「2.5D」RPG制作も!『RPG Developer Bakin』正式版リリース直前インタビュー―3Dダンジョン機能が早期実装された理由、そして“馬琴”という名前に込められた想いとは | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「2.5D」RPG制作も!『RPG Developer Bakin』正式版リリース直前インタビュー―3Dダンジョン機能が早期実装された理由、そして“馬琴”という名前に込められた想いとは

実は名前は「Bakin」ではなく「バキン」。そんなRPG作成ツールの裏側に迫ります。

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「2.5D」RPG制作も!『RPG Developer Bakin』正式版リリース直前インタビュー―3Dダンジョン機能が早期実装された理由、そして“馬琴”という名前に込められた想いとは
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2022年10月の早期アクセス開始から約3年、ユーザーからのフィードバックを元に大型アップデートを重ねてきたプログラミング不要のRPG制作ツール『RPG Developer Bakin(RPG デベロッパー バキン)』。その正式版が、いよいよ2025年8月28日にSteamにてリリースされます。

「誰もが“自分の世界”をゲームにできるツール」をコンセプトに、3D空間を活かしたライティングや「2.5D」とも呼ばれるようなグラフィック表現を、プログラミングの知識なしで実現できる本作。早期アクセス期間中には、ユーザーの要望に応える形で3DダンジョンRPG制作機能やVRMモデル対応など、多彩な機能が実装されてきました。

今回Game*Sparkでは、正式版のリリースを目前に控えた『Bakin』チームリーダー兼同社取締役の長井伸樹氏にお話を伺いました。前作『SMILE GAME BUILDER』からの進化、競合ひしめくゲーム制作ツール市場での戦い方、そして“Bakin(馬琴)”という名前に込められた意外な想いまで、ツールの魅力と開発の裏側に迫ります。


■「2.5D」の流行が追い風に。数々のゲーム制作ツールへのリスペクトから生まれた“馬琴”

――本日はよろしくお願いします。

長井伸樹氏(以下、長井):スマイルブームの長井です。チームではリーダーとして、制作も販売周りも全ての統括を行っています。実態としてはデバッグもすれば仕様も書く、宣伝素材も作るし、と幅広くやっている感じですね。もちろん、いろんなユーザーさんからのご要望を束ねて限られたチームのリソースの中で優先度をつけて何を作るのかを決めるところもです。

――まずは『RPG Developer Bakin』開発の経緯についてお聞かせください。前作『SMILE GAME BUILDER』がありましたが、そこからの発展形となるのでしょうか。

長井:はい。『SMILE GAME BUILDER』は2016年に発売しましたが、その翌年2017年にはもう『Bakin』のプロジェクトはスタートしていました。私自身は2019年にチームに合流したのですが、当時はまだ描画エンジンなどの骨組みがある状態というだけで、「なんでも作れるツール」という状態で、少しフォーカスが絞られていない状態でした。そこで、「誰でも自分の世界が作れる」「ゲーム作りが楽しめる」というコンセプトを固め、「RPGを作るツール」として舵を切ることにしたんです。

――昨今のインディーゲームでは「2.5D」と呼ばれる表現が1つのトレンドになっていますが、これは意識されたのでしょうか。

長井:まさにその流れは大きかったですね。『SMILE GAME BUILDER』はフル3Dのツールでしたが、ユーザーさんが3Dアセットを用意するハードルは非常に高い。そこで『Bakin』では、2Dのキャラクターが3D空間を動き回る、という形を主軸に据えることにしました。ちょうどその頃にそういった表現が注目され始めたので、ユーザーさんにも分かりやすく、入りやすいだろうと。

――RPG制作ツールといえば、非常に有名な競合タイトルがあります。その中で、『Bakin』の立ち位置はどのように考えていらっしゃいますか?

