ゲームの学びはテクニックだけではない―KONAMI eスポーツ学院が高校生に伝えたい「アソビって学びだ!」の真意【校長インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ゲームの学びはテクニックだけではない―KONAMI eスポーツ学院が高校生に伝えたい「アソビって学びだ!」の真意【校長インタビュー】

eスポーツ選手やeスポーツ関連職種で活躍する人材を育てるためのカリキュラムや教育のビジョン、さらにはeスポーツの未来について、校長を務めるKONAMIの梅村成樹氏に伺いました。

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ゲームの学びはテクニックだけではない―KONAMI eスポーツ学院が高校生に伝えたい「アソビって学びだ!」の真意【校長インタビュー】
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コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)が運営する「KONAMI eスポーツ学院」は2024年4月11日、2025年度から3年制へ移行することを発表。教育領域に本格的に参入しeスポーツ人材を育成します。

東京都・銀座のKONAMI本社内にキャンパスを構える「KONAMI eスポーツ学院」は、第一学院高等学校と共同で高校生に向けた「第一学院高等学校 eスポーツコース」を提供しています。eスポーツ選手やeスポーツ関連職種で活躍する人材を育てるためのカリキュラムや教育のビジョン、さらにはeスポーツの未来について、校長を務めるKONAMIの梅村成樹氏に伺いました。

KONAMI eスポーツ学院 校長 梅村成樹氏

「ゲームが上手くなる」だけが学びではない

——自己紹介をお願いします。

梅村成樹氏(以下、梅村)「KONAMI eスポーツ学院」校長を務める梅村です。以前はKONAMIのeスポーツを推進する部署に所属しており、野球コンテンツを利用したプロeスポーツリーグ「eBASEBALL プロリーグ」の運営・プロデュースを担当していました。「eBASEBALL」では、いちゲーマーがプロテストや研修を経てプロになり、球団に所属して日本一を争うというドラマがあり、その舞台をつくり、選手の活躍を支える仕事をしていました。

KONAMIは大型イベントやステージの企画制作、SNSの運用等も行っており、生徒の皆さんがプレイヤーとは違った出口で成長するためのアドバイスなどのお手伝いもしていければと考えています。

——教育として携わる以前からeスポーツに関連したお仕事なのですね。

梅村弊社では、eスポーツという言葉が使われる以前から対戦要素があるゲームやホビーで大会を開催して来ましたので、そのノウハウは現在のeスポーツに続いていると思います。

——あらためて「KONAMI eスポーツ学院」の紹介をお願いします。

梅村本学院では、eスポーツを学びながら第一学院高等学校(以下、第一学院高校)による学習指導も受け、高校卒業を目指していきますし、進学や就職も第一学院高校生としてさまざまなサポートが提供されます。また、プロゲーマーを目指す方にも納得してもらえるような、提携eスポーツチームの選手やコーチによる指導が受けられる講義があります。

そして、生徒により結成されたeスポーツチーム「KONAMI eUNITED高等部」では、放課後にオンラインで活動するなかで、より深い内容のコーチングも受けられます。さらに、希望する生徒は年度の終わりに提携eスポーツチームによる「合同トライアウト」が受けられ、合格すれば1年間プロチームへ練習生として参加できる仕組みも設けています。

先日、2022年の「合同トライアウト」合格者で1年間「TEQWING e-Sports」の練習生として頑張っていたLoid選手が、プロ契約することが発表されました。

本学院からの初のプロ選手の誕生を大変嬉しく思います。いまはスタートラインに立ったばかり。Loid選手の今後の活躍を願っています。

「KONAMI eUNITED高等部」(プレスリリースより引用)

——進路としてプロゲーマーを考えている人もそうでない人もサポートが受けられるのですね。

梅村そうですね。eスポーツやゲームをキーとして進学・就職を考えている方には“好き”を学びにつなげるスクールライフを楽しんでいただければと思っています。

入学時点ではまだ将来について深く考えていなかったり、本学院で過ごしていくうちに目標が変わったりということもありますから、卒業までにゲームのテクニック以外のことも身につけられるカリキュラムになっています。そしてプロゲーマーの夢を持ち続けている人は合同トライアウトや部活動が活用できます。

