Game*Sparkレビュー:『Horizon Forbidden West』―美しく、綿密に描き込まれた世界だからこそ浮かんでしまう暗部 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『Horizon Forbidden West』―美しく、綿密に描き込まれた世界だからこそ浮かんでしまう暗部

どこを切り取っても美しい世界、尊敬と愛に満ちた世界観の描き込み、旅情すら感じる素晴らしい作品は、良くも悪くも“ウェルメイド”。

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魅力的なキャラクターと平凡な物語

では、そんな美しい世界でどのような物語が展開されるのか、物語の導入は前述の通りだが、『Forbidden West』の物語は「仲間」という一貫したテーマが見られる。西部を舞台にした冒険で仲間が増えていき、アーロイは孤独な戦いではなく、集団として脅威に立ち向かう。また、その仲間は「拠点」に集結し、各々がそこで生活している。様々な民族が垣根を超えて同じ空間で同じ目的を志して暮らしている様子は、会話として楽しむことができる。メインクエストの合間に拠点へ戻ると、新たな仲間との関係、手に入れた情報の話が膨大なテキスト・ボイス量で用意されている。

このように、フロントを張るキャラクターたちは、『Zero Dawn』と比較して、強調されている印象を受けた。しっかりとしたバックボーンをメインクエストやサイドクエスト、膨大な量の会話で見せることで愛着が湧く。また、モーションアクターの名演か、キャラクターの細かな表情の描写も素晴らしい。映画「マトリックス」シリーズでトリニティ役を演じたキャリー=アン・モスさんも、ティルダ役のアクターとして参加しているほか、アーロイ役の高垣彩陽氏や、サイレンス役の堀内賢雄氏をはじめ、声優陣の演技も見事だ。

しかしながら、物語の展開は平凡で驚きの少ないものであった。前作は『Zero Dawn』への全容へ迫ると同時に、アーロイの出生の秘密が明かされる一定の驚きと、世界の謎を明かす世界観設定の核心を覗く内容であった。一方、今作はゼニスの企み(=地球の生態系のリセット)を阻止するという至ってシンプルなものでありながら、ゼニスの面々は登場シーンが少なく、彼らの動機や1000年以上生き続けているという設定も説得力に欠ける。

特異性という意味では、ゼニスとその関連するオブジェクトのデザインが良い意味で浮いている表現が見られるが、いかんせんゼニスについての掘り下げは足りていないため、ただの浮いた存在で、それが意図したデザインかは不明瞭だ。特に、やたら好戦的なエリックについては、取って付けたようなヴィランでしかない。せっかく1000年の時を経て登場したのだから、もっと見せ場や掘り下げが見たかった。前作では影の薄かったメインキャラクターにしっかりとスポットを当てたばかりに、物語が薄くなってしまった印象を受ける。

アクションと世界の齟齬

本作のアクションの主軸は、機械獣を「狩る」ことにある。槍での近接攻撃をはじめ、弓やトラップキャスター、スリングを用いたアクションが用意されている。状況によっては罠の使用も便利だ。これらのリソースを用いてする「狩り」はとても楽しい。

「狩り」の選択肢は無限とも言えるほど存在する。手に取る武器をはじめ、選択する矢弾、どの順番で倒していくかなど、全ての選択がプレイヤーに委ねられる。最善策が提示されるわけでなく、強大な機械を前に手探りで試行錯誤していく必要があり、プレイヤーの能動性が強く求められるデザインはとても楽しいものだ。E3 2015で公開された『Zero Dawn』のサンダージョーとの戦いに興奮したことを今でもよく覚えている。

『Zero Dawn』の地続きであるアクションだが、近接攻撃には多少のテコ入れがなされている。近接武器に蓄積したエネルギーを敵に与えると、敵の部位が青く光り、それを弓矢で射抜けば大きなダメージを期待できる「レゾネーターブラスト」が追加されたことで、近接武器を使うメリットが多少得られるようになった。その他、一部属性が追加されたほか、武器種が増えたが、狩りの本質は変わっていない。前作のプレイヤーからすると物足りなさを感じるが、裏を返せば、アクション部分は『Zero Dawn』の時点で完成されていたということだろう。

だが、オープンワールドにおける「戦い」が上手く作用しないこともある。筆者は『Zero Dawn』ではアクションとオープンワールドの相性の悪さに、失望とも言える懸念を抱いていた。まず出てくるのが「チェックポイント問題」だ。オープンワールドゲームに限らず、ある程度広い空間に多くの敵と一緒に放り出されるシチュエーションでは、一つの戦いの中でチェックポイントを設定することが難しい。前述した通り、プレイヤーの数だけ選択肢があるからだ。

するとやはり、フォーカスでマークを付けて順番を考え、雑魚の巡回を待ってサイレントストライク(ステルスキル)をし、ようやく一対一で大型の機械と対峙するもあっけなく破れ、フォーカスで雑魚をマークするところからもう一度。という場面が何度もあった。いつになったらこの問題を解決できるのだろうか。

また、『Zero Dawn』に続き、アーロイのモーションは非常に人間らしい動きをする。恐らくモーションキャプチャーを駆使し、人間の動きをゲームに落とし込んではいると思われるが、リアルを追求することでストレスを感じる部分もある。アスレチックアクションを求められる部分では、極めて狭い場所でダッシュ・ダッシュジャンプ・飛びつきといった複数のアクションを使い分ける必要がある。ここで起こるのが切り返しだ。アーロイを右へ移動させながら左スティックを切り返すと、アーロイが一度踏ん張るモーションをしてから左へ移動する。人間らしい動作ではあるが、シビアな場所でのアスレチックではそれが枷になることも少なくない。

