情緒ある世界を現実へ、1日限りの展示・コンサートイベント「ヨカゼミュージアムTOKYO」で過ごした贅沢な時間【インタビュー&レポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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情緒ある世界を現実へ、1日限りの展示・コンサートイベント「ヨカゼミュージアムTOKYO」で過ごした贅沢な時間【インタビュー&レポ】

アートな空間と五重奏で紡ぐゲームの世界をじっくり堪能できる濃密な時間でした。

連載・特集 イベントレポート
情緒ある世界を現実へ、1日限りの展示・コンサートイベント「ヨカゼミュージアムTOKYO」で過ごした贅沢な時間【インタビュー&レポ】
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room6のインディーレーベル「ヨカゼ」の楽曲アレンジコンサートと展示が楽しめる「ヨカゼミュージアムTOKYO」が2025年12月10日に東京・池袋で開催されました。room6とパルコが手を組んだ本イベントは、2025年3月に京都で開催され大好評で幕を閉じた「ヨカゼミュージアム」の巡回公演で、東京会場で初披露となる新規グッズの先行販売も行われました。本記事ではイベントレポートと主催者へのインタビューをお届けします。

会場となる「自由学園明日館 講堂」は、1921年に羽仁もと子、吉一夫妻が創立した自由学園の校舎として建設され、国の重要文化財にも指定されています。木と石で造られた空間と外から差し込む光が調和した温もりのある厳かな空間で、ヨカゼの織りなす幻想的で美しい世界が現実へ現れたような高揚感がありました。


個性的で色彩豊かに描かれたアートの数々

入場してすぐに『ghostpia』や『Recolit』などの設定資料や『アンリアルライフ』パッケージ版特典の漫画作品の展示がお出迎え。全て撮影OKでイベント後でも家で余韻に浸りながら作品を味わえます。奥にはリリース前の『ピギーワン SUPER SPARK』や『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』を含む、開発中のタイトルも楽しめる試遊スペースも設置されていました。

グッズ販売エリアでは開発者自らが選定した全8種の複製原画ポスター「ヨカゼを飾るアート」といった新規グッズに加え、ヨカゼをイメージしたオリジナルコーヒーやクッキー缶、CD型ミュージックキーホルダーなどが豊富に並んでいました。どれもコーヒー片手に創作意欲が掻き立てられるグッズばかりで、他のイベントでも販売されているので、機会があれば是非とも手に取っていただきたいです。

また、今回のコンサートのために制作されたヨカゼのアレンジ楽曲を収録した「Yokaze Acoustic Collection vol.1 Vinyl Edition」のLPレコードやオンラインストア先行販売グッズのマグカップの展示も行われました。LPレコードは会場BGMとして流れており、来場者はレコードプレイヤーから流れる穏やかな音楽を聞きながら、ゆったりと買い物を楽しんでいました。



五重奏が織りなすゲーム音楽に包まれて2025年を締めくくる

夜にはゲーム楽曲の室内楽コンサートがいよいよスタート。ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルートで奏でる演目は京都公演と同じですが、講堂という特別な空間での演奏は音の響きなどまた違った表情を見せます。

司会を務めたのはヨカゼ作品のコラボルームや展示で馴染み深い「ホテル アンテルーム 京都」のマネージャーである豊川泰行氏と、『From_.』や『World for Two』などの作曲や今回の音楽の編曲を担当した椎葉大翼氏。肩肘を張らない和やかなトークとともにコンサートが進み、ゲストのhako 生活氏とつよみー氏による楽曲制作の裏話も聞けました。

hako 生活氏は「プレイ中は後ろで支えてくれるゲーム音楽ですが、ゲームの雰囲気やキャラクターの感情を表現するためのなくてはならない存在です」とその重要性と魅力を語りました。

終演後に椎葉氏がサインを行うサプライズもあり、細部までゲーム愛に溢れたファンにはたまらないイベントでした。

出演(敬称略)

