
アライアンス・アーツが2026年4月24日にSteamでリリースする『ゆんゆん電波シンドローム』は、電波ソング、もしくは萌えソングと呼ばれるジャンルの楽曲に特化した音ゲー+ADVです。
しかも登場キャラクターやシナリオが電波ソングにふさわしいものとなっており、「本当に好きじゃないとここまで解像度は高くならないぞ!?」と思えるほど尖りに尖っていました。ゲームを開始するなり不穏な演出も飛び交って、“電波ソング音ゲー”の部分を差し引いても「こいつはただ者じゃない!?」と感じたほどです。
そこで本稿では、ひと足お先にプレイさせていただいた『ゆんゆん電波シンドローム』の序盤をレポート。あまり踏み込むとネタバレが怖すぎる、そのユニークな内容を紹介したいと思います。
※執筆にあたり、Steamキーの提供を受けています。
◆新旧“電波ソング”のアーティスト・データベースになれるか!?
音ゲーということで真っ先に気になるのが収録曲です。そのラインナップはなんと30曲! しかもDLCを合わせれば80曲を越えるボリュームなので、このゲーム1本だけでそのうち「電波ソング/萌えソング」のアーティスト・データベースができてしまうのではないか!?と思える曲数でした。
もっとも多く収録されているアーティストは、本作の主題歌「電波的妄想少女Q」も担当したKOTOKOさんです。これまで多くの電波ソングを歌い、電波ソングのジャンルを盛り上げて来ました。そのほかMOSAIC.WAVさん、しぐれういさん、民安ともえさんなど納得のラインナップです。
また本作では声優として参加している桃井はるこさんもDLCで「UNDER17」時代の楽曲が収録されているほか、本作オリジナルソング「幸福絶頂!! りむ・で・らてんと☆」も新規で歌唱しており隙がありません。そんな本作の、発表済みの収録楽曲が以下となります。
<『ゆんゆん電波シンドローム』発表済み収録曲リスト>
【KOTOKO】
・電波的妄想少女Q/『ゆんゆん電波シンドローム』より
・ねぇ、…しようよ!/『姉、ちゃんとしようよっ!2』より
・Mighty Heart~ある日のケンカ、いつもの恋心~/『つよきす』より
・さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~/『カラフルキッス ~12コの胸キュン!~』より
・きゅるるんKissでジャンボ♪♪/『カラフルハート ~12コのきゅるるん♪~』より
・らずべりー/『らずべりー』より
・あちちな夏の物語り/『Ripple ~ブルーシールへようこそっ~』より
・Change my Style ~あなた好みの私に~/『コスって!My Honey』より
・INTERNET OVERDOSE/『NEEDY GIRL OVERDOSE』より
・INTERNET YAMERO/『NEEDY GIRL OVERDOSE』より
【KOTOKO(I've)】
・Princess Bride!/『プリンセスブライド』より
・Princess Brave!/『プリンセスブレイブ! ~雀卓の騎士~』
【ゆんゆん(CV:桃井はるこ)】
・幸福絶頂!! りむ・で・らてんと☆/『ゆんゆん電波シンドローム』より
【藤咲かりん】
・魔理沙は大変なものを盗んでいきました/『東方Project』より
【miko】
・患部で止まってすぐ溶ける~狂気の優曇華院/『東方Project』より
・チルノのパーフェクトさんすう教室/『東方Project』より
【ave;new feat.佐倉紗織】
・true my heart/『Nursery Rhyme -ナーサリィ☆ライム-』より
【MOSAIC.WAV】
・Love Cheat!/『いただきじゃんがりあんR』より
・ガチャガチャきゅ~と・ふぃぎゅ@メイト/『ふぃぎゅ@メイト』より
・洗脳・搾取・虎の巻/『VAZIAL SAGA~愚民化戦略~』より
【Chu☆】
・巫女みこナース・愛のテーマ/『巫女みこナース』より
【民安ともえ】
・だっこしてぎゅっ! ~汝、隣の枕(よめ)を愛せ/『だっこしてぎゅっ! ~オレの嫁は抱き枕~』より
【猫森アキ、くろねこ、Kana】
・つるぺったん/『東方Project』より
【マシンガン進藤】
・夏はマシンガン/『みずいろ』より
・冬もマシンガン/『みずいろ』より
【しぐれうい】
・粛聖!! ロリ神レクイエム☆/しぐれういオリジナルソング
いかがですか? あなたはどれだけご存知でしたか?
実は4月18日に「アニストネーション2026~ここから進化を遂げ、世界に挑んで突き進む!~」という音楽イベントがあり、そこに桃井はるこさん、ULTRA-PRISM、MOSAIC.WAV、Little Non.、OKINI☆PARTY'Sといった、秋葉原萌えソングのアーティストが集っていました。やはりライブで体感する電波ソングや萌えソングは最高ですね! 桃井さんもMCパートで本作に触れ、「楽しい収録だった」と笑顔を覗かせていました。

