続編登場予定の麻薬密売シム『Drug Dealer Simulator』は、現実の「ドラッグ汚染」を細部まで再現していた!【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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続編登場予定の麻薬密売シム『Drug Dealer Simulator』は、現実の「ドラッグ汚染」を細部まで再現していた!【特集】

Steamで配信されている「麻薬密売ゲー」こと『Drug Dealer Simulator』は、今年中に続編のリリースを予定しています。

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続編登場予定の麻薬密売シム『Drug Dealer Simulator』は、現実の「ドラッグ汚染」を細部まで再現していた!【特集】
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Steamで配信されている「麻薬密売ゲー」こと『Drug Dealer Simulator』は、今年中に続編のリリースを予定しています。

この『Drug Dealer Simulator』はオープンワールド型の一人称視点シムで、マリファナやアンフェタミン、MDMA等の違法薬物を市民に密売して一旗揚げる……という、記事を書くだけで抗議されてしまいそうな内容です。その続編『Drug Dealer Simulator 2』は、よりリアルな犯罪ライフを楽しめるとのこと。

そして、『2』の内容を知れば知るほど、これが実際に起こっている現象に即しているということも理解できます。

今回はインドネシアを例に挙げ、「新興国と薬物」という内容で記事を書いていきたいと思います。

インドネシア大統領の「強硬姿勢」

インドネシアの現在の大統領はジョコ・ウィドド氏です。

インドネシア・ジャワ島中部の古都スラカルタ出身のこの細身の人物は、早口の多いインドネシア人にしては珍しくゆっくりした口調で話します。見た目は屋台でも経営していそうな「ごく普通のおじさん」。言葉の最後を間伸びさせる癖があるため(「ini,adalah」が「イニ~、アダラ~」という具合になることが多い)、どんなことを話してもあまり迫力がなかったりします。

ところがそんなジョコ大統領は、麻薬犯罪に対しては極めて強硬な姿勢を見せていることで知られています。

2015年、ジョコ大統領はスラカルタに近いジョグジャカルタにあるガジャマダ大学(ジョコ大統領の出身校)で催された講演で、このように発言しました。

「麻薬の密売人に恩赦は与えない。薬事犯への判決に関して、大統領が司法に介入することはない」

その上でジョコ氏は、違法薬物を大量に密輸・密売した者に対して容赦のない措置をするように命じています。2017年には「抵抗する密売人を射殺することもやむなし」とまで発言しました。

そして上述の2015年の講演が行われていた最中、スマトラ島北部パダンではとある麻薬密輸犯の裁判が行われていました。この人物は仮にA被告としますが、何と70代の日本人です。そしてこのA氏には、検察求刑16年を裁判所が覆す形で終身刑が言い渡されました。

日本国外では、薬物犯罪は殺人に次ぐ重罪です。

しかし、それでも薬物犯罪が後を絶たない理由はその常習性、そして「常習者が大金を払う」からに他なりません。

かつてのバリ島は『Drug Dealer Simulator』そのもの!

ジョコ大統領以前のインドネシア、特にバリ島では麻薬が横行していました。それはまさに『Drug Dealer Simulator』そのものの光景です。

筆者はユドヨノ前大統領時代からバリ島を頻繁に訪れていました。夜のクタやレギャンを歩くと、どこからか謎の男がやって来て「葉っぱ欲しいの?(日本語)」と声をかけてきます。「葉っぱ」とは、もちろんマリファナです。

中にはゲストハウスの通りの前に露店を出して、そこでマジックマッシュルーム入りのシェイクを1杯20ドルで売っている奴もいます。そう、20ドルです。この業界では、現地通貨ルピアよりも米ドルが好まれます。

『Drug Dealer Simulator 2』も、米ドルと現地通貨の二重貨幣システムが実装されます。このタイトルの舞台は東南アジアではなくカリブ海のとある島ですが、地域はどうあれ新興国では「現地通貨は米ドルの補助通貨扱い」というケースがよくあります。ドルペッグ制を実施している国は尚更です。

そのような状況下で働いている警官は、容赦というものを知りません。麻薬所持者が「ちょっ、ちょっと待ってくれ! これには理由があるんだ!」と言っても、拳銃を突き付けて「ホールドアップ!」と怒鳴るのみ。日本の警官のように「お兄さん、ちょっと署でお話ししようか」と優しく語りかけてくれることは、まずありません。

『Drug Dealer Simulator』も、警官は鬼のような連中でした。外出禁止時刻に市民を見つけたらテーザー片手に突進し、実に変態的な操作で麻薬取引の痕跡を見つけて家宅捜索。『2』はそれに輪をかけて、まさに獄卒の如き人々になっているのでしょうか。

クスリのメッカ

2017年、バリ島デンパサールの有名クラブ「アカサカ」に地元警察の捜査の手が入りました。

この家宅捜査で、アカサカからなんと1万9,000錠ものMDMAが発見されました。もっとも、アカサカはそれ以前から「クスリのメッカ」ということが日本人の間でも知られていて、日系旅行会社の添乗員はツアー客にアカサカへ行かないよう呼びかけていたほど。その時ちょうどバリ島にいた筆者も、特に驚きませんでした。

いずれにせよ、ジョコ大統領の薬物犯罪に対する姿勢は容赦というものがありません。

この人物の治世で、バリ島のマリファナ売りやマジックマッシュルームシェイクの露店は消えました。もっともそれは「地下に隠れただけ」とも言えますが、建物の外で麻薬取引を見かけることがなくなったのは事実です。

警察官もお客さん!

去年10月、インドネシア・マランのサッカースタジアムで群衆事故が発生したことは日本でも大きく報道されました。

これは東ジャワ州の州警察本部長が入れ替わるほどの大騒動だったのですが、この後任の警察本部長は何と就任4日目に、麻薬に関わる容疑で逮捕されました。

麻薬は人脈と共に流れるもので、それはまるで毛細血管に行き渡る血液のようです。この警察本部長逮捕をきっかけに、多くの警察官が摘発されています。誰が顧客で誰がディーラーかの区別がはっきりしないのも麻薬ネットワークの特徴です。

それまで顧客に過ぎなかった人物がディーラーの手伝いを始める、という流れは初代『Drug Dealer Simulator』でも表現されていました。そうした麻薬のやり取りは、巨額の金のやり取りと同義。不自然な銀行入金を当局に掴まれないよう、現金ではなく暗号通貨を使用するという部分までゲームで体験できます。

常に霧の向こう側で物事が実施され、その全容は誰も把握していない……それが「麻薬経済」の実像。進化した『Drug Dealer Simulator』がどこまで麻薬ネットワークを再現しているのか、今後も要注目です!


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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