地上の楽園と評されて久しい常夏のハワイ。『龍が如く8』では陽気なロコ達との交流やリゾート気分のアクティビティを満喫できますが、その一方で、物語序盤ではあるホームレスに絡んで衝撃的なエピソードがあり、本土から流れてくるホームレスの実態など、美しい光だけではないシビアな闇の部分も描写されました。
実際に、ハワイはホームレスが人口比で10,000人あたり約40人と全米で最も多い州です。ハワイ州は2015年にロサンゼルス、ポートランドに続いてホームレスの非常事態宣言を発令。以降増加の一途を辿り、街中にはテントや浮浪者が見るからに溢れています。マウイ島における2023年の大規模な山火事はそこに追い打ちを掛けるような出来事でした。
最も大きな被害を受けたラハイナの町はこれによって壊滅し、1万人以上が避難を避難を余儀なくされました。焼け跡の撤去が大まかに終わった現在でも帰還と再建は難航しており、繁華街跡地には更地が並んでいます。家も仕事も失った人はホームレスとなり、2024年度末のアメリカ連邦政府による統計では、ハワイのホームレスの人数は前年比87%上昇したと発表。エリックが言及したホームレスの「送り込み」も実態として存在し、ニューヨーク市が実施した「家賃一年分相当の一時金を給付し、他の州に移り住んでもらう」という政策がそれに該当します。ハワイ州は逆に給付金と共に本土に送還する政策を採り、どの州も同じように他州へ押しつけ合って、根本的な解決とはほど遠いたらい回しの様相です。
ハワイは不動産価格が急上昇しており、普通に家を借りるのも大変です。2024年度の賃料中間価格では、ハワイはカリフォルニアをも越えて全米で最も高い2,399ドル、日本円で約36万円（150円レートで計算、以下同）を記録。2018年では全米11位で、もともと土地が少なく高めの傾向ではあったのですが、不動産投資などの影響もあって急激な高騰が起こりました。ワンルームの相場ですら約1,000ドル、寝室付きで約1,600ドル（約24万円）。かといって賃金がそれに見合うほど得られるわけでもなく、2024年は最低賃金を時給14ドルに引き上げたものの、フルタイムで働いても月収約2300ドル（約35万円）ですから、低所得者層の困窮解消には厳しすぎるのが実情です。
生活費全体としては、ニューヨークに次いで全米2位。ハワイで快適に暮らすために必要な年収は112,411ドル（約1686万円）という調査もあります。参照した2005年のガイドでは、「日本から見たら物価が安いと感じる」と書いてありましたが、円安が進んだ現在では円基準でおおよそ日本の2倍程度まで上昇しています。参考としてビッグマック単品は5.79ドル。特に卵は1ダースパックで約9ドルと、おいそれとは使いにくい価格です。元々離島のために輸送コストがとにかく高いというのはありましたが、ガソリン価格の影響などでベースも上昇傾向が続いており、さらにいわゆるトランプ関税が拍車を掛けるのではと懸念されています。
一昔前は日本人にも大人気の旅行先だったのですが、やはり円安と物価高のためかその数は大幅に減ってしまいました。同じアメリカ領でも免税が整った近場のグアムと比べると、やはり旅費は一回り多くかかります。そして、ここまで深刻化している以上ホームレスを眼に入れずに滞在するのは難しいでしょう。
とはいえ、人間の事情がどうであろうとあろうと自然の美しさやハワイ文化の豊かさは変わらないので、色々気をつける点はありつつも、観光地として唯一無二の魅力を持っているのは間違いありません。確かに物価は高いですが、ファーマーズマーケットで買える地元の農産物や、肉系などアメリカに流通している食をメインに楽しむなど工夫すれば充分節約は可能です。
実際に旅行に行ってお金を落とすのも良いですが、日系人コミュニティも被害を受けた火災からの建て直しの支援で、気持ちを繋げるのも一つの手です。マウイ島復興に対する支援金受付はマウイストロング基金などで引き続き受け付けているので、『龍が如く8』のプレイを通じて何か感じるところがあった方は、サポートの輪に加わってみてもいいかもしれません。
