「歩く」ってこんなに難しいんだね。文字通りの“ウォーキングシム”『Baby Steps』は、左右の足を一歩ずつ操作する過酷な物理演算アドベンチャー。「困難とイライラ」の先に見えた美しい世界【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「歩く」ってこんなに難しいんだね。文字通りの“ウォーキングシム”『Baby Steps』は、左右の足を一歩ずつ操作する過酷な物理演算アドベンチャー。「困難とイライラ」の先に見えた美しい世界【プレイレポ】

35歳無職おじさんが挑む、ハードな異世界さんぽ。

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「歩く」ってこんなに難しいんだね。文字通りの“ウォーキングシム”『Baby Steps』は、左右の足を一歩ずつ操作する過酷な物理演算アドベンチャー。「困難とイライラ」の先に見えた美しい世界【プレイレポ】
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2025年9月24日、Devolver Digitalがパブリッシャーを務める『Baby Steps』がPC(Steam)向けに配信されました。

怪作『Getting Over It with Bennett Foddy(壺男)』のBennet Foddyらが開発を手掛ける本作は、無気力な中年男性の足を一歩ずつ操作して高みを目指す、文字通りの“ウォーキングシミュレーター”ゲーム。

今回は、そんな特殊すぎる世界観が特徴的である『Baby Steps』のプレイレポートをたっぷりとお届けします。独特すぎる操作性ゆえに、数々の困難とイライラが溜まるゲームデザインでしたが、それを乗り越えた先に見た景色はとても格別でした。

なお、本稿は開発元よりSteamキーの提供を受けて執筆していますのでご了承ください。


無職ニートおじさんが挑むハード異世界散歩。『Baby Steps』とは

本作は、俯瞰視点のウォーキングシミュレーター+探索アドベンチャーゲーム。プレイヤーは、自宅のソファから滅多に動かない35歳無職のおじさん「ネイト」となって、霧に包まれた世界を探索します。静かな山々を一歩一歩自分の足で踏みしめていき、壮大な景色や地域の動物に心を奪われ…そして、無意味な人生に意味を見出しましょう。

主人公ネイト。どこか憎めない

最大の特徴は、容赦のない完璧な物理演算に基づいたウォーキングシステムを導入していること。もうこれがすべてと言っても過言ではありません。基本的に本ゲームは「歩く」こと以外のアクションはできず、ジャンプはおろか走ることさえ不可能な仕様です。

そのうえ、左右の足を交互に繰り出して「歩行」し、足を出す位置やタイミングが悪いと、ネイトはすぐにバランスを崩し転倒したり、落下したり…リアルな物理演算が効くため、まずまともに歩くことも難しいのです。そのせいでプレイ中は、めちゃくちゃフラストレーションが溜まります。途中「なんでこんなゲームやってんだ」と我に返り放棄しそうになることもしばしば。

しかしだんだんコツが掴めて一山踏破した時の、なんともいえぬカタルシスと達成感が気持ちいい。気づけば何時間もトライしている謎の中毒性がありました。

というわけで、さっそくハードコアな異世界散歩の旅に出かけてみましょう……!

操作方法&言語

操作方法はキーボード&マウス、またはコントローラーに対応。開発者によると、コントローラーでのプレイを推奨しています。なぜなら、より直感的に「歩行」操作が行えるし、キーマウでやると難易度がさらにハネ上がるからです。筆者はもちろんXboxコントローラーで遊びました。

インターフェースは日本語字幕に対応しています。イベントでの会話シーンなど、翻訳はコメディタッチですが特に問題はなく没入感を妨げたり、違和感があったりはしませんでした。

ほかには、グラフィック、オーディオ、アクセシビリティなど基本的な項目が並び、尖った作風にしてはちゃんとプレイ環境を整えることができます。

“甘さ一切ナシ”の過酷ウォーキング!足を一歩ずつ動かす難しさ

では本編開始。スタート画面に映し出されているのは、どこかの家の中のようです。新規ゲームを選択すると、そのままオープニングが始まり、家族を呼ぶ声が聞こえてきます。いったい誰を呼んでいるのかというと……

こちらがその張本人である「ネイト」です。彼は自室に引きこもっている無職の35歳男性で、その無気力かつ堕落した生活ぶりは見ての通り。しかも、「ピザばかり食わて早死させるつもりか?」と世話を焼く家族にも文句を垂れる始末で、救いようがありません。

ですが、リアルニート経験がある筆者からすれば、これくらいは朝メシ前の標準的態度です。…おや?もしかしたら読者の中にも心当たりのある人間がいるんじゃないでしょうか。

恐怖の家族会議

そして、頑なに引きこもるネイトに業を煮やした親たちから「家族会議をするぞ」と言われます。ニートにとっては、死の宣告に等しい恐怖のイベントです。当然働けと言われるだろうし、最悪の場合家を追い出されかねません。快適だった無職生活が終わるのか……絶体絶命のピンチ!と思った次の瞬間、ネイトが跡形もなく消え去ります。

ネイトが転送されたのは、緑豊かな自然に囲まれた異世界。突然の展開に動揺しますが、よく見ると彼の姿は自室にいたときと同じく着の身着のまま。いったいここがどこなのか分かりませんが、とにかく進むしかないみたいです。

ここから実際にネイトを動かせます。左スティックで移動とあるので、入力してみたところ……

コケる、コケる、コケる。とにかくコケて普通に歩けません。通常のゲームならば、行きたい方向にスティックを倒すだけで自然と歩き出すはずですが、本作ではネイトの足が動かずただ前のめりな姿勢になるだけ。

そこで、LTボタンで左足を、RTボタンで右足を交互に上げてみます。イッチニイッチニ、とリズムよく垂直に上げていきますが、それだけでは歩行できないので、合わせてスティックを前方向に倒してみると…

