突然ですが、みなさんは超能力と聞いて何を思い浮かべますか?
触れずに物を動かすサイコキネシス、重力を無視した空中浮遊、そして手から放たれる謎の怪光線。これらは古今東西、全人類が中二病の時期に一度は夢見た健全なファンタジーであり、最高にスカッとする娯楽の王道です。これほど手間のいらない現実逃避の合法ドラッグが他にあるでしょうか? それが前作『CONTROL』でした。
しかし、北欧の狂気集団ことRemedy Entertainmentが送り出してきた最新作『CONTROL Resonant』は、前作の成功体験を維持しつつ、アクションRPGとしてまったく別のベクトルへ全力疾走する新たな妄想を叩きつけてきました。
渡されたのは銃ではなく、ガチャガチャ変形する近接武器。放り出されたのは、3つの異次元勢力が縄張り争いを繰り広げる、高熱の悪夢そのもののニューヨーク。そして主人公は、前作で大虐殺に加担して周囲から親の仇のように睨まれている青年。
超能力アクションRPGという甘美な響きに釣られて飛び込んだら、回復薬すら存在しない殺伐としたマンハッタンで、命を削りながら怪異を殴り倒していく超過酷なサバイバルが始まってしまったのです。
本稿はRemedy EntertainmentよりPC版のコードを提供いただき執筆しています。
プレイ環境:PC(CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D / GPU:AMD Radeon RX 9070 XT)
解像度:1440p(AMD FSR有効、レイトレーシングは途中で涙のOFF)
クリア所要時間:約36時間(寄り道込み。公式の「メイン27~30時間、サイド込み50時間」はガチでした)
ネタバレについて:ストーリー中盤前半までの要素に絞り、致命的なネタバレは厳重に封印しています。
前作の特級戦犯が主人公!? 7年の完全封鎖の果てに爆誕した三つ巴の地獄絵図
前作を遊んだ方なら覚えているはずです。政府の極秘機関である連邦操作局(FBC)に乗り込み、変形する拳銃サービスウェポンと爽快な瓦礫投げで超常現象をねじ伏せ、最後には最高権力者である局長へと登りつめた最強の姉、ジェシー・フェイデンを。

いきなり前作の話をされても知らんがなという方もご安心ください。タイトルメニューには前作の経緯をコンパクトにまとめた解説動画が用意されており、完全初見のプレイヤーでも背景をしっかり把握できます。
前作ラストで局長に就任したジェシーは、驚くべき決断を下しました。ビル内に蔓延する異界からの侵略者ヒスを完全に封じ込めるため、本拠地オールデスト・ハウスの外部接続をすべて遮断する7年間の完全ロックダウンを決行したのです。外の世界と完全に隔絶された長すぎる7年間。作中で拾える資料には、閉じ込められた職員たちの生々しい愚痴がびっしりと詰まっています。

そして7年後。別次元からさらなる未知の脅威が迫っていることを察知したジェシーは、昏睡状態だった弟ディランを目覚めさせそのまま忽然と失踪してしまいます。(なぜ一番大事な説明をせずに消えるんだ局長!?)
時を同じくして、7年間閉じ込められ続けていたヒスがついにオールデスト・ハウスを脱出。巨大なダムが崩壊するように、大量のヒスがニューヨーク・マンハッタンの街へと雪崩れ込んでしまいました。 これだけでも胃が痛いのに、マンハッタンで待ち受けていたのは更なる絶望でした。

街へ流出し、人々の肉体と精神を乗っ取る侵略者「ヒス」。

前作でも猛威を振るった、あらゆる有機物を汚染する胞子生命体「モールド」。

そして、別次元から突如として襲来した正体不明の第3勢力「パターン(共鳴体)」
NYを舞台に地獄の三つ巴バトルロイヤル開始!
いきなり針のむしろの主人公
物理法則が狂ったマンハッタンは、この3つの超常勢力が殺し合う阿鼻叫喚の場と化していました。そんな大惨事の真っ只中に叩き起こされたのが、本作の主人公ディラン・フェイデンです。

彼は少年時代にFBCに拉致・監禁され、10年以上も生体実験を受け続けた末、前作でFBCへの復讐心からヒスに協力して職員たちを大量虐殺したガチの元凶。そんな男が「姉を探しに来ました、ヒスを倒して街を救います」と協力しますが、生き残り職員たちから浴びせられる視線は冷酷そのものです。
「お前、どの面下げてここに来た?」
そりゃそうです。同僚たちを皆殺しにした張本人ですからね。姉が前局長でなければ即座に射殺されていたところですが、ディランはFBCに背いたら即座に命を落とす致死デバイスを装着することで、どうにか周囲を納得させます。
もちろん、その後も強烈な敵意を向けられ続けます。ですが、この極限状態の人間関係こそが本作のストーリーにスパイスを加えてくれます。

