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暴力的なゲームをすると暴力的になる?プレイ時間を制限すれば問題解決?“ゲーム障害”認定を疑問視するオックスフォード大教授の論文を読み解く

「ゲーム障害」を疑問視するアンドリュー・シュビルスキー教授と、同教授が携わった研究論文をご紹介します。

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暴力的なゲームをすると暴力的になる?プレイ時間を制限すれば問題解決?“ゲーム障害”認定を疑問視するオックスフォード大教授の論文を読み解く
  • 暴力的なゲームをすると暴力的になる?プレイ時間を制限すれば問題解決?“ゲーム障害”認定を疑問視するオックスフォード大教授の論文を読み解く
  • 時期毎のプレイヤー数の移行出典
  • Oxford Internet Instituteプロフィールより
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  • 暴力的要素の存在を示すPEGIのロゴ
  • 暴力的ゲームと青年の攻撃性の関係を検証する仮説検定
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オックスフォード大学 アンドリュー・シュビルスキー教授

先日掲載した「ゲーム障害」の記事では、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」について取り上げ、記事中で条例制定の背景として、WHO(世界保健機関)が定義した「ゲーム障害(Gaming disorder)」があることをお伝えしました。前回の反響をうけ本稿では、その「ゲーム障害」を疑問視するアンドリュー・シュビルスキー教授と、同教授が携わった研究論文をご紹介します。

シュビルスキー教授は、英・オックスフォード大学に所属する「ビデオゲーム」や「人間の動機付け」などを主な研究対象としている実験心理学者であり、同大学の社会コンピューター科学を専門とした機関「Oxford Internet Institute (OII)」の調査ディレクターです。

昨年には、シュビルスキー教授がWHOに科学的証拠の提示を求めたが、満足な回答を得られなかったことを海外メディアが取り上げています。そして今年1月に、シュビルスキー教授と日本の政治家や専門家達とのオンライン対談が公開され、同教授は「アメリカでも財源は限られている」ことから「新しい疾病に対して、限られた資源(財源)を費やすに(値すると証明する)十分な証拠」が必要だと力説しました。

シュビルスキー教授は、「私は(ゲームに関係する)何百もの文献を読んできた」と語る一方で、ビデオゲームと人の関係に様々な観点から注目した研究論文を執筆している“ゲーム×人“分野の第一人者です。

今回は、そんなシュビルスキー教授が関わった“ゲームに関する研究論文”から4つ、ゲームの様々な側面に着目したものを紹介していきます。本稿もボリュームがあるので簡単に論文のポイントをまとめておきましょう。

本稿のポイント

  1. 英国内対象の研究では、暴力的なゲームと攻撃性に関連性は見つからなかった。

  2. 人がゲームをして攻撃的になるのは“ゲームが上手くなりたいから”かもしれない。

  3. 国際的研究では、ソーシャル要素があるゲームのプレイと幸福感の間に関係が見つかった。

  4. コロナ禍で世界中でマルチプレイをする人が増えたのは“人との交流を求めたから”かもしれない。

暴力的なゲームと攻撃性に関係はあるのか

最初に紹介する論文は、2019年2月13日に公開されたもので、「暴力的なゲームのプレイ時間と、青年の日常的な攻撃的行動の関係」に着目した調査研究を基にして書かれました。調査の対象となったのは、イギリスに住む14~15歳の青年1004人(男性:540、女性461、その他:3)で、プレイしたゲームの暴力性の有無を判断するにあたり、回答者のゲームプレイ頻度やそのタイトルを調査した上で、欧州ゲームレーティング「PEGI」と、北米ゲームレーティング「ESRB」を使い判断したとのことです。

また、攻撃性を測定するにあたり、青年本人には「挑発されたら手が出てしまう」などの質問に、「全く当てはまらない」から「とても当てはまる」までの5段階で、その保護者には、自分の子供の攻撃的行動について「他の子とよく喧嘩、またはいじめをしたりする」のような複数の質問に「当てはまらない」、「ある程度当てはまる」、「当てはまる」の3段階で尋ねました。

調査結果によると、青年達はゲームを1日あたり平均2時間プレイし、プレイされたゲーム合計1,596タイトルのうち、1,033タイトルが暴力的とレーティングされているものでした。男女別の割合で見ると、女性回答者の48.8%、男性回答者の68.0%が暴力的なゲームを過去1カ月の間にプレイしていたとのことです。

攻撃性については、“青年の自己評価“と“保護者による評価”に強い相関、つまり青年が自身を攻撃的だと思っている時、保護者も同様に評価する傾向が見つかったと言えます。これらをゲームの暴力性の有無と合わせて分析をすると、“暴力的ゲームと両者の評価に関連性は見つからなかった”という結果に至りました。

シュビルスキー教授は、考察として「ゲームに付随する一部の要素、“無力感”、“悪口”、“競争性”などがプレイヤーの怒りを煽らないとは言い切れない」と述べた一方で、「この研究結果を以ってしても、(一部の)親や専門家、政治家が“暴力的なゲームは攻撃性に繋がる”と信じ続けることは歴史が物語っている」と悲観しています。

暴力的ゲームの真偽に迫ったもう一つの研究

ちなみに、シュビルスキー教授が暴力的ゲームと攻撃性の関係を研究したのはこれが初めてではありません。2014年に公開された論文には、ビデオゲームが人に与える影響に関する実験的研究が複数掲載されており、そのうちの一つに「ゲームにおける暴力の動機付け」があります。

研究では、平均19.6歳の101人(男性:36 女性:65)を2グループに分け、片や“流血表現”や“死体の描写”などの暴力的表現がある通常の『Half-Life 2』、片や流血表現が無く、倒された相手が死体になる代わりに消失する健全Mod版『Half-Life 2』を遊ばせました。また、本実験では参加者全員にゲームのチュートリアルを事前に与え、操作やゲームメカニズムに慣れ親しませたとのことです。

ゲームプレイ後、参加者たちにアンケートを取ったところ、通常版グループと健全版グループ間の回答に目立った違いは見つかりませんでした。一方で、「ゲームを上手くプレイできなかった」と報告したプレイヤーたちには、「(ゲーム中に)攻撃的な感情が湧いた」と回答する傾向が見つかったとのことです。

当時のシュビルスキー教授はBBCのインタビューに対し、「プレイヤーが攻撃的になるのは、ゲームが暴力的かどうかではなく、思い通りにプレイできないと感じた時ではないか」として、「“ゲームが上手くなりたい”という欲求こそがキーポイントだったのでは」と見解を述べています。

プレイ時間が延びるほど幸福度が増すというデータも
《ケシノ》
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