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「異変探し」じゃないゲーム性が新鮮!脱出ホラーゲーム『5番線おじさん救出編』怪異だらけのダンジョン駅で迷子おじさんを救え【プレイレポ】

『番線』シリーズ最新作。

連載・特集 プレイレポート

2023年11月にリリースされた『8番出口』は、ループする地下通路に閉じ込められたプレイヤーが、さまざまな「異変」を探して脱出する、という短編ホラーゲームです。

ありそうで無かったコンセプト、リアルすぎる環境描写、シンプルなゲーム性、作中の愛されキャラ「歩くおじさん」など、個人開発ながらゲームとしての完成度や実況配信との親和性の高さから、SNSを中心に大きな話題を呼びました。


しかし、ヒット作に対する模倣はつきもの。その後、Steamにはさまざまな「8番出口ライク」な類似作品が現れ、中には成人向けのものや、対局中に異変を探す『異変麻雀』といったユニークな作品も登場しています。それでも本家『8番出口』自体の勢いは止まらず、PCのみならずコンソールへの展開、累計販売本数100万本突破、2025年8月には二宮和也さん主演で映画公開決定など、話題に事欠きません。


定番ジャンル化しつつあるとはいえ、「8番ライク」は粗製乱造ぎみで「もうお腹いっぱい」だと感じるゲーマーも多いでしょう。今回ご紹介するのは、そんな風潮に一石を投じるゲーム『5番線おじさん救出編』です。一見まさに8番ライクな作風ですが、実際にはそれを逆手にとったような「異変現象から逃げる」という脱出ホラーゲームでした。

というわけで本記事では『5番線おじさん救出編』のプレイレポートをお届けします!


人気シリーズに“異変”?「8番ライク」じゃない最新作

本作は、2025年3月27日PC(Steam)向けに発売されたカジュアルなホラーゲーム。開発は、鉄道系Youtuberとしても活動する個人デベロッパーしにせ氏のMFC STUDIOが手がけています。当初は『2番線』『3番線』など、8番ライクな「番線」シリーズを次々と発表し好評を得ていました。

そして今作では作風がガラッと変わり、単純な8番ライクではない、「異変から逃げる」ことにフォーカスした独特の内容となっているのが特徴です。

操作、言語、難易度

操作はキーボードかゲームパッドに対応。筆者はXboxコントローラーでやりましたが操作感は概ね良好でした。また、言語は日本語字幕/音声に対応していて、しっかりと作り込まれていて臨場感がありました。

その他のオプションは、画面設定からBGMに関するもので最低限は揃っているという印象。そして難易度ですが、Easy~Ultimateまでの4段階あり、レベルが上がるごとに異変現象の起こる頻度や密度が変化し、攻略が難しくなります。なお今回はNormalでのプレイとなります。

本編開始。異変だらけの駅から迷子のおじさんを救え!

1日あたりの平均乗降者数は約300万人、世界最多の駅利用者数として知られる東京新宿駅――。ではなく、本作の舞台は「ダンジョン」とまで呼ばれる複雑な構造の「千宿駅」です。

本編が開始すると、ニュース速報が流れます。どうやら千宿駅にて異変現象が発生したため、「特別異変警報」が発令されたとのこと。映像にはホームから逃げ惑う乗客の姿が生々しく映し出されています。

緊迫した状況のなか中継映像はある光景をとらえます。それは、駅から避難する乗客に「逃げ遅れたおじさん」が一人だけいるというもの。ああ、なんてこった。このままでは彼は異変に飲み込まれてしまう。どうにかならないのか……。

そう思っていると、緊急事態を受け中継が「特別異変レスキュー隊」へ繋がります。隊員の説明によると、異変現象は全国で多発しているが、今回の騒動はとくにヤバいらしい。なぜなら、千宿駅という大ターミナル駅で異変が起きればその規模から鎮圧にかなり手間取るからです。

そこで白羽の矢がたったのが主人公であるプレイヤー、という設定。いや、そこはレスキュー隊丸ごと派遣しろよ……と瞬間的にツッコんだ筆者ですが、まあ細かいことは置いといて。とにかくプレイヤーは、複雑なダンジョン駅「千宿駅」で取り残されたおじさんを無事救出することがミッションとなります。

そして千宿駅に到着。ここから実際にプレイできます。操作感は良くも悪くも普通といった感じで、UIと操作系統はとてもシンプルなつくり。とりあえず今の時点では、歩き回ることと走ることくらいしかできません。グラフィックはそれなりに綺麗でチープさは感じませんが、本家『8番出口』に比べるとちょっと物足りない気もします。

駅構内はたしかに異様な雰囲気に包まれています。すると…おや?千宿西口駅のほうに人の姿が。あれは明らかに「迷子のおじさん」で間違いないでしょう。おじさんはパニックになっている様子で、こちらの存在に気づかず駅ホームへと走り去っていくので急いで追いかけます。

ホームで呆然とするおじさんを発見。まずはXボタンで話しかけて落ち着かせましょう。「帰りてぇ…帰りてぇよ」と震えた声で不安そうに話す彼に、「もう大丈夫さ」とやさしく近づいたところ……