——第一学院高校との連携はどのような仕組みなのでしょうか。

梅村我々は「第一学院高校のeスポーツコース」という位置づけです。高卒資格取得も目指し、eスポーツを学びながら、並行して第一学院高校の通信制カリキュラムで単位取得をしていきます。第一学院高校として単位取得をサポートする講義も行いますので、学習面もご安心いただけます。

——2024年4月に3年制の導入が発表されました。

梅村はい。2024年度入校までは1年制カリキュラムで募集していましたが、2025年4月に入学する生徒から3年制のカリキュラムに変わります。

1年制カリキュラムでは「1年目は本学院が運営するeスポーツコースに通い、2~3年目は第一学院高校の他キャンパスに通う」という仕組みになっていました。しかし、2年目でeスポーツの学びから離れ、新しいキャンパスに移ることへの不安感や、友達と通学先がバラバラになってしまうことを残念に思う声もいただいていました。

私たちとしても1年経って「すごく成長したな」と感じ、このまま一緒に学びを継続したいと感じることも多く、3年間最後まで生徒の成長を支えたいという思いもありました。そこで今回ようやく3年制の実現へと踏み切れました。

——プロチームの選手やコーチから指導を受けられるのが魅力的な仕組みですが、実際に講義を受けている生徒の反応はいかがですか。

梅村いま隣の教室では『フォートナイト』の講義中で、DetonatioN FocusMe(DFM)で現在ストリーマーとして活動されている「れたす」さんに講師として担当いただいています。「れたす」さんはプロ選手時代の実績も素晴らしく、大会での活躍をリアルタイムで見ていたという生徒も入学しています。

彼らにとっての「れたす」さんは私たちでいう“テレビの向こうの人”のようなもので、授業自体がプレミアムな体験になっているようです。毎週会えるどころか授業終わりに何気ない雑談もできる環境なので「夢を見ているみたい」という声も聞かれますね(笑)。

今年度の授業は始まってまだ2週間(取材時点)で、それぞれの実力に合わせて進めている段階ですが、反響は良いと感じています。KONAMI eUNITED高等部には授業とは別にコーチがついていて、授業の講師と連携しながら実践的な振り返りやチームワークのコーチングを行っています。任意参加ですが参加率が高く、こちらも好評です。

——ゲームに関しては操作テクニック以外の授業もあるのでしょうか。

梅村「ゲームのテクニックしか教えないのかな」と思われていることが多いのですが、今はプロeスポーツ選手もゲームが上手いだけでは通用せず、他のスキルも必要とされています。

プロチームでトライアウトを担当されている方に聞いても、採用にあたってはゲームのテクニックだけではなくコミュニケーション能力やインフルエンス力、社会性も評価されるようになっています。ゲームの実力だけではなく、真面目さや積極性があり、伸びしろを感じさせる人が採用されることもありますね。

本学院ではSNSの使い方を含むデジタルリテラシーやコミュニケーション、セルフプロデュースなどの授業で社会性を育むカリキュラムを提供しており、eスポーツプレイヤー以外のさまざまなシーンにおいても活躍できる能力を身につけてほしいと思っています。

——授業におけるゲームの実技とそれ以外の科目はどのような割合ですか。

梅村本年度の授業は午前の2コマと午後の3コマに分かれていて、基本的には午後の3コマが実技になります。実技で扱うタイトルは、現時点では『VALORANT』や『フォートナイト』で、日によって変わります。また、ゲーム以外の実技として週に1日は動画編集の授業があります。

——その2つのタイトルを並行して扱っていくのでしょうか。

梅村しばらくしたら大会を意識して生徒自身が本格的に取り組むタイトルを絞り、タイトルごとに分かれての授業になります。現時点ですでに心が決まっている生徒もいますが、『フォートナイト』をやるつもりで入学してきたものの『VALORANT』をプレイしてみると「こっちの方が面白い」と感じたり適性を見出すケースもあるので、最初は全員が2つのゲームをプレイしています。

2つのタイトルを比べると入校時点では『フォートナイト』の方がプレイ経験が多い印象ですが、面接から入学までの間ですっかり『VALORANT』プレイヤーになっている生徒もいます。逆に「やっぱりこれまでの経験が生かせる『フォートナイト』が良い」と戻ってくることもあり、ここは授業で適性を見ながら判断していきます。

