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ようこそ、「SILENT HILL」へ。
かつてこのシリーズを訪れる者を待っていたのは、架空の町「サイレントヒル」に根を張る土着宗教や、そこへ迷い込んだ人々が抱える罪やトラウマでした。それらは怪物となり、悪夢となり、ときには町そのものの姿を変えて、訪問者を迎えてきたのです。
しかし、近年リブートされた「SILENT HILL」では、少しずつその行き先が変わり始めています。いまシリーズが目を向けているのは、現実の土地や時代にすでに刻まれている傷や、そこに残された罪の記憶です。それらを掘り起こし、「SILENT HILL」の文法で新たな恐怖へと変えていく。そんな物語へと、シリーズは発想の重心を移しています。
ドイツを下敷きにした『SILENT HILL: The Short Message』では、閉塞した社会に生きる若者たちの孤立や自殺、SNSを通じた承認欲求が描かれました。1960年代の日本を舞台とする『SILENT HILL f』では、家父長的な価値観や、共同体が少女たちに求める女性像が、その人生を蝕んでいきます。
土地には、ときにそこに生きたヒトよりも深く、記憶が刻まれているのです。

C:\TOWNFALL\REVIEW> TREE
├─ 01 土地に刻まれたトラウマ
├─ 02 姿勢ひとつ、物音ひとつが生死を分ける
├─ 03 アナログSFの美学
├─ 04 謎解きそのものが物語になる
└─ 05 セントアメリアが残したもの
┌─ [01] ───────────────────
│ 土地に刻まれたトラウマ
└────────────────────────
そして『SILENT HILL: Townfall』が今回ご案内するのは、1990年代のスコットランドに浮かぶ孤島「セントアメリア」です。セントアメリアは、もともと漁業を中心に暮らしを営む、小さな島でした。ところが近年では、「C.E.G.」と呼ばれる巨大企業が島へ進出し、大規模な開発を進めています。
新たな産業と雇用が生まれ、衰退の一途をたどっていた漁村は、活気ある産業の島へと生まれ変わりつつあります。島にとっては喜ばしい変化にも思えますが、どうやら、島の新しい未来を歓迎していない人々もいるようですね。島のあちこちでは、C.E.G.による開発に反対する声も上がっています。


そして、セントアメリアが抱えている問題はそれだけではありません。島では医療を支える人手も不足し、住民たちの暮らしに影を落としているようです。
衰退していく小さな共同体、人手不足にあえぐ医療、そして島を「救う」という名目のもとで進められていく再開発。本作では、そうした出来事がセントアメリアという土地に刻まれた記憶として、島へ漂着した主人公サイモンの目を通して少しずつ明らかになっていきます。

そんなセントアメリアを訪れたなら、まず目を引くのが島を包む独特の風景でしょう。「SILENT HILL」といえば、視界を白く塗り潰す濃霧がシリーズを象徴してきました。しかし今回、私たちを迎えてくれるのは、どこか冷たく、海の底をも思わせる青い霧です。
荒涼とした海岸も、寂れた町並みも、その青のなかへ滲むように沈んでいます。「霧の向こうに何かがいるかもしれない」というシリーズおなじみの恐怖はそのままに、セントアメリアには、これまでの「SILENT HILL」とは少し異なる孤独と静けさが漂っているのです。どこまで見渡しても正体のつかめない、その得体のしれなさには映画『ミスト』を思わせるものがありますね。

そして、その青い世界へ異物のように差し込んでくるのが、警告色を思わせる赤です。裏世界の訪れによって空や霧は赤く染まり、辺りには無数のパイプや巨大な構造物が姿を現します。それまで寂れた島だったはずの景色は、いつの間にか巨大な工場の内部を思わせる、無機質な空間へと姿を変えていくのです。
これまでの「SILENT HILL」では、錆や血、暗闇といったモチーフが裏世界への変化を知らせてきました。しかし本作では、冷たい青と、不穏な赤。この対照的な二色を行き来することで、現実と異界の境界を視覚的に際立たせています。青く沈んでいた島が、赤によってまったく別の表情へと塗り替えられていく。その鮮烈な変化もまた、本作ならではの光景と言えるでしょう。