齋藤 寛(フルート)
白壁 美緒(ヴァイオリン)
小林 明日香(ヴィオラ)
末永 亜裕美(チェロ)
四條 智恵(ピアノ)
椎葉 大翼(作曲・編曲)
hako 生活(トークゲスト)
つよみー(トークゲスト)
豊川 泰行(司会)


演目

[ Quintet ]
「Yokaze Museum 2025」
 Opening

[ Piano solo ]
「From_.」
 前奏曲 -Prelude-
 舟歌 -Barcarolle-
 円舞曲 -Waltz-

[ Quintet ]
「アンリアルライフ」
 Unreal March
 Crazy Eyes

「Recolit」
 はじまり -The Beginning-
 あの子 -That Girl-
 明かり -Light-

「狐ト蛙ノ旅」
 狐ト蛙ノ旅 -Kitsune: The Journey of Adashino-

「World for Two」
 沼地 -Lagoon-
 森林 -Forest-
 砂丘 -Sand Dunes-
 遺跡 -Snow Ruins-

[ Piano solo - Quartet - Quintet ]
「World for Two」
 夢想曲 -Daydreaming-​

アンコール

[ Quintet ]
「Yokaze Museum 2025」
 Opening



「ヨカゼミュージアムTOKYO」開催への想いと楽曲のこだわり

コンサートの前に行った合同インタビューでは、椎葉大翼氏、room6パブリッシングマネージャーの高市氏、PARCO GAMESの石井健斗氏の3人にお話を伺いました。

左から高市氏、椎葉大翼氏、石井健斗氏

――なぜ今回こちらの会場を選ばれたのでしょうか。

高市氏:東京会場を選ばれたのはパルコさんです。3月に京都で開催した「ヨカゼミュージアム」の会場である京都国際マンガミュージアムも元々学校だったのですが、東京にも負けないくらい素敵な建物があるということで実際に椎葉さんにも見ていただきここに決めました。

椎葉大翼氏(以下、椎葉氏):立派なグランドピアノがあったことも決め手の1つです。

高市氏:京都国際マンガミュージアムも同様の理由で決めました。その時来れなかった方にも同じ空気を味わっていただきたく、展示やコンサートの内容はなるべくそのままに、季節の移り変わりや建物の雰囲気に合わせてレコードなどの新商品も作りました。

――印象に残っている「ヨカゼ」の楽曲を教えてください。

椎葉氏:作曲を担当した『From_.』のピアノソロ曲は思い出深いです。そこから今回の編成に合うように他の曲を選びました。なので『From_.』は僕にとって原点であり出発点だと考えています。

高市氏:リリース前ですが『狐ト蛙ノ旅』は思い入れがあります。生演奏で再現された「和」の世界観は皆さんにも聞いていただきたいですし、お気に入りです。

椎葉氏:特にフルートの音色が「和の音」の雰囲気をよく出せたなと思っています。そこにご注目いただきたいです。

石井健斗氏(以下、石井氏):どの楽曲も素敵ですが、色々な楽曲をコンサートやLPレコードで皆さんに提供するお手伝いができるのが、他にはないパルコの良さだと思っています。

――ゲーム音楽をピアノなどの生音で作る魅力は何ですか。

椎葉氏:一つはそのままコンサートの演目にできることで、もう一つは100年200年残るのはこういったピアノや弦楽器の音色なのではないかと思えることで…気合を入れて作っています。

――PARCO GAMESを立ち上げたことで「ヨカゼ」との関係に変化はありましたか。

石井氏:一緒に盛り上げようという関係性はこれまでと変わらず、ヨカゼさんのパブリッシングだけでない新しい枠組みを広げる活動のお手伝いを今後もできればと思っています。

――コンサート仕様に編曲するにあたって、どのような点を意識しましたか。

椎葉氏:他の方の曲は大切なデータなので、まずはそのまま譜面にしました。特に『狐ト蛙ノ旅』の曲は7人ぐらいいないと演奏できない箇所もあるのですが、5人でも厚みが出るように編曲しています。編曲方法は企業秘密で言えないんですが。(笑)

