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“タンクは怖い”を覆したい。ひとりでMMORPGのタンク体験を味わえるアクションローグライト『Don't Lose Aggro』開発者インタビュー!

MMORPGでタンクを愛してきた開発者が、その記憶と手触りをひとり用ゲームとして形に。

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“タンクは怖い”を覆したい。ひとりでMMORPGのタンク体験を味わえるアクションローグライト『Don't Lose Aggro』開発者インタビュー!
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『Don’t Lose Aggro』は、MMORPGにおける“タンク役”の体験を、シングルプレイのアクションローグライトとして再構築した作品です。敵を引きつけ、仲間を守り、戦況をコントロールする――ひとり用なのに、タンクならではの面白さに正面から向き合っている点が大きな特徴です。

本インタビューでは、MMOで長くタンクを担ってきたソロ開発者に、本作の発想の原点や、タンクへの不安“tankxiety”も含めた役割の魅力、そしてひとりでMMORPGらしい手触りを味わえる作品を目指した理由について訊きました。

MMOの外には、タンクを楽しめる場が全くない

――まず、『Don’t Lose Aggro』はどのような発想から生まれた作品なのでしょうか。最初にこのゲームを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

Louis Waloschek:私は子どもの頃から、主にMMOを遊んで育ちました。『World of Warcraft』や『ArcheAge』などでも、いつも自分はタンク役を選んでいました。このロールには不思議と惹かれるものがあって、高い緊張感や責任の重さ、そして自然とリーダーシップを担うことになるところが特に好きだったんです。

ただ、年齢を重ねるにつれて、現実の生活との兼ね合いもあって、MMOというジャンルそのものから少し離れるようになりました。継続的に関わり続けるには、どうしても多くの時間が必要になりますからね。

そのときに気づいたのが、「MMOの外には、タンクを楽しめる場がまったくない」ということでした。もしこの役割を遊びたいと思っても、もうそれを体験する方法がない。ちょうどその頃にはゲーム開発も数年続けていたので、「それならタンクをテーマにしたゲームを自分で作ればいいんじゃないか」と思ったのが始まりです。

――本作は、MMOレイドにおける“タンク体験”をシングルプレイのアクションローグライトへ落とし込んだ、かなりユニークな作品です。数ある役割の中で、なぜタンクを主題にしようと考えたのでしょうか。

Louis Waloschek:タンクのゲームプレイには、見た目以上に多くの要素が詰まっていると思っています。位置取り、ルート取り、生存力の管理、ユーティリティの使い分け、そして火力も維持しなければならない。私は、あらゆる役割の中でも最も複雑なのがタンクだと考えています。

それに加えて、タンクは事実上パーティのリーダーでもあります。グループの生存を背負う存在であり、その責任が最初から備わっている。そこにはパーティベースRPGならではの面白さが強く表れています。

もうひとつ大きかったのは、タンク不足という問題です。「なぜプレイヤーはタンクをやりたがらないのか」という課題に対して、何か解決の糸口を示せるのではないかとも思いました。もしかしたら、“タンク革命”のようなものを起こして、この役割の捉え方そのものを変えられるかもしれない。そんな気持ちもありました。

――Steamストアページでは、本作が長年のMMORPGでのタンク経験から生まれたと説明されています。ご自身のタンク経験のうち、どの部分が本作の核になっているのでしょうか。タンクという役割の何にもっとも魅力を感じているのかも教えてください。

Louis Waloschek:私にとって大きかったのは、人との関わりですね。タンクをしていた頃、私は単に攻撃を受け止める役でいるだけではなく、戦闘全体の進行役であることを楽しんでいました。仲間のクールダウン、ヒーラーのマナ、DPSの回し方、そういったものを常に把握しながら、戦い全体を指揮するような感覚が好きだったんです。

だからこそ、『Don’t Lose Aggro』では仲間に対する直接的なコントロール要素を入れました。彼らは単なる賑やかしではなく、ゲームプレイの中核にいる存在です。たとえば「大きな回復が来るぞ」とヒーラーに声をかけられるような、MMOらしいやりとりをシングルプレイでも再現したかったんです。

もちろん、これをシングルプレイへ持ち込むのは難しい挑戦でした。でも同時に、それはやりがいのあることでもありました。マルチプレイでは起こりがちな責任の押し付け合いや悪い振る舞いを排除できるという利点もありますから。

――多くのゲームでは、タンクはあくまで支援的な立場として描かれ、派手な主人公役にはなりにくい印象があります。それでも、タンクという役割だけでゲーム全体を成立させられると確信できた理由は何だったのでしょうか。

Louis Waloschek:やはり、さまざまなMMOでタンクをプレイしてきた経験が大きかったです。その蓄積があったからこそ、タンクという役割の中に十分なコンテンツ量とゲームプレイの多様性を見出せるという自信がありました。