職員の中にはディランの過酷な生い立ちを知り、理解を示してくれる者も存在します。そして何より、傷だらけになりながらヒスの群れに単身で突っ込み、泥をすすって戦うディランの姿を見て、物語が進むにつれてストーリーに直接関与しない名無しNPCたちの会話が目に見えて軟化していくのです。
最初は露骨に吐き捨てるように陰口を叩いていたNPCたちが、中盤を迎える頃にはセリフの端々に確かな信頼を滲ませてくる。

かつて名作『inFAMOUS Second Son』で、最初はテロリストと罵られて石を投げられていたデルシンが、善人ルートを貫き通した果てに民衆から熱烈に支持され、最後には市民たちが立ち上がって背中を押してくれた、あの瞬間を覚えているでしょうか? 筆者はああいう、周囲から迫害されていた異能のアウトサイダーが、泥臭い行動で信頼を勝ち取っていくシチュエーションにあまりにも弱いのです。
銃を捨てて殴り込み! 一見無双ゲー、序盤は死にゲーの近接メカニクス
前作は自由自在に変形する銃を撃ち、瓦礫を投げる洗練された超能力TPSでした。しかし今作のディランは変形近接武器アベーラントを握りしめます。

アベーラントにはメイン攻撃、サブ攻撃、コンボフィニッシャーの3つのカテゴリそれぞれに選択肢が用意されています。メイン攻撃だけでも、バランスのいい長剣、手数の多い二刀流、広範囲を薙ぎ払うカマといったバリエーションが存在し、そこに特殊技である戦闘アビリティ、スキルツリー、アクセサリーが組み合わさることで、プレイヤーごとのビルドが完成します。
このビルドを用いた戦闘の手触りが、控えめに言って素晴らしい出来栄えです。

地上でジャンプして適当に攻撃ボタンをポチポチ押すだけで、はるか上空に浮いている敵に向かってディランが自動で高速追尾・浮遊突進。そのまま空中を優雅に舞いながら敵をタコ殴りにできます。ゲームを始めたばかりはあまりに敵が高く浮かびすぎてどうやって攻撃すればいいんだと思ってましたが、ディランはあっさりと敵にたどり着けます。縦の行動範囲がとても広い。
敵にはHPゲージのほかにひるみ値が設定されており、HPを削り切るだけでなく、ひるみ値を最大まで蓄積させればボス以外はフィニッシャーで一撃粉砕が可能。多くの敵をまとめて怯ませ、ボタン一つで次々に敵を成敗していくテンポ感は快感です。
敵の猛攻に対してはスキルによる防御、もしくは回避の二択。パリィは存在しません。敵の攻撃をジャスト回避するとスタイリッシュなスローモーション演出が入り、そこから強力な技を叩き込んで一気に攻め立てることができます。
敵の攻撃を回避し攻撃を叩き込み続け、「うおおお! 神エイムはいらない! ぼくは今、異能の神になっている!」
……と、序盤のうちは完全に調子に乗っていました。ええ、完全に開発の罠です。
全人類待望! アシュトレイ・メイズの熱狂が再び脳を焼きにくる
ここで少し、前作経験者の同志たちに語りかけさせてください。
前作終盤、ウォークマンから爆音で流れるOld Gods of Asgardの「Take Control」をバックに、ねじれ狂う灰皿迷路(アシュトレイ・メイズ)を突き進んだあのシーン。
あれ、ゲーム史に残る最高の体験でしたよね?
筆者は今でもイントロを聴くだけで脳内麻薬がドバドバと分泌されます。あれを超えるカタルシスなんて、そうそう作れるわけがありません。
……と、思っていた時期がぼくにもありました。
なんと『CONTROL Resonant』では、あの神曲×狂気のステージギミックという伝説のフォーマットを、複数のシチュエーションで惜しげもなくブチ込んできます。
今回は激しいロックナンバーだけでなく、しっとりした曲やアップテンポなナンバーを用意するなど、Remedyはプレイヤーが何で狂喜乱舞するかを完全に理解しています。アシュトレイ・メイズで脳を焼かれた人間なら、間違いなくコントローラーを握りしめながら口がニヤけること請け合いです。
高熱の悪夢を探索する快感と、絶望的にダサい浮遊ポーズ
ビジュアル面に関しても、完全に言葉を失いました。