「なかま」を見つけられる場でもある

——プロ選手以外では具体的にどのような職種が進路の候補として挙げられますか。

梅村ゲームイベントの企画運営など、ゲームやeスポーツを支える仕事も考えられます。また、ゲームと直接関連のない学校への進学や、一般企業へ就職する道も、学びの中で生徒が真剣に考えて選択した進路は広く応援していきたいと思います。

なかには「プロにはなれなさそうだからストリーマーでいい」という考えの方もいるかもしれません。しかし「ストリーマー」を仕事にしていくのはeスポーツのプロになるのと同じくらい狭き門です。本当になりたいなら身につけなければいけない技術がある、ということも一緒に学んでいく場所にもなっています。

——入学時点ではやはりプロ選手を志望する生徒が多いのでしょうか。

梅村さまざまな思いをもってご入学頂いていますね。目指すゴールの姿はそれぞれ手探りで見つけていけばよいと思っていますし、プロ選手を目指し始めるなかで、学びを通して自分なりのアプローチ方法をみつけていく生徒もいます。

その実現のためにはどれだけ計画的に、いかにモチベーションを落とさずにやって行けるかが重要だと思いますし、私たちもそれをサポートします。生徒には「途中で嫌になったりせず続けていれば、何かが起きるかも知れない」と言っています。

これまでの1年制では「短期集中でプロを目指そう」というコンセプトでしたが、これから募集する3年制ではプロを目指す以外にもさまざまな目的にあった幅広いカリキュラムについて学べます。充分な時間をかけて授業の内容を消化できる余裕が生まれると思いますから、みんなで一緒に夢をかなえる方法を考えながら成長して行けるといいですね。

——カリキュラムの変化によって入学者にも変化があるかも知れないということですね。

梅村eスポーツ選手になるための敷居が高い専門学校と思われている方もいらっしゃるかもしれません。我々は、そうした生徒に向けたカリキュラムを提供しつつ、一方で、eスポーツをフックにスクールライフを楽しみながら将来を考えたい、という生徒に向けたカリキュラムも提供していきます。どちらもeスポーツやゲームが大好きな共通点は変わらないため、「なかま」としての一体感があります。安心していろいろな方に来ていただきたいですね。

——ゲームが好きでも、まだ周辺の職種を知らないことも珍しくない年代ですよね。

梅村中学校を卒業した時点では、eスポーツを支えるような職種の存在に気づける機会はなかなかありません。ゲームやeスポーツに対して、どのような関わり方があるのかも一緒に学んでいければと思います。

——公式サイトを見ても、「スクールライフを楽しもう」というメッセージを感じます。

梅村例えば普通科の学校に通いながら『フォートナイト』や『VALORANT』をプレイしていて、オンライン上でのつながりはあっても、毎日真剣に楽しめるリアルな「なかま」を作るのは難しいと思います。ここでは趣味や目標が同じ生徒たちが集まっているので、同じ方向性の話題で楽しめる「なかま」が生まれやすいですよね。生徒からの反響の中でも、通って良かったと感じた要素として「なかまができた」という声は必ず入ってきます。

KONAMI eスポーツ学院の公式サイト

——一般的な普通科の学校で真剣にeスポーツを目指している「なかま」を探すのはなかなか大変ですよね。

梅村高校生向けの大会では同じ学校内でチームを組まなければならないルールがあり、真剣に取り組む相方がなかなか見つからなくてもどかしい、ということもあるようです。

——入学にあたってはeスポーツにあまり詳しくない親御さんの理解も必要になるのではないでしょうか。

梅村プロゲーマーやストリーマーは新しい職業なので、お子さんが目指したいと言った時に不安感があるかもしれません。しかし、むしろ新しい職業に対して夢を持って「なりたい」「学校に通いたい」と決断ができる時点で素晴らしいことだと思います。親御さんは皆さま、そうした生徒の決断やチャレンジを心から応援されていますし、親子での会話を通じてeスポーツに対する理解を深められる方も増えてきたと感じています。

eスポーツチームへのトライアウトの話とも共通しますが、これからは自己管理能力やコミュニケーション能力といった、社会や企業に所属したときに大事になる要素を、ゲームを通じて磨いてもらえたらと思っています。「どうやったら強くなれるだろう」と考えて目標を立て、大会に出るためのチームを組み、プロになるための自己プロデュースをしていく……。eスポーツ選手を目指す過程で学べることには社会性に直結している要素もたくさんあります。

