!注意!本レビューには性質上、ゲームの一部ネタバレとなる内容が含まれています。
HYPER REALは、SAFE HAVN STUDIOが手がける新作アドベンチャーゲーム『SAEKO: Giantess Dating Sim』を、PC(Steam/DLsite/STOVE)向けに2025年5月30日にリリースしました。
本作は、2000年代の日本を舞台に、不思議な能力を持つ少女・冴子と、親指ほどに縮んでしまった小人たちの生活を描くアドベンチャーゲーム。プレイヤーは冴子に引き出しの管理を任された「リン」となり、日中は小人たちの管理を、夜は冴子の話相手を務めることになります。


本稿では、「インディーゲーム史上最も濃い、開発者の性癖(Steamストアページより引用)」の『SAEKO: Giantess Dating Sim』のレビューをお届けしていきます。なお、ゲームプレイおよびスクリーンショット撮影は、メーカー提供のキーを使用した発売前プレビュー版で行っています。
命がけの小人生活の始まり
『SAEKO: Giantess Dating Sim』は、SAFE HAVN STUDIOのkyp氏を中心に制作されている作品です。kyp氏は、自身が好きな“巨大な女の子が出てくる作品”と『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』のような、海外の少し暗めのノベルゲームを組み合わせたら、という発想をもとに本作をてがけはじめたそうです。
そして“巨大な女の子が出てくる作品”の中でも笛地静恵氏のオンライン小説「もうひとつのコワイ童話」に大きな影響を受け、同作品に出てくる「冴子」をメインキャラクターとしています。笛地静恵氏からの了解や設定を受けた上で「原案」として、原作小説では中学生だった冴子を、ゲームでは少し成長した女子大生としたオリジナルの姿を描いています。
本作の物語は、小さくなり記憶喪失のリンを保護したという冴子との会話の後に、彼女の机の引き出しの中でしばらく生活するシーンから始まります。引き出しの中にはすでに複数の小人がいるようで、こちらをからかうような態度のチオ、少し変わり者のモコ、真面目そうなタキの3人が生活しています。
最初はチュートリアルとして、小人との会話やアイテムの渡し方などを学びます。最後に「食料」をモコに渡したことで、彼女の魅力がアップしたようです。と、ここで突如地震のような揺れが起こり、引き出しの中の世界に光が差し込みます。どうやら冴子が帰ってきたようです。





冴子は小人たちを慈しむような顔で小人に接し、そのままゆっくりと手を伸ばしてモコをつまみ、口の中へ。さらに、リンに引き出しのルールをしっかり教えなかったタキはゴミのように潰されてしまいます。衝撃的な展開のまま、リンは「小人の管理人」として生活することになるのです。
管理人のルールはシンプルで、“毎日冴子が食べたくなるような魅力的な小人を用意すること”です。こうして、巨大な少女との命がけの生活が始まります。




昼は小人との交流、夜は冴子との会話
ゲームは2つのパートに分かれていて、昼間は引き出しの中で毎日補充される小人と交流していきます。小人はそれぞれ「体力」と「魅力」のステータスがあり、魅力は食べ物を与えることでアップしていきます。重要なのは、魅力を一定以上にすることで冴子が喜んでくれるという点です。
しかし、もし冴子が喜ぶ小人を用意しなければ、その瞬間全員が処分されてしまいます。小人たちとの会話の後に、果たして誰に食べ物を与えるのか。管理人はとても残酷な選択をするのが仕事です。序盤はある程度食べ物を与える人が決まっていますが、そのうち大きな選択をする必要も出てくるかもしれませんね。





無事(?)に食事が終わった後は、冴子との会話パートが待っています。会話パートは基本的に冴子の話に返事するのがメインとなりますが、適当な相槌を打って機嫌を損ねれば冴子の巨大な手が迫ってきてゲームオーバーに。会話を聞き、しっかりと返答することで、冴子との会話を進めていきましょう。
冴子の話は大学の話、帰宅前に見てきたファッションの話、趣味の話など、他愛もないものも多く、そこには小人に対する残酷な姿とは異なる少女の姿が垣間見えます。冴子は普段の会話中は勉強しながらなのですが、机においた左手の指が動くのがなんともフェティッシュ……!