重力が上下左右に狂い、摩天楼が幾何学模様にねじれ、空中に人間や鳥が静止しているマンハッタン。この世界観、いい意味でインフルエンザで40度の熱を出したときに見る悪夢そのものです。
Ryzen 7 9800X3DとRadeon RX 9070 XTのパワーも相まって、空気中を舞う粉塵の粒感や、異次元の裂け目から漏れ出る光の粒子は息を呑む美しさ。前作の狭いオフィスビルから立体的に開かれた都市へとスケールアップしたことで、ビルからビルへと飛び移る探索のワクワク感は段違いに進化しています。

ただ、ディランの浮遊モーションが絶望的にダサい点だけは目を瞑らなけらばなりません。両手足を中途半端に広げて関節がタコのようにグニャグニャになりフワ~ッと浮く姿は、ダサゲー・オブ・ザ・イヤーがあれば満場一致で受賞できるレベルです。あんなにかっこいいコンボを決めるのに、浮遊だけ急に間抜けになるのか。ジェシーはちゃんとキメてたぞ。
不満点も結構ある
ここまでは最高のゲーム体験を語ってきましたが、クリアまで30時間以上じっくり付き合う中で、「おいRemedy、ちょっと体育館裏に来い」と小一時間問い詰めたくなった減点ポイントをズバズバ言わせていただきます。
回復アイテム不在の過酷さと巨大ボスの透過
本作には回復瓶のような携帯型の回復アイテムが一切存在しません。 HPを回復する基本手段は、敵を殴り倒したときに散らばるライフエッセンスを拾うことだけ。生き残りたければ、画面を埋め尽くす弾幕の中に自ら飛び込み敵を倒し続けるしか、雑魚敵の場合は戦闘から逃げればいいですがボス戦は話が別です。
ボス戦には雑魚敵が湧かないため、回復手段はボスのHPを一定ゲージ削ってエッセンスを吐き出させることのみ。しかも序盤のディラン君はペラッペラの紙装甲。それでいてボスの耐久力はかなり高めです。ワンミスの代償が重いです。

さらに酷いのが、一部の超巨大ボス戦です。ボスが画面に対して大きすぎるせいでカメラがボスの巨体に透過処理を施してしまいボスの攻撃モーションが見えなくなるという、アクションゲームとして絶対にやっちゃダメなことをやらかしてくれます。
育成が進むとエッセンスのドロップ率アップや自動生成スキルが整って無双ゲー化しますが、そこに至るまでの序盤は本当に過酷でした。
どうしても心が折れそうになったら、オプションからアシストモードを覗いてみてください。与ダメージを最大500%に引き上げたり、敵のHPをペラペラにしたりと、もはや公式チートレベルの調整が可能です。実績やトロフィーも問題なく取れます。
分かりづらいビルドパワー=レベル
未経験プレイヤーの前に立ちはだかるのが、キャラクターレベルに相当するビルドパワーという壁です。これは武器の強化やスキルツリーを進めることでしか上昇しません。
敵の頭上には推奨レベルが表示されているのですが、メインストーリーだけを猛ダッシュで駆け抜けようとすると、敵だけがグングン強くなり、ディランの攻撃がミリも通らない事態が発生します。筆者が序盤のボスで妙に硬いと感じていた理由も、純粋にビルドパワー不足が原因でした。ところが、このビルドパワーの数値がロードアウトメニューの下階層に隠されているため、初心者には非常に気づきにくい不親切なUIになっています。

強化素材を手に入れるにはマンハッタンの探索やサイドクエストが半ば義務付けられているのですが、本作のナビゲーションは目的地まで謎解きまで教えてくれる甘えた仕様ではありません。現場に落ちている文書を読み込み、自力で現場を特定するクラシックスタイル。中には「これノーヒントでは……?」と頭を抱えてスルーせざるを得ない難解な謎解きもありました。誰か正解を教えてください。
最寄りの敵に吸われすぎて集団戦が崩壊するロックオン
本作の集団戦は基本的に、無限湧きする雑魚を引き連れた大型の敵という構成です。大型を倒さない限り雑魚は湧き続けますし、強化素材も大型しか落としません。必然的に大型敵をきっちりロックオンして殴りたいわけです。
ところが本作の内部判定、どうやらディランに一番近い敵を最優先で殴る仕様になっているらしく、正面の大型をロックオンしているにもかかわらず、背後から雑魚がトコトコ近づいてくると、ディラン君が突然クルッと振り向いて後ろの雑魚を殴り始めます。
ロックオンとは一体何なのか。
俺のターン!ドロー!グラフィックを生贄にプレイしやすさを向上!
6月にデモ版を先行プレイした時点でも嫌な予感はしていたのですが、ヒスのイメージカラーである赤色のモヤと、赤一色に染まったステージ演出が重なるエリアでの戦闘が、控えめに言って視覚的拷問です。

