「ジャンルがゲームの可能性を縛るべきではない」「セリフは文字通り泣きながら書いてました」―『MOTHER』『ゆめにっき』らに影響受けた『Apopia: スイート・ナイトメア』開発者インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「ジャンルがゲームの可能性を縛るべきではない」「セリフは文字通り泣きながら書いてました」―『MOTHER』『ゆめにっき』らに影響受けた『Apopia: スイート・ナイトメア』開発者インタビュー

「ジャンルがゲームの可能性を縛るべきだとは思っていません」―ゲーム制作の中で込められた、深い人間ドラマと開発者の熱い想い。

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「ジャンルがゲームの可能性を縛るべきではない」「セリフは文字通り泣きながら書いてました」―『MOTHER』『ゆめにっき』らに影響受けた『Apopia: スイート・ナイトメア』開発者インタビュー
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本記事には、『Apopia: スイート・ナイトメア』の重要なネタバレが含まれています。未プレイの方は、クリア後に読むことを強く推奨いたします。

約8年の歳月をかけて制作された、アドベンチャーゲーム『Apopia: スイート・ナイトメア』

本作は、童話のようなメルヘンな世界とダークな謎解き、そして物語を彩る個性的なキャラクター、バラエティ豊かなミニゲームなど多くの要素が合わさった、ポイントアンドクリック型アドベンチャーゲームです。プレイヤーは主人公の少女「マイ」を操作しながら、ウサギたちが暮らす不思議な国「ヨーグルト」を、一癖も二癖もあるキャラクターたちと共に冒険していきます。

中でも最も際立ったポイントは、なんと言ってもそのナラティブ部分、つまりストーリーや作品それ自体のテーマにあるでしょう。

特にマイや、皆の姉御的なリーダーウサギ「モリー」の物語は、リリース当初から多くのユーザーの感動を呼び、既に世界中でも高い評価を獲得しています。

親との確執やなりたい自分との乖離、孤独との向き合い方など、誰もが共感できる重要なテーマを暖かく、そして優しく伝えてくれる作品となっているのです。

今回、Game*Sparkではそんな『Apopia: スイート・ナイトメア』のクリエイターであるOnon氏に、インタビューを実施。プレイレポート記事でも言及したOnon氏の体験と本作のテーマの関係や、物語の作り方、開発中の体験記など、様々な話を伺いました。


また、本作の公式サイトでは、作者であるOnon氏のディベロッパーダイアリーも公開されています。

本作が生まれた経緯や、本作のストーリーの制作秘話、そしてプレイヤーへのメッセージなど貴重な情報が詰まっているので、ぜひディベロッパーダイアリーと合わせてご覧ください。

「自分の気持ちを表に出す余地はまったくなかった」―この一言から分かる、ゲームの開発経緯

――デベロッパーダイアリーでは、本作のアイデアについて「自分と両親の関係」から着想を得たとありましたが、作者のOnonさんの人生における経験(特に母親との関係)は具体的に、本作の物語にどう影響を与えたのでしょうか?

Onon氏:うちの親子関係は、世間的に見れば「悪い」と言われるようなものではなかったと思います。母は僕と弟のことをきちんと世話してくれていましたし、食事にも困らなかったし、教育も受けさせてもらいました。生活の心配もありませんでした。

でも、それはあくまで表面的な話です。実際には、家はとても、とても厳しかった。「まだ足りない」「十分じゃない」と判断されることが多くて、感情の起伏が激しいタイプだった僕は、完全に押さえつけられていました。

自分の気持ちを表に出す余地はまったくなかった。感情を表現すること自体が悪いこと、場合によっては“罪”みたいに扱われることもありました。何か不満を口にしても、返ってくるのはいつも「理解しなさい」という言葉。「これだけ愛してもらっているんだから、母の苦労に感謝するべきでしょ」と。

……たぶんこれで、マイとモリーのバックストーリーをどう作ったのか、すごく分かると思います(笑)。

――物語を終えたとき、そこに含まれるメッセージとして私が読み取ったのは、すなわち「親の期待通りに生きることの難しさや苦悩に立ち向かうこと」と「そうした悩みをもつ自分すらも愛すること」という、ポジティブなものでした。

そうした本質的で優しいメッセージが詰まった本作ですが、プレイヤー側からの反響はいかがでしょうか?また、同じ悩みを持つ多くの人たちに対して、本作で特に伝えたいメッセージは何ですか?

