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2時間の濃密なアハ体験がつまったパズルアクション『マインド オーバー マグネット』プレイレポ。開発者は登録者170万人YouTuber

2025年12月18日、Pikiiより2Dパズルアクション『マインド オーバー マグネット』が日本地域向けに発売されました。磁力で足場やしかけを動かしてゴールにたどり着くクラシックな作りのパズルであり、2時間で終わらせられるコンパクトなアハ体験がつまっています。

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2025年12月18日、Pikiiより2Dパズルアクション『マインド オーバー マグネット』が日本地域向けに発売されました。磁力で足場やしかけを動かしてゴールにたどり着くクラシックな作りのパズルであり、2時間で終わらせられるコンパクトなアハ体験がつまっています。

本作の開発元であるGame Maker’s Toolkit登録者170万人を超えるゲームデザイン解説YouTubeチャンネル(同リンク)であり、GMTKならではの設計思想と哲学が垣間見えるレベルデザイン、および本人によるオーディオコメンタリーがゲームクリア後に解放されるのも特徴的です。GMTK主宰のMark Brown氏へのメールインタビューも敢行しておりますので、合わせてご覧ください。

本記事はニンテンドースイッチ 2(ニンテンドースイッチ版の互換動作)でのプレイであり、パブリッシャーよりニンテンドースイッチ版のキーの提供を受けています。

●磁石で障害を乗り越えるクラシックな2Dアクションパズル

本作の主人公であるロボット「ユニ」は移動とジャンプができますが、ジャンプ力が低いので障害物をほとんど越えられません。そのため、スイッチで磁力を発生させて足場を動かしたり、ブロックをさえぎるレバーを出し引きしたりして、ワールド1は基礎を丁寧に教え込まれます。本作の目玉である磁石は最初から出てくるわけではありませんが、意外と序盤にひっかけ問題があって冒頭から悩まされます。

ワールド1の終盤に出てくるのが喋るU字磁石「マグナス」です。プレイヤーはマグナスを持って歩くことができ、マグナスが磁力に反応して空中に浮けば主人公ユニも浮きます。もちろん手を離せばユニは落ちます。ゴールにたどり着けばよいのは主人公ユニだけであり、U字磁石マグナスはゴールに自動的に回収されます。主人公ユニだけでなくU字磁石にもそれぞれ物理的な作用が働くことを忘れないのが肝心。つまり、主人公もU字磁石もそれぞれ重さがあって力を加えれば動くことができるということです。

これまで存在したであろう様々な磁力パズルの中で本作をユニークたらしめているのは、主人公と磁力が別のモノとして切り分けられている点でしょう。磁力そのものによってギミックや道具はダイナミックに動く一方、主人公の機動力が低いことで思考を軸にしたパズルアクションにできるということと、主人公と磁石でそれぞれレベルにある2つ以上のしかけに作用できたり、磁石を単体のオブジェクトとして制御したときのプレイヤーの学習体験をひっくり返すような解決方法が生まれたりしています。

本作はクリアまでのプレイ時間はおおよそ2時間ほどであり、レベルの数は50以上、レベル毎のプレイ時間はおよそ2分から3分ほど。本作のパズルは全体的にかんたんめではありますが、だいじなのは簡単なパズルはいくらかの難しいパズルのための予行演習だということです。パズルゲームにおいて難しいパズルというのはだいたい「一個一個は単純だが過程が複雑であるため、解法の予想や試行錯誤に時間がかかる」か「これまでの学習によって生じた思い込みをひっくりかえさないと解けないトンチ」の二つに分けられ、本作は圧倒的に後者です。筆者がスイッチ版のプレイレポのために本作二周目をプレイしても攻略を思い出すのにかなり時間がかかるほど、単純でもけっこうひっかかります。

とはいえ、本作にはレベルごとにプレイ時間が一定秒数が経過したらヒントをもらったりスキップできるようになったりする補助機能が用意されています。それでも、おそらく攻略サイトや動画にお世話になる機会は他のパズルゲームと比べてはるかに少ないと思います。

●「教科書的な作り」が持つ二面性

パズルアクションは2010年前後のインディーゲーム黎明期に数々の名作が生まれたクラシックなジャンルであり、ゲーム開発志望者が習作として作るにちょうどよいとして現在も数多く作られています。それゆえにゲーム開発者にとって常に競合が多く、並大抵のアイディアでは目立てずに埋没しやすいジャンルでもあります。

「とにかくクラシックな作りのパズルアクション」である本作に対して、もし本作の開発者が登録者170万人を超えるYouTubeチャンネルを持っていない状況で同様のインディーゲームを作っていたら、本作がこれほど知名度を得られたのかという疑念も生じるかもしれません。事実、本作開発元であるGMTK主宰のMark Brown氏がSteam版の発売直後のふりかえり動画で「ゲーム開発者本人が人気YouTubeチャンネルを持っているという点で、多くのゲーム開発者にとって参考にならない」「本作の売り上げの大部分はYouTubeチャンネルのおかげ」と自身で言及しています。

とはいえ、開発背景がなんであろうと本作のゲームとしての価値が損なわれることはありません。短時間でクリアできてゲーム初心者に勧めやすく、かといってぬるすぎないカジュアルなパズルというのは得難いものです。本質的にパズルは難しくならざるをえないものであり、簡単でありながら面白いというバランスは難しいのです。

また、ゲーム開発者を志望する人にとって本作ほど優れた教材もないでしょう。ゲーム内のオーディオコメンタリーはもちろん、ゲーム開発者のYouTubeチャンネルでゲームの開発経緯が着想段階からリリース後の反響まで17本の動画、累計5時間にわたって事細かに解説されています。ゲーム開発において生じるトラブルや解決方法についてゲームデザインからアート、パブリッシングまで実体験に基づいて網羅的に解説している事例は、探しても簡単には見つからないはず。ゲーム開発者を志望していなくても「ゲーム開発者の考えていることや設計思想を知るのが好き」というゲーマーであれば、本作ほどうってつけなゲームもありません。気になった方はぜひYouTubeチャンネル『Game Maker’s Toolkit』を見てみてください。日本語字幕に対応している動画もたくさんあります。

本プレイレポと同時に、本作の開発者であるMark Brown氏へのメールインタビューを実施しています。ぜひそちらもご覧ください。

Pikiiがパブリッシングする『マインド オーバー マグネット』は日本地域向けに2025年12月18日に発売、配信プラットフォームはニンテンドースイッチ, PS4, PS5となっています。


ライター:渋谷宣亮,編集:みお

ライター/ゲーム業界分析とVRが得意です。 渋谷宣亮

ゲーム開発者兼ゲームライター。VR元年こと2016年にゲームライターをはじめ、それからずっとVRゲームをプレイしつづけている。時折作っている。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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