河崎氏が最初に挙げたゲームエンジン採用の利点は、開発の基礎部分を切り離すことで効率化を図るということ。例えば、描画、シェーダー、パーティクル、アニメーション、コリジョンの管理といった開発の基礎部分を、毎回最初から作っていたのでは多大な時間とコストが生じ、ゲーム開発終盤のバグの原因にもなりうるため、これらを既に成熟しているゲームエンジンにまかせることで、効率化を進め、かつ最新技術に基づいたクオリティを担保出来る点が、最も大きいのだと説明。
もちろん自社エンジンでこうした基礎部分を補って使い回すことはできるものの、ハードウェアもソフトウェアもものすごいスピードで進化しており、それに追いつくためのメンテナンスにも大きなコストと時間を要するので、常に最新のテクノロジーを磨き合っている商用ゲームエンジンを採用するのが最適であると同氏。
またゲームエンジンは、プログラマーにとっても、瑣末な作業から解放されることでより開発の本質的部分にフォーカスできるというメリットが存在。旧来型のゲーム開発では、企画の人間とプログラマーのイテレーション(やりとり)において停滞が生じ、プログラマーが仕様書に忙殺されるような状況があったとのこと。しかし、ゲームエンジンを採用すれば、プログラムやコードを用いなくてもゲームに実装ができるエディターが備わっているため、企画サイドの人間が開発に直接関わりやすく、一方のプログラマー側もよりクリエイティブな部分に集中できるようになるのだとか。
iOSのヒットタイトル『Infinity Blade』は、アップルとの連携の中で5ヶ月で作る必要があり、かつキックオフからたった1ヶ月で当時のスティーブ・ジョブズ氏をはじめ経営陣にプレゼンしなければならないという状況で、開発元のChair EntertainmentはUnreal Engineを使い、CSGと呼ばれる生のポリゴン状態で肝となるスワイプアクションを1週間で遊べる状態にし、2週目にはアニメーションやテクスチャーを仕上げ、3週目にはファイナルに近いクオリティーのものが出来上がり、かつその過程で実際に遊びながら、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、開発者全員がビジュアルとして作品の状態を共有しながら、開発を進められたそうです。
河崎氏は最後のポイントとして“バーティカルスライス”という言葉を挙げました。5〜6年前から欧米のパブリッシャーが口にするようになったプロセスで、マリオで言えば「1-2」のステージだけを完成に近いクオリティのグラフィックとゲームプレイで先に2〜3ヶ月かけて作ってしまい、ゲーム全体の妥当性、スケジュール、予算を検証し、本制作に入るかどうかの判断基準にするというもの。
“バーティカルスライス”は最近日本でも導入されはじめ、欧米パブリッシャーと仕事をする上で避けて通れないステップであるため、スクラッチからゲームを開発するのはこうした状況に対応するのが難しく、やはりゲームエンジンがソリューションになると同氏。『Infinity Blade』の開発当時の画面写真などを実際に披露しながら、より完成に近い状態の“バーティカルスライス”を短期間で制作し、プレゼンすることで、パブリッシャーからお金を引っ張ってこれるのは、大きな動機になるのではないかと述べています。
Epic Games Japanはビット・サミットの会場でブースを設け、Unreal Engineのデモを展示。基調講演の後に、実際に河崎社長に話を聞いてみたところ、日本のインディー開発者と欧米との架け橋になるビット・サミットは、非常に志が高く共感できるイベントで、Unreal Engineは『Gears of War』のようなトリプルAタイトルのためのものだけではないということを示す意味でも、参加を決めたとのこと。今後、何年も開催を繰り返して、ゆくゆくは日本のGDC的なイベントに成長すれば良いと思うなどと話していました。
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