
近年、国内外を問わず制作されている新しいゲームジャンル「実写アドベンチャーゲーム(Full Motion Video:FMV)」。
そんなジャンルの中でも人気を博したのが、New One Studioが開発した『盛世天下:女帝への道』シリーズです。

本作では古代中国の女官となり、さまざまな陰謀をくぐり抜けて女帝となることを目指します。もちろん、その道筋は一筋縄ではいきません。
ふとした選択であまりにもあっさりと命を落とすこともあるでしょう。しかし無数の死に様を乗り越え(時にはその死に様に苦笑しながら)、宮廷の頂点を目指すことが本シリーズの目的なのです。
今回、Game*Sparkではそんな『盛世天下:女帝への道』シリーズのプロデューサーを担当した、New One StudioのDemi氏にインタビューを実施しました。

バッドエンドは「選択に価値を与える」ために必然的に生まれたもの
――質問にお答えいただく方のお名前と、本作における役職を教えてください。
Demi氏:New One StudioのDemiと申します。『盛世天下:女帝への道』シリーズのプロデューサーを務めております。このたび、日本のユーザーの皆様とお話しできる機会をいただき、大変光栄に思っております。
――本シリーズの見どころはどこですか?
Demi氏:『盛世天下:女帝への道』は、中国の伝統文化をモチーフとし、架空の古代宮廷を舞台に実写で撮影されたインタラクティブドラマ作品です。本作の最大の魅力は、3つのキーワードで表現できます。
1つ目は「選択と結果」です。プレイヤーは決められた物語をただ観るのではなく、主人公の視点に立ち、自らの決断によって運命を切り拓いていきます。すべての選択が、あなただけの物語を形作っていきます。
2つ目は「人間性の描写」です。あらゆるキャラクターやストーリーは、「その人物が何者で、どのような境遇にあり、何を大切にし、何によって変化するのか」を起点に設計されています。作中に登場するキャラクターは単なるストーリー進行の道具ではなく、それぞれが独自の感情と立場を持った存在として描かれています。
3つ目は「実写ならではのクオリティと表現の密度」です。衣装、礼儀作法、美術セットから時代考証の細部に至るまで、画面を構成するすべての要素が「物語を語る」役割を果たせるよう作り込んでいます。
プレイヤーにとっての最大の醍醐味は、「ひとつのドラマを鑑賞しながら、同時にそのドラマの世界を生きている」かのような、唯一無二の没入体験にあります。

――開発を手がけたNew One Studioはフルモーションビデオに特化したクリエイティブチームとのことですが、どのような経歴の人々が集っているのでしょうか。
Demi氏:New One Studioは、インタラクティブドラマに特化したインディーチームです。これこそが、私たちが「ドラマ感」と「ゲームとしての体験」を融合できている理由でもあります。
具体的には、チーム内には映画・ドラマ業界出身の脚本家、監督、撮影監督、美術、衣装・メイク担当がいる一方で、長年にわたりゲームのストーリー設計やシステムデザイン、技術開発に携わってきたメンバーも在籍しています。これには、本作のために独自の専用エディターを構築したエンジニアチームも含まれます。ちなみに、本作『盛世天下:女帝への道』の監督を務めた知竹さんも、これまで数々の高い評価を得てきた中国時代劇ドラマを手がけてきた実績があります。
私たちNew One Studioの社内における自己定義は、実はとてもシンプルなものです。「常に自らを『新人(New One)』と位置づけ、作品を重ねるごとに前作を超える挑戦を続けていきたい」――そう考えています。
インタラクティブドラマは、今まさにその定義が作られつつある新しいジャンルです。私たちはこの立場から、従来の映像表現が積み重ねてきた経験とノウハウをリスペクトしつつ、「映像×インタラクティブ」の可能性と限界をこれからも切り拓いていきたいと思っています。

――本作には大掛かりな舞台芸術や群衆シーンも数多くありますが、全体の撮影期間や規模はどれくらいでしたか。
Demi氏:シリーズ全体で見ると、『盛世天下:女帝への道』は初期の企画・開発段階から正式リリースまで約3年を費やし、100日以上の実写撮影を経て、作品の総尺は約1,500分に達します。このジャンルの平均的な制作周期を遥かに超える規模です。
今回の『盛世天下:女帝への道II』は『盛世天下:女帝への道I』と比べて撮影規模がさらに拡大し、新たに撮影された実写映像は約1,000分、全32話に分割され、100以上の分岐ルートが存在するなど、前作の倍近いボリュームとなりました。
制作体制においても、核心となるメインスタッフだけでなく、朝廷での議論、宮廷儀式、大規模なエキストラシーンの撮影ごとに、美術、衣装・メイク、照明、カメラ、現場監督、そして膨大な数のエキストラが連携しました。
さらに映像編集、音響、CG、ローカライズ、プログラム開発など、多くの専門チームが長期にわたり本作に携わっており、まさに映画・大型ドラマ級のクオリティと体制で作り上げられています。