長井:もちろん、さまざまな制作ツールを全てリスペクトしています。実は、我々のチームのメインプログラマーもPC-98の時代から各種のゲーム制作ツールが大好きで、それぞれを非常にリスペクトしています。その上で『Bakin』の差別化ポイントは、やはり3D空間を活かしたライティングなど、現代風の絵作りができる点です。世界的に見ても3Dを使ったゲームは増えていますから、そういった表現をしたいクリエイターの受け皿になれればと考えています。

――なるほど。そのリスペクトは、もしかして「Bakin(馬琴)」という名前にも……?初見だとみんなパンなどを焼く「Baking」の意味なのかなと思われていそうですが。

長井:気づかれましたか(笑)。正直に言うと、ありますね。かつて著名な詩人の名前を想起させる名作ツールがありましたね。そこから着想を得て、我々も、ユーザーの皆さんが「曲亭馬琴」のように、ご自身の物語をPC上で具現化できるツールにしたい、という想いを込めて『Bakin』と名付けました。これで胸のつかえが取れたなら幸いです(笑)。

■ユーザーと共に歩んだ3年間―汎用ツール開発の難しさと3DダンジョンRPG機能の早期実装

――2022年10月の早期アクセス開始から約3年、非常に多くのアップデートを重ねてこられました。この期間で最も苦労された点は何でしょうか。

長井:やはり、世界中のユーザーさんからいただく多種多様なご意見やご要望をどう整理し、優先順位をつけて実装していくか、という点ですね。同じようなシステムであってもみんな実際に欲しいものの詳細は違うので、特定の誰かのゲームに特化した機能ではなく、様々な人が使える「汎用的な機能」として設計しなくてはならない。このバランス調整がツール開発の最も難しく、大変な部分です。この2年半、開発チームは常にユーザーさんとキャッチボールをしながらツールを進化させてきました。

――ユーザーからのフィードバックで印象的だったものはありますか?

長井:特に印象的だったのは、「3DダンジョンRPGを作りたい」という声が非常に多かったことですね。これは我々もいずれ実装したいと考えていた機能でしたが、予想以上の熱量だったので、計画を前倒しにして実装することにしました。ツールとして見せられるサンプルの画のバリエーションが増えるという狙いもありました。こういったことは意外に多くて、結果的に、『Bakin』はライブ感のある開発になりましたね。

マスク関連の機能やVRoidとの連携などはそういった前倒しでの実装となった機能です。

■ついに正式版!装備やレベルの細かな設定が可能に。そしてその先の未来

――8月28日にリリースされる正式版では、どのような新機能に注目してほしいですか?

長井:地味に見えるかもしれませんが、「アイテム利用可能レベル」と「装備箇所指定の追加機能」ですね。前者は「レベルがXXになったらこの武器が装備できる」といった設定が可能になるもので、後者は武器を2つ持ったり、指輪を指の数だけ着けたりと、装備のスロットを自由に増やせる機能です。どちらもユーザーさんからの要望が非常に高く、ゲームシステムの作り込みの幅を大きく広げるものになると思います。

――正式版リリース後のロードマップも公開されていますが、特に注目すべきアップデートはありますか?

長井:まずは「控えメンバー」機能の拡充です。バトルに参加していないメンバーにも経験値が入るようにしたり、メンバー交代をスムーズにしたりと、パーティー運用の根幹に関わる部分を強化します。そして、「オートバトル」の実装も予定しています。将来的には味方のAIを細かく設定できるところまで持っていきたいですね。

――ロードマップには「タクティカルバトル」という気になる項目もあります。

長井:はい、いわゆるシミュレーションRPGのバトル部分ですね。これは非常に期待の声が大きいのですが、開発は難航しています(笑)。というのも、チーム内にいるシミュレーションRPG好きのスタッフたちの「流派」がそれぞれ違うんですよ。国内のゲームだとこう、、海外のゲームだとこうだ、と……。下手に作ると「これじゃない」と言われるのが目に見えているので(笑)、一度正式版で落ち着いてから、改めて仕様を固めていきたいと考えています。

――また、有料DLCとして「マルチランゲージ切り替え」機能も予定されていますね。

長井:これは、1つのゲームデータで日本語、英語、中国語といった複数の言語に対応できるようにするプラグインです。テキストの切り替えはもちろん、例えば「ごごご」という書き文字のスプライトを、英語版では「GO GO GO」の絵に差し替えるといったリソース単位での置き換えも可能になります。

ボイスなどがわかりやすい例ですが、極端な例もいえば、特定の言語でだけ特定の建物などの形をその国に合ったものへと変えることもできます。お城の形が日本語版だと和風で、海外版だと洋風になるとかですね。

