さまざまな人格が眠る飲んだくれ刑事が主人公の異色RPG『ディスコ エリジウム』を手掛けたZA/UMが、先日発表した新作『ZERO PARADES』。
“相変わらずセンスが圧倒的”という以外まだまだ謎に包まれている本作ですが、Game*Sparkでは本作のゲームプレイの一端を垣間見ることができました。本記事ではそのレポートをお届けします。
“アンチジェームズ・ボンド”なスパイもの

プレイヤーが操作するのは、コードネーム“Cascade”を持つスパイ ハーシェル・ウィルク です。
彼女はかつて仲間を裏切り、チームを失ったという過去を抱えています。再び派遣された都市国家ポルトフェロでは、三大勢力の思惑が入り乱れる中でスパイ活動を行うと同時に、失った仲間を再び集め、人間関係を修復できるかどうかが大きなテーマとなります。

開発者は「華やかなスパイ映画に登場するようなアクションヒーローではなく、弱さや後悔を抱える“アンチ・ボンド”」として彼女を設計したと語っており、ファンタジーすぎないリアルで地に足のついたスパイが楽しめそうです。
舞台と三大勢力


物語の中心となる都市国家ポルトフェロは、複数のディストリクトに分かれています。
ブートレグ・バザール:海賊版メディアや違法品が溢れる闇市のようなエリア。
パーティーアリー:祝祭的な喧騒と裏社会が同居する街区。
Fogged Mirror:パーティーアリーにある酒場で、何度か訪れることになる重要なロケーション。
また、街の裏路地には小さな祠が隠されているなど、探索を通じて発見できる仕掛けが随所に配置されていると説明されました。
ポルトフェロでは以下の三大勢力が覇権を争っています。
Super Block:共産国家の連合体。ハーシェルはこの勢力のスパイ組織「オペラ」に所属し、「オペラント」と呼ばれるエージェントとして活動します。
La Luz:テクノファシスト的な支配体制を持つ勢力。
国際開発銀行:資金援助を通じて各国を支配するまでに成長した超国家的組織。
三者が絡み合うポルトフェロは、歴史的な悲劇を経て閉塞感に包まれており、「歴史の終焉」を思わせる不穏なムードが漂っています。

ゲームプレイの特徴
本作は『ディスコ エリジウム』の流れを汲むテキスト主体のCRPGですが、複数の新要素が導入されています。

失敗を受け入れる設計
「Failing Forward(失敗して前進する)」をデザイン哲学とし、失敗が物語を進展させる仕組みになっています。セーブ&ロードによるやり直しではなく、失敗そのものが新たな展開を生み出します。スキルチェックと新メーター
体力ゲージの代わりに「疲労」「不安」「錯乱」といったメーターが存在。行動や選択によって上昇し、時にリスクを負って成功率を上げる判断が必要となります。コンディショニング(Conditioning)
思考を「強化」あるいは「抑圧」するシステムで、キャラクターの能力や選択肢に影響を与えます。思想に逆らった行動も可能で、その矛盾がキャラクター性を深める要素となります。スキル体系
「感覚」「反射」などスパイ的スキルに加え、「ポエティクス」「テクノフレックス」といった人間味あふれるスキルも存在。ハーシェルの人間的側面を描き出します。探索と装備
衣装や装備の組み合わせは外見だけでなく、エリア進入や会話内容に影響を及ぼします。探索によって多彩な発見が用意されています。

新システム「ドラマティック・エンカウンター」
新要素として、「Dramatic Encounters(ドラマティック・エンカウンター)」 が紹介されました。
これは文章主体のゲームに緊張感を加えるための仕組みで、即断即決の選択がプレイヤーに迫られます。結果は予測不能で、成功も失敗も含めて物語が進展する仕様です。

開発陣は「スパイという存在の屈辱や神経質さ、日常的な失敗をゲームに組み込みたい」と強調しており、従来のパワーファンタジー型RPGとは一線を画す体験を目指しています。
90年代的な美学が演出する“歴史の終焉”
作品全体には90年代的なアナログ/デジタル混在の美学が反映されています。ガジェットや衣装のデザインだけでなく、当時の思想的キーワードである「歴史の終焉」を軸に、停滞感や閉塞感を強く演出。これが物語全体のトーンを支えています。
アート面では、ペン画のような質感を持つスタイルを採用。ハッチングやインクの飛び散りを意図的に用いて、世界の陰影や不安定さを強調しています。

また「ジャーナルアート」と呼ばれる仕組みも公開され、進行中のクエストが絵としてアップデートされる様子や、仲間の顔アイコンが光を帯びて再集結を示す演出なども披露されました。
開発者の背景
VOディレクターのジム・アッシュ・リーヴァイ氏は、『ディスコ エリジウム』でも同役職を務めていた人物です。彼は20年以上前からアートコレクティブ「ZUM」に所属しており、当初は「ブログと意見」から始まった活動が、いまや3作目のPCゲーム開発にまで発展したと振り返りました。
プロデューサーのジェス・クロフォード氏も「2022年からチームに参加し、主にアートチームと連携してきた」と語っています。
前作の開発者が離脱するなどの騒動もあったZA/UMですが、本作は『ディスコ エリジウム』と同じチームのDNAを持ちながらも、完全新規の世界・登場人物を描くIP であることを強調しています。
作品のインスピレーション
本作の執筆にあたり、開発陣はスパイ小説の古典を徹底的に読み込んだと述べています。特にジョン・ル・カレの「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」「スマイリーと仲間たち」などが大きなリファレンス元となっています。
同時に、スタニスワフ・レムやフィリップ・K・ディックといったSF作家の作品、そして韓国映画、とりわけパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』『別れる決心』などからの影響も挙げられました。演劇や映画の出身者も多いスタジオだけに、文学と映画を横断した強いインスピレーション が反映されていることがうかがえます。
『ZERO PARADES』は、スパイ映画的な派手さを排し、失敗・後悔・弱さを主題に据えた“アンチ・ボンド”的スパイCRPGです。
『ディスコ エリジウム』で培われたテキスト駆動のゲームデザインに、新たなシステムや90年代的なムードを融合させることで、従来にないスパイ体験を提供します。
今後の続報や実際のゲームプレイ映像公開にも注目が集まりそうです。













