
2025年11月28日、パブリッシャーのPLAIONからリリースされたゲーム機「Atari 2600+ パックマンエディション」をご存知でしょうか。「Atari 2600+」の新バージョンとなる本製品は、往年のゲーム機「Atari 2600」の姿を模した互換機。その特徴は、パックマンとのコラボにより黄色く可愛く生まれ変わった筐体、そしてなんと言っても、Atari2600及びAtari7800のソフトが動く互換性にあるでしょう。
Atari 2600は、今から半世紀前に1977年にAtari社が発売した「家庭用ゲーム機」の先祖とも呼べるゲーム機。Atari 2600+は他のゲーム内蔵型の互換機とは異なり、そんなAtari 2600のCPUである「MOS 6507」やグラフィック/音源チップ「Television Interface Adaptor」などのハードウェア環境を、ソフトウェアエミュレーションで再現したゲーム機なのです。
価格は2万5300円(税込)で発売中。新たにアーケードスタイルでリメイクされた『PAC-MAN 7800』と、家庭用ゲーム機向けとして初めて登場したパックマンである『PAC-MAN 2600』の2作品が収録されたカートリッジ『Pac-Man: Double Feature』が付属しており、ソフトを持っていない人でも十分に楽しめるセットになっています。まさに、「電源を入れればいつでも50年前へと遡れる」、タイムマシンのようなゲーム機なのです。

本稿では、ATARIが大好きなライターである私が、自身のコレクションの中からいずれも名作と呼べるAtari2600のゲームを6本用意し、実機とあわせてさまざまなゲームの起動確認を行った検証結果をご紹介いたします。
「優雅さ」をそのままに、「可愛げ」が追加された筐体
Atari2600が発売された1977年当時、家庭用ゲーム機は未だ消費者にとって馴染みの薄い商品でした。そこでAtari社がゲーム機開発の上でデザインにこだわったと言われているのが、「リビングルームにある他のインテリアとの調和」です。結果として生まれたのが、黒いシックな筐体に、木目調のパネルを持ったゲーム機「Atari2600」。その優雅なデザインは1970年代に標準的だった重厚な木製の家具類とマッチし、後の世で「リビングルームに家庭用ゲーム機の居場所を生み出すことに貢献した」と称えられるほどです。


一方の「Atari 2600+ パックマンエディション」の筐体は、そうしたAtari 2600の”優雅さ”をそのままに、パックマンの持つ”可愛げ”が追加されたようなデザイン。筐体全体がパックマンの象徴とも言える黄色に統一され、かつては木目調だったフロントパネル部分にもキャラクターたちの意匠が仕込まれています。また、1.5kgほどあった重厚感のある筐体も600g程度に一回り小型化。当時1970年代から2020年代の目線へとアップデートされているにもかかわらず、何故か逆に“レトロなおもちゃ”を強く感じさせる不思議な魅力があります。


2025年にも「他のインテリアとの調和」は図られており、ゲーム機背面中央の出力にはHDMI、右の電源ポートにはUSB Type-Cを搭載。小さく見えるのは各種設定のスイッチで、アスペクト比をかつての4:3に変更したり、白黒テレビ調に色調を調整したりして、時代を跨いだ環境でゲームを楽しむことも可能です。レバートップのパックマンが可愛いコントローラーはワイヤレスタイプに置き換えられており、当時のプレイヤーの悩みだった「背面から伸びるコントローラーが抜けやすすぎる」問題が解決されたと言えるでしょう。


■安定した(ように見える)『PAC-MAN 2600』


では早速、起動確認を始めていきましょう。まずは製品付属カートリッジ『Pac-Man: Double Feature』収録タイトルである『PAC-MAN 2600』と『PAC-MAN 7800』から。ゲームカートリッジは当時使用されていたものを模したデザインで、裏面にゲームを切り替えるDIPスイッチがついています。
『PAC-MAN 2600』は1982年にリリースされたAtari2600版『Pac-Man』の移植作で、800万本以上を売り上げたと言われる看板タイトルです。マシンスペックの問題からアーケード版の完全移植とまではいかず、独自のゲーム性を生み出すに至った本作。中でも有名なのは「画面のチラつき」で、敵キャラクターを1体しか画面に表示できなかった関係上、4体の敵を超高速で表示したり消したりを繰り返すことで無理矢理に描画しており、その画面のチラつきは現代でも60fps以上の撮影環境でなければ正しく録画出来ないほどなのです。
しかしながらこの『PAC-MAN 2600』、驚くべきことに肉眼で見たときの”チラつき”があの頃のまま。モニタの性能向上により、当時より敵キャラクターの色味の違いが分かりやすくなった等環境の違いはありますが、その他の挙動についても当時そのままで、ドットが横に長いため「ビデオ・ウエハース」と言い換えられたクッキー、チラつきのおかげで「ゴースト」と言い換えられたモンスターの動きも完全再現されています。アーケード版から簡略化されたプリミティブなチェイスが、当時よりも快適な環境で遊べる……かもしれません。
<検証結果>
当時より、スムーズに遊べるようになった(気がする)。
■遊べるコレクターグッズ『PAC-MAN 7800』