◆クセが強すぎィ!……でもそこがいい!
さて本作は“ヒキコモリ”の少女「Qちゃん(CV:ななひら)」が、モニターの向こうのキャラクター「ゆんゆん(CV:桃井はるこ)」に話しかけられたところから始まるダークファンタジーです。「モニターの中のキャラクターに話しかけられる」という出逢いもさることながら、「Qちゃん」の頭がねじ切れるイメージシーン(?)やノイズ演出など、言葉では説明できないような“電波”な描写が早くも押し寄せて危険な香りが……。オープニング直前のプロローグでこれですから先が不安……いや楽しみです。


ゲームスタート時に戸惑ったといえばニューゲームからの再スタートです。
動作確認をした後に一旦終了し、別の作業を終えてからニューゲームを選ぼうとしたら、なんと「NEW DREAM(ニューゲーム扱い)」が急にバグって選択不能になるという現象が! どうやらニューゲームを選びたい時はロードの1番目の項目を選ぶ独特のシステムのようですが、なぜそのような仕様になっているのか最初は分からずとまどってしまいました。
さらに2番目のセーブデータが既にエラーで破損しており、「これ何を意味するの……!?」と不安しかありません。まだオープニングが終わった段階でこれですから、どれだけ綿密に世界観を作りこんでいるか察せられます。


さてオープニングの次はいよいよチュートリアルの開始。ひとつずつ要素を開放していきながら、どのように進めるのかていねいに教えてくれました。
本作は「ゆんゆん」に文才を認められた主人公「Qちゃん」が、そのテンションに乗せられるまま怪文書をネットに投稿し、世界を陰謀論で狂わせていくというストーリーです。音ゲーはその、怪文書をタイピングしている場面に該当し、音ゲーパートが終わるとともに怪文書を投稿することになります。その流れを順番に見ていきましょう。

本作は他の音ゲーのように、横4列で降ってくるノーツをタイミングよく押すことでリズムを取っていきます。難易度は「ノーマル」「ビンビン」「バリバリ」「廃人専用」の4段階。もっとも優しい「ノーマル」だと初見フルコンボが達成できるレベルですが、「廃人専用」では豪雨のように落ちてくるノーツに頭が「パーン!」となります。もちろん「ノーマル」でも手ごわい楽曲があるため油断はできません。

本作で優しいのは、空押ししてしまっても失敗にはならないことです。タイミングを間違える、もしくは見逃してしまうとコンボが途切れるので、そこだけ注意すれば良いというバランスとなっています。本作ならではの変則的なキータッチがない部分は初心者向きではありますが、反面、ふだんから音ゲーをするプレイヤーにとっては多少の物足りなさを感じることがあるかもしれません。
もちろん上級者向けには「廃人専用」があるのである程度の歯ごたえが感じられますし、奥行きのある画面構成ではなく単純に落下してくるだけですから、画面的なところでの難しさもあります。初心者から上級者まで幅広く遊べる一方、オーソドックスな部分をどう感じるかはプレイヤーによって異なりそうです。
そんな本作の目的は、「電波度」と呼ばれる指数を100%にすること。この電波度は、各楽曲および各難易度に個別に設定された「1回クリア」「フルコンボ達成」「ランクA以上クリア」「RATE95%」といった実績を解除することで上がっていきます。難易度そのものに対するゲームの有利・不利はありませんが、たとえば「ノーマル」だけを繰り返していても、一度解除した実績はそのままなので、必然的に他の難易度もプレイすることになります。
ただしそれだけで終わらないのがこのゲームの優しいところです。

電波度は別の方法でも伸ばすことができます。それが、音ゲーパート終了後に発生する怪文書投稿パートです。
このパートでは3つの文章をランダムに組み合わせて怪文書を作成し、それをゲーム内のSNSに投稿することで陰謀論を広めていくというものです。例えば「衛星放送は」「宇宙人も視聴者で」「視聴データが証明している」といった感じで怪文書を作成するわけです。陰謀論が発生するごとに電波度が上昇するため、音ゲーが苦手でも牛歩ながらシナリオを進めることができます。陰謀論の数も、無限とも思えるほどの数が収録されていますから、なくなった時のことを心配する必要がありません。


ちなみに本作には救済措置も存在しているので、「ガチで音ゲーは苦手!」という人でも買って損はありません。そのあたりは「電波ソングを布教したいぞ!」という開発スタッフの意気込みと熱意の表れのようにも思え、不穏なシナリオとは反対に優しいものを感じました。
そのようなサイクルを重ねてシナリオを進めていくのが本作『ゆんゆん電波シンドロ―ム』です。世界観とシステムがうまくマッチしており、テキストで説明するだけではとっつきづらい印象を与えてしまいそうですが、ストーリーも謎があって興味深いですし、実は音ゲーの入門編としても楽しいのではないかと感じさせてくれる作りとなっていました。

