
珍しいスライド式の格納コントローラーを搭載した2009年発売の携帯ゲーム機PSP go。2011年には同じソニーグループであるソニー・エリクソン(現:ソニーモバイルコミュニケーションズ)が、同系統のスマートフォン(以下、スマホ)「Xperia PLAY SO-01D」を開発したものの展開は続きませんでした。
しかし、そのコンパクトな形状には需要があるのか、似た形状のデバイスが後年になって他社から複数発売されています。特に2023年にはPSP goにインスパイアされた“既存のスマホと合体できるコントローラー「MCON」(当時は名称無し)”が発表され、注目を集めました。
19歳の青年ジョシュ・キング氏により開発された本コントローラーはインターネット上でたちまち話題となり、製品化のため2025年に実施されたクラウドファンディングキャンペーンは約180万ドル(約2億8千万円)も集める大成功を収めました。
本記事では、そんな「MCON」をクラファン支援者でもある筆者が機能面から使い勝手までレビュー。想定される活用シーンに基づいて試用してみた所感をお届けします。
携帯性は割とギリ?開封からデバイス外観を身近な物と比較してチェック

今回レビューする「MCON」について、まずは内容物やサイズ感を見ていきましょう。

本コントローラーのパッケージは高級感のある外箱となっており、裏面では機能概要が紹介。開封すると目に飛び込むのは「MCON」本体。内容物を整理すると以下の通りです。


「MCON」本体
取扱説明書 / セーフティガイド
充電用USB Type-Cケーブル
非MagSafe端末用リング(スマホ背面に貼るためのもの。詳細は後述)


本体カラーは一般販売の「ブラック」「ホワイト」に加え、Kickstarter支援者限定として「スケルトン」カラーが存在。今回筆者が注文した「ブラック」は全体的にマットな質感となっています。


サイズは(縦)69.4×(横)144.1mm、厚さはスマホ装着用のマグネットマウント込みで24.1mm、マウント抜きで18mmとなっています。全体のサイズ感はニンテンドーDS Lite(73.9×133.0×21.5mm)が近く、重さも「MCON」が公称197g(筆者計測時は212g)なのに対して約218gと同程度です。

そしてスライドボタンを押すとスマホ装着用の板状マウントが移動して各種操作パッドが展開。十字キーにL/Rスティック、Xbox配列のABXYボタンにL1/R1とL2/R2トリガー、スティック押し込みボタン(L3/R3)まで完備しています。
ちなみに、この状態のマウント部分は若干斜めに傾いており、PSP goというよりは前述のニンテンドーDS Liteの方がぱっと見の外観も近めです。

そして肝心なスマホを取り付けた際のサイズですが、今回は「iPhone 16」にガラス保護フィルムとApple公式シリコンケース(約74×150×9mm)を装着した上でテストします。

装着時の外観は、画面側から見るとコントローラーが「iPhone 16」に丸ごと隠れる形となり、マウントのマグネット部分がスペーサーの役割を果たしているため、スマホの裏面の出っ張ったカメラ部分が干渉する恐れもありません。

厚さは約35mm(漫画単行本2冊分近く)にまで増しており、重さはケース&ガラス保護フィルム付き「iPhone 16」(212g)と合わせて424gとなりました。

PS5のDualSenseコントローラー(約106×160×66mm)と比べれば小さく、スティックの突起など起伏の少ない平らな形状のため収納しやすいものの、ズボンのポケット等に入れる際は一体化せずに別々で管理したほうが違和感なく携帯できる現実的なサイズ&重さと言えるでしょう。

なお、スマホ装着時は重心が画面(マウント)側に偏る都合上、操作ボタン側の背面には“折り畳み式グリップ”が格納してあります。展開時に硬めのビンの蓋を開けるくらいの握力を要するのは気になりますが、重心の偏りを緩和させ、一般的な家庭用ゲーム機のコントローラーに近い感覚で握れるようになるのは好印象です。

また、マウント部分はコントローラーと分離させることができ、スマホ用キックスタンドとしても活用可能。Bluetoothでスマホと接続しているため、ワイヤレスコントローラーのように扱えます(専用ドックを使えば2.4GHz接続も可)。

ちなみに、本コントローラーはiPhone 12以降に搭載されているMagSafeを利用し、マウントのマグネット部分に装着する仕様となっており、Android端末等でも使えるよう、スマホに貼り付ける薄型マグネットリングが付属しています。(MagsafeはAppleの技術であり、Androidでは必然的に後付けせざるを得ない)

スマホの大きさやMagSafeにあわせて“コントローラー側のマグネット部分も左右にズラすことができる”…らしいのですが、筆者の個体は説明書通りに動かしてもビクともしませんでした。
不良品を疑い公式サポートに連絡したところ、「意図的にものすごく硬い設計になっている」とのこと。公式チュートリアル動画では親指だけでズラしている様子を確認できますが、筆者が手にした個体の場合、本体を片手で固定し、もう片方の手の親指の腹で側面から渾身の力(体重計で15kg相当)を加えるとようやく動き始めました。
日用する機器としては異常な硬さであり、出先で微調整するのは非常に難しいものの、一度調整した後は動かさない、特定のスマホでのみ運用する想定であれば、そこまで問題にならないでしょう(そもそも“最初の調整段階で動かせる腕力が要求される”点は横に置くとして)。
妥協とこだわりが見えるピーキーな設計…人間工学以外を突き詰めた機能性

ここからは「MCON」のゲーム使用時の動作について深掘りしていきます。
今回検証に使ったゲームはスマホ版もリリースされている個人開発で話題となった人気シューター『Bright Memory: Infinite』と、HoYoverseのアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ』の2作。『Bright Memory: Infinite』ではOP~ボス戦までプレイしてみましたが、パリィやQTEの触感から入力遅延は少なめです。