Onon氏:プレイヤーの皆さんからも、まさに今お話ししてもらったような感想をたくさんいただいています。特に、マイとモリー、そして母親との関係性の部分に強く共感してくれる方が多いですね。ゲームの後半で、泣いてしまったというプレイヤーもいると聞きました。実はそれ、僕自身もまったく同じで……。

あのシーンのセリフを書いているとき、文字通り泣きながら書いていました。このゲームを通して、プレイヤーに一番伝えたかったことは、とてもシンプルです。「あなたは一人じゃない」ということ。

過去を“なかったこと”にしたり、完全に修復することはできません。でも、同じような経験をしたのが自分だけじゃないと知るだけで、きっと少しは救われると思うんです。

メッセージ性のあるストーリーに結びつく、ミニゲームの数々は「必要だから作られた」

――本作はポイントアンドクリック型の探索を基本にしつつも、非常にバラエティ豊かなミニゲームの数々で構成されています。ゲームを作ろうと思い立った時、始めからこのようなかたち(独立したミニゲームの集合)にしようと思って作業を始めたのでしょうか?

それとも、まずはポイントアンドクリック型のものを制作して、そこから色々と追加していったら、結果的にこうなったのでしょうか?

Onon氏:最初は、ゲーム全体を通して使える「ひとつのユニークな仕組み」を模索していました。でもプリプロダクションを進めるうちに、「仕組み」よりも大事なのは「体験」なんだと気づいたんです。

自分が本当に集中すべきなのは、伝えたいメッセージが一番効果的な形でちゃんと届くかどうか。そして、僕たちはゲーム開発の初心者だったこともあって、そのために選んだのがポイント&クリックという形式でした。ミニゲームについても同じで、「一番いい体験を提供できる表現は何か」を基準に選んでいます。それが、僕の中での一貫した方向性ですね。

ジャンルがゲームの可能性を縛るべきだとは思っていません。だからミニゲームは、「作りたいから作った」というより、「この体験には、これは“必要だから”作られたもの」なんです。

――本作が世に出るまでには、8年という非常に長い期間がかかっています。いくつもの不具合や作り直しを経て完成したことがデベロッパーダイアリーで語られていますが、具体的にはどういった問題があり、どう乗り越えていったのでしょうか?また、小規模ゲーム制作の中で学んだこと、教訓などはありますか?

Onon氏:一番大きな反省点は、制作規模を完全に見誤っていたことですね。開発を始めたとき、プロローグにかかった時間を基準にして、各チャプターのアウトラインを書きながら全体のスケジュールをざっくり立てていました。でも実際に制作が進んで、物語が具体的な形になっていくにつれて、「本当にいいゲームにするには、この最初の計画じゃ全然足りない」と気づいたんです。

そこからどんどん要素を追加していって、プロットや構成を練るために、さらに多くの時間を使うことになりました。もうひとつ学んだのは、「効率的なコミュニケーションの大切さ」です。

制作が進むにつれて、リモート作業ということもあり、やり取りがどんどん減っていって、それぞれが自分の作業だけを進める状態になってしまいました。そこに、さっき話したような「何度も行き来する修正」が重なって、結果的に作業全体がどんどん遅れていったんです。

なので、今回の教訓はシンプルです。コミュニケーションは本当に大事。……それって、Apopiaで伝えたかったメッセージそのものでもありますよね?(笑)

音ゲーパートやアートスタイルから見る、影響を受けたゲームたち

――最初と最後に挟まれる音ゲーパートは、どちらも物語の印象的なシーンに挟まれるとても重要なゲームパートでしたが、Ononさんはもしかすると音楽ゲームに対して何かしら思い入れがあるのでは?あのゲームパートの着想はどこからきたのでしょうか?

Onon氏:ちょっと意外に思われるかもしれませんが……。実はこのボス戦のアイデアは、『ダークソウル』系のゲームから影響を受けています。『ダークソウル』シリーズのボス戦は、僕のゲーム人生の中でも特に印象に残っている体験なんです。

これまでの質問でもお話ししましたが、ゲームプレイの方向性は常に「プレイヤーにとって最高の体験を提供できるかどうか」を基準に決めています。だからこそ、あの『ダークソウル』のボス戦で味わったような感覚を、このゲームでも届けたいと思いました。

とはいえ、技術的にまったく同じことを再現するのは、もちろん僕たちには不可能です。そこで、「『ダークソウル』におけるボス戦の本質って何だろう?」と考えました。行き着いたのは、
リズム感、壮大な音楽、どうしようもない絶望感、何度も死んで、それでも挑み続けて、最後に訪れるカタルシス。こうした要素こそが核なんじゃないか、という結論でした。

それが、最終的に「リズムゲーム」という形を選んだ理由です。ただ正直に言うと、技術的な面では、まだ完璧とは言えない部分もあります。今後のアップデートで、さらにいい体験にしていけたらと思っています。

――本作はコミカルなキャラクターと躍動感溢れる手描きアニメーションが魅力ですが、このアートスタイルを選択した理由は何でしょうか?