もう一つは、ループする曲は「終わりをつける」という作業をしました。作曲者と何度もやり取りをして、誰にとっても納得感のある編曲になるよう心がけました。

――ご自身の曲についてはいかがですか。

椎葉氏:驚きをもって聞いていただけるように、そして楽器が変わっても良さが伝わるような編曲をしています。

――展示で特に注目してほしい内容はありますか。

高市氏:これからリリースされるグッズの展示も行っていますが、展覧会のような雰囲気づくりにこだわりました。あとは実際にレコードを流しているところもポイントです。

――あえてレコードを新商品として制作したのはなぜですか?

高市氏:椎葉さんからリクエストをいただいたことが大きくはありますが、ファンの方がリリースを待つ間も好きな気持ちを変わらずに次の作品へつなげたいという思いがあります。その中でデジタルのものをアナログにして手元に持って思い出してもらう感覚に合っていたのがLPレコードで、東京会場でようやく実現しました。

椎葉氏:2時間のコンサートをやるとしたらトークや休憩以外の演奏時間は40分前後がちょうどいいと考えています。今回の公演も40分の構成でLPのA面・B面にぴったり収まる長さになっていて、うまくいったなと思っています。

――3月に京都で開催した「ヨカゼミュージアム」において、ファンの皆さんからどのような反響がありましたか。

高市氏:「イベントを開催してくれてありがとう」など、まさか感謝のお言葉をいただけるとは思っていなかったので嬉しかったです。「同じものを好きな方がこんなにいることを、この場所で味わえていい経験だった」という意外な声もいただきました。

石井氏:パルコがイベント企画を共同で行う中で「ゲームパブリッシャーとして、パルコらしさもありつつ、これまでにない取り組みだね」という声をいただいています。

椎葉氏:『World for Two』の「夢想曲 -Daydreaming​-」を演奏する際に、ピアノソロ、カルテット、クインテットと3つの楽器構成を続けて聴いていただきました。それが音色の変化や「音色が変わってもいいものはいい」とお客様が言ってくださり、本当にやってよかったと思っています。

――今日という日を迎えた皆さんの心境をお聞かせください。

椎葉氏:京都に来られなかったという方に来ていただけるのは大変ありがたいです。これからも日本全国、または海外にも打って出られたらと考えております。

高市氏:京都の小さいゲーム会社がまさか東京でこのような機会をいただけるとは思っていませんでした。パルコさんのご尽力と椎葉さんの演奏があってのこととは思いますが、まだ驚きで実感がないです。

これからも音楽には力を入れ、物語を味わえる場所をこれからも作っていきたいです。

石井氏:ヨカゼさんとはゲームパブリッシャー同士、ライバル関係に見える部分もあるとは思いますが、手を組むことでこれまでにない取り組みができたこと、1年以上一緒にやってきてようやく当日を迎えられたのは嬉しいです。コンサートは私もすごく楽しみにしているので、今後もその様子を多くの人に届けられればいいなと思いながら今日を迎えています。

――今後の予定や構想はありますか。

高市氏:リアルイベントはまたやりたいです。今はこの日に全てをかけてきたので特に何もないんですが…まだ予告は出来ませんが、来年以降はだいぶ温めてきた作品がリリースされるので、関連したことはこれからもやっていきたいです。

――ありがとうございました。


ライター:ほろすけ,編集:みお

ライター/メトロイドヴァニアは心の鍛錬 ほろすけ

気づいたらインディーゲームの世界にのめり込んでいた生粋のインディーゲーマーでありぼっちプレイヤー。たまに配信もやる。 TGS2025でブーススタッフを経験。好きなジャンルは2Dアクション(メトロイドヴァニア)、謎解き、パズルなど。「ウィッシュリストに入れるのはタダ」をモットーに軽率に入れているが、順調に積みゲーを増やしている。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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