射撃におけるエイミングはクリアするだけなら問題ない一方、コントローラー全体をマウント部分にスライドして収める都合上、スティックがボタンと同程度の高さにまで埋まっているため、操作感は“好みが別れる”印象を受けました。

また、代替になる機能には、左/右スティックとして認識させられるジャイロセンサー(スコープ)が実装されています。スティック操作と併用もできるため、ジャイロでエイミングの微調整を行う形での運用も可能です。
しかし、スマホをマグネットでコントローラーに固定している仕様上、振り回すとスマホが落ちる危険性もあり、激しい操作を要求するゲームでは活かしにくいかもしれません。

一方、『ゼンレスゾーンゼロ』ではキャラクターの育成が終わり、操作精度を問わないキャラパワーによるゴリ押しが効くデイリー/ウィークリータスクの消化であれば余裕(4日分検証)。ボタン連打など、ルーティン化された操作でクリアできる範囲なら問題ありません。

しかし、1回の操作ミスによる損失が大きいランキング系コンテンツや、クリア自体のハードルが高い高難度コンテンツの場合、PC+コントローラーで遊んでいる時と比べ体感20%ほどはコンディションが落ちます。

こうしたコンテンツではプレイ時間が長くなりやすく、マウント部分に隣接したR1/L1ボタンの押しづらさなど、本コントローラーが携帯性のために妥協した“人間工学”が気になってしまいます。
特に前述したスティックの低さは格闘ゲーム等のコマンド入力がしにくい設計のため、全体的に“素早く正確な操作が求められるタイトルには不向き”なコントローラーと言えるでしょう。

なお、本コントローラーはBluetoothに対応していれば大半のデバイスで使用でき、ペアリングのスロットを切り替えれば最大3つのデバイスとの連携が可能です。
入力方式にはX-INPUT/ D-INPUT/ DS4 INPUT/ NS INPUTと多彩なモードがあり、筆者が試してみた限りではPCのほかニンテンドースイッチ2(NS INPUTでプロコンとして認識)にも対応。AとB、XとYの入力を入れ替える機能も用意されています。
快適性の観点でPCや家庭用機であえて本コントローラーを選ぶ必要性は低いものの、“出先で複数人と遊びたいがコントローラーが足りなくなった”ケースでは有用でしょう。

ちなみに、本コントローラーはドリフト現象が起きにくいホールエフェクト式のスティックを採用していますが、デッドゾーンも0.5%以内と少なく、操作性以外は優秀な部類です。
おわりに―値段や細かな点も考慮した結論
欠点はあるものの、本製品の核である“携帯性”を考えると致し方ない……というのが率直な評価です。
機能面で言えば一般的なコントローラーと比べても見劣りすることはなく、“妥協した部分”と“こだわった部分”が突出した製品といえますが、ここで問題となるのが値段です。

筆者の場合は、早期支援価格の99ドル(約1万5千円)で入手できましたが、スマホ用アクセサリー会社ohsnap公式サイトでの一般販売価格は149.99ドル(約2万3千円)と、ニンテンドースイッチLiteの希望小売価格21,978円を上回ります。さらに、筆者は後日に関税+送料として30ドル(約4,500円)払っているため、同額が一般販売でも課されると仮定すると、中古の有機EL版ニンテンドースイッチも手に届く費用です。

単純にスマホ用のゲームコントローラーが欲しい場合、Amazonセール時は1万7千円で販売されている「BACKBONE One」や、携帯性を完全に無視するのであれば1万円以下でDualSenseやXboxコントローラーも買えます。競合のハイレベルなコントローラーと比べ、「MCON」の“携帯性”にコストや操作性の差を覆すほどの価値を感じるか……と問われると、正直かなりニッチな需要しかないでしょう。
そして本製品の評価には紐付けませんが、どうしても指摘しなければならない点があります。それは筆者も巻き込まれた、クラファンの対応のマズさと不誠実なコミュニケーションに起因するいくつかのトラブルです。

具体的には製品がいつまでも発送されず、予告した近況報告がなかったり、事前告知無しにアメリカ在住者に優先して発送したり、追跡番号を連絡しなかったり……と指摘すれば対応のマズさは枚挙に暇がありません。そして炎上気味の中で新製品「MCON Slim」と「MCON Lite」の発表が重なり、Kickstarterでは販売元の一連の行動に絶望視する支援者の声が集まっていました。
執筆時点(2026年2月11日)でもいまだ製品を受け取れていないユーザーの存在を考慮すると、“そもそも買っても届くか分からない”というのは指摘せざるを得ません。また、もし不具合や故障があっても、これまでの経緯を鑑みるに“家電量販店のように気軽に交換対応を頼みにくい”のは大きな懸念点です。
こんな状況ですので、筆者としては現状無理に輸入するのはオススメしません。しかし、仮に日本にユーザーサポートまできっちりできる販売代理店が登場し、配達やサポートの心配のないAmazonなど大手プラットフォームで販売されるようになり、さらにその上で“携帯性”のロマンを求めて列挙してきた不満点を受け入れられるならば、そこそこ満足度の高いコントローラーだといえるでしょう。
Game*Spark レビュー 「MCON」 ワイヤレスコントローラー 2026年1月27日(一般販売)
携帯性のためにどれだけの不満を許容できるか…究極の妥協コントローラー
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GOOD
- 下記点を兼ね備えた上での携帯性の高さ
- 大半のゲームをカバーできるボタン数
- ジャイロや複数の入力モード、スタンド分離など多機能
- 優秀なデッドゾーンと入力遅延の少なさ
BAD
- 仕様上避けられない操作性&快適性の犠牲
- 競合と比べても割高な値段