こうしたセントアメリアの置かれた状況や、色彩を印象的に使った画面づくりを見ていると、開発元Screen Burn Interactiveのルーツも垣間見えます。同スタジオのJon McKellanらがかつて開発に携わった『Alien: Isolation』の「セヴァストポリ」もまた、衰退のただなかで巨大企業に新たな価値を見出され、住民とは別の論理でその未来を決められていく舞台でした。目的こそ異なりますが、活力を失いつつある土地と、そこへ介入する企業との関係を描くことへの、彼らの一貫した関心が感じられます。
そう考えると、裏世界で島を覆っていくパイプや巨大設備も、単なる異界の装飾以上の意味を帯びてきます。まるでセントアメリアそのものが、巨大な産業設備へ組み込まれていくかのようです。人々の暮らしが外から持ち込まれた都合によって少しずつ形を変え、やがて土地の景色まで変わっていく。セントアメリアを歩いていると、そんな恐ろしさも自然と感じられるのではないでしょうか。


┌─ [02] ───────────────────│ 姿勢ひとつ、物音ひとつが生死を分ける└────────────────────────
先述したように、Screen Burnのクリエイターには、Jon McKellanをはじめとした『Ailien: Isolation』に携わったスタッフが在籍しています。その経験はゲームプレイにも活かされており、主観視点で敵を避けながら進むステルス主体の緊張感には、同スタジオならではの作り込みが感じられます。セントアメリアの各地をうろつくのは、サイモンを狙う異形のクリーチャーたち。一方で、こちらが頼れる弾薬や近接武器には限りがあります。

少なくとも序盤から中盤にかけて、正面から立ち向かうのはあまり得策とは言えません。まずは敵の視線を避けて身を隠し、やり過ごすのが基本です。ロッカーへ身を潜めるのはもちろん、物陰からそっと様子を覗き込み、こちらを見ていない隙を狙って先へ進んでいきましょう。これまでのシリーズと比べても、今回はステルスの比重がかなり高くなっていますよ。
いわゆるボス戦らしいボス戦も基本的に用意されておらず、敵を倒すことよりも、どう見つからずに切り抜けるかへ重心を置いた作品と言えるでしょう。

ここで活躍するのが、本作の「のぞき見る」操作です。『Alien: Isolation』にも、遮蔽物の左右や上から身を乗り出して周囲を確認する操作がありましたが、今回はその仕組みがさらに自由になっています。R1を押しながら左スティックを動かすことで、その場を軸に上下左右へ身体を傾けるように、姿勢を細かく変えられるのです。
住宅の庭を囲う木塀の向こうが気になるなら、少しだけ身体を伸ばして上から覗いてみましょう。塀や壁に小さな隙間を見つけたなら、そこへ視点を寄せて、向こう側の様子を窺うこともできます。決められたカバーポイントへボタンひとつで張り付くのではなく、「あと少し身体を動かせば見えるかもしれない」と、自分でちょうどいい位置を探せるわけです。

さらに、この操作は身を隠すときにも役立ちます。普通に立ったりしゃがんだりするだけでは身体がはみ出してしまう場所でも、姿勢を細かく調整すれば、狭い隙間へ身を押し込むようにして敵の視界から逃れることができます。しゃがんだ状態からさらに身を沈めれば、腰ほどの高さしかない遮蔽物の裏へ伏せるように隠れることもできますよ。
もっとも、便利だからといって顔を出しすぎるのはおすすめできません。こちらから敵の姿が見えているということは、向こうからもこちらが見えるということです。安全なカメラだけを遮蔽物の外へ出して偵察することはできず、覗き込むためには、こちらも身体の一部を危険な場所へ晒さなければなりません。
あと少しだけ見たい。でも、あと少し顔を出せば見つかるかもしれない。本作では、そんな小さな判断までもが探索の緊張へとつながっているわけですね。とくに敵の視線を浴び続けていると、BGMも次第に激しさを増し、早く身を隠さなければならないという焦燥感を音の面からも煽ってきます。


セントアメリアで出会うクリーチャーにも、いくつかの種類があります。頭部に板のような異物が突き刺さり、素早い動きで一気に距離を詰めてくるもの。反対に、動きは鈍いものの、遠くから攻撃を仕掛けてこちらの移動を邪魔してくるもの。それぞれ得意とする距離や攻撃方法が異なり、遭遇する相手によって立ち回りを変える必要があります。
とはいえ、こうしたクリーチャーとの付き合い方そのものには、これまでの「SILENT HILL」とよく似たところもあります。すべての敵を倒してエリアを制圧するのではなく、限られた物資を抱えながら、ときには戦い、ときにはやり過ごして先へ進む。シリーズで長く親しまれてきた、戦闘と探索のリズムです。

