返していくだけで、知らないうちにレベルが上がっていた。という印象です。ボス戦前にレベル上げを強要されるということはほぼありません。戦闘は4人PTで行いますが、戦闘に参加しないキャラにも経験値が入るのはありがたい作りです。また、3Dモードでは戦闘スピードを3段階から選べるようになっているのも、戦闘の敷居を下げている点です。スピードを最速にしておくと、倍速に近い状態で戦闘を行えます。おかげで超スピードで戦闘が終わり、「ついでに隣にいるやつも倒しておくか」となるので、結果としてサクサクレベルが上がります。

大作RPGにありがちな「プレイの間隔が開いてしまって、次に何をしていいのかわからない」という状況もしっかりサポートしてくれます。プレイ開始時に毎回、それまでの進行をあらすじとして紹介してくれるので、プレイ期間が空いてしまってもすぐに復帰しやすい作りになっています。進捗に合わせて細かくあらすじを教えてくれるので、開発のテキスト量としては大変なのかもしれませんが、一度何をすればいいかわからなくなってしまったRPGを再開する際の心理的労力というものは非常に高いので、この手のRPGには標準搭載してくれるとありがたいです。

過去作との違いに関してもいくつか。今作は過去作と比べると武器・防具屋をあまり利用しない人が多いでしょう。理由は「ふしぎな鍛冶」の存在です。これはオンラインゲームである『DQX』にあった「職人」のシステムを『DQXI』用に改良したもので、主人公たちが道中手に入れる鉄鉱石などの素材を使い、武器・防具・アクセサリといった装備品をクラフトするシステムです。自身でクラフトしたものはクオリティによって+1~+3まで強化されるので、基本的にこれらを装備しているほうが強くなれます。ドラクエシリーズのワクワクの中には「新たな街で武器屋に行き、強い武器を購入」といったものがありましたが、今作では「新たな街で手に入る装備レシピで強い武器を作成」に変化していて新鮮な気分を味わえることでしょう。ちなみに、購入した装備品そのものを打ち直してクオリティを上げる方法もあるので、お店での購入が全く無いわけではありません。

少し残念な違いについてもひとつ。3DS版の『DQXI』では、歴代ドラゴンクエストシリーズの世界を冒険する「ヨッチ村」というサブイベント用のエリアがありました。ここでは過去作世界につながる「冒険の書」が置いてあり、それぞれの冒険の書の中に入り込んで、おかしくなってしまった世界を元通りにする。というイベントが遊べます。『DQI』の世界に入り込むと主人公パーティ含めて初代FC風に、『DQIII』の世界はSFCのリメイク版のグラフィックにと、2Dで作られていた過去作の世界に入り込むと、絵柄までしっかり切り替わるので、過去作プレイ済みの人はニヤリとできるポイントでした。『DQXIS』でもこのヨッチ村のイベントを楽しむことができるのですが、全ての冒険の書の中の世界のグラフィックが、今作の2Dモードのものに統一されています。ドラクエシリーズの歴史を感じるこだわりが楽しめた部分な上に、3DS版ではできていたことなので、できれば『DQXIS』でも同じように作ってほしかったポイントです。

PCゲームとしての挙動

そして、気になるPC版の挙動です。やはり気になるのはフレームレートではないでしょうか。家庭用機版と比べると高いフレームレートを維持してプレイすることが可能です。スイッチ版とPlayStation 4版が30fps固定、PS4Proで60fps固定なのに対し、PC版は30~144・または無制限から選択可能となっています。ただし、Ryzen7 3700X+RTX3070という組み合わせで比較的オブジェクトの少なそうな砂漠地帯でも平均133fps程のフレームレートでしたので、144fps以上の項目を使えるプレイヤーはごく一部、という感じです。RPGなので60fps以上は必要無いだろう、と言われればその通りですが。

3Dグラフィックスを調整できるオプションも備わっています。ただ、全てを最低ランクに落としてもそれほどフレームレートの上昇を感じられませんでした。「スペックが低めのマシンだけどどうしても『DQXIS』を遊びたい!」という時の最後の手段、といったところでしょうか。かなりグラフィックが荒くなるのでオススメはしませんが……。

