ゲームでプロの兵士に「リアル感」を持たせる動作とは?専門家が徹底実演解説する「銃器と装備、戦術戦技」【CEDEC2021】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ゲームでプロの兵士に「リアル感」を持たせる動作とは?専門家が徹底実演解説する「銃器と装備、戦術戦技」【CEDEC2021】

「銃器と装備、戦術戦技を専門家の視点から解説」セッションは銃器の取り扱いなどを解説する内容。銃口管理や装備の選定などの理論が語られた。

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ゲームでプロの兵士に「リアル感」を持たせる動作とは?専門家が徹底実演解説する「銃器と装備、戦術戦技」【CEDEC2021】
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2021年もオンライン開催となったゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」。今回オンラインで取材した「銃器と装備、戦術戦技を専門家の視点から解説」セッションは、その名の通り銃器の取り扱いや装備選定の考え方などを専門家の視点から解説する。ゲームに登場させる軍人などリアリティを持ちつつ生み出すには何に気を付ければ良いのかが語られたセッションをレポートします。


登壇者は田村装備開発の田村忠嗣氏と長田賢治氏、そしてRYU氏の3名。なお田村氏は元警察のRATS出身でカプコンの『バイオハザード ヴィレッジ』においてモーションキャプチャーを収録した実績を持つ人物です。


まず簡潔な銃の歴史解説からスタート。スライドに書かれた解説からでも、その歴史の長さを感じ取れる内容です。9世紀に中国で火薬が偶然発見されてから、モンゴルを通じてヨーロッパへ伝わると共に15世紀から19世紀の間に銃の発射機構が発達。19世紀に装薬と弾を一体化させたカートリッジの発明が起こり、それを取り入れることで20世紀までの間に現代までに続く銃器の原型が出来上がります。


銃器は簡単に別けて4種類。ハンドガン、ライフル、ショットガン、マシンガンです。


図にもあるように、多くのサブジャンルが存在し簡単には分類できないものもある

続いて個人装備の選定ということで、ここでは「ゲームにリアリティを持たせるためにはどうすれば?」という観点からの解説です。雨の日には傘を差したりレインコートを着るように、個人装備も目的や状況に応じて物を選定します。それを意識しなければ「何故こういうところで、この装備を使っているのだろう?」と違和感を感じてしまうそう。


単独行動では目的に沿った自分が最も使いやすい物を選べば問題ありません。一方で部隊行動においては目的に応じたものだけでなく、他の隊員との協調を乱さなく使いやすいものを選ぶ事が重要です。


それらは、暑い場所なのか寒い場所か、水場があるのか汚れるかなど、それら全てに対応できる絶対的に良い装備が存在するわけでなく、その場に応じた物を選ぶことがリアリティに繋がります。例えばカイデックスという樹脂を使ったホルスターは、拳銃を強く保持できる優れたものですが、暑い地域で使うと熱で変形して使えなくなってしまうこともあります。


つまり装備の素材や特性を理解し、場面に応じてそれぞれ細かな装備に変えるのがリアリティを生み出すことに繋がります(暑い場所なら熱で変形しないナイロン製ホルスターを、水に濡れるなら水分に影響されない樹脂製ホルスターを選ぶなど)。


樹脂製ホルスター
ベルトのバックルも樹脂製と金属製で耐久性や重さが異なる

次は「リアル感」です。内容としてはマズルコントロールにおける動きの説明ですが、銃の安全性に関わることで「ほとんどの映像で出来ているのが珍しい」と評します。ここが出来ていないとプロや少し勉強した人から見て、見苦しい映像になってしまいますが、逆に出来ていれば見映えする映像になるのではと続けます。スライドに書かれているローレディーなどは銃口の位置を示し、この5種類の意味を理解し使い分けることでリアリティを生み出すのに繋がります。


銃口を真下に向ける最も安全なローレディー(少しでも味方に銃口が重なってしまうと危険なため)
味方に銃口を向けないことが大切なので、移動する場合は銃口を真下か真上に向けて移動する。この状態はシューティングレディ
銃口に味方の身体を重ねないハイレディ
シューティングレディ→ハイレディ→シューティングレディの順番で移動した
危険な例として胸に銃を抱えるも銃口が味方に被らないほど上がりきっていない「なんちゃってハイレディ」に気を付ける
ローレディーで動くときは銃口が真下に向いていることが重要
90度真上か真下より少しでも銃が正面を向くようであれば全てコンバットレディ
銃を肩に構えている状態がシューティングレディ
タイトレディは銃を引きつけて構える方法
接近戦において銃身が先に見えてしまうと、待ち伏せた敵に先手を奪われてしまうことがある
銃の上げ下げが出来ない状態で引きつけて構えられれば接近した状態でも攻撃出来る
拳銃の構え方の一つアイソセレススタンス。正面で構えるこの姿勢はボディーアーマー全面で受けられるため広い場所の戦闘で向いている
斜めに構えるウィーバースタンス。しかしながら、する必要のない所で使ってしまうと滑稽に見えてしまう。
ウィーバースタンスは、斜めに身体を傾けやすく隠れて撃てることが利点だが、足運びがやりにくく脇が撃たれやすいことが弱み(実際に真似してみるとよく分かる)

