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“移植”というより“別バージョン”!傑作CRPG『ディスコ エリジウム』Android版の魅力と欠点【プレイレポ】

傑作CRPGに一長一短の別バージョンが登場です。

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“移植”というより“別バージョン”!傑作CRPG『ディスコ エリジウム』Android版の魅力と欠点【プレイレポ】
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2019年に発売されるやいなやMetacriticで高得点を記録し、数多くの賞を受賞するなど高い評価を受け、現代におけるCRPGジャンルの代表作の一つとなった『ディスコ エリジウム』。日本語版は2022年に発売され、国内でも多くのRPG好きやCRPGジャンルのファンから高い評価を得ています。

しかし、その高い評価とは裏腹に、難解な内容や操作の煩雑さといった敷居の高さもあり、実際にクリアまでプレイしたプレイヤーは、少なくとも筆者の周囲には多くありません。あくまで筆者の観測範囲で……にはなりますが、実際「購入はしたものの詰んでしまっている」といった人や「買うかどうか迷ったが難しそうなのでやめておいた」というような声もちょくちょく耳にすることがあります。

そんな『ディスコ エリジウム』ですが、既に発表されていたAndroidバージョンが8月5日にリリースされます。ZA/UMから開発中のビルドを提供してもらい一足早くプレイしてきましたので、今回の記事ではそのプレイレポートを行っていこうと思います。

なお、原作がどのようなゲームだったのかについては、リリース当初のプレイレポートに詳しいので、あわせてご覧ください。


起動から“別バージョン”と感じる縦画面

まず、プレイを開始して驚くのが、アプリケーションが縦画面で起動するという点です。

『バルダーズ・ゲート』などCRPGジャンルのゲームのアプリケーション移植例は他にもありますが、今回のAndroid版『ディスコ エリジウム』はそういったものとは異なり、完全に作り直されています。

と、いうのもAndroid版『ディスコ エリジウム』は原作の見下ろし視点でのCRPGではなく、テキスト部をノベルゲーム的に読み進めながら画面をタッチし物品や人間を調べる、というポイント&クリック式のアドベンチャー的なゲームプレイに変化しているのです。そしてそれに伴って数多くの絵が書き下ろされており、見た目も原作と大幅に異なるものになっています。

原作のスクリーンショット
同じ場面のAndroid版スクリーンショット

もともとアドベンチャーゲーム色の濃い『ディスコ エリジウム』ではありますが、Android版では完全に割り切ってほとんど完全にノベルゲームとして作られていて、移植というよりは「別バージョン」と呼んだほうが正しそうです。

スマートフォンでのプレイにはかなり最適化されているが……

ジャンルの変化は、特にスマートフォンでプレイするにあたってはおおまかに良い方向に作用しているように感じられました。操作も多くの場合片手で難なく行うことができるので、電車などの移動中でも遊びやすくなっています。また、画面全体の演出がいちいちかっこよく、目を奪われること間違いなしです。

ゲーム性が大きく変化していることによってAndroid版は原作よりも「遊びやすさ」が向上しているとも感じました。冒頭で説明したようにややとっつきづらいところがある本作ですが、筆者が思うにその大きな理由は「ゲームの序盤部で何をしたらいいのかいまいちわかりづらい」という点。Android版では自由度をかなり犠牲にするかわりに導線を整理し、基本的にはテキストを総当たりで読んでいけばゲームが進行するようになっています。

進行もRPG的に地続きだった原作でのゲームプレイとは異なり、場面ごとに「チャプター」が切り替わっていくという方式になっています。原作のように途中で何かを切り上げ好き勝手あたりを歩き回る……ということはできなくなっており、一度チャプターに入ると「次に進む」という表示が出るまではその場をしらみ潰しに調べなければならないようになりました。今までいた場所に戻ることもほとんどできず、見落としたものは見落としたままになってしまいます。

何か問題をほおっておいて他のことに手を付ける……というようなもとの『ディスコ エリジウム』で許容されていたような遊び方はほとんど出来ない、と言ってしまってもよいでしょう。スマートフォンでのプレイに最適化した結果、作品が本来もっていたCRPG的な自由度の高さはかなり減じているように感じられました。