◆「オタクのための音楽」から「オタクのための音ゲー」へ
筆者は本作のリリースが発表された時から注目をしていたのですが、フタを開けてみると期待以上の世界が広がっていてワクワクがさらに大きくなりました。
それはなぜか?
先人たちの「オタク」に対する想いが、時を経てゲームという1本の世界に詰め込まれた部分に感銘を受けたからです。そもそも「電波ソング」はその成り立ちから複雑で、なおかつさまざまな人の想いを受けてひとつのジャンルになった経緯があります。
今回、楽曲が収録されたアーティストは、それぞれが電波ソングのジャンルを育て、支えて来ました。たとえばKOTOKOさんは自身の楽曲がFlashアニメとして拡散されたことで電波ソングというジャンルが広く認知されるきっかけとなっています。
しかしその土台となるムーブメントを起こしたのは、やはり秋葉原の地から「オタクのための音楽」を発信した桃井はるこさんであり、桃井さんとともに電波ソングのイメージを現在の方向性に定めた小池雅也さんでした。

桃井さんが2001年に発表したPCゲーム『いちご打』の主題歌「いちごGO!GO!」は、電気街のイメージからオタクの街へと変貌しつつあった秋葉原で、店頭の宣伝ソングなどに負けないようインパクトを重視して制作したのがネットを通じて話題になりました。
それがきっかけで桃井さんは、当時、自身の楽曲の編曲などをおこなっていた小池雅也さんと音楽ユニット「UNDER17」を結成し、「萌えソングを極める」をテーマにユニットとしての活動をスタートします。
桃井さん自身、オタクだったことで明るくない学生生活を送っていたこともあり、「UNDER17」では「オタクのための音楽」を多く手がけ、「自分のための楽曲だと思ってほしい」と願いを込めて活動したそうです。
一方、作曲面で活躍した小池さんは当時、桃井さんのかわいらしい声にダーティなロックの音を重ねることでギャップが出せるのでは?と、のちに電波ソングと呼ばれるスタイルを決定づけました。
電波ソングの特徴は、アニメ声と呼ばれる女性ボーカルであること、中毒性ある曲調や、にぎやかな合いの手が入っていることなどが挙げられます。それらの特徴が桃井さんと小池さんの活動を通して一種のブランド化し、「電波ソングを作って欲しい!」というオファーが2人のもとに舞い込むようになったと、よくお2人は当時を振り返っていました。
その後、「UNDER17」は2004年に解散し、桃井さんは再びソロ一本に、小池さんはMOSAIC.WAV、でんぱ組inc.、秋葉原系ロックバンドのLittle Nonのサポートなどで秋葉原の萌えソング文化を支えつつ、自身も新たに音楽ユニット「ULTRA-PRISM」を月宮うさぎさんと結成して現在に至りました。

電波ソングがネットを中心に話題になったのは、やはり中毒性ある音楽が新しかったのと同時に、居場所を失ったオタクへ向けて発信した思いがダイレクトに個人へ届いたのが理由ではないでしょうか。そしてそれがひとつのジャンルとして認識されるようになり、さまざまなアーティストが電波ソングを継承した結果、現在も、しぐれういさんの「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」のようなヒット曲が生まれたのです。
そう思うと、桃井さん演じる「ゆんゆん」が「Qちゃん」に影響を与えるという構図も納得しかありません。
『ゆんゆん電波シンドローム』は不穏な描写があるものの、「Qちゃん」を通じて紡がれる物語は、その根底に「オタクのための音楽」と同じものが感じられ、当時「電波ソング」もしくは「萌えソング」として愛された音楽たちが、遺伝子レベルで受け継がれたからこそ誕生したゲームのように思えてきます。
「オタクのすべて」を掘り返してギュギュッと詰め込んだという意味では、オタクの黒歴史の玉手箱とも言えるでしょう。誰でも一度はネットのムーブメントを目にして「Qちゃん」のようにクリエイティブを目指したことがあるはずです。
もちろん懐古するだけではなく、オタクを元気づけた電波ソングや萌えソングは、現在のユーザーにとっても心に響くはず。それはきっとゲームを攻略し、物語からチラ見えするものの本質に触れた時、より強く感じられるのではないでしょうか。それともこの“妄想”も、もしかしたら「Qちゃん」が飛ばした電波の影響なのかもしれません……。

音ゲーとしても間口が広く、その世界観も他では絶対に味わえないものがある本作。『ゆんゆん電波シンドローム』はPC(Steam)にて4月24日発売です。