敵の攻撃モーションの輪郭が背景の赤に完全に溶け込み、何が飛んできたのか分からないままジワジワ削り取られていきます。あまりにも理不尽に殴られるため、筆者は以下の設定でゲームの美麗さを自ら生贄に捧げました。
色覚調整(アクセシビリティ):赤色の彩度を10%カット。これだけで敵の輪郭がクッキリ浮き上がります。
レイトレーシングをオフ:せっかくのRX 9070 XTですが、反射光やヒスのモヤが綺麗すぎて情報量が爆発していたため、レイトレを切って画面をスッキリさせました。特にヒスのモヤは当たり判定が分かりづらすぎたので大きな改善ですし、フレームレートも跳ね上がり視認性も劇的に向上。グラフィックが売りのゲームでそのグラフィックが牙を剥いてくるのは完全に想定外でした。
ローカライズのちぐはぐさと画面を覆う字幕テロ
発売初日から日本語吹き替えに対応している熱意自体は素晴らしいです。しかし、10年以上過酷な実験を受けて感情が死んでいるディランの設定を忠実に再現しすぎたのか、日本語ボイスが完全な棒読みに聞こえてしまい、なかなかディランに感情移入できませんでした。

さらにアフレコ現場の都合なのか、耳から聞こえるセリフと表示されている字幕の言い回しが一致していない他、演技指示のようなテキストまで残っている始末。極めつけは、一部のイベントで映画「スター・ウォーズ」のオープニングクロール並みの長文テキストが画面をビッシリ埋め尽くす珍現象が発生します。しかも複数のイベントで確認しました。
クエストによっては別のクエストのセリフが流れる音声バグもありましたが、このあたりは今後のアップデートで改善されると信じたいところです。
なお、現場に落ちている膨大な文書資料の翻訳クオリティは完璧です。SCP系の読み物好きならこれだけで元が取れます。
荒削りだが、この悪夢の浮遊感は唯一無二の劇薬だ
『CONTROL Resonant』は完璧な優等生アクションではありません。ロックオンの挙動にはイライラさせられますし、画面は赤すぎて目がシパシパしますし、カメラや字幕の粗さも目立ちます。ただ不満点の多くはアップデートで解消されるでしょう。
それより、高層ビルの狭間を狂った重力とともに飛び回り、ヒス、モールド、パターンが入り乱れるカオスの中へ吸い込まれるように攻撃を叩き込むあの瞬間――アシュトレイ・メイズの遺伝子を継ぐ音楽とアクションの狂乱は、他のどんなアクションRPGでも絶対に替えが利きません。
崩壊したマンハッタンを手探りで這いずり回り、素材を集めてディランを強化し、かつて苦しめられた強敵を粉砕できるようになったとき、あなたはこのゲームの虜になっているはずです。もしあなたが、甘やかされた親切設計のゲームに飽き飽きしていて、高熱の悪夢の中で理不尽な超常現象とステゴロで殴り合いたいなら、迷わずマンハッタンへ飛び込んでください。他では味わえない、強烈で唯一無二の体験が待っています。
あと予約限定特典のアクセサリーが中盤以降も使っていられる壊れ性能なので予約しましょう。
Game*Spark レビュー 『CONTROL Resonant』
PC / PS5 / Xbox Series X|S
2026年9月24日
高熱の悪夢を切り裂く異能の刃――唯一無二の浮遊感が織りなす極上の近接アクションRPG
GOOD
- 変形武器「アベーラント」と超能力が融合した、極上の浮遊感とスタイリッシュな近接コンボ
- 「アシュトレイ・メイズ」の熱狂を再び味わえる、神曲と狂気のギミックが融合した圧巻の戦闘シークエンス
- 重力と常識が崩壊したマンハッタンを美しく描き出す、高熱の悪夢のような圧倒的グラフィック表現
- ペナルティなしで誰でもエンディングまで駆け抜けられる、極めて自由度の高いアシストモード
- 読み物好きなら何時間でも浸っていられる、膨大かつ高クオリティに翻訳されたFBC機密文書資料
BAD
- 集団戦において本命の大型敵ではなく最寄りの雑魚へ吸い寄せられがちなロックオン挙動
- ヒスの赤いモヤと赤い背景演出が重なるエリアにおける極端な視認性の悪さ(要設定調整)
- 巨大ボス戦でのカメラ透過による視界不良や、画面を覆い尽くす字幕など荒削りなUI・演出面