グッタリ
挙動すべてに慣性や物理的制約がかかる

やはりコケてしまいます。初めて味わう感覚に戸惑いを隠せません…とにかく一歩踏み出すのがマジでムズい

途方に暮れていると、別の変なおっさん「ジム」が登場。彼も異世界転生者らしく、やたらとネイトに絡んできます。もちろん、親切心からなんでしょうが…そのグイグイくる感じに会話も噛み合いません。結局、一緒に行こうという誘いを愛想笑いでごまかし一人で先へ進みます。じつに無職ニートらしい対応です。

危ねっ

洞窟を抜けると開けた場所が見えてきました。平坦な道の場合、まずRT/LTボタンで足を上げたのち、左スティックで歩幅と下ろす位置を調整して足を着地させ、すぐさまもう一方の足を同様に動かせば、ようやく「歩く」ことができます。

段差の場合もっと難しく、足場をよく見て最初の一歩の場所を決めておかないと、たちまちバランスを崩してズルっと滑って転けてやり直し。歩幅を大きくせず最小限にして、チマチマと確実に進んでいくことがコツです。

要はすべての挙動に慣性が働き、現実と同じような物理演算でシミュレートされているため、本当に赤ちゃんのよちよち歩き」のような操作感覚で一歩ずつ進んでいかなければなりません。

明かりが灯っている場所を目指す

さて、異世界の風景にも少し慣れてきたころ、ふと山の方角を見ると中腹あたりに明かりが灯っているのが見えます。とりあえず、あてもないのでアソコまで登ってみましょう。

またもやお節介なジムおじさんが登場。おしっこに行きたいネイトがトイレの場所を尋ねると、「無いから私の目の前でやれば良い」とか「キミの膀胱が心配だな」とか、よくわからない返答で困惑します。

本作は、イベントシーンでのコミカルで小気味よいキャラの掛け合いも面白くて見どころです。ネイトも含め登場キャラクターのどこか憎めないおかしさも魅力的でした。

さて、気を取り直して進んでいきます。傾斜のある山道は、滑りやすく危険。木の枝や石などさまざまな障害物があり、足場を見極めながら慎重に歩きます。

しかし少しでも気が緩んだり、早く進もうと横着したりするとすぐさま転倒して台無しに。

うわーー止まってくれぇぇぇぇ

極めつけは、斜面を渡ろうとしたところ土がぬかるんでいたらしく転倒し、山のふもとまで無限にズルズルと滑っていき、穴に落ちてしまう事態に……。これまでの努力と時間がすべて水の泡と消えます。

こんな感じで、過酷な旅路はさまざまな困難と試練が待ち受けており、途中までイライラが募りフラストレーションが爆発寸前になりました。

困難を乗り越えた先の達成感、広がる美しい世界

非常にハードで面倒の多い本作ですが、もちろん良かった点もあります。それは、全体マップがシームレスかつ縦横無尽に繋がっており、たとえ目標地点から遠ざかっても、その落ちた場所でまた新たな世界が広がっていることです。

たとえば、山から一番下まで転落し絶望を味わいましたが、這い上がってみると沼地にメリーゴーランドの残骸を発見。

タケコプター風の洒落た帽子をゲット!

あれ?テントのてっぺんに何かあります。滑りながらも素早く駆け上がり「タケコプター付きオシャレ帽子」をゲット!

このように、各地に散らばった帽子やアイテムを拾い集めていく収集要素も本作の楽しさのひとつです。

中にはカップを拾って特定の場所に持ってきてほしいなど、クエストっぽい依頼の張り紙もあって探索する面白さがさらに深まっていました。

収集アイテムは難易度の高い場所に置かれているので、簡単には取れません。けれども、何度も挑戦して成功した時の達成感と喜びは格別。気づけば時間も忘れて没頭していました。

また、困難な道のりを踏破した先に待っている美しい景色は、とても感動的で何よりのご褒美でしたね

他にも段ボールが密集したエリアや、下半身丸出しのイカれたキャラとの出会いなど、奇天烈な世界観は非常に強烈で、単純なゲームシステムの割に飽きが来ません。

さて、なんとか「歩く」操作にも慣れて、目標地点に到着。そこには、どデカいロウソクと美味しそうな食事があります。異世界に転生してから何も食べてなかったネイトは、空腹の限界。誰もいないし、まあちょっとだけ食べちゃおうか…と思った瞬間、今度は自室へと戻ってきてチャプター1が終了します。

この先ネイトにどんな試練が待っているのか、彼は無事に日常生活に戻れるのか…それはぜひプレイして確かめてほしいと思います。


本作は、左右の足を一歩ずつ操作しながら、文字通り本当の「ウォーキングシミュレーター」を思う存分味わえます。そのよちよち歩きのような操作感覚と挙動に、初めのうちは慣れずにフラストレーションが溜まるでしょう。しかし、その苦しみと、上手く歩けるようになった時の達成感とのバランスが絶妙で、ついついハマってしまうゲームデザインの巧みさが光っていました。

また、さまざまなロケーションが用意されており、美しい異世界の風景は一見の価値あり。強烈なキャラと世界観もとても魅力的で、『Getting Over It with Bennett Foddy(壺男)』が好きな人には特にオススメしたい作品です。

  • タイトル:『Baby Steps』

  • 対応機種:PC(Steam)

  • 記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)

  • 発売日:2025年09月24日

  • 著者プレイ時間:7時間



一歩一歩足を踏み出す操作感覚や主人公の挙動は、フラストレーションの塊。けれども、それを乗り越えた瞬間の達成感と美しい異世界の風景に感動したスパ……!



ライター:DOOMKID,編集:みお

ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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