突然ですが、あなたは「RPGで重要な要素」と聞くと、何が思い浮かぶでしょうか。
戦闘システムの楽しさ、キャラクターの魅力、物語を彩る音楽…人によって様々な答えがあるでしょうが、私はそうしたものの中に「世界観」という要素を挙げたいと思います。
世界観…つまりその作品で冒険することになる舞台のことですね。王道のファンタジーやSF、ポストアポカリプスや高校生活などなど…名作とされるRPGにはどれも素晴らしい世界があり、そうした世界があるからこそ素晴らしいキャラクターや物語が生まれるというもの。魅力的なRPGには魅力的な世界観がある、というのが私の持論です。
さて、今日はそんな「世界観」にとてつもなくこだわったRPG作品を紹介します。
Iridium Studiosの手がけるコマンドRPG、『ピープル・オブ・ノート』です。

『ピープル・オブ・ノート』の世界観を一言で説明するならズバリ、音楽。
物語の舞台、キャラクター、装備、技、その全てが音楽をモチーフとしており、そしてゲーム内ムービーも全てミュージカルになっているという、一風変わったRPG作品です。
この記事ではそんな「音楽一色」の『ピープル・オブ・ノート』の世界を、プレイレポートと共に紹介していきます。
ロックからEDMまで、音楽ジャンルをテーマにした国を巡るRPG!トップスターを目指しつつ世界を救え!
『ピープル・オブ・ノート』の物語は、ポップス音楽の国「コ―ディア」から始まります。
と言っても、「ポップス音楽の国って何だよ」と皆さん思われるかもしれないので、まずはそこから説明を始めましょう。

『ピープル・オブ・ノート』の世界は「音楽」が全てを構成する基礎となっており、音楽ジャンルごとにそれぞれ国が分かれているという、かなりユニークな世界観をもっています。
主人公である女性シンガー「ケイデンス」はポップス音楽の国「コ―ディア」出身であり、コ―ディア最大のオーディション「ノートワージー歌唱コンテスト」での優勝を目指す、いわばスターの卵です。

しかし、オーディションの結果は散々……。行き詰ったケイデンスは、ある考えを思いつきます。
「世界には、私の知らない音楽の可能性がまだまだ存在するのではないか?」そう考え付いたケイデンスは、様々な音楽ジャンルを持った仲間を集めオーディションにリベンジすべく、ロックやEDM、ヒップホップやクラシックなど、様々なジャンルが待つ広大な音楽の世界へと旅立っていくのでした。
しかし、そのオーディションの裏ではケイデンスの知らない大きな陰謀も渦巻いており……というのが本作のあらすじです。

「オーディションでの優勝を目指す」というプロットから始まる本作のシナリオですが、実は本作はそれだけの物語ではありません。何と、最終的にはRPGの王道である「世界を救う」という展開にまで発展していくのです(!)。
トップステージを目指す青春ドラマが半分、そして世界を救うRPG的なお約束が半分というかなり大胆なシナリオ構成となっているのも、本作が音楽をテーマにした作品であるからこその特徴でしょう。「トップアーティストを目指す」のがどのようにして「世界を救う」ことになるのか、その驚きの展開はネタバレになるので言及できませんが、最後はアツい展開になることだけはお約束します。「音楽は世界を救う」ということをストレートに表した、上質なストーリーとなっていました。

と、ここまで世界観の外観をお伝えしましたが、もう少し詳細に、このユニークな世界を紹介したいと思います。
先ほども述べた通り『ピープル・オブ・ノート』の世界は音楽ジャンルごとに国が分かれているというかなりユニークなものです。旅の途中で主人公ケイデンスは様々な音楽ジャンルの国を訪れることになるのですが、その国がそれぞれ抱える固有の問題も、各音楽ジャンルから着想を得たものになっており、こちらをニヤリとさせてくれます。
例えば、ロック音楽の国「デュランディス」を見てみましょう。この国はかつては才能あるバンドを抱える非常に力を持った国でしたが、現在ではいくつかのジャンルによる派閥争いで内紛の危機に陥っており、お隣になるカントリー音楽の国から攻撃を受けるなど散々な状況にあります。

グランジ、パンク、メタルといった派生ジャンルによる派閥争いがこの国の抱える問題なのですが、これが現実でのロック音楽を若干皮肉った内容になっておりかなり面白いです。それぞれのジャンルの「縄張り」に訪れると、各NPCが他のジャンルをディスりあう会話を聴くことができ、ロックの抱える深刻な内部分裂の様相が伺えます。

EDMの国「ルミナ」ではどうでしょう。
この国では「グリッター」と呼ばれる合法的なドラッグが流通しており、ルミナに所属するほとんどのDJがこの「グリッター」の力を借りています。吸うと気分が落ち着くらしいこの「グリッター」と決別すべく奮闘するDJ「シンシア」の物語がこのルミナでのメインのお話となっているのですが、ここではクラブカルチャーとドラッグの問題点が妙にリアルに描かれています。ドラッグ自体普通のものとして受け入れられていたり、抜け出そうとしてもやめられないドラッグの危険性が描かれていたり……。