特に「ヨーグルト」での冒険と、物語の道中に訪れる精神世界でのアートスタイルのギャップは、非常に素晴らしいと思います。こうした表現手法を実現するうえで、何か参考にした作品やモノはありますか?

Onon氏:ビジュアル面での一番大きな影響源は、『Earthbound(MOTHER)』『ゆめにっき』、そしてコミックアーティストのZac Gormanです。

少し個人的な話になりますが、実は僕、手が生まれつきすごく震えるんです。家族や友達はみんな知っていて、半分冗談みたいな感じで話題にされることもあります。一度は病院にも行きましたが、残念ながら長期的に治す方法は見つかりませんでした。

その影響もあって、線を描くときはとにかくスピード勝負なんです。ゆっくり描くと、どうしても線がすごくブレてしまうので。だから自然と、勢いよく一気に線を引く描き方になりました。

それと同時に、90年代~2000年代のカートゥーン調の表現に強く惹かれていて。あの時代の作品は、自分の成長と一緒にあったものなので、あのテイストを見ると特別な親近感があるんです。

今の描き方は、線にエネルギーや躍動感を持たせることができて、結果的に生き生きとした絵になる。だから、アートスタイルは自然とこうなりました。ちなみに、ダークワールドの表現については、『クロノ・トリガー』の「時の最果て」から影響を受けています。

――本作の終盤は驚きの展開続きで、物語の核心部分では、プレイヤーを驚かせるような仕掛けも多数用意されています。

(※以下ネタバレ)まさかあのファンタジーな世界観から、人とアンドロイドを巡る終末SF的な設定が飛び出してくるとは思いませんでした。まさに『Apoipia』というタイトルにふさわしいものだったと思います。物語を作る上で、始めからあの設定は考えられていたのでしょうか?

Onon:はい。実は、マイの一番最初のデザインは「金色のロボット」でした。こちらがその当時のアートワークです。世界初公開です!!

この絵は2016年に描いたもので、当初からのアイデアは「ポストアポカリプスの世界を旅するロボットと、ミュータントの猫」というものでした。

ただ、そのアイデアを掘り下げていくうちに、もっと物語やメッセージを深くして、プレイヤーにとって共感しやすいものにしたほうがいいと思うようになりました。そうして試行錯誤を重ねた結果、最終的に今のマイの姿にたどり着いたんです。

――物語の最後、プレイヤーは主人公である「マイ(アイ)」について、究極の選択を迫られることになります。これはある意味で作者からの一番大事なメッセージ、すなわち、どのようなエンディングであれ、それを選ぶのは自分自身であるという投げかけのように私には映りました。このエンディングについて、何か伝えたいことがあればぜひお聞かせください。

また、野暮な質問とは思いつつあえて聞かせていただきますが、作者自身としてはどちらを選ぶのが良いと思いますか?

Onon氏:正直に言うと、この質問をしてもらえたこと自体に、すごく驚きましたし、同時にとても嬉しかったです。おっしゃる通り、過去は過去だと思っています。本当に大事なのは、今の「現実」をどう選ぶか、どう向き合うかなんですよね。

過去にずっと留まり続けて、「治療法」や答えを探し続ける人もいる。一方で、「いつか良くなるはずだ」と未来だけを見て生きる人もいる。でも、今この瞬間を生きるという選択もあると思うんです。

周りにあるものを大切にして、今の自分をそのまま受け入れること。起きた出来事自体は、誰にとっても同じ。でも、それをどう捉えるかで、「現実」はまったく違ったものになります。

僕自身なら、「I’m Mai(僕はマイ)」を選びます。究極の幸せの鍵は、自分に正直でいることだと思っているからです。時には、人に対して本当のことを言えない場面もあるかもしれない。でも、自分自身にだけは、絶対に嘘をついてはいけない。それだけは、ずっと大切にしています。

――ゲームの話だけでなく、人生観についても考える機会になるような素晴らしいご回答の数々でした。今回は本当にありがとうございました!


Apopia: スイート・ナイトメア』は、PC(Steam)向けに発売中。体験版も無料配信中です。


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ライター:植田亮平,編集:八羽汰わちは



編集/ 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Sparkの共同編集長。特技はヒトカラ12時間。

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