ところが中盤以降、そんな勝手を大きく変えてくる相手が現れます。その名も「ウェイト」です。
ウェイトには、倒すという解決策がありません。攻撃を加えれば一時的に怯ませ、逃げるための時間を稼ぐことはできますが、どれだけ武器を使っても完全に倒し切ることはできないのです。そして何より厄介なのが、その異常なまでに鋭い聴覚でしょう。
こちらが立てたわずかな物音にも反応し、その発生源を確かめるように進路を変えながら近づいてきます。決められた巡回ルートだけを覚えて、その隙間を縫って進めば安心、というわけにはいきません。ほんの少し大きな音を立てただけで、それまで考えていたルートそのものを組み直すことになってしまいます。

この役割は、『Alien: Isolation』に登場するゼノモーフと似ています。ただ、ダクトを使ってエリア全体を神出鬼没に移動するような存在ではありませんが、「倒せない存在がこちらの行動に反応し、用意していた探索の手順を崩してくる」という恐怖には、似たものがあります。
しかも、ウェイトはいつも単独で現れるとは限りません。通常のクリーチャーと同じ場所をうろついていることもあります。目の前の敵を鉄パイプで手早く片づけようとした結果、その鉄パイプが鳴らす鈍い音を聞きつけて、ウェイトまでやってくる。そんな少し困った事態も起こるわけです。

こうしたステルスを中心とするゲームプレイは、ゲーム全体を通して大きく変わるわけではありません。それでも1周目で約20時間を費やしたプレイが単調に感じられなかったのは、物語の進行にあわせて、探索に生まれる緊張の質が少しずつ変化していったからでしょう。

一方で、クリーチャーそのものの造形については、シリーズの過去作と比べて少し物足りなさも感じました。それぞれの姿には物語上の意味があり、背景を知れば「なぜこのデザインなのか」も理解できます。
ただ、『SILENT HILL f』を含むシリーズの優れたクリーチャーには、設定を象徴するだけではない魅力がありました。気味が悪いのに、どこか美しい。目を背けたくなるのに、もう少しだけ見ていたくなる。そんな嫌悪感と妖しさが同居した、独特の異形美です。

その点では、本作のクリーチャーは少し素直です。役割や背景はわかりやすい一方で、ひと目見た瞬間にこちらの五感へまとわりついてくるような、生々しい異形の魅力までは届いていません。シリーズならではの妖艶さを期待すると、いささか物足りなく感じるでしょう。
┌─ [03] ───────────────────│ アナログSFの美学└────────────────────────
ただし、それは本作から美的なこだわりが失われたということではありません。むしろ、その矛先が少し違うところへ向けられているのだと思います。


霧と冷たい海に包まれたスコットランドの景観。露出したダクトや配管、巨大な設備が用途もそのままに並ぶ工業的な美術。そして、DOSベースを思わせるコンピューター端末や走査線の浮かぶモニター、無骨なダイヤルやスイッチ、映像を覆うノイズ。そこには『Observation』や『Alien: Isolation』などで開発陣が培ってきた、アナログSFへの強い偏愛が息づいています。
そうして眺めてみると、本作で最も印象に残る造形美は、異形の肉体よりも、むしろ土地と機械の側に宿っているように思えるわけです。

そして、そのアナログSF的な美学を単なる背景美術だけで終わらせず、ゲームプレイそのものへ持ち込んでいるのが、序盤に手に入る携帯型テレビ「CRTV」です。
これは、シリーズ伝統のラジオを発展させたような装置です。ダイヤルを回して島に漂う信号を探し、敵の周波数を捉えてみましょう。すると、壁の向こうにいる相手の姿がシルエットとなって浮かび上がり、どこにいて、どちらを向いているのかまで把握できます。

ただし、一度に捉えられる敵は1体だけです。複数のクリーチャーがいる場所では、周波数を切り替えながら、1体ずつ動きを探っていかなければなりません。この感覚は『SIREN』の「視界ジャック」にも少し似ています。断片的な情報を行き来しながら、安全そうな進路を自分で組み立てていくわけです。
そして、CRTVが教えてくれるのは敵のことだけ。シルエットの大きさからおおよその距離はわかりますが、その周囲にある柵や壁、段差といった地形までは映してくれません。壁越しに敵を見通せる便利な装置ではありますが、どうやら全部を親切に教えてくれるわけではないようです。