またマズルコンシャスでは初級から上級まで3段階の意識が存在します。上級は先のマズルコントロールと矛盾するような話になってしまいますが、安全を意識しすぎて敵に倒されてしまうよりも「敵を倒すことが安全管理に繋がる」という考えに基づいています(これは初級+中級が出来て成り立つもの)。最後の特級は0.1秒の遅れを嫌う某特殊部隊が使うものであるため、田村氏自身は腕が上がってもやろうと思わないそうです。


マインドセットは図の通りですが、グリーンが「ブリーフィングなど安全な場所での状態」、イエローが「いつでも戦える状態」を表しています。また人間の反応速度は大体0.3秒で、訓練を重ねても短縮できるのが0.1秒という時間です。


その中で多くの映像作品やゲームなどで表現されてきた「3、2、1、GO!」で行動するダイナミックエントリー(敵が潜む部屋に突入して制圧すること)は、現実に不可能でゲームや映像のフィクションであるから成り立つと説明します。しかし、この戦術が実際に使われていないわけではなく、スピード(行動速度)・アグレッシブ(獰猛さ)・サプライズ(敵に気づかれていない状態)の要件が整っていればできます。


この中でのサプライズは、フラッシュバンなどのデストラクションデバイス(以下、DD)で無理やり作り出すことができますが、1~2秒の隙を作り出すぐらいです。人間の行動は認知→決断→行動のプロセスで動き、屋内にいる敵の認知と決断が終わっている状態なら最後の行動に移るだけですが、フラッシュバンによりプロセスにリセットをかけ認知にまで戻せれば勝機があります。


一方でDDを使い切ってしまった場合でも様々な対処法がありますが、全ては明かせないものの1つだけ語られました。それは相手に話しかけること。話しかけられ会話したことで相手のプロセスが認知にまで戻る隙が生まれ、相手が最初の一文字を喋ったときに入ってやっつける方法があるそうです。


次は部隊間の意思疎通です。声を出すことは相手にも聞こえてしまうため、突入が失敗してしまいます。またハンドサインは部隊で決めても良いですが、より緊迫している場合や敵まで数mという距離感ではハンドサインすら出来ない/やりたくない場合があります。


またA部隊とB部隊がいて、AがB宛てにプレストーク(この場で詳しく説明されなかったが、恐らく送信ボタンの音を使う信号など)を行ったとしても通じない場合があるため、新たにC部隊を置きCを中継してプレストークを音声化することでBと意思疎通を図る方法もあるようです。ほかにも行動から相手の意図を知る「言葉のいらない意思疎通」を実演しました。


「ガンロック」と喋ると敵にも伝わってしまうため、構えながら止まった状態がガンロックをしている合図となる
ここで彼が座ったのは一人で戦うのが嫌だから。それを理解して彼の背後に付く「ダブルガン」状態に推移した。

CQCの解説は図に説明されている通りですが、銃やナイフを持った状態での格闘となるため素手vs素手とは違うとのこと(残念ながら時間の関係でデモンストレーションは行われなかった)。CQBは近接戦闘の狭い場所で戦うために、プロと素人の差が埋まりやすく、前述の通り反応速度でしか違いがありません。そのため、細かな動きを洗練していかないと勝つことが出来ないというのが重要です。MOUTは市街地戦闘で、待ち伏せがより有利なことから難易度が高く、フィクションのように無傷で突破する事が無理であるとも加えます。


最後のスライドは、ここさえ抑えればリアリティが上がる部分を説明しました。5人の部隊員がいるとして「危険箇所を抑え切れる状況」なら、攻撃される可能性がある場所を5箇所までに抑えることでスムーズなプロっぽい動きに出来るそう。また「危険箇所を抑えきれない状況」は、攻撃される可能性がある場所が5箇所以上多くあると隠密や素早い行動するとリアリティが高まるとまとめました。


最後の質疑応答をピックアップすると、映画「ジョン・ウィック」で使われたCARシステムは個人戦の彼だから使えることや、2丁拳銃は否定するのでなく単純に火力が2倍なため練習を重ねれば強いと評価しますが田村氏の知っているなかで使いこなしている人がいないと語られました。


映像などで描写される兵士に「リアリティ」を持たせるための動きを、様々な形で実演した本セッション。言及された内容を思い返してみると、00年代後半から10年代前半まで旺盛を極めた欧米の現代戦ミリタリーFPSについて、フィクションと言えど何らかの形で指摘したかったようにも思えてきます。今でこそ欧米において現代戦ミリタリーFPSは旺盛だった当時と比較して下火になってしまいましたが、ジャンルは違えど何らかの形でプロの傭兵や兵士が登場する作品は参考になりそうです。

《G.Suzuki》
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