もう一方の『PAC-MAN 7800』は、2025年に新たに開発されたAtari 7800向けのパックマン。個人開発者であるボブ・デクレッセンゾ氏が手掛けたゲームで、2600版と比べてアーケード版により近い移植になっています。ワンレバーコントローラーによる操作感は今でこそ少し硬めにも感じますが、それも含めてのAtari 7800のプレイフィールでしょう。カートリッジはオリジナルAtari 7800でも使用可能とのことで、パックマン・マニア向けのコレクション品として申し分ないゲームと言えるかもしれません。
ゲームとしても十二分に遊べるのが本作の評価すべきポイントで、マップ形状がステージごとに変わる「ランダム迷路」のような他バージョンでは珍しいギミックも搭載。また2人用プレイでは、交互にパックマンを操作して遊ぶスコアアタックモードと、敵のアカベエとパックマンを操作するバトルモードで遊ぶことができます。レトロハードの移植作としてコレクション感覚で楽しむも良し、まだ見ぬゲームとして本腰を入れて遊ぶも良し。動作を検証すべき作品というよりは、特殊環境向けの完全新作と呼ぶべき作品ですね。
<検証結果>
完全新作のため、新しい気持ちで楽しく遊べた。
■史上初の家庭用ヒーローゲーム『Superman』


続いては当時のゲームカートリッジを用いて動作検証していきましょう。1979年リリースの『Superman』は、ハードの音声面の検証にはもってこいのゲームです。本作はあのアメコミの代表的ヒーローであるスーパーマン初のゲーム化作品。スーパーマンは「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」のキャッチフレーズでも有名な飛行能力を持ったヒーローですが、ハードウェアの都合上同時に2つの音しか鳴らすことのできなかったAtari 2600では、臨場感のある彼の飛行音は再現が難しかったのです。
そもそも本作が発売された1979年の時点では、アーケードも含めてBGMの存在するビデオゲームはほぼ皆無でした。しかし開発者はAtari 2600に搭載された音源チップTelevision Interface Adaptorの性能を駆使し、「ノイズのSEを鳴らし続ける」ことで飛行音を再現。ズボボボボボ!!!というその独特な飛行音は、本作を代表する音色とも言われます。
再現環境によっては過剰にも聞こえてしまう本作の飛行音ですが……、Atari 2600+から流れる音はまさに当時のまま!手軽に使える実機の代替品として、十二分に性能を備えていると言えるでしょう。
<検証結果>
飛行音は、当時と変わらずうるさかった。
■Atariの開発文化が見える『Spider-Man』


DCコミックスのスーパーマンのゲームがあるなら、マーベルコミックのスパイダーマンのゲームもあります。1982年リリースの『Spider-Man』はマーベル初となるゲーム化作品。ビルをよじ登るスパイダーマンを操作し、グリーンゴブリンを避けて屋上にある爆弾を解体するゲームです。糸を飛ばして横移動できるスイング・アクションが特徴で、同様のアクションは40年後に発売された『Marvel's Spider-Man』でも再現されています。意外と近しいアクションを持ったゲームも少なく、まさに今こそ互換機で遊びたい作品の一つでしょう。
本作をAtari 2600+で起動すると、画面左端に黒い縞々が表示されます。が、これはエラーなどではなく、むしろ画面が正しく表示できている証拠。これは「HMOVE bar」と呼ばれるもので、画面内に無描画エリアが発生することと引き換えに多くのキャラクターを描画できるようにするという、ハードウェア制約上の工夫だったのです。そして、『Spider-Man』はその代表例。同時に、画像表示の確認にも適したソフトだということですね。悪党どもが複数人で襲い掛かってくるのにも、それ相応の歴史的背景があるわけです。
<検証結果>
かつてのエンジニアたちの苦労の跡もキッチリと映し出されていた。
■抗議を受けた『Custer's Revenge』


誰もが知っていた有名タイトルではなく、当時から強く抗議を受けていたゲームではどうでしょうか。1982年リリースの『Custer's Revenge』は、歴史的にも貴重な最初期のポルノゲームです。その内容はコミカルながら明確に性加害の描写を含んでおり、当時はもちろんのこと、現代もなお問題視されている作品の一つでしょう。発売元であるAmerican Multiple Industries社は、本作を大人向けのゲームとして販売するため、書斎の棚に置いて違和感のない高級感のあるパッケージでデザインしたと言われています。
ネイティブアメリカンとの戦争で米軍を率いた”英雄”カスター将軍が、ネイティブアメリカンの女性との性行為に及ぼうとする様は、わずかなドットで表現されたグラフィックですらショッキングな生々しさを放っています。Atari 2600+でも、その生々しさは健在。40年前のゲームがボタン一つで蘇ることの実例が、このゲームが今も正しく遊べる事実に詰まっていると言えるかもしれません。動作はスムーズで、あらゆる挙動は実機と遜色なし。気になる方はゲームを買ってください。……とは、気軽には言えない一作です。
<検証結果>
40年前のゲームと価値観が、一瞬で蘇った。
■新ハードでこそ遊びたい『Revenge of the Beefsteak Tomatoes』