この機能を必要とするユーザーさんの絶対数やその利用方法を考えて有料にはなってしまいますが、Steamでの販売や、海外展開を考えるクリエイターさんにとって非常に強力なツールになるはずです。

■「作る過程こそが遊び」―教育への活用とクリエイター支援で見据える未来

――正式版のリリースで一区切りとなりますが、今後の海外展開や教育分野での活用などもお考えでしょうか。

長井:はい、すでに小学生向けのワークショップや専門学校での実習など、教育分野での活動は積極的に行っています。イラストは描けるけれどプログラムは書けない、でもゲームは作ってみたい、という学生さんはたくさんいます。そういった方々に、ゲーム作りは決して難しいだけのものではないと伝えたいんです。

――ツールを通して、ゲーム作りの楽しさを広げていきたいと。

長井:まさにそうです。『Bakin』の根幹には、「ゲーム作りを楽しんでほしい、楽しむ人を増やしたい」という非常に重大なテーマがあります。完成した時の達成感だけでなく、アイデアがうまく動かなかったり、試行錯誤したり、途中で友達に見せて褒められたり……そういった「ゲームを作っていく過程」そのものが、僕らにとっては最高の「遊び」であり、体験だと思っています。この体験を、ツールを通して一人でも多くの人に味わってもらいたいですね。

――ユーザーが制作したゲームを販売する際のサポートなどはお考えですか?

長井:我々ができる範囲でクリエイターの皆さんの活動を積極的にサポートしていきたいと考えています。。技術的なお問い合わせにはもちろん対応しますし、東京ゲームダンジョンなどのイベントに出展する際には、『Bakin』製のゲームを出展されている方々と連携してチラシを配り合うといった協力もしています。将来的には、『Bakin』製のゲームを集めて紹介するような機会、言うなれば「Bakinファミリー」のような形で、コミュニティ全体を盛り上げていきたいと考えています。

■ゲーム作りの楽しさをすべての人に

――ユーザーコミュニティも活発ですが、印象に残っている作品はありますか?

長井:当初PCの操作もおぼつかなかったという方が、『Bakin』に出会って、初めてゲームを作り、我々と同じイベントにも出展されたのには感動しました。

まさに我々が目指している「ゲーム作りの楽しさに目覚めてもらう」ことを体現してくれたユーザーさんたちです。このほかにも、1年で100本のミニゲームを作った方や、海外のユーザーさんが我々の想像もつかないようなアートな作品を作っていたりと、いつも驚かされています。

――最後に、これから『Bakin』を触ってみようというユーザーに向けてメッセージをお願いします。

長井:『Bakin』は、自分の頭の中にある物語や描いた絵を、ゲームという形にしたいと思っているすべての人に使ってほしいツールです。我々は、ゲームが完成した時の喜びだけでなく、作っている途中の悩んだり、試行錯誤したりする過程そのものが「遊び」であり、最高の体験だと思っています。『Bakin』は正式版になりますが、これからもユーザーの皆さんと一緒にこのツールを育てていきたいと思っていますので、ぜひゲーム作りの輪の中に飛び込んできてください。

――本日はありがとうございました。


『RPG Developer Bakin』は、PC(Steam)向けに2025年8月28日リリース予定。価格は9,200円(税込)で、同日には無料体験版の配信も予定されています。また、ゲームクリエイターの祁答院慎氏とのコラボレーションとして、「数ヶ月でどこまでのゲームが作れるのか」をテーマにした新作サンプルゲームも現在制作中です。

祁答院慎氏開発ブログ「Made with RPG Developer Bakin」 第2回:ゲーム作り 始めた僕も 大勝利
ライター:Arkblade,編集:Akira Horie》

ライター/関連業界のあちこちにいたりいなかったりしてる人 Arkblade

小さいころからPCゲームを遊び続けて(コンソールもやってるよ!)、あとは運と人の巡りで気がついたら、業界のあちこちにいたりいなかったりという感じの人に。この紹介が書かれた時点では、Game*Sparkに一応の軸足を置きつつも、肩書だけはあちこちで少しづつ増えていったりいかなかったり…。それはそれとしてG*Sが日本一宇宙SFゲームに強いメディアになったりしないかな。

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Akira Horie

編集/『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam/Nintendo Switch好評発売中! Akira Horie

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