とはいえ、原作でテキストがあったような寄り道要素は「未解決事項」という機能でかなりカバーされています。「未解決事項」では現在捜査中の場面から一旦離れて話題にあがった懸案事項的なシーンをこなす――というもので、原作の「歩き回る」ような要素を擬似的に搭載していると言えると思います。

CRPGではなくテキストアドベンチャー的に楽しむと割り切ればかなり良い出来

Android版では『ディスコ エリジウム』というものをテキストアドベンチャー的な機能のなかでできるかぎり再現しようという試みをかなり感じることができました。原作未プレイでゲームが苦手なプレイヤーや、原作を断念したプレイヤーだけではなく、原作が好きだったプレイヤーにとっても本作は新たな物語の見方を提示してくれるようなバージョンにもなっています。

「思考」を取得し、内面化するという原作にあった要素もきちんと再現されていますが、取得するのにスキルポイントに加え現実時間の経過が必要となります。この仕様はかなりストレスフルで、一気にゲームを遊びたいプレイヤーには向いていません。(現時点で確認できる資料では時短の課金要素などはないようです。)

ダイスロールで成功/失敗の判定をする、という要素も原作から引き継がれていますが、Android版では自由にセーブ/ロードを繰り返すことができないため、失敗したらやり直すことはできません。そのせいもあってか、筆者環境だと「次の場面に進む」条件を達成できず、総当たりですべての会話のすべての選択肢を試してもゲームが進行できない、というバグに遭遇することもありました。まだリリース前のビルドですのでしょうがありませんが、最初からやり直すことになると実時間経過で手に入れた「思考」もリセットされてしまうため相当な徒労感がありました。

ある程度場面を進めないと場所を移動できないというゲームの仕様上、プレイヤーは総当たり的に会話を読み進める必要があり、その結果本来は選びたくない選択肢も選ばざるを得ない状況になってしまう……というのもなかなかストレスフルでした。

自分の中の主人公像をロールプレイする、というような「RPG」的な楽しみ方はかなり削がれており、それを楽しみたい人は原作を遊んだほうがよい、ということになっています。

総評するとAndroid版は原作よりもかなり遊びやすくなっており「読み物」として『ディスコ エリジウム』を一通り体験したいプレイヤーにとってはベストな選択肢となっていると思います。またCRPGが得意でなかったり、本作を挫折したプレイヤーにもAndroidはおすすめできます。

しかしかなり自由度が後退しているため「RPG的な体験」を求めるプレイヤーは原作を遊んだほうがいい、というのが率直な感想です。前述したように移植というより完全に別バージョンですので、原作ファンは新たな目線でAndroid版を遊べるでしょうし、演出や美術などは素晴らしいの一言につきます。

筆者個人としてはAndroid版のリリースで一人でも『ディスコ エリジウム』のファンが増えれば同様のゲームを遊べるチャンスも増えるでしょうから、この機会にぜひ、Androidユーザーのかたは手にとって遊んでみてほしい……!と思います。

Android版『ディスコ エリジウム』は基本無料(レベル4以降をプレイする場合は9.99ドル)で、8月5日にリリース予定です。


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ライター:文章書く彦,編集:宮崎 紘輔


ライター/「ラジオ善意X」聴いてね 文章書く彦

好きなガンダムは∀ガンダム、好きなマンガはレベルE、好きな映画監督はポール・トーマス・アンダーソン、好きなゲームジャンルはオープンワールドものとローグライク(ローグライト)、好きな昆虫はカマキリ、好きなバンドはFUGAZI、好きな作曲家は浜渦正志、好きな小説家はカート・ヴォネガット・ジュニアと舞城王太郎、好きなラッパーはポチョムキン、好きな焼酎は鳥飼、好きなルフィが言ってない言葉は「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!(ドン)」、好きな笑い男が書いてた言葉は「or should I?(だが、ならざるべきか?)」。

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編集/タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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