『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】

サムライとニンジャのソウルを宿したネクストショーグン、タケチヨのアメージングなアドベンチャー!

連載・特集 特集
『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】
  • 『仁王3』クイックドローでヨーカイマストダイ!大胆イメチェンを作る翻訳マジック【ゲームで英語漬け#172】

言葉の翻訳をするときに気をつけなければならないのは、元の語のイメージするところをなるべく変えずに変換すること――しかし、語感や文化の文脈に紐付いているイメージまでは移し替えることができません。補足を入れてカバーすることもできますが、それを逐一差し込むわけにも行かないので、翻訳は意味合いを損なわずともイメージのずれは必ず生じるものなのです。そのずれをあえて楽しむ「源氏物語」の“らせん訳”や忍殺語も注目され、言葉を揺さぶられる新しい面白さが広まっています。

『仁王』シリーズにおいては武具の名称が多く英訳されており、日本語とは違う印象になっているのが特徴で、字面だけなら西洋ファンタジーに持って行けそうな雰囲気になりました。個人的には小烏丸・抜丸の訳が語感を合わせていて気に入っています。

  • 髭切:ビアードカッター(Beardcutter)

  • 九字兼定:マントラソード(Mantra Sword)

  • 大般若長光:ウィズダムスートラソード(Wizdom Sutra Sword)

  • 小烏丸・抜丸:リトルクロウ&クイックドロー(Little Crow and Quickdraw)

  • 赤備え:クリムゾンアーミー(The Crimson Army)

  • 風魔:ウィンドデーモン(Wind Demon)

  • 九十九神:リビングアーティファクト(Living Artifact)

  • 志士:ロイヤリスト(Loyalists)

  • 三悪を成したるもの:The Doer of Three Evils

  • 七難八苦:Seven misfortunes and eight hardships

  • 四天王:The Four Vassals

  • 地獄:The Crucible

今作の用語で意味合いが変わっているのが「地獄/The Crucible」です。「Crucible」は金属を溶かす坩堝の意味合いがメインで、この中で行われる獄霊石を生むプロセスを表わしています。それと同時に「責め苦」を意味する「Crucify」に通じ、宗教的な「Hell」や「Naraka」を避ける点からも、訳語としてはかなり良い選択です。用語の説明においては何点か補足が加わったり、ニュアンスが若干変わっているものもありました。

Warring States Period
This period of near-constant warfare is known as the Warring State period. Vassal slew their lords, and younger brothers killed their elder siblings―people overthrew those above them to gain influence based of the rule of “might makes right.”
絶え間なく続く戦乱の時代は「戦国時代」として知られている。家臣が主君を斬り、弟が長子を殺す―「力こそ義」の理に則り、権力を得るため人々は上位の者を打ち倒していく。

日本語版ではここで「下剋上」のところに強調がありますが、英語では“might makes right”のところにあります。

Kobo Daishi's attire
Kukai was posthumously known throughout Japan as Kobo Daishi, which can betranslated as “The GrandMaster who propagated the Dharma.”
空海は後世に弘法大師、仏法を広めた偉大な師として日本中に広く知られている。

空海の称号である「弘法大師」について補足追加。「弘法」(ぐほう)の部分が「仏法を広めた」に当たります。

『仁王』シリーズの解説文は割と忠実に翻訳が行われており、日本語の時点からグローバルを意識した書き方をしている印象を持ちました。今回はそれを逆手に原文から大きくイメージを変える再訳をやってみます。私たちは普段歴史的な文脈に基づいて用語を選んでいますが、あえてそこから離れてみることで異なるイメージで捉え直せるかも知れません。

鎌倉時代
平家を打倒した源頼朝は、かねてから本拠を置いていた鎌倉に今度こそ武家独自の政権を築こうとした。そのためには、帝が座する地としていまだ権威を持つ京に武家が上る“上洛”を行い、ひいては朝廷から征夷大将軍に任ぜられることで、政権の正統性を世に示す必要があった。

Kamakura
After Minamoto no Yoritomo crushed the Taira clan, he set out to establish a samurai-led government in Kamakura, his longtime base. Doing so required proving to Japan that his government was legitimate, which in turn meant having his clan head to Kyoto. Kyoto still held the emperor's throne, and it was necessary for the imperial court to appoint him shogun.

この項目では上洛について補足があるものの、原文から大きく書き換えている項目はありません。なので真面目に英文を再訳したらほぼ原文に戻るだけです。そこで、文体をオーバーなものに変えてみます。

ミナモト・ノ・ヨリトモはタイラ・クランを壊滅させた後、サムライによる支配体制の立ち上げを古巣のカマクラでとりかかった。ヨリトモの支配が筋目であるとヒノモト中に示すには、クランをキョートに向かわせる必要があった。キョートには未だにエンペラーの玉座があり、宮廷がヨリトモをショーグンにアポイントするのがマストだった。

……なんか若干サツバツとしてきましたが奥ゆかしさは身に付けていないのであしからず。やりすぎるとヨコハマ方面からニンジャが来そうなのでここまでにしておきます。海外の人が翻訳で日本作品を触れるときには、漢字やひらがなから離れた語感で鑑賞します。その逆も然りで、お互いにイメージを完全に伝えるのは不可能です。その上で不可避の「ずれ」に何を発見するか、それが日本文化の新しい側面を引き出してくれるでしょう。


【PS5】仁王3
¥8,228
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
仁王3 TREASURE BOX グッズのみ(ゲームソフトなし)
¥5,926
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:Skollfang,編集:宮崎 紘輔


ライター/好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

+ 続きを読む

編集/タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top