
近年の『アサシン クリード』シリーズではそこらへんにある食べ物をつまみ食いでき、『アサシン クリード ブラック フラッグ RE:シンクロ』のケンウェイ船長は置いてある酒瓶も平気で持っていきます。
序盤では拠点のグレート・イナグア(イグアナではない)でプランテン(調理用バナナ)を振る舞う場面もありました。港を回れば飲んだくれがそこらに転がり、過去のヴァイキングにも通じる飲みっぷり食べっぷりを見せてくれる海賊達ですが、実際のところ彼らはどんなものを日頃食べていたのでしょうか。

日本より赤道に近いカリブ海の気候は年間を通しておおよそ20から30度で、乾季と雨季がある高温多湿。ちょうど今頃の日本に近い……と言いたいところですが、酷暑続きの日本と異なり30度前後と一回り低く、今の日本の夏よりは幾分か過ごしやすいと言われています。
とはいえ、そのような環境では水も食糧もすぐに腐り、船上に積むのは数か月の長期航海に耐えられる保存食がメインになります。
想像してみてください。真夏のベランダに3か月放置したペットボトルの水に口を付けることを……。

そうした理由で船上における飲み物は基本的にアルコールもしくはその水割りとなります。
ビール、ウイスキー、ジン、ブランデー、酒精強化ワインなど、水の代わりにこれらの酒が配給されました。もちろん、普通の水が全く飲めなかったわけではありませんが、航海日数が伸びるほどまともな飲料水は限られていきます。

カリブを代表するラム酒は、自生していないサトウキビを持ち込んだ16世紀に登場した当時としては新しい酒でした。砂糖の副産物を利用するためプランテーションや砂糖貿易と密接に関わり、欧州本土から運んでくるよりも地元で大量に作れて安く買える。当時樽熟は未発達なので、ウイスキーもラムもほぼ焼酎に近いものでした。
熱中症対策に酒を飲め、と言っているようなものですから、当然船乗りの多くがアルコール中毒になってしまいます。船乗りが陽気に酔っ払ったり殴り合ったりしているイメージも、実際のところ依存症の影響は決して少なくはないでしょう。街のあちこちでぐったりしている人の姿こそ、当時の船乗りの過酷な実態を表しているのではないでしょうか。

この時代に栄養学なんてものはないに等しいので、ビタミン不足から来る壊血病も深刻な問題でした。柑橘が効くことは経験則からある程度知られていたようなので、レモンジュースを配っていた船も16世紀に記録があります。酒に柑橘ジュースを混ぜ、カクテルのように飲むこともあったでしょう。

続いて食べ物について。当時の最もポピュラーな保存食と言えば、やはり鱈の塩漬け(バカラオ、バカリャウ)でしょう。その起源は北海のヴァイキングが用いた鱈の干物に遡ると言われています。
数か月かけて完全に水分を抜くと、数年保存できるように。軽量で重ねて保管するので交易品としても優れており、大航海時代から長く船上で食べられてきました。
もう一つ主要な保存食に「ハードタック」があります。これは小麦粉と塩を練って堅く焼き締めたもので、日本でも非常食に用いられるいわゆる堅パン、別名アイアンプレートのアレです。文字通り全く歯が立たないので、水分でふやかして食べるのが通例なのですが、前述の通り船上で水の保管はきかないので、配給のビールやラムに漬けて食べていたと推察されます。
ちょっとオシャレな食べ方っぽいですが、熱中症でフラフラなときにこれを食べたらどうなるか。保存がきかないなら作ればいいじゃない、ということで、船内には豚やニワトリなどの家畜が飼育されていました。特に鶏の卵は屠殺しなくてもすむ貴重なタンパク源で、「Cackle fruit」などと呼ばれます。また、カリブ海に多く生息するマグロを釣ることもありました。


数か月に及ぶ航海を保存食だけで賄うのは難しいので、時には寄港地や無人島で狩猟を行い、当座の食糧を確保します。特にウミガメは捕獲のしやすさや量において人気がありました。それでも足りないときは革製品を細かく切り、叩いたりゆでたりして柔らかくしたものをなんとか口にしました。さらにその先は……おおよそ想像したとおり。

ここからは、当時から伝わっているカクテルレシピを再現してみます。ラムは樽熟していないホワイトラムを、ビールは輸送用のホップ増量が起源のIPAを使用。水もビールも当時に倣って冷やさず常温にします。
ボンボ:ラム、水、砂糖、スパイス(ナツメグなど)

商船略奪の戦利品だけで作れる、手軽な海賊らしい一杯。ラムにスパイスを合わせた「スパイスドラム」のラベルに海賊が描かれるのもこれが由来でしょうか。

砂糖とスパイス。海賊なんで細かいことは気にせず目分量。

ラムと水を入れ、ステアしてできあがり。レモンジュースや気付けの唐辛子を入れるのもあり。ナツメグの柑橘的な香りと、砂糖とクローブの甘さで結構濃いめの印象が出ます。後の時代に出たグロッグのレシピにも似ています。コーラで割っても良さそうですね。
サー・クラウズリー:ブランデー、ビール(エール)、レモンジュース

壊血病にも効くレモンを使ったレシピ。こちらは海軍の海賊討伐やスペイン継承戦争で活躍した提督サー・クラウズリーにちなんだ名前です。ブランデーやホップの渋みにレモンの酸味で結構刺激的な味です。
ラムファスティアン(Ramboozle):生卵、ビール(エール)、シェリー(ワイン)、ジン(スピリッツ系)、砂糖、スパイス(ナツメグなど)

ラムを使っていないのにラムファスティアンとはこれいかに、多くの素材を使った贅沢な一杯です。今回はシェリーの代わりに白ワインで代用しました。

卵を溶き……

砂糖、スパイスを入れ……

白ワインとジンを入れ……。

IPAを注いでできあがり。生卵とエールの泡でかなりもったりしています。砂糖とスパイスで疲労回復に効く感じがします(個人の感想)。アルコールが回るのは少しゆっくりですが、海賊時代のエナジードリンクみたいなものでしょうか?
オリジナルレシピとしては大鍋で多めに作るものらしいので、恐らく振る舞い酒として用いられたのでしょう。スピリッツ系はさすがに強いので、再現するときはしっかり水分補給をして臨んでください。













