ペンギンはただ歩く、人類が狂気に囚われても―極寒の暗黒史に呑み込まれる異色のコズミックホラー『ペンギンコロニー』【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ペンギンはただ歩く、人類が狂気に囚われても―極寒の暗黒史に呑み込まれる異色のコズミックホラー『ペンギンコロニー』【プレイレポ】

ペンギンのつぶらな瞳で目撃する狂気と名状しがたい恐怖

連載・特集 プレイレポート
ペンギンはただ歩く、人類が狂気に囚われても―極寒の暗黒史に呑み込まれる異色のコズミックホラー『ペンギンコロニー』【プレイレポ】
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破滅に向かう世界でカメラを構える異色作『ウムランギ ジェネレーション』を手がけスタジオOrigame Digital。彼らが新たに世に送り出す『ペンギン・コロニー』は、なんと「ペンギン視点」で宇宙的恐怖(コズミックホラー)を目撃するという極めて異質かつ挑戦的なアドベンチャーゲームです。

パブリッシャーは『1000xRESIST』などで知られるFellow Traveller。H.P.ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』や『時間からの影』といった名作怪奇小説から強い着想を得ており、ラヴクラフトの死からわずか2年後となる1939年の南極を舞台に、その世界観を忠実に再解釈・発展させた物語が描かれます。

かつて公開された体験版では、不気味な音が鳴り響く基地の中で猜疑心に駆られ、精神的に壊れていくナチス科学者たちの足跡を追い、極寒の地に突如現れる巨大な遺跡の前に辿り着いたところで物語が幕を閉じました。白銀の世界にそびえ立つ重々しい巨大な構造物。多くのプレイヤーに強烈なインパクトを残した物語のその先には、一体何が待っていたのか…。

本記事では、体験版で提示された「ペンギンの視点から追う人間の崩壊」という斬新なコンセプトから巨大構造物の内部とその奥深くに眠る恐ろしい真相、そして新たに明かされる人類側の重厚なドラマを含めたプレイレポートをお届けします。

狂気と「大いなる存在」が蠢く極寒の深淵

物語の舞台は、過酷な環境が広がる南極の大地です。群れの中から操作するペンギンを選び、よちよち歩きから腹ばいですべる滑走、スタミナを管理しながらの壁登り、水中を自在に泳ぐアクションを駆使して広大な銀世界を進んでいきます。

また、本作では群れの中から操作対象となるペンギンを切り替えることができます。コウテイペンギンやアデリーペンギンなど様々なペンギンの中にはスタミナが豊富な種や泳ぎがf得意な種が存在し、マップ各地には子供のペンギンしか通れない小さな抜け穴も隠されています。地獄絵図と化した現場でどの個体を切り替え、どのルートを進むかによって目撃できる情報が変化していくのです。

道中で遭遇するのは、この世ならざる古の存在の呼び声に応え、破滅をもたらす強大な力を得ようと南極の奥地を目指すナチスの科学者たちです。しかし、ペンギンにとって彼らの身に何が起こっているのかを理解する術はありません。彼らがどんな凄惨な事態に遭遇しても、ペンギンは後を追って観察することしかできないのです。この手出しできない無力感と圧倒的な無関心がジワジワと重圧を与えてきます。

巨大な構造物の亀裂や隙間をすり抜けて足を踏み入れると、ゲームの空気感は一変します。遺跡の内部で黒く蠢いていた異形の存在たちが凍てつく大地に侵食し、ペンギンの行く手を阻みます。

そして異形が絡みつく遺跡と暗がりの中、ついに目覚めてしまった巨大な怪物が人類へと襲い掛かる衝撃的なシーンが描かれるのです。銃や兵器で抵抗する科学者たちですが、宇宙的恐怖を前に暴走を止めることなど当然できません。激しい銃撃と叫び声が飛び交う中で、ペンギンは否応なしに惨劇の渦中へと強制的に巻き込まれ、ただ必死に逃げ惑うことしか許されません。

「武器を持った人類すらあまりにも無力であり、圧倒的な脅威の前ではただ逃げるしかない」という絶望感を突きつける構造こそが、本作のコズミックホラーたる理由であることは間違いありません。