少しのミスで命の危機があるはずなのに、冴子との生活は不思議な魅力に満ちています。会話も慣れてくるとスムーズに行えるようになり、少しずつこちらから話をしてみたり、冴子が思わぬリアクションをしたり、いろいろな交流ができるようになっていくのです。





「Dating Sim」という言葉の意味
本作のタイトルは『SAEKO: Giantess Dating Sim』。つまり、巨大な女の子とのデートシミュレーションという意味です。ゲーム内で冴子は残酷なだけでなく、どこか世俗に馴染めない、等身大の女の子としても描かれ、リンとの会話の中で少女の側面をしっかり感じられます。
プレイヤーは日中の管理で誰を選ぶか、という選択をしなければなりません。その結果は後のストーリーにも影響しますし、冴子が連れて来る新しい小人の中にはリンの運命を左右するような存在もいるのです。交流の中で見えてくる小人たちの素顔や思いを通じ、いかにして冴子に喜んでもらうのでしょうか。




ゲームが進んでいくと、リンと冴子の会話シーンには色々な変化が起こるようになります。買い物に付き合うなど、外で会話するシーンもあり、思っても見なかったような冴子の姿や言動、色々な思いを知ることで、彼女はますます魅力的な雰囲気を纏っていくのです。
「巨大な女の子に死の危険を感じながら飼われる」というのは、本作のひとつの大きな物語ですが、その本質的なテーマは、やはり「Dating Sim」なのではないかと思います。冴子は不思議な少女です。ゲームを進めていくことで見えてくる素顔は、ぜひともプレイして自分なりの答えを導いて欲しい部分ですね。



前項でも触れましたが、冴子との会話シーンは慣れてくると「これくらいなら怒らないかな」というラインが察せられるようになります。ギリギリの会話の中でこそ引き出せる会話もあります。もし、ゲームオーバーになってもすぐ再開できるので、臆せず冴子という少女の姿を見つめていきましょう。その先に見えるものがきっとあります。


2000年代の文化も懐かしく楽しい
『SAEKO: Giantess Dating Sim』の物語は2008年を舞台にしています。これはkyp氏が触れてきた2000年代の文化の自分なりの再解釈という意味でもあり、作中では当時の文化を思わせるような、さまざまな描写もあります。
その描写が凝縮されているのが、冴子との会話後の1日の終わりのパートです。ここでは、いわゆるフィーチャーフォン画面を操作してセーブやロードだけでなく、ミニゲームやコレクション、ニュース閲覧なども楽しめます。その中には、なんとも懐かしい「ケータイ小説」も用意されています。




時代的に2008年は、日本にスマートフォンが上陸し始めた頃です。ただし、本格的にスマートフォンが普及し始めたのは2010年頃からと言われていて(総務省調べ)、作中でも「果たして流行るのか」といったニュース記事も見られます。ニュース記事も当時の時勢を反映・パロディしたものが多いですね。
ちなみにこのケータイは冴子本人のもので、メールや電話の履歴も残されています。ただし、これらのパーソナルな項目を選ぼうとすると冴子の指に邪魔されてしまいます。この部分も、ゲーム内で重要な意味を持っているので、各要素を余すことなく楽しんでほしいですね!




『SAEKO: Giantess Dating Sim』は「インディーゲーム史上最も濃い、開発者の性癖(Steamストアページより引用)」を映し出した作品です。確かにその設定や衝撃的な描写など、インパクトが強い要素は多いですが、一方で冴子という存在の、少女としての側面や内面も実に魅力的に書きあげています。個人的には、ひとつの読み物として素晴らしいものに出会えたと思っています。
ゲームは2つのパートに分かれていますが、そのなかではある程度しっかりと「選択」をしなくてはなりません。その結果訪れる経過や結末はいずれも印象的で、そこにいたるまでの描写も非常に丁寧です。なにより冴子という少女が本当に魅力的で、日数が進むことで「Dating Sim」というタイトルの意味を噛み締められるようになっています。



題材的にフェティッシュ極まる内容なのは間違いありません。Steamストアページでは体験版も公開されているので、気になる人はまず一度プレイして、その雰囲気を確かめるのが良いと思います。その上で気になったならば、ぜひとも最後までプレイして、冴子という少女の魅力をたっぷりと体感してください!
Game*Spark レビュー 『SAEKO: Giantess Dating Sim』 PC(Steam/DLsite/STOVE) 2025年5月29日リリース
不思議な力を持つ少女・冴子と、小さくなってしまった主人公たちのドキドキ生活!
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GOOD
- “冴子”という存在の圧倒的な魅力。物語が進むごとに見えてくる内面。
- プレイヤー自身が選ぶことで進んでいく昼夜パートの意味と結末にいたる意味を感じられる描写
- 開発者の愛と熱意が伝わる世界観。あらゆる意味でフェティッシュで美しい。
BAD
- 題材的に過激な描写が多いので、苦手な人はいるだろう。
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