たとえば『ArcheAge』はその好例です。状況ごとに異なる多彩なタンク像が用意されていて、それがとても魅力的でしたし、ほかの人気MMOでもクラスごとの個性に応じて、それぞれ違ったタンク体験が作られています。

そうした数々の参考例が、『Don’t Lose Aggro』に取り込める要素の大きな蓄積になっています。それによって、シングルプレイのタンクゲームでも、ユニークで幅のある体験を作れると考えました。

――『Don’t Lose Aggro』におけるタンクは、ただ敵の攻撃を受けるだけではなく、位置取りや敵の誘導、味方を守るための判断など、より広い役割を担っているように見えます。開発チームにとって、このゲームで“タンクらしさ”を感じるとはどういうことなのでしょうか。

Louis Waloschek:『Don’t Lose Aggro』の核にあるのは、MMORPGにある要素を瞬間ごとの戦闘へ持ち込むことです。つまりタンクとして、空間認識を身につけ、レイド的なギミックを避け、アグロ管理について瞬時に判断していく必要があります。

さらに、本作がローグライトであることによって、プレイヤーの意思決定がより強く前に出ます。私は、プレイヤー自身が「自分にとってタンクらしさとは何か」を選べる自由を大事にしたかった。すべての攻撃を防ぐことがタンクらしさかもしれないし、あるいは呪文でダメージを反射して戦うことがそうかもしれない。そこはプレイヤーごとに違っていいと思っています。

MMOの歴史にある印象的なやり取りを再現したい

――MMOではパーティ全体での連携が重要ですが、本作はシングルプレイです。ロール分担やレイドの感覚をひとり用の体験へ落とし込むうえで、特に難しかったことは何でしたか。

Louis Waloschek:ほかの仲間の移動を細かく操作すること自体は、実際にはあまり面白くないと理解したことが大きかったですね。そのため、MMO的なパーティ連携に存在する多くの要素は思い切って捨てることにしました。

『Don’t Lose Aggro』では、本来パーティ全体で処理していたような連携試験を、タンクひとりに集約しています。ただ振り返ってみると、MMOのギルドでも、結局こうしたギミックはタンクに任せられることが多くて、それ自体がどこか面白くもありました。

特定のダメージを受ける、決められた場所に立つ、ボスの能力に対応する。こうしたものは、まさにタンクの本分です。そう考えると、シングルプレイ化することは、むしろタンクを“あるべき場所”へ戻すことでもあったのかもしれません。

――本作では、守るべき仲間が登場し、場合によっては犠牲にすることさえできます。この仕組みを通じて、プレイヤーにどのような戦術的判断や感情を味わってほしいと考えていますか。

Louis Waloschek:まず感じてほしいのは、判断の自由ですね。そして、タンクという存在は実は単独でも十分に戦えるのだということです。私は、タンクの運命をチームの運命と完全に結びつけたくありませんでした。プレイヤーとしてそれは窮屈に感じますし、自分で状況をコントロールできていない感覚につながるからです。このゲームは、あくまで“自分で制御している”感覚を大切にしています。

仲間との関係については、『Don’t Lose Aggro』の中で、MMOの歴史にある印象的なやりとりを再現することを意識しています。そのため、仲間に対してプレイヤーが抱く感情も幅広いものになるはずです。

――“アグロを維持する”という概念は(海外の)MMOプレイヤーには馴染み深いですが、一般的なアクションゲームのプレイヤーにはやや抽象的にも見えます。そもそもそれはどういう意味なのでしょうか。また、本作ではその概念をどのように直感的で楽しいものに落とし込んだのでしょうか。

Louis Waloschek:少し面白い話なんですが、このゲームを作り始めたとき、私は「アグロ」という言葉は誰でも知っているものだと思っていたんです。でも実際には、用語としても仕組みとしてもかなりニッチな知識だった。そのことに気づいたのは、このプロジェクトにおける大きな転機でした。

そこから「すべてを説明する」という設計思想が生まれました。どんな背景を持つプレイヤーでも、仕組みや要素がきちんと説明されていれば、このゲームを楽しめるはずだと考えています。必要なのは、少しの忍耐と、新しいことを学ぼうとする意欲だけです。

――本作にはDodger、Blocker、Kiter、Taunterといったさまざまなタイプのタンクが登場します。開発チームはタンクという役割の幅広さをどのように捉えていて、その多様性をどのようにゲームへ反映しているのでしょうか。

Louis Waloschek:この点については、ローグライク系のゲームが非常に相性がいいと思っています。組み合わせ次第で、いろいろな方向性を成立させられるんです。たとえば「突進してきた敵を毎回防ぎ切るタンク」といったスタイルだって成立させられる。