筆者は『FINAL FANTASY XV』でも同じ印象を受けたが、キャラクターの動きをリアルにすることで、プレイフィールが損なわれる現象は、疑問に思う。リアルにすべき部分とそうでない部分の塩梅は、考えていく必要があるだろう。

アスレチックの創りも、そこまで良いとは言えない。登れる場所はフォーカスでハイライト表示されるが、そこへ飛び移ることができるかどうかは曖昧だ。飛べるかと思ったら上手く飛びつかなかったり、逆にそんな高い場所いけるんかい!というシーンも多々あった。

特にメインクエストで訪れる試験場の地下水場はわかりにくく、『アンチャーテッド』シリーズのように多くのモーションでスルスルと思い通りの場所へ移動する楽しさはあまり感じられなかった。また、水中でのアクションについては、メインストーリーの演出としての機能はあれど、ゲームプレイの拡張には至らず、アスレチックのひとつのような印象だ。

ただ、オープンワールドながら登れる場所は多いため、一昔前の同ジャンルにありがちな、ここを乗り越えればすぐ目的地なのに回り込むことが強要されるような場面が少ないのは良い。シールドウィング(パラセール)の導入によって、アクションに立体感を出すと同時に高い場所に登るリスクを減らしたのも評価すべき点だ。それを活かすためか、高い山の頂きに登るようなサイドクエストも用意されている。シールドウィングを使ってくれと言わんばかりの雪山からの降下は、雲をかき分け風を感じる迫力があった。

物足りないPS5への対応

また、PS5への対応にも触れておきたい。高速SSDを用いた高速なローディングはストレスレスで、リトライやファストトラベルも快適だ。恐らくロードが早すぎるためか、ロード画面のTIPSをよく読むためのオプションも用意されているほどだ。また、3Dオーディオの恩恵か、フォーカスを通じた無線では、脳に直接語りかけてくるような体験で、背筋がゾクゾクした。

ただ残念な点がひとつある。DualSenseの活用だ。まず、アダプティブトリガー。これはR2/L2ボタンに仕込まれており、ボタンの押し込む感覚が変化するというもの。ハッキリ言って物足りない。トリガーの強弱は設定で変更でき、デフォルトでは最大値に設定されているが、これでは物足りない。同様に、ハプティックフィードバックも物足りない。カットシーンの振動などは迫力があって心地よいが、実際のプレイアブルシーンではその恩恵を感じにくい。『Returnal』や『Call of Duty: Black Ops Cold War』のように、初見で驚かせてくれるほどの体験が求められる。SIE傘下のタイトルならなおさらだ。

SIEといえば、本作はプロモーションにも大きな力が入れられている。イタリア・フィレンツェではアーロイのスタチューが設置され、その他多くの国々で機械獣の展示などが行われた(この中に日本がないことが残念だ)。また、環境再生活動への取り組みも抜かりない。

アメリカではプレイヤーがトロフィー「Reached the Daun(恐れの谷到着)」を取得する度に最大288,000本の植樹を行うほか、カナダでは本作1本の売り上げにつき1ドル、最大10万カナダドルが海岸再生活動に寄付される。枯れゆく地球を救うアーロイの旅とリンクし、現実の問題と向き合い拡散する姿勢は、AAAタイトルならではだ。

オープンワールドというジャンルにおける、完成形のひとつ

メインストーリーと各拠点に用意されたサイド/サブクエスト、各地に用意されたコレクタブルアイテムや、拠点制圧(逆賊の野営地)など、オープンワールドの文法としては、使い古されたものであることは否めず、革新性に乏しい。

ウィッチャー3 ワイルドハント』の2015年から、『Ghost of Tsushima』の2020年に至るまで、オープンワールドの完成形と言えるタイトルは数多く、本作もそれらと肩を並べることは明白ではあるが、さらなるオープンワールドの形を見せて欲しかったというのが正直なところである。ハードスペックの向上に伴う開発費高騰によって、AAAタイトルが冒険をしにくいという点は留意すべきではあるが、我々はあと何年「ウェルメイドなオープンワールド」という言葉を使えば良いのだろう。

否定的な見方もしたが、本作の物語や世界観設定は素晴らしく、それを驚異的なグラフィックスとストーリーテリングでゲームへ落とし込んだことは大いに評価すべきである。随所に感じる旅情は現実のそれと極めて近いレベルにあり、どこまでもあてもなく歩き続けてしまう。

前作から地続きの「狩り」を主軸としたアクションはプレイヤーの試行錯誤と冷静な立ち回りを求められ、プレイの度に新たな発見と緊張がある。革新性に乏しくも、ウェルメイドであることは間違いなく、プレイステーションユーザーは前作と合わせてプレイすべき作品だ。また、SIEが近年取り組んでいる他プラットフォーム(PC)への展開や、PSVR2向けに発表された『Horizon Call of the Mountain』など、Guerrillaの今後にも期待したい。

Horizon Forbidden West』は、PS5/PS4向けに発売中だ。


総評:★★★

良い点
とにかく美しいグラフィック
世界観設定をビジュアル的に、物語的に伝える姿勢
前作よりもスポットが当てられたメインキャラクターたち
「狩り」を主軸としたここにしかないアクション
オープンワールドの文法の中で、ウェルメイドな仕上がり
悪い点
平凡で驚きに欠けるメインストーリー
進化に乏しいアクション
不明瞭なアスレチック
物足りないPS5(DualSense)への対応
革新性の欠如




《Okano》
Okano

「最高の妥協点で会おう」 Okano

東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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