もちろんプロ選手にはなっていただきたいですけれども、ゲームの技術を学びながらその周辺の知識も身につけていただいて、他の分野でも活躍できるようになってほしいとも思います。第一学院高校生としての高卒資格取得や、進学・就職のサポートを丁寧に行っていきます。

キャッチコピー「アソビって学びだ!」に込めた想い

——これまでのスクール運営で、手応えや課題感はいかがですか。

梅村eスポーツの教え方や大会に対するノウハウも溜まってきていますし、毎年新しい試みを取り入れていますので、今後もより良いスクールにしていけているのではないかなと思っています。本学院からのプロ契約第一号となる選手も誕生しましたので、そういった事例も増やしていきたいです。

——取り組みの中で新たにチャレンジしている点があれば教えてください。

梅村生徒の目標にはいろいろな段階があるので、全員に一律で同じ内容を当てはめるのではなく、個人個人と向き合って彼らの夢や目標に沿った学びを作っていく必要があると思い、授業にはスタッフが個別に着くこともかなり増えてきました。

——近年、「それぞれにあった教え方」はeスポーツに限らず多くの教育現場で重要視されているポイントだと思います。

梅村私の学生時代は50人規模のクラスが10以上あるのが普通でした。当時は先生も一律で教えるしかなかったと思いますが、個人の能力や個性・進度に合わせて進めるやり方が注目されてきていますね。

——ここ数年でeスポーツは言葉としても職業としても認知度が変わってきていますが、梅村さんはこの市場の変化を率直にどう感じていますか。

梅村eスポーツが新しい言葉とされていた時期を経て、いまや一般に浸透してきていると感じます。その反面「ゲームが強ければプロゲーマー」という時代でもなく、その選手の立ち振る舞いやリテラシーが注目されてくる時代になっていますので、本学院の中でも「ゲームが上手いだけでは生き残れないよ」と教えています。

IOC(国際オリンピック委員会)もeスポーツに注目して動いているなか、今後はよりeスポーツがオフィシャルになっていくと考えられます。立ち振る舞いや社会性など、プロスポーツ選手やタレントと同じことが求められるようになっていくのではないでしょうか。eスポーツ業界をみんなで盛りあげていくためには、そういう部分も意識したいと思います。

——ゲームそのものへの見方もかなり変わったように感じます。

梅村eスポーツやゲームに真剣に取り組んでいることが好ましくないという考え方も減ってきており、eスポーツ選手の社会的地位も上がっていくのではないでしょうか。

——eスポーツ分野で注目している領域やトピックがあれば教えてください。

梅村やはりオリンピックでeスポーツが今後どう扱われていくのかには注目しています。また、弊社タイトルですが『WBSC eBASEBALL™パワフルプロ野球』は、今年の11月に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)さんと連携して、野球の国際大会「プレミア12」にあわせてeスポーツ大会「eプレミア12」を開催しますので、これがどうなっていくのかは興味がありますね。

——最後に、今後どのような学校にしていきたいか、展望をお聞かせください。

梅村3年制カリキュラムでの募集が始まりました。夢をもってeスポーツを学ぶという進路が、学びの選択肢としてたくさんの方々の話題にあがるとよいなと思っています。大好きなゲームを通して楽しく周辺の学びを広げていったり、プロを目指して大会に向けた練習に打ちこんだり、さまざまな目標をもつ生徒を応援していければと思います。

ゲームで得た経験値は、ゲームの中だけで生きるものではありません。真剣にプレイすることで壁にぶつかり落ち込む経験も、そこから再び壁を登った経験も本人に返ってくるものです。KONAMI eスポーツ学院では「アソビって学びだ!」というメッセージを大切にしています。他のスポーツや音楽などに打ちこむ方々と同じく、eスポーツもまた真剣に取り組むなかで経験する努力や学びには大きな意義があると考えています。

《e-Sports Business.jp》
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