そこで本作では、古典的な「3つの中から1つを選ぶ」ローグライク型のアップグレードシステムを採用しています。これによって、プレイヤーがどんなタンクを目指すのか、自分で選べる余地を作っています。

――攻撃、守備、回復、さらには引き寄せや突進のようなスキルまで含めると、ビルド次第でプレイ感はかなり変わりそうです。その一方で、“タンクであること”の軸を失わないためには、自由度とのバランスも重要だと思います。この点はどのように設計していますか。

Louis Waloschek:ラン開始前にあらかじめ決まっている要素と、プレイ中に選択していく要素。そのあいだにはちょうどいい落としどころがあって、そこがクラスの個性を形作ると考えています。

プレイヤーが恒久的な成長要素として、タレントビルドや仲間、装備効果などをアンロックできるようにすることで、タンクとしてのアイデンティティを保ちつつ、ラン中にはその場その場で面白い選択ができるようにしています。

自分が良いタンクとして機能しているという実感をすぐに得られる

――本作はアクションローグライトでありながら、気持ちよさの中心が“火力で薙ぎ払うこと”ではなく、“守ること”や“持ちこたえること”に置かれているように見えます。開発者として、プレイヤーが「いま上手くタンクできた」と感じられるのはどんな瞬間でしょうか。

Louis Waloschek:私がアグロ管理を主題に据えていて好きなのは、「上手くやれているかどうか」が非常にわかりやすいところです。『Don’t Lose Aggro』では、アグロを自分に向けている敵は緑で表示され、そうでない敵は赤で表示されます。つまりプレイヤーの仕事は、画面の中の敵をできるだけ緑に染めていくことなんです。

これは、自分が良いタンクとして機能しているという実感を、すぐに得られる仕組みになっています。

――早期アクセス段階で、とくに慎重に磨こうとしている部分はどこでしょうか。

Louis Waloschek:私がいま見極めようとしているのは、プレイヤーが「古典的なMMO体験」と「楽しいシングルプレイゲーム」の間に、どのようなバランスを求めているのかという点です。

ローグライト的な側面と、MMOらしい進行感を組み合わせるときに、どこまで大胆なビルドを許すべきなのか、新しい要素をどこまで入れるべきなのか、あるいは体験全体としてどんな方向性を望んでいるのか。そこをプレイヤーから学びたいと思っています。

――Steamでは、将来的にはMMORPGに期待されるような多くのシステムをシングルプレイ環境へ持ち込みたいとも語られています。最終的に『Don’t Lose Aggro』をどのようなゲームへ育てていきたいと考えていますか。

Louis Waloschek:プレイヤーが自分の積み重ねを振り返ったときに、確かな達成感や、進歩の意味そのものを感じられるゲームにしたいと思っています。ダンジョンをタンクとして攻略していくことに、きちんとした手応えが宿るような作品に育ってほしいです。

実際的な目標としては、膨大なカスタマイズ性とコンテンツの幅を備えた、“シングルプレイMMORPG”のような手触りを目指しています。

――本作は、長年MMOでタンクを遊んできた人だけでなく、これまでタンク役にあまり触れてこなかった人にも届きそうです。とくにどのようなプレイヤーに触れてほしいと考えていますか。

Louis Waloschek:もちろん、このゲームに可能性を感じてくれたすべてのプレイヤーに届いてほしいです。ただ、特に届けたいのは、これまでタンクに挑戦するのが怖かった人たちですね。いわゆる“tankxiety”(※)を感じてきた人たちです。

※tank(タンク)とanxiety(不安)を組み合わせた造語。タンク特有の責任に対するプレッシャーや不安。

――日本でも、MMORPGやパーティベースのゲームにおけるタンク役に特別な愛着を持つプレイヤーは少なくありません。開発チームとして、日本のプレイヤーには本作のどんな部分が特に響いてほしいと考えていますか。

Louis Waloschek:パーティとのやりとりの部分ですね。日本のプレイヤーの皆さんが、かつてMMORPGを遊んでいた頃の時間を思い出して、実際にそのMMORPGへ戻らなくても、どこか懐かしさを感じてもらえたら嬉しいです。

――最後に、開発者として『Don’t Lose Aggro』をどのような作品にしたいと考えているのか、あらためて理想のかたちを教えてください。

Louis Waloschek:私はソロ開発者なので、まずはこのゲームが十分に成功して、本当にチームと呼べる規模へ広げていけたらと思っています。ひとりでゲームを作るのは本当に大変ですし、この旅路を社内外の誰かと共有できるようになりたいんです。

『Don’t Lose Aggro』は、私自身にとってはタンクという役割へのラブレターであると同時に、これまでその役に踏み出せなかったプレイヤーが安心して挑戦できる環境を提供するための作品でもあります。

――ありがとうございました!


『Don't Lose Aggro』は、PC(Steam)向けに発売中です。

ライター:みお

ライター/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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