――チャート部分はアドベンチャーゲームの中でもわかりやすく、操作しやすい印象を受けました。これはバッドエンディングが多数ある上でのリプレイ性を高める配慮なのでしょうか。
Demi氏:仰る通りです。リプレイ性は、企画の初期段階から考慮していた核心的な要素のひとつです。
理由はシンプル。インタラクティブドラマにおいては、「選ばなかった道」も「選んだ道」と同じくらい重要だからです。もしプレイヤーがキーとなる分岐点に手軽に戻って別の可能性を確かめられなければ、「選択の重み」そのものが薄れてしまいます。
そのため、分岐システムのデザインにおいて以下の点に注力しました。
クリアなチャート構造:プレイヤーが今どこにいて、他にどんな未解放のルートが残されているかを一目で把握できるようにしました。
過去の分岐点へのスキップ機能:最初からやり直しさせることなく、見たいところへすぐ戻れるようにしました。
ルート同士の「相関性」デザイン:それぞれの結末がお互いを引き立て合い、照らし合わせるような作りにしています。プレイヤーが新たなルートを探索するたびに、物語に対する新しい気づきや理解が得られる設計です。
インタラクティブドラマとは、体験を通じて「思い出」を生み出すコンテンツです。分岐システムの意義は、プレイヤー一人ひとりが自分だけの探索の足跡を作品の中に刻み込める点にあると考えています。

――本作はある意味で、「ソウルライク」に匹敵する「死にゲー」と言えるほどのバッドエンディングが多い印象です。これは、開発当初から意図されていたコンセプトなのでしょうか?
Demi氏:バッドエンディングの数自体は、初期の企画に書かれていた「KPI」ではありませんでした。ですが、「選択にはリアルな重みがなければならない」という理念は、企画の立ち上げ初日からブレることなく一貫しています。
もしあらゆる選択が最終的に同じハッピーエンドへと辿り着くのだとしたら、「選択」は単なる操作の形式に過ぎず、物語を語るための表現言語にはなり得ないと信じています。プレイヤーが引き込まれるのは、「この決断で取り返しのつかないことになるかもしれない」というリアルな緊張感があってこそです。
バッドエンドはプレイヤーを「罰する」ためではなく、「選択に価値を与える」ために必然的に生まれたものです。失敗したとしても「記憶に残る体験」となるよう、美術や演出、シナリオの細部までこだわり抜いています。
興味深いことに、日本のプレイヤーは「死亡率の高さ」に対する感度が非常に高いと感じています。実況やコメントでも「また死んだ!」「またBad Endだ」と話題にしてくださったり、コレクション感覚で様々な死に様に挑戦されている姿をよく見かけます。
これは本当に嬉しい発見でした。「選択の重み」という開発の意図がしっかり伝わり、独自の楽しさとして届いていることが実感できたからです。「すべての決断が、あなただけの物語を描いていきます」というプレイヤーの皆様へのお約束を、果たすことができました。

――ゲーム内からキャラクターに投票できるシステムがユニークだと感じたのですが、こちらは開発当初からあったアイデアでしょうか。
Demi氏:このシステムは、「どうすればプレイヤーが本当の意味でこの世界に飛び込めるか?」という問いから生まれました。
従来の映像作品だと、視聴者はどこまでいっても「見る側」ですよね。キャラを好きになっても、その気持ちを作品の中に残すことはできませんでした。
でもインタラクティブドラマなら、プレイヤーの想いでストーリーが変わるだけでなく、「自分の気持ちが、この世界にちゃんと届いている」と実感できるはず――そう考えたのが開発のきっかけです。
キャラクター投票システムは、この理念を具現化した機能のひとつです。これはNew One Studioが立ち上げ当初から追求してきた「プレイヤーの感情表現を作品の世界へと溶け込ませる」という設計思想を表しています。
私たちにとってこの機能は、単なる記録にとどまらず、プレイヤーそれぞれの「好み」や「立場」を共有・交流するための窓口です。他者との感情の共鳴やコミュニケーションの楽しさを、身をもって実感していただける場になればと願っています。

――(改めてアピールしたいところを含め)最後に、読者へのメッセージをお願いします。
Demi氏:まずは、『盛世天下:女帝への道』にご注目いただき、ご体験くださった日本のメディアの皆様、そしてプレイヤーの皆様に心より感謝申し上げます。
インタラクティブドラマというジャンルは、まだ誕生して間もない若いコンテンツ形式ですが、ドラマ本来が持つ強い感情の揺れ動き(ドラマチックな緊張感)を保ちながら、「プレイヤーの選択」を加えて、映像表現の新たな可能性を切り拓こうと挑戦を続けています。
私が皆様にお伝えしたいのは、「物語は画面の中で紡がれ、人生は画面の外で輝く」ということです。
作中の物語で至らない点がありましたら温かい目で見守っていただけますと幸いです。ストーリーには十人十色の受け止め方があります。どうぞ皆様も、ご自身の現実の人生において、誰よりも自分らしく輝く「最高の主役」であってください。
――ありがとうございました!
『盛世天下:女帝への道』シリーズは、PC(Steam)/iOS/Androidにて配信中(Steamでは『I』『II』がそれぞれ個別に販売、アプリはチャプターごとにそれぞれ購入)です。















