『いろとりどりのセカイ』『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』で知られる、漆原雪人先生の5年ぶりとなる新作ゲーム『花束を君に贈ろう-Kinsenka-』が発売しました!
キャラクター原画およびデザインは、にじさんじに所属していたVTuber・鈴原るるさんのデザインを手掛けた人気イラストレーター・さいね先生が担当しています。
可愛らしくて温かみのある登場人物たちにホッコリ……と思いきや、漆原先生が得意とする美しくも苦しい世界観に胸がギュッとなる場面も。人の持つ薄暗い部分を描きつつ、希望を感じられる物語に感動させられました。本稿では、そんな本作のプレイレポートをお届けします。
※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未プレイの方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。
予想を裏切る展開の連続!“心に痛みを感じない主人公”の行動

「……人の心は“痛み”でできている」
こんな物騒な映像で始まった本作ですが、次のシーンではかわいい女の子たちと食卓についているという急展開がやってきます。
大まかなあらすじだけ頭に入れてプレイを開始したため、筆者は「まさかのハーレム作品だった!?」と驚きました。しかし、また次のシーンでは主人公「橘才(CV:花守ゆみり)」が人を殺している……!?
まさに衝撃の連続で、すでに「次は何が起こるのか?」とワクワクしてしまいます。

人を殺したというのに、何の罪悪感もなく平然としている才。実は彼は、“心に痛みを感じない”人間なのです。

これまでにも多くの人間を殺してきた才。この日も平気な顔をして遺体の処理をしようとしていたところに、どこからともなく1枚の紙が落ちてきます。
それは才の「死亡診断書」で、突然現れた狐の面を被った少年「鎌原竜起(CV:森嶋秀太)」と、表情の読み取れない少女「紅緒祀(CV:石見舞菜香)」から、才は襲われてしまいます。

展開だけではなく、主人公の人間性も予想を裏切ってきます。
祀の姿を見て、初めて胸の痛みを感じた主人公。それを“恋”だと認識し、通りすがりのオジサンを脅して車を運転させ、彼女と一緒にいた竜起を轢き殺します。

そして祀の前で膝を付き、「好きだ」といきなり告白するのです。

……予想外の展開が続いてワクワクしていると書きましたが、この時点で筆者は「これはフィクションとして楽しむ作品だな」と“共感”を諦めました。仕事柄、先にテーマ性を念頭に置いてプレイしてしまっていたので、「心の痛みに寄り添ってくれる作品なんだな」と思い込んでいたからです。
そして、その諦めが「間違いだった!」と気づくのもまた予想外。この作品、少しプレイしただけで「こんな作品なんだな」と飲み込むのは早すぎるのです。じっくりと読み込み、自身の頭の中でゆっくりと噛みしめることで、漆原先生が提示するテーマがじんわりと体に滲んでいく感覚がしました。
ストーリーを読み込んで感じてほしい、キャラクターたちの“心の成長”
運命的(?)な出会いを果たした才と祀。それをきっかけに、才は祀たちの暮らす現実とは別の世界「夕暮れ」で、ひとつ屋根の下で一緒に生活することとなります。
そして、祀や竜起、その他のキャラクターと関わることで、才に変化が。序盤ではその変化が微々たるもので、やはり「なかなか感情移入ができないな」と思っていたのですが、物語が進み才の過去などが見えて来ることで、だんだんと受け入れられるようになってくるのです。
また、祀や竜起、そして「夕暮れ」で出会う「神鳥夜空(CV:空賀花)」「霧島梅雨(CV:首藤志奈)」「塚原碧(CV:咲々木瞳)」「杏道目々(CV:月城日花)」「紅緒終(CV:田中貴子)」「ペンギン(CV:藤沢れい香)」といったキャラクターたちも、みな魅力的で“何か”を抱えています。

例えば竜起について、上記で「轢き殺された」と書いてしまいましたが、生まれつき身体に痛みを感じない身体の一部に鋼鉄を入れて改造しているので、彼は生き延びます。たとえ終からボロクソに言われようとも、“呪詛祓い”の仕事をこなすのは、実は祀に対する“ある思い”があるから。

また、そんな祀にはもう1つの人格が……そちらの人格の名は「ヒトデナシ」です。この人格についてのエピソードもしっかりと描かれており、クライマックスは涙なしで見ることはできませんでした。
「もっと読んでいたい」と思わせてくれる感動の物語
そして物語序盤を読んでいる感情と、読み終わったときの感情がまったく違うというのが、最後の予想外です。それもこれも、漆原先生の紡ぐ繊細でやさしい言葉があってこそ。辛いシーンもたくさんありました。でも読み終わった後に心の中に残っているものは、絶望ではなく感動です。
漆原先生らしく、本作の文章量はとてつもなく多いです。それでも最後には「もっと読んでいたかった」と思わせてくれるほど、充実度の高いストーリーでした。

ちなみに、タイトルにある「キンセンカ」は、作中には重要なアイテムとして登場する……ことはありません。
それなのに「なぜタイトルを冠しているのか?」と考え、キンセンカの花言葉を調べてみると、「慈愛」「乙女の姿」「変わらぬ愛」「静かな思い」「別れの悲しみ」「失望」だそうです。これらの花言葉、本作にピッタリです!遊んでみて、ぜひその本当の意味を探ってみてください。
ビジュアルノベルゲーム『花束を君に贈ろう-Kinsenka-』は、PC(Steam/DMM GAMES/DLsite)にて4,950円(税込)で配信中。Steamでは2025年8月29日21時までフロントウイング25周年セールを実施中で、10%オフ価格で購入できます。成長する少年少女たちの物語を、この機会にぜひ味わってみてください。
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