霧の中を彷徨い歩く、叙情的短編ADV『午前五時にピアノを弾く』【INDIE Live Expo 2023 参加デベロッパー連続インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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霧の中を彷徨い歩く、叙情的短編ADV『午前五時にピアノを弾く』【INDIE Live Expo 2023 参加デベロッパー連続インタビュー】

「INDIE Live Expo 2023」で紹介された作品の中からGame*Spark編集部が注目作をピックアップ! 開発や販売を担当する方々に連続インタビューを実施しました。

連載・特集 インタビュー
霧の中を彷徨い歩く、叙情的短編ADV『午前五時にピアノを弾く』【INDIE Live Expo 2023 参加デベロッパー連続インタビュー】
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2023年5月20日と21日に、インディーゲーム紹介番組「INDIE Live Expo 2023」が配信されました。本記事では300タイトル以上のインディーゲームが飛び出したこの配信の中で、編集部注目タイトルの開発者に行ったインタビューをお届けします。

今回はPC向けテキストアドベンチャー『午前五時にピアノを弾く』を手掛けたKazuhide Oka氏へのインタビューをお届けします。

本作は、高評価アドベンチャー『ナツノカナタ』を手がけた同氏による最新作。プレイヤーは、不思議な霧の中を散歩する主人公の少女が、さまざまな不思議や人物に出会う体験を通して、物語を読み進めていく作品です。散歩中は4つのパラメーターを管理しながら散歩を完了させていくことで、ストーリーが進行していきます。

『午前五時にピアノを弾く』はSteamにて無料配信中。Game*Sparkではリリース事前プレイレポートも掲載しています。



――『午前五時にピアノを弾く』の開発を始めたきっかけについてお聞かせください。

Kazuhide Oka前作『ナツノカナタ』の反省といいますか、実現できなかったこととして「小説を読んでいるような体験をつくる」というものがありました。『ナツノカナタ』をリリースして以降、ずっとそれが心残りで。そんな中、2023年の正月休みの間にふとした思いつきでつくってみたシステムが思いのほか「小説を読んでいるような体験」を実現していまして、それが開発のきっかけです。

「小さなイベントが連続し、シンプルな選択のみで進む。しかも『選択の結果』を提示せず、次々にイベントが起きる」というシステムが、ゲームでありながら、幻想的な短編小説を読んでいるときにようなふわふわした心地よさをつくってくれたと思っています。

――Kazuhide Okaさんの前作『ナツノカナタ』をまだプレイしていないプレイヤーに向けて、本作の特徴を教えてください。

Kazuhide Oka前述のとおり『午前五時にピアノを弾く』は、「ゲームなんだけど、小説を読んでいるような体験」を目指して開発しました。本作には、物語が進むいわゆる「シナリオパート」と、ゲームプレイを楽しむ「ゲームパート」がそれぞれ存在しています。このゲームパートは、選択肢で増減するパラメータをうまく調整していく、ゲームらしいものになっていて、テキストはフレーバーのようなものでしかありません。それなのに、体験として「小説を読んでいるような感じ」を味わえると思います。遊んでいるのはゲームなんだけど、終わってみると本を読んでいるみたいだった......そんな体験が、このゲームの特徴です。

――前作『ナツノカナタ』に引き続き、余白を活かしたユーザーインターフェースが印象的です。このデザインは、どのような意図から生まれたものなのでしょうか。

Kazuhide Oka何度も繰り返しになりますが「小説を読んでいるような体験」を目指しているので、「ゲームらしい画面」は避けよう、というのはずっと意識しています。「これはゲームなの?」と思われるような画面の方が、中身に合っているかなと。そういう意味で「雑誌の1ページのような画面」をいつも意識しています。

ちょっと身も蓋もないことを申し上げると、ゲーム画面を一目見ただけで「ん?」と思ってもらえないと、遊んでもらえないだろうなというのもあります。毎日のように新作ゲームがリリースされるような状況ですし。とはいえ私自身は絵が描けるわけではありませんし、「小説みたいなゲーム」を目指している手前、あんまり派手なビジュアルや演出はつくれません。それでもスクリーンショットを一目見て興味をもっていただけるよう、いつも四苦八苦しながら画面をつくっています(なんだかんだ毎回一番悩んでいるところだったりします)。

――本作はどのようなゲーマーに遊んでもらいたいと考えていますか?

Kazuhide Oka「本を読むのが好き」という方なら、きっとこのゲームを気に入っていただけると思います。まずはそういう方に遊んでいただけたらうれしいです。でもそれだけではなくて「普段本なんて読まない、でもゲームならする」という方に遊んでいただけたらいいなと思っています。

ゲームにも物語はあるし、映画や漫画にも当然あります。それらは同じ「物語」なんですけど、それぞれに文化や伝統というか、ちょっとずつ違う特徴があると感じています。ゲームにはゲームらしい、TVドラマにはTVドラマらしい物語の「感じ」がありますよね、というとわかっていただけるかもしれません。小説にも小説ならではの「感じ」があります。そういう「普段出会わないもの」に触れていただくというのもいいことかなと思っています。小説らしい物語に触れていただいて、ほんのわずかかもしれませんが、「こういうの好きかも」と思ってくださる方がいらっしゃれば幸いです。

「ゲームなんだけど小説っぽいお話にしよう」というのは、お話を書くときに意識していることでもあります。『ナツノカナタ』も『午前五時にピアノを弾く』も、派手な展開や手に汗握るような山場は(たぶん)ありません。それでもじんわり胸に響くような、そういう物語を感じていただけたらうれしいです。

――『午前五時にピアノを弾く』をプレイしたユーザーから届いたご感想で、特に印象に残ったものがあればお聞かせください。

Kazuhide Okaありがたいことに「いい話だった」という旨のご感想をいただくことが多くて、安心しています。「ゲームなんだけど小説みたいなお話」を書いている手前、それがゲーマーの皆さまに受け入れていただけるかどうか、というのはいつも不安なので。

特別印象に残っているもの、という意味では、「昔飼っていた(もう亡くなってしまった)愛犬の手触りがふと蘇る、そういう瞬間のことを思い出した」というご感想が印象的でした。『ナツノカナタ』もそうですが、本作は特に遊んでいただいた方々それぞれの思い出や体験が思い起こされるようなものになっています。本作の実況配信などを拝見していても、ゲームの途中で思い出を語られる方もいらっしゃって、そういうのを聞くのはとても楽しいしうれしいですね。

――本作品や、ゲーム制作者としての今後の展開についてお聞かせください。

Kazuhide Oka『午前五時にピアノを弾く』は、先日リリースした「エンディング後コンテンツ」の追加で一段落かなと思っています。今後は、日本語以外へのローカライズや別プラットフォームへの移植を......検討したいと思っています。

私個人の活動としては、引き続きゲーム開発を続けていくつもりです。着手しているものがいくつかあり、つくりたいと頭の中で思っているものもいくつかあり、びっくりするほど時間が足りていません(笑)。お届けまで時間がかかるかと思いますが、気長にお待ちいただけますとうれしいです。


Game*Sparkでは他にも多数の「INDIE Live Expo 2023」参加デベロッパーやパブリッシャーにミニインタビューを実施しています。その他の記事はこちらからご覧ください。

《キーボード打海》

「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『絢爛舞踏祭』。

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