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E3 2023の中止が正式発表…相次ぐ大手の出展見送りも影響か

大手パブリッシャーが出展しないことを続々表明していました。これで2年連続で中止されることになります。

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E3 2023の中止が正式発表…相次ぐ大手の出展見送りも影響か
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世界最大のゲームショウ「E3」を主催するReedPopとESA(Entertainment Software Association)は、E3 2023を中止すると発表しました。

◆2019年以来のオフライン開催も予定されていたが……

毎年多くのゲームメーカーが出展し、その新作を発表する場となっているE3。2023年は現地時間で6月の第2週に、コロナ禍以降初めてオフラインでも開催することがアナウンスされていました。


2020年にコロナ禍で中止になって以降、これまでのような存在感を示すことができず、2021年はオンラインのみで開催したものの、2022年は当初オンラインとオフラインの同時開催を発表していましたが、オミクロン株の流行を理由にオフライン開催を断念し、そのオンライン開催も中止に追い込まれています。


2022年の中止発表の際には「2023年には完全復活を」と宣言しており、全リソースを2023年のイベントに集中させるとし、「PAX」や「Star Wars Celebration」「New York Comic Con」など大規模なサブカルイベントの運営経験が豊富なReedPopと提携し共同で開催するとされていました。

しかし、任天堂やセガといった大手メーカーが続々不参加を表明しており、その実施すら危ぶまれる状況になっていましたが、3月31日に正式にオンライン・オフラインともに中止することが発表されました。


IGNの報道によると、公式発表にあわせてESAの会員向けにもメールで中止の知らせが届いており、E3が「愛されるイベントとブランドであることに変わりはない」と前置きしながらも、2023年のE3については「我々の業界の規模、力、影響を示すような形で実施するために必要な持続的な関心を集めることができなかった」と記されているとのことです。また、「将来のE3のため」ReedPopとの連携は続けていく方針も示されています。


◆ゲームの夏の風物詩の今後はどうなる……?

コロナ禍以前は世界で最も大きなゲーム業界の発表の場となっていたE3ですが、開催を発表してからの2年連続の中止ということで、イベントそのものの影響力・求心力の低下は避けられません。このような事態になっているのはいくつか要因があると考えられますが、ざっくりまとめてみると……

  1. コロナ禍で軒並みオフラインイベントが中止になったタイミングで有効な代替案を提案できなかった一方、ジェフ・キーリー氏が立ち上げたオンラインイベント「Summer Game Fest」にその役割をとってかわられてしまった。

  2. 各メーカーが自社で行うイベントでも十分に宣伝効果を獲得できるにいたった。(=メディアの変化

  3. 元々流通向けの業界イベントだったが、そもそもデジタルディストリビューションがメインになり商談会としての役割が希薄化、産業構造の変化に対応できなかった。(元々ユーザー向けとビジネス向けの両側面をもっているgamescomや東京ゲームショウとの違い)

この三点が挙げられるでしょう。

■Summer Game Festの凄さ

今年は現地時間6月8日に開催予定のSummer Game Festですが、昨年もまさにE3を代替するような発表が相次ぎ、最大同時視聴者数は350万人を超えるなど、完全にオフラインイベントを凌駕する成果をあげています。


もちろんオフラインイベントの良さはあれど、費用対効果を考えれば圧倒的に効率はいいでしょうし、何よりコロナ禍を経て、オンラインで情報を受容し、直後に体験版も遊べるならわざわざ大混雑するイベントにいかなくてもいい……というようなユーザーの変化も大きいように思います。

ちなみにキーリー氏が登壇するオープニングイベントが目玉ではありますが、前後に開催される各社の自社イベントやメディア主催のオンラインイベントなども全てSummer Game Festの一部に組み込まれており、こうした座組みの作り方のうまさとキーリー氏のトップメーカー・クリエイターを集結させられるネットワークが相まって、瞬く間に世界中が注目するイベントに成長しました。今年も正式アナウンスはありませんが、昨年同様の流れになるようです。(一方で時差のある日本のメディア連日連夜発表が続いて死にかけるという別の話もありますが……。)

■自社イベントもコロナ禍で益々影響力が増した

2020年がターニングポイントにも思えますが、コロナ禍以前の2019年にもSIEが出展を取りやめるなど、E3の求心力は徐々に低下していたともいえます。また、コロナ禍で各社が自社の配信イベントなどを強化し、一定の成果をあげていったことで、各メーカーのE3離れが加速したといっても過言ではありません。

10年以上前であれば、なかなか大がかりな配信やイベントを自社でやっても集客するのは難しかったかもしれませんし、ユーザー側もせっかくなら現地で体験したり、クリエイターの話を聞きたかったりという向きは強かったかもしれません。しかし、配信のハードルもドンドン下がり、ユーザーの視聴環境・体験もよくなり、そして何よりオンラインでしか情報を得られない異常事態が数年続いたことで、大きく環境は変わりました。

■流通向けの見本市という本義が薄れていく

そもそもE3は流通向けの業界イベントがルーツです。ユーザーから見ればゲームの最新情報が発表される場、というイメージが強いですが、それは流通関係者への発表をメディアが記事にしていたことに起因します。そもそもかつてのゲームの販売は小売店がゲームを仕入れてパッケージを販売するという流れが主流であり、大きくデジタル版の比率が引き上がったのもこの数年のことです。

このデジタル版の普及が何を意味するかといえば、基本の流通の仕組みをすっ飛ばし、ユーザーはプラットフォーマーから直接購入する、メーカーはデジタルデータを各プラットフォームに納品して販売するだけになり、小売にたくさん仕入れてもらうためにゲームを細かく説明したり、今後の事業方針を詳らかにしたりする必要はありません。より分かりやすくユーザーに対してゲームを訴求し、そのままの流れで体験版を遊んでもらうなり、すぐに販売をするなりすればいいというわけです。

■このままE3は役目を終えるのか…?

E3が2年連続中止になった理由をまとめてきましたが、はっきりいえば元の形でE3を再び開催するのはかなり難しい状況にあると筆者は見ています。代替となるイベントはかなりの規模に成長し、多くのメーカーも自社での展開を中心に考えているとなると、再びE3がハブになるためには、よほど付加価値のある提案か、新しい仕掛けがない限り、求心力を取り戻せないのではないでしょうか。

E3 2019の会場写真

一方、業界関係者が一同に介するイベントの価値というのは決してなくなりませんし、業界の末席にいる人間としてもこのままその役目を終えてしまうというのはもの悲しいものがあります。しかしながら、この夏も多くの自社イベントがロサンゼルスで開催されるので、E3が担っていたネットワーキング的な機能すらそれぞれが果たすのかもしれませんし、Summer Game Festがオフラインでも存在感を高めて名実ともにE3の代替イベントとして成長していくのかもしれません。2024年以降のE3を諦めないという運営のコメントもあるので、今後の動きにも期待したいところです。

※ UPDATE(2023/03/31 16:45):ゲームの夏の風物詩の今後はどうなる……?以降を大幅に加筆しました。

《宮崎 紘輔》

タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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