「侵略者」と「守護者」が織りなす重厚な群像劇

本作で描かれる人間側の物語は科学者だけに留まりません。対立する派閥として重要な役割を果たしているのが、原住民の守護者「カイティアキ(Kaitiaki)」の存在です。

1939年、古の存在の呼び声に応え、破滅をもたらす強大な力を探し求めるナチスの科学者たち。彼らはプロパガンダや国家主義的幻想、そして歴史の捏造に憑りつかれ、南極の平穏を踏みにじる存在として描かれています。一方で、不可思議な力に導かれて同じく南極へとやって来たのが、原住民の守護者であるカイティアキです。彼らは何世代にもわたって受け継がれてきた役目を果たすために古の存在を封じて再び数百年の眠りに還そうと試みます。ペンギンたちの故郷である南極で衝突する「ナチス」と「カイティアキ」という二つの陣営の足跡を、第三者の視点から追いかけていくことになります。

ナレーションやエリアに落ちている写真などから明かされる科学者側の記録からは彼らの身勝手な野心と壊れていく精神が読み取れるのに対して、カイティアキ側からは世代を超えて受け継がれた使命と決死の覚悟が物語の端々から浮かび上がってきます。

ペンギン自身はどちらの陣営にも与することなく、ただ両者の歴史が激突する現場をよちよち横切っていきます。ペンギンにとって彼らは単なる「その場にいる奇妙な生き物」に過ぎません。この圧倒的なニュートラルさが、神話やプロパガンダがいかにして作られ、人類の破滅へと向かっていくのかを客観的に観察させて深い熟考へと誘うのです。

かわいさと不気味さが同居する唯一無二のコズミックホラー体験

『ペンギン・コロニー』が持つ最大の独自性は、その圧倒的な雰囲気にあります。一見すると、ペンギンたちが雪山を滑り仲良くよちよち歩く姿はかわいらしく、ほのぼのとした動物アクションのようにも見えます。しかし、ひとたび背景に目を向ければ異次元の狂気、そして冷酷なまでに美しい自然と遺跡が織りなす光景が広がっています。重厚なナレーションを担当するレンヴァル・ブラウン氏の渋く深みのある声が、レトロで映画的なサスペンス感を演出。陰鬱で静謐な空気感がプレイヤーの精神を静かに削っていきます。

なお、エリアごとに設置されたチェックポイントなどには解読可能な謎めいた記号や暗号化されたメッセージなども用意されていますが、これらはゲーム進行に必須ではなく世界観をより深く掘り下げたいファン向けの要素として用意されています。

約3時間でエンディングまで到達し、最後には全体の簡易的なマップとともに今回のプレイで辿った探索ルートが表示されます。そのマップのあまりの広大さと一筋縄ではいかない多重構造を前にすると自分が目撃した惨劇はほんの一片に過ぎず、選んだペンギンやルートによってプレイヤーごとに全く異なる物語が紡がれているのだろうと感じずにはいられません。

惨劇の現場の横を何の感慨もなく通過していくペンギンたち。その「無関心さ」と「無力さ」を通して体験するクトゥルフ神話の世界は、これまでのどのホラーゲームとも異なる新感覚の恐怖をもたらし、深い余韻を残すことでしょう。古典的なコズミックホラーの精髄を現代的な手法で再解釈し、歴史と神話、そして「人間という存在の小ささ」を見事に描き出した傑作アドベンチャー。あなたもペンギンの無垢な瞳を通して、暗黒の深淵を覗いてみてはいかがでしょうか?


『ペンギン・コロニー』はPC(Steam)向けに発売中。体験版も配信中です。

《ライター:ほろすけ》


ライター/メトロイドヴァニアは心の鍛錬 ほろすけ

気づいたらインディーゲームの世界にのめり込んでいた生粋のインディーゲーマーでありぼっちプレイヤー。たまに配信もやる。 TGS2025でブーススタッフを経験。好きなジャンルは2Dアクション(メトロイドヴァニア)、謎解き、パズルなど。「ウィッシュリストに入れるのはタダ」をモットーに軽率に入れているが、順調に積みゲーを増やしている。

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