映画で有名なシリーズをゲーム化する場合に求められるのは、映画の中で主人公たちがやっていたことを、プレイヤー自身が体験できるかどうかだと思います。
『ホグワーツ・レガシー』では魔法で戦い、箒で空を飛ぶ。『STAR WARS ジェダイ:サバイバー』ではライトセーバーでの戦闘とフォースを駆使したアクション。『エイリアン アイソレーション』では、エイリアンに追跡される恐怖。さまざまな作品で、映画の中で印象的だった体験を、ゲームとして自分の手で味わう機会が与えられてきました。
では、今回発売された『007 ファースト・ライト』に求められるものは何でしょうか。
それはやはり、スマートな潜入、軽妙な会話、ガジェットを使った切り抜け、そしてド派手なアクション。“「007」のジェームズ・ボンドを自分で動かしている”という感覚があるかどうかでしょう。
本記事では、『007 ファースト・ライト』をストーリークリアまでプレイしたレビューをお届けします。本稿の執筆にあたり、パブリッシャーよりSteamキーの提供を受けています。
若きボンドを描く映画さながらのストーリー
本作で描かれるのは、すでに凄腕のエージェントとして名を馳せたジェームズ・ボンドではありません。まだ“00”の称号を得る前の若きボンドが、ある出来事をきっかけにMI6と関わり、危険な任務へ足を踏み入れていくというストーリーが展開されます。
この設定のおかげで、プレイヤーが操作に慣れていないことや、任務中の失敗も「若い頃のボンドだからそういうこともある」という風に受け入れられる仕組みになっています。
もちろん、本作のボンドも危険を前にしてもどこか余裕があり、相手との会話では軽妙に振る舞い、美女を前にすればすぐに口説く。荒削りではあるものの、すでに“後のジェームズ・ボンド”につながる素養は随所に見えています。
ただの若者だったボンドが、数々の任務をこなし、危険な状況をくぐり抜け、やがてあの伝説的エージェント“ジェームズ・ボンド”になっていく。操作に慣れてくる終盤では、スパイとして成長していくボンドの姿と、プレイヤー自身の上達が自然に重なる感覚もあり、その過程を体験できるのは、本作の大きな魅力です。
また、スパイになる前から物語が始まるため、シリーズに詳しくなくても入りやすい点も好印象でした。
MI6やQのガジェットなど、「007」らしい要素はしっかり用意されていますが、「過去の映画をすべて観ていないと楽しめない」という作りではありません。むしろ、本作からプレイしても同時に映画シリーズに興味を持ってしまうほど、強くジェームズ・ボンドの魅力を引き出していると感じました。


潜入とアクションの緩急を味わうゲーム性
本作の開発は、『HITMAN』シリーズで知られるIO Interactiveが手掛けています。実際、本作の潜入に関して言えば『HITMAN』らしさがかなりあります。
周囲の人物の会話を聞き、警備の動きを確認し、使えそうなギミックを探す。情報を集めることで別の突破口が見えてくる作りは、本作にもきちんと存在しています。
潜入中に警備員に怪しまれた時も、すぐに戦闘になるわけではありません。会話でごまかしたり、相手を油断させて近づいてきたところを一気に制圧する。ここには「007」らしさを感じました。
Qが用意するガジェットも、「007」らしさを補強する要素として機能しています。電子機器をハッキングする腕時計、ミサイルを発射できるペン、衝撃波を出すカメラなどユニークで使い方次第でさまざまな用途があるものがいくつも用意されています。
「ここに警備員がいるからこのガジェットを使おう」と考えながら潜入任務を進めていくのは楽しいポイントでした。


一方で、本作はステルスだけで進むゲームではありません。
静かに潜入任務を行っていたが、ある出来事をきっかけに一気に静寂が破られる。ターゲットが逃げ、敵が大量に押し寄せ、銃撃戦をしながらターゲットを追跡していく。そうした展開に入った時、本作は一気に「007」の映画的な熱量を帯びます。
その際のアクションはかなりド派手です。銃撃戦、格闘、カーチェイス、爆発、建物破壊といった見せ場が次々と押し寄せ、プレイヤーを危険な状況へ放り込む。そうした一連の流れが、「007」というのはこういう作品だと強く印象つけてくれます。


『HITMAN』を期待するとズレもある
本作は“遊べる映画”として作られている印象が強い作品です。これは間違いなく本作の魅力です。実際、銃撃戦やチェイスへ一気に転がっていく場面では、自分が映画の中に入ってジェームズ・ボンドを動かしているような高揚感がありました。
一方で、IO Interactive開発という点から『HITMAN』的な自由度の高い潜入を期待していると、少し印象が違うかもしれません。
本作にも、会話を盗み聞きして情報を得たり、警備の隙を突いたり、ガジェットを使って状況を動かしたりする場面はあります。しかし、それらはゲーム全体を通して常に自由に試行錯誤できるというより、ミッションの一部として用意されている印象です。

『HITMAN』のように、広いステージに放り込まれ、ターゲットの行動を観察し、さまざまな方法で自由に攻略ルートを組み立てていく。そうしたものを想像していると、本作の作りはやや映画的で、プレイヤーの進行ルートもある程度コントロールされているように感じる場面があります。
もちろん、これは本作の欠点というよりかは、方向性の違いと言った方がいいかもしれません。
本作は、『HITMAN』をそのまま「007」に置き換えた作品ではありません。ステルスゲームとしてじっくり遊ぶというより、場面ごとにスパイらしい判断を求められるゲームと考えた方が近いでしょう。
『HITMAN』のような高い自由度の潜入を期待していると、「もっと自由に潜入させてほしい」と感じてしまうこともあるかもしれません。ここに関しては、「何を求めて本作を遊び始めたか」で評価が分かれる点だと感じました。

『007 ファースト・ライト』は、「007」という題材をゲームに落とし込むうえで、かなり理想に近い作品です。『HITMAN』的な潜入の面白さを一部に取り入れつつ、銃撃戦、格闘、カーチェイス、ガジェット、映画的な演出を組み合わせることで、“遊べる映画”としてしっかり成立しています。
一方で、自由度の高いステルスゲームを期待すると、やや物足りなさを覚える場面もあります。あくまで本作は、映画のような流れの中で潜入やアクションを味わうスパイアクションです。
それでも、若きボンドの成長、危険な任務の緊張感、そして「007」らしい華やかな見せ場は非常に魅力的。シリーズファンはもちろん、アクションゲームが好きな人にもおすすめできる一本です。
『007 ファースト・ライト』は、PS5/Xbox Series X|S/Windows(Steam、Epic Games Store、Microsoft Store)向けに発売中。ニンテンドースイッチ2版は今夏発売予定です。
Game*Spark レビュー 『007 ファースト・ライト』 PC(Steam、Epic Games Store、Microsoft Store)、PS5、Xbox Series X|S、ニンテンドースイッチ2 2026年5月27日
“「007」の遊べる映画”としてハイクオリティに仕上がったスパイアクション
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GOOD
- “遊べる007映画”としての完成度が高い
- シリーズ未視聴でも入りやすいオリジンストーリー
- 若きボンドの成長を自分の操作で体験できる
BAD
- 『HITMAN』的な自由度の高い潜入を期待するとズレを感じる
- 序盤は演出主導で、自由な潜入までやや時間がかかる