この「見えるけれど、全部はわからない」という不完全さが、なかなか巧く使われています。CRTVを覗くと、すぐそばに敵のシルエットが映っている。覚悟を決めて慎重に近づいてみると、実際には柵の向こうへ閉じ込められていて、思わず拍子抜けしてしまう。そうして、そのまま何事もなく横を通り抜けられる、なんてことがあるわけです。
これなら安心ですね。
ところが、そう思って再びその場所を訪れてみると、先ほどまで敵を遮っていた囲いが取り払われていることがあります。以前は安全だったはずの場所で、今度は同じ敵がこちらを追いかけてくる。こうした不意打ちを避けるには、CRTVで敵を見つけるだけでなく、「のぞき見る」操作で周囲の状況まで確かめる必要があります。ふたつの観察手段を組み合わせながら安全な道筋を探っていくところに、本作ならではの面白さがあります。

さらに、CRTVが拾うのは敵の存在だけではありません。セントアメリアに残された映像や音声、不可解な信号も受信でき、それらが探索や謎解きの手掛かりになります。ときには、ほかの人物からサイモンへ送られる通信を受け取ることもあるでしょう。敵から生き延びるための装置であると同時に、この島で過去に何が起きたのかを覗き見るための「裏窓」にもなっているわけです。
つまりCRTVは、敵を探るための索敵装置、謎を解くためのパズルギミック、そして物語を伝える装置と、大きく三つの役割を担っています。それらすべてが、ひとつの古びた画面を「見る」という行為へ集約されているのです。

そして面白いのは、この「見る」という行為が一方通行ではないことです。サイモンはCRTVを通して島の出来事を覗き、プレイヤーはそのサイモンを画面越しに見つめています。さらに、敵を観察するために身体を晒せば、今度はこちらも見つかる側へ回る。見る者であると同時に、見られる者でもある。その関係が、本作では何度も形を変えながら繰り返されます。

だからこそ、後半になるにつれてCRTVの役割が少しずつ狭まってしまうのは惜しいところでした。序盤では索敵だけでなく、映像や音声から物語を読み解いたり、パズルそのものに利用したりと、多彩な使われ方を見せてくれます。しかし物語が進むにつれて、パズルの仕掛けとして登場する機会はほとんどなくなり、ナラティブを伝える役割も次第に薄れていきます。結果として、終盤では敵を探すための装置として使う場面が中心になってしまうのです。
せっかく「見る」というひとつの行為によって、ステルス、探索、物語、謎解きまでを結びつけられる装置だっただけに、その多面性を終盤まで活かしてほしかったところではあります。
┌─ [04] ───────────────────│ 謎解きそのものが物語になる└────────────────────────
CRTVについては少し惜しいところもありましたが、謎解きそのものに目を向けると、評価は大きく変わります。むしろパズルに関していえば、本作はシリーズのなかでもかなり高い水準にあると感じました。
その理由を説明するには、少しだけ物語について触れておく必要があります。


本作は、サイモンが「リチャード」と呼ばれる人物に導かれるようにして、セントアメリアへ漂着するところから幕を開けます。どこか『SILENT HILL 2』の物語構造や空気感を想起させつつも、主人公自身も知らない過去を追ううちに、彼と島との関係が少しずつ輪郭を現していくのです。
『SILENT HILL f』のように、周回するたび物語や登場人物の印象が大きく塗り替えられていくタイプでもありません。正直にいえば、シリーズをある程度遊んできた人なら、シナリオそのものに驚かされる場面はそれほど多くはないでしょう。
それでも、本作の物語体験はかなり印象に残ります。その大きな理由が、背景美術と謎解きです。

これまでの「SILENT HILL」にも、物語の主題を謎解きへ取り込んだ例はありました。『SILENT HILL 2』の「罪と裁き」を思わせる絞首台や、『SILENT HILL 3』のシェイクスピアを題材にしたパズルなどが、その代表ですね。ただし多くの場合、その関わり方は象徴や寓意にとどまっていました。謎を解くこと自体が、そこで起きた出来事を直接体験させるわけではなかったのです。
もちろん、そこから一歩踏み込んだ作品もあります。たとえば『SILENT HILL 4: THE ROOM』では、施設そのものを自分の手で動かしながら、その場所がどのように使われ、何が起きていたのかを理解していく場面がありました。『SILENT HILL f』でも、謎解きと物語はできるだけ切り離されず、パズルを解いていくことが、そのまま登場人物を知ることへつながるように作られていました。