クラシックの国「アーカイア」での問題もユニークです。この国は『ピープル・オブ・ノート』の世界でもかなり保守的な国として描かれており、大きな壁に囲まれ外部の国との接触を殆ど持たない国となっています。もちろん中に暮らす人も超がつくほど保守的で、会話するごとにクラシックこそがあらゆる音楽の始祖であり頂点であることを主張してきます。
もちろんそんなクラシックの国に生まれた若者の中には、もっとクラシックを発展させるべきだと主張する者もいるのですが、そうした声は国の中枢にまで届かず、若者の心の中には鬱屈がたまり続け、ついには……という、クラシックらしい(?)ストーリーがこの国では展開されていくのです。


このように、『ピープル・オブ・ノート』には様々な音楽ジャンルの国と、それぞれが抱える問題があるのですが、実際の音楽シーンの文脈がストーリー上の大きなテーマとなっているのが最大の特徴です。
物語の中でこれらが最終的にはポップス音楽の国出身であるケイデンスの力によって解決され、それらすべてがポップスの中に取り込まれていくのも何だか象徴的な構図です。
ちなみに、もちろんというと失礼ですが「ポップス音楽」は殆ど全ての国において見下すべき音楽として扱われています。ケイデンスがいたるところでほんのり差別されているのが個人的な見どころです。

バトルもムービーも、全てが音楽尽くし!!
ここからは『ピープル・オブ・ノート』の具体的なゲーム部分について紹介します。
本作はかなりJRPGを意識して作られた作品であり、バトルシステムもかなり日本の作品(特に『ファイナルファンタジー』シリーズ)に近い印象を受けます。まずは基本的な部分を軽く説明しましょう。

バトルはターン制で展開され、画面下の五線譜の空白部分がプレイヤーの行動可能なアクション数を示しています。下の五線譜が全て終わると一ターンが終了します。
また、バトルではターンによって五線譜の背景に色がかかりバトルBGMが変化することがありますが、そのターンではBGMとカラーにあったキャラクターのパワーが上昇します。BGMがロック調になったらロックのキャラで攻撃、エレクトロのEDMになったらEDMのキャラで攻撃というふうに、今掛かっている音楽に最適なキャラを最大限活用していくのがバトルのカギとなっています。

音楽によってターンの性質が変わるというのは本作らしいシステムですが、音楽が関わってくるのはここだけではありません。次は本作のアクションについても紹介しましょう。
本作のバトルはただコマンドを選ぶだけではなく、コマンドごとに専用のリズムアクションが用意されています。バトルBGMに乗せてタイミングよくボタンを押すとアクション成功、技のダメージ量や回復量がアップします。
最近では『Clair Obscur: Expedition 33』などが似たようなシステムを採用していますが、本作でリズムアクションが要求されるのはもっぱら攻撃のみ、敵の攻撃を受けるときにアクションは要求されないので、アクションんが苦手な方でも楽しめるバランスとなっています。

また、音楽に絡めた要素はこれだけではありません。バトルが進み敵からの攻撃を受けると、各キャラクターのMSHゲージを消費して超必殺技、マッシュアップ攻撃を放つことができます。効果は敵全体へのダメージや味方の全回復など強力なものが多く、BGMもジャンル同士でマッシュアップするように。バトル中に曲調がどんどん変わっていく様は、本作のバトルを象徴する部分と言えるでしょう。


最後に、本作のムービーについてもお話します。
『ピープル・オブ・ノート』では物語の途中に豪華なムービーカットシーンが挿入されるのですが、なんと本作ではその全てがボーカル入りのミュージカルとして「上演」されます。一つのムービーにつき一曲フル尺の楽曲という超豪華な作りとなっており、全編通して10本近くのミュージカルムービーを鑑賞することができます。


本作はムービーへの力の入れようがとにかく凄まじく、このムービーを見るだけでも非常に価値あるゲームと言えるでしょう。歌唱部分とセリフ部分でそれぞれ異なる声優が使われていることからも、開発側からの気合が見て取れます。ミュージカルではそれぞれのキャラクターが掛け合いながら心情を歌ったり、物語の舞台がどのような場所なのか、この世界の歴史がどう作られていったのかなど、ストーリーを進めるうえでの重要な点も語られます。


特に物語の序盤、ケイデンスが町から出ることを決めるミュージカルシーンでは、曲の終わりにタイトルロゴが画面にドン!と画面いっぱいに表示される演出があるなど、ミュージカル作品としても純粋に楽しめる演出が凝らされています。

また余談ですが、本作の「ある部分」では開発チームによる実写のミュージカル映像も登場(?)
ネタ満載で非常に面白いのでぜひチェックしてみてください。
『ピープル・オブ・ノート』はムービー、バトル、そしてフィールド、あらゆる要素が音楽というテーマでまとめられたユニークなJRPG作品です。もちろん、フィールドBGMの移り変わりや、バトル中に切り替わる音響などにも要チェック。とにかく音楽にフィーチャーしたこの世界を、この春ぜひ楽しんでみてはどうでしょうか。
『ピープル・オブ・ノート』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ2向けに発売中です。

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