ここで『DQXI』と『DQXIS』の画質の違いについて言及しておく必要もあるかもしれません。『DQXIS』はグラフィック部分をすこし乱暴に説明してしまえば「スイッチでPS4版準拠の3Dモードを動かすために、背景のモデルなどを簡素化させたりといった変更を行っている」作品です。したがって、今回発売となったPS4、Xbox One、PC版も、スイッチ版と同様のモデルの簡易処理が行われています。スイッチ版ではさらにテクスチャ解像度を落としたり、フレームレートを30fps固定にしたりと、言ってしまえば「軽くするための」処理がいくつかされています。PC版に関してはモデルこそスイッチ版と同様ですが、テクスチャの解像度を再び上げたりといった処理や、前述の高いフレームレートを維持できる点に加え、モニターが対応していれば4k解像度でのプレイも可能になっているので、そこまで気になることはありませんでした。このあたりに関しては、携帯でき、ベッドで寝転びながら遊べるスイッチ版にするか、リッチなグラフィックで遊べる他機種版か、という選択肢がギリギリ成立しているかな…というところです。

また、これはごく一部の人かと思いますが、マウスとキーボードでのプレイにも対応しています。いわゆるFPSのスタイルで遊ぶことができ、WASDで移動、マウスでカメラ操作、決定ボタンとキャンセルボタンは左右クリック、Shiftとスペースにはダッシュとジャンプも設定されているので、3Dアクションゲームのような感覚でプレイ可能です。メニューのカーソル移動もWASDが使えるので、メニューを動かす時だけマウスを持つ右手をカーソルキーに持っていく、といった違和感のある操作方法もほぼ必要なく(※バトルの演出を「フリー移動モード」にしている場合に、コマンド入力にカーソルキーでの操作が必要となります。)、想像以上に自然に遊べてしまいます。あえて苦言を呈するとすれば、ダッシュする際にShiftを一度押しっぱなしにしないといけないので、一度押しでダッシュし続ける設定も欲しかったですが、総じて現代のPCゲームとしては十分なユーザビリティは有しています。

しかし、PC版を遊ぶにあたって気になってしまう点もいくつかありました。PC版ではデフォルトの決定ボタンがXbox系コントローラーで言うところのA、キャンセルボタンがBとなっています。ゲーム内では決定ボタンを入れ替えるオプションがあるので問題ないのですが、タイトル画面から冒険の書とよばれるセーブデータを選択する画面のうちはこのオプションが効きません。なので、タイトル画面→どちらのボタンを押してもセーブデータ選択画面に飛べる→決定ボタンだと思ってBを押す→タイトル画面に戻る……ということを繰り返しがちです。できればセーブデータ毎の設定ではなく、アプリケーション一括でのボタン変更ができるようにしてほしかったかな……と思いました。

さらにもう一つ、ソフトウェアを終了する際に関してです。冒険中にゲームを終了させたい時にはコマンドを開き、さくせん→ゲーム終了でソフトウェアが終了できます。しかし、タイトルから冒険の書選択画面の間では上記のメニューは存在しません。ではどうすればいいのか。Alt+F4です。嘘ではないです。公式ページの「よくある質問」ページにも書いてあります。一応、押した瞬間に即終了させられるわけではなく、Windowsそのままのウィンドウが現れ、終了しますか?と表示されるのですが、なんともワンパクな手法です。こう…もう少しスマートな終了方法は無かったのかな……?という気分に。このあたりは既にフランチャイズでも『DQB2』や『DQX』『ライバルズ』などでPC版経験がある以上、気をつけてしかるべきだったかもしれません。

まとめ

PC特有の挙動に関しては、経験の少なさか、わずかに気になる点はあるものの、それがゲーム自体を損なうようなことはなく、『DQXIS』は非常に高いレベルでまとまった作品です。毎回のプレイ開始時にこれまでのあらすじを流す機能など、長期間中断してもわかりやすく続きを遊べるため、『ドラゴンクエスト』未プレイのユーザーが初めて触るほかにも、海外RPGを中心にプレイするユーザーが久々のJRPGとして触るにも限りなくスタンダードで、最適な1本となっています。シリーズをプレイ済みの方も、過去作をオマージュしたストーリー展開や、ヨッチ村のイベントも豊富で、シリーズの集大成感を楽しめることうけあいです。

総評:★★★

良い点

・壮大なストーリーライン
・プレイ期間が開いた時のためのあらすじ機能
・違和感の無い鳥山明デザインキャラクターの3D化
・Anselによる撮影機能で余すところ無く世界を楽しめる

悪い点

・端々に感じる「PCへの移植」としての詰めの甘さ


《KADEN》

三度の飯とゲームが好き KADEN

1986年、横浜に生まれ落ちる。祖父が持っていたPC9800シリーズとFM-TOWNSによって目覚め、Dreamcast版タイピングオブザデッドに教育され、正月に購入したHalf-Life 2とBattlefield 2によって後戻りできなくなる。 最近はゲームにかこつけて料理の記事も上げたりする。

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