なぜか突然逃げ出すおじさん。おい待てコラ!こっちはわざわざ仕事で来てやってんだ!慈善事業じゃねーんだぞ!と暴言を吐き出したくなる気持ちを抑え、ふたたび追うことに。すると、レスキュー本部から「おじさんは精神が不安定だから何回か話しかけてから確保せよ」との指令を受け取ります。なるほど、そういうことだったのか。

しかしT字路に差しかかった瞬間、ゲーム画面が突如真っ暗闇に……!同時に「まもなく〇〇(ピー音で聞こえない)が到着します」という不気味な構内アナウンスも流れてきます。え、なになに?どういう状況なのこれ?事態が飲み込めず待ち構えていると、目玉おやじも真っ青の「巨大目玉サラリーマン」があらわれ近づいてきます。対してこちらは応戦することも逃げることもできず、ただただ恐怖で立ち尽くすのみ。

そして、そのまま捕まってしまい「Xにつかまった 時はさかのぼる」という謎のメッセージ画面が出てきますが、まさかこれはゲームオーバーになったのか……?

ハイ、その通りです。厳密にいうと、ここまでが本作のチュートリアル的な導入部分となっていて、本当の勝負はここからです。ゲームのルールは比較的単純で、広大なターミナルにある6つの路線の駅から無事におじさんを探し出せれば脱出成功となります。発見回数は駅の壁に「おじさんの心理状態」として具現化されており、それで確認することができます。

キミ、どこかで見た?

しかしプレイヤーの行動を阻むのが数々の「怪異現象」で、発見を重ねるたびに駅構内の異変が増えてくる仕組みです。序盤は「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教(Wikipedia)」のシンボルと人間が合体したような奇妙な怪物が壁に立っているだけで襲ってくることはありません。とはいえ、触れてしまうと「目玉サラリーマン」との強制バトルになるので注意が必要です。

怪異のパターンも毎回異なっているので、緊張感のあるプレイでした。通路いっぱいに大きな目玉が道をふさいでいたり、特に天井を高速で這うサルのようなモンスターは能動的に襲ってくるので非常に冷や汗をかいた異変でした。

ではどうすれば異変を回避できるのか。本作では、道中に空き缶やペットボトルなどのゴミを最大7個拾うことができ、それが武器および防具がわりになります。たとえばボス敵である「目玉サラリーマン」の場合は、目玉部分に正確にエイムすると撃退できます。逆に、天井のサルは攻撃できませんがゴミを所持してれば勝手に防御してくれる、といった感じです。

ゲームメカニクスは、本家『8番出口』が、異変現象を自ら見つけ出してクリアを目指すのに対し、『5番線』では“異変や怪異現象をひたすら避け、時には対峙する”という独自のシステムがとても新鮮にうつりました。と褒めたものの、欲を言えばもっと本格的なチェイス要素やアクション要素、銃や近接武器での格闘要素もほしくなりましたが、まあ別ゲーになっちゃいますよね……。

そして、本作は「おじさん」や「異変現象」についての謎が明らかになり、ひいては『番線』シリーズの真相も解明されていく集大成的な作品です。ストーリーラインもおざなりにならず構成してあるので、評価に値するポイントでした。

作者のセンス光るゲーム内広告

『8番出口』の続編では、ゲーム内に貼られるリアル広告の募集も話題になりました。本作でも、駅構内でさまざまなパロディ広告を見つけることができ、プレイヤーの目を楽しませてくれます。

たとえば、人気漫画の「推しの子」をもじった「推しの粉(おしのこ)」があったり、鉄道好きの作者らしく新型車両のアナウンスだったり、某退職代行会社を皮肉ったような「ダメダコリャ」など、色々な小ネタが散りばめられていて面白く、プレイヤーを飽きさせない工夫がしっかり施されており、作者なりのサービス精神なんだな、と感じ入りました。


さて本作の良かった点は、単純な「8番ライク」ではない、ユニークなシステムで挑む脱出ホラーゲームとして新鮮なプレイフィールだったこと、怪異現象のパターンが豊富なこと、クリア時間まで1~2時間程度でカジュアルに遊べたことです。

一方で、『8番出口』と違って「おじさん」のキャラ的な魅力が乏しく、彼を探しにいくモチベーションに繋がらないと感じた点や、やることが繰り返しになり単調になってしまう点など、マイナスに感じた部分も。しかし総じて、570円という値段に見合った楽しさを提供してくれる意欲的なゲームであると感じました

  • タイトル:『5番線おじさん救出編』

  • 対応機種:Windows PC(Steam)

  • 記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)

  • 発売日:2025年3月27日

  • 著者プレイ時間:3時間

  • 価格:570円
    ※製品情報は記事執筆時点のもの

スパくんのひとこと



いわゆる「8番ライク」ではないゲームメカニクスが新鮮だったスパ!



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ライター:DOOMKID,編集:TAKAJO

ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。『Crusader Kings III』と『Mount & Blade II: Bannerlord』に生活リズムを狂わされ続けています。ちなみに好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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  • スパくんのお友達 2025-03-31 5:56:42
    俺も早く帰りてぇ...帰りてぇよ...
    3 Good
    返信

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