家庭用ゲーム互換機の需要と言えば、「今はもう貴重になってしまったレトロゲーム機を、損耗を気にせずガシガシ遊びたい」がつきもの。そこで今回は、私自身の「もう一度ガシガシ遊びたいAtari 2600のゲーム」である『Revenge of the Beefsteak Tomatoes』の起動も確認。1983年にリリースされた本作は、「瓶詰めケチャップへの抗議、あるいは酸性雨に刺激されたかで攻撃的になった殺人トマト軍団が、人間に復讐しにきた」という内容のゲームで……ようは映画「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」のフォロワー作品です。
画面上部にあらわれるブロックを、画面下部に運んで壁を作る。その間にも前後左右から攻撃が高速で降り注ぎ、反射神経でトマトを避けることも求められるシューティングで、遊んでいて思わずコントローラーをガチャりたくなる難易度のゲームですが、Atari 2600+ではプレイ負担がわずかに軽減。新ハードなこともあってかAtari 2600+のコントローラーはレバーが硬めで、力が入ってしまう場面でもキビキビと自機が動き、操作感にも問題なし。まあ、それだけではどうにもならないほど難しいゲームであることも分かったのですが……。
<検証結果>
レバーは硬めだがその分ガシガシ遊べる、操作感にも大きな問題はなし。
■憧れかつ伝説の作品『E.T. the Extra-Terrestrial』


沢山のゲームを検証してきましたが、おそらく殆どの人にとって、「Atari2600&Atari7800が遊べるゲーム機」と言われれば思い当たるゲームは一つしかないでしょう。そう、この「Atari 2600+ パックマンエディション」があれば、カートリッジ一つ買うだけで、あの伝説的作品『E.T. the Extra-Terrestrial』が気軽に遊べてしまうんです!1982年にリリースされたE.T.は、大量生産された後にニューメキシコ州のゴミ捨て場に在庫が埋められたとの伝説が残る、Atari2600を代表するアドベンチャーゲームです。
見てください、このE.T.の顔色の良さ!最早伝説上の存在としか扱われなくなっているゲームがボタン一つで現代に蘇る、その体験はまさにタイムマシン!肝心のゲーム内容は「E.T.が宇宙に帰るために穴の中にある通信機のパーツを探す」というものなのですが、当時は穴に異常に落ちやすいことがゲーマー達から揶揄されていました。しかし、その穴も「Atari 2600+ パックマンエディション」で遊べば……、かつてのようにちゃんと落ちやすいまま!是非、皆さんにも正確に再現されたこの”落ちやすさ”を体験してもらいたいですね。
<検証結果>
E.T.はE.T.のまま、今も変わらず楽しく遊べた!
■(番外編)やっぱりあの頃のように遊びたい『Pac-Man』


念のため付属カートリッジではなく当時リリースされていたオリジナルAtari 2600版『Pac-Man』の起動確認もしてみましたが、遊ぶ環境の違いもあってか、やはりチラつきがかつてとは違って見える。やっぱりもう一度、ブラウン管にチラつきが滲むあの幻想的な環境でパックマンを遊びたい……!そんな時には、2600+の残光設定機能を使ってみましょう。カートリッジ未挿入の状態で電源を投入し、ロゴが消えた後にGAME SELECTおよびGAME RESETスイッチを同時に長押しすることでシステム設定画面に遷移します。
添付のマニュアルには記載されていませんが、これは2024年11月のアップデートで追加された2600+のハードウェア機能。この中からPhosphor(2600)の項目を選択すると、ブラウン管モニタにおける光の滲み、”残光”効果を模したエフェクトを自動または三段階の強さから設定できるのです。もちろんHIGHで『PAC-MAN』を起動すれば、ハイスペックなモニタにもまるでブラウン管かのごとく、怪しくゆらめくゴーストが残光と共に浮かび上がる……!ノスタルジーに浸るも良し、ゲーム的な味付けとして設定してみるも良し、お好きな環境で半世紀前のパックマンに挑んでみてください。
<検証結果>
あの頃の“チラつき”は残っていたが、どちらで遊ぶかが悩ましい……。

いかがだったでしょうか? Atari2600+公式では今回紹介したゲーム以外にも数多くの動作確認結果が公表されていますので、気になっていたゲームがある方は是非一度ご確認ください。遊べるタイムマシン「ATARI 2600+ パックマンエディション」は、絶賛発売中です。