そして本作では、その考え方がゲーム全体にわたって、さらに一歩進んでいます。
たとえば中盤では、地元のファミリークリニックに勤める看護師「ゾーイ」を一時的に操作する場面があります。彼女のパートで辿るのは、医療が逼迫していた当時に行われた手術の手順です。ほかにも、事故が起きたときの状況を、サイモンの手で再現していくような謎解きが登場します。
本作では、謎を解いた先にご褒美として物語が待っているわけではありません。何が起きたのかを自分の手で組み立て直していく、その行為自体がシナリオになっているのです。ゲーム全体を通して、パズルを解くことと、セントアメリアで起きた出来事を紐解くことが、ほとんど同じ意味を持つように作られています。ただカットシーンやテキストで過去を教えられるのではなく、自分で手を動かした結果として物語が立ち上がってくる。そこに、本作ならではの独特な快楽があります。


本作には、シリーズでおなじみだった「謎解き難易度」が用意されておらず、設定でヒントを表示することができる程度。それでいて、謎解きそのものはシリーズのなかでも比較的歯ごたえのある部類です。
ただ、その難しさは物語と切り離されたものには感じませんでした。すぐに答えに辿り着けないからこそ、機械を何度も操作して残された情報を読み返し、そこで何が起きたのかを自分なりに組み立てることになります。物語をただ理解するだけでなく、実感を伴って受け取るための難しさが残されているのです。
『SILENT HILL: Townfall』にとって謎解きは、プレイヤーを足止めするための試練ではありません。そこで起きた出来事を、自分の手でもう一度確かめていくための検証なのです。

そして、それを支えているのが、セントアメリアの至るところに残された機械や設備です。電気を管理するブレーカー、患者の心拍数や血中酸素飽和度を映し出す生体情報モニター、古びたプロジェクター。どれもそれぞれ異なるインターフェースと操作方法を持ち、細部まで作り込まれたパズルとして立ちはだかります。スイッチを入れ、ダイヤルを回し、表示された数字を読み取る。そうして実際に機械を扱うことが、かつてその場所で行われていたことへ触れる手段にもなっているのです。

とりわけ終盤の謎解きは、そうした作りがもっともよく表れた場面でした。詳しくご紹介するとネタバレになってしまいますので、ここでは控えておきましょう。それまで目にしてきた光景や出来事が、ひとつの意味へとつながっていく場面です。難しい暗号と格闘するというより、そこで起きたことから目を逸らさず、もう一度きちんと向き合うことが大切になります。
CRTVで信号を覗き、物陰から敵を覗き、謎解きを通して過去を覗く。こうして振り返ってみると、本作ではずいぶん長いあいだ、私たちは何かを「見る」ことに夢中になっていたようですね。
┌─ [05] ───────────────────│ セントアメリアが残したもの└────────────────────────
さて、そろそろセントアメリアを離れる時間です。
振り返ってみれば、『SILENT HILL: Townfall』は、シリーズの伝統にScreen Burn Interactive自身の作家性を強く持ち込んだ「SILENT HILL」でした。

そして本作で描かれるのは、ひとりの人間がサイレントヒルへ持ち込んだ悪夢だけではありません。むしろ中心にあるのは、救おうとする者と、救われる者のあいだに生まれるすれ違いです。島を救うための開発。患者を救うための医療。それらはどれも善意や必要性から始まっていたはずなのに、いつしか別の誰かへ傷を残していきます。
「救う側」が思い描く未来と、「救われる側」が望んでいた未来は、本当に同じものなのか。セントアメリアに残された傷を辿っていくほど、その問いは少しずつ重みを増していきます。
だからこそ、島を離れる頃には、最初に見た青い霧も、寂れた町並みも、少し違ったものに見えているはずです。それまでただ美しくも不気味に見えていた景色のひとつひとつに、そこで生きていた人々の選択や後悔が重なってくるからでしょう。

Game*Spark レビュー 『SILENT HILL: Townfall』 PC/PS5 2026年9月24日
『Alien: Isolation』のDNAを受け継ぎながら、謎解きそのものを物語へ変えた新たな「SILENT HILL」
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GOOD
- 青い霧と赤く染まる工業景観が彩る、たいへん美しい島です
- CRTVと「のぞき見る」を上手に使えば、安心・安全な観光ルートも思いのままです
- 島の過去を、自分の手で確かめられる謎解きが充実しています
BAD
- 一部のクリーチャーには、もう少し異形ならではの妖しさが欲しいところです
- CRTVの多彩な機能を楽しめるのは、旅の前半が中心となります
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