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記野直子の最新北米ゲーム市場分析 ― 2014年1月号

こんにちは。今月から「最新北米ゲーム市場分析」というコラムを書かせていただくことになりました記野直子と申します。よろしくお願いいたします。

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記野直子の最新北米ゲーム市場分析 ― 2014年1月号
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こんにちは。今月から「最新北米ゲーム市場分析」というコラムを書かせていただくことになりました記野直子と申します。よろしくお願いいたします。

では、さっそく始めましょう!

今週、既に発表のあった2014年1月度の北米市場売上データ。NPDは数年前まではもう少し具体的な数字を無償で出してくれていた(各ハードの販売台数とかソフトの売上本数とか)のですが、最近ではすっかりソフトのランキングとかアナリストのコメントとかで終了しているので、記事を書く人たちはハードメーカーやソフトパブリッシャーが発表している情報などをもとにゲス(推定)しなくてはならず困ったことになっています。

NPDとは北米のPOS(Point of Sales)データを集約して業界に売っている調査会社。このデータはゲーム業界のみならず、POSシステムが使われて販売しているすべての産業に対して提供が可能なわけです。細かいデータを入手するには有料会員にならないといけません。

ただでさえ北米のゲームユーザーたちは物理的なパッケージのみならずダウンロードでDLCはもちろん、ゲームを丸ごと買っていることが多いのです。日本と比べるとダウンロードのトランザクション数はものすごいことになってます。これもおいおい語りましょうね。「ものすごいこと」って言ってしまいましたが、ダウンロードの数字(DL数も購入金額も)が公式に発表されることがほとんどないので実際は「ものすごいこと」という言い方にしかなりません……。ということで、ゲームソフトの場合、POSデータだけで市場全体を見ることは不可能なのです。


■市場全体動向

1月度の市場規模は6億6400万ドル(約680億円)と昨年の8億3500万ドルを21%下
回っているものの、5週間ある前年の1月度と今年の1月度を比べて調整してみるとほぼ横ばいの伸びということでRemainderレポートされています。

ハードウェアは新ハードの導入で前年比17%アップ(調整して比較すると47%アップ)とのことですが、この「アップ」の意味は「金額」での伸びということなので、単に台数が伸びたと考えるよりは、ほぼ「フルプライス」でハードが売れたということが規模への寄与となったと考えるべきでしょう。

ソフトウェア単体の売り上げ規模が大きく下がったと報じられていますが、これは1月発売の新規タイトルが前年に比べて極端に少ないこと(発売タイトル数は半分以下)、ユーザーが年末商戦で買ったタイトルをまだ遊び続けていること、ダウンロード販売で買ったものはこのデータに含まれていないことを考えればそれほど危惧することでもないかもしれません。ま、いつもは年末商戦後の1月2月は結構冷ややかなマーケットだったりするのです。


■ハード動向

2013年12月に北米で一番台数を売り上げたコンソールはXbox OneだったよとNPDが発表したのですが、翌月である2014年1月度のトップセールスハードはPlayStation 4だったと発表しています。北米ではXbox Oneに比べて100ドル安いというアドバンテージを武器に台数を増やしているところでしょうか。スクウェア・エニックスの『Tomb Raider: Difinitive Edition』もPS4の販売に寄与したようで、Xbox Oneユーザーの2倍の売上本数だそうです。


Sony Computer Entertainment Americaのマーケティングの偉い人が1月はPlayStation 4は他の次世代機のほぼ2倍売れたよと公表していますが、「どの次世代機と比べて倍なの?」とか「ほぼってどのくらいアバウトに?」とか聞きたくなりますね。いよいよ日本でも今週末に発売されるPlayStation 4(写真は銀座のソニープラザ)ですが、Xbox Oneが日本で発売されるのはいつなんだろうか……。

インストールベース(累積販売台数)を見てもまだ始まったばかりの次世代機レース。今の段階で北米で「どっちが勝った?」議論はナンセンスだと思うんですね。どっちも在庫が足りてない状況のようですし、現在は「新ハードを必ず買う人たち」のサイクルなので、エクスクルーシブタイトル(そのハードでしか発売されないタイトル)、たとえばPS4の『inFAMOUS: Second Son』やXbox Oneの『Titanfall』などが発売されてゲームユーザーたちが参戦してからがスタートな気がします。

また、業界として考えなければならないのは「ゲームソフト」をできるだけ多くのユーザーに遊んでもらうことなので、これらのコンソール(家庭用ゲーム機)はPCはもちろんスマホやタブレットとも共存していかないといけないのです。ハード屋さんとしては競業ではなく協業していくステージでしょうし、ソフト屋さんとしてはひとつのソースをマルチに展開していく流れなんでしょうね。自分で書いてていてもキレイゴトに見えるほどそうも言っていられない事情もあるんでしょうが……。

ということで、上述の通りNPDでは数字が出ないので一部はあくまでも推定ですが1月末時点での欧州/日本(新ハードは日本では売り出してもいないが)を入れた全世界の各ハード累積売上台数(インストールベース)は下記の通り:


    PS4 530万台
    Xbox One 340万台
    Wii U 570万台
    PS3 8,000万台
    Xbox 360 8,000万台
    3DS 4,300万台
    PS Vita 750万台

■ソフト動向

デジタルディストリビューションの数字を含めないで出しても意味があるとかないとか議論もありますが、あくまでもお店で販売されたパッケージ数でカウントしましたってことで見てください。


      1. Call of Duty: Ghosts (PC/PS3/PS4/X360/X1/Wii U) - Activision Blizzard
      2. NBA 2K14 (PC/PS3/PS4/X360/X1) - 2K Games
      3. Battlefield 4 (PC/PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
      4. Assassin’s Creed IV: Black Flag (PC/PS3/PS4/X360/X1/Wii U) - Ubisoft
      5. Grand Theft Auto V - (PS3/X360) - Take-Two Interactive
      6. Madden NFL 25 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
      7. Minecraft (Xbox 360)- Microsoft
      8. FIFA 14 - (PS3/X360/X1/PSV) - Electronic Arts
      9. Lego Marvel Super Heroes - (PC/PS3/PS4/X360/X1/Wii U/3DS/PSV) - Warner Bros. Interactive
      10. Tomb Raider 2013 (PS3/PS4/Xbox 360/X1) - Square Enix

日本発のタイトルがTop10に入らないのに慣れたんですが、任天堂ソフトが年末商戦から通して入らないのにはとても違和感が募ります。私が知る限りこんなことは今までなかったはず。『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2」、『スーパーマリオ 3Dワールド』なども健闘はしたようで、ハード別の個別順位を出せば間違いなくランクインするはずなのに、最近ではプラットフォームを問わずタイトルソースがひとつであればまとめて集計しちゃうのがトレンドみたいです。

ハードを限定してソフト供給をすると(最近は変わってきましたが往年の日本の供給方法ですね)多くのユーザーを取り込めないので、徹底したマルチプラットフォーム化が進んだということの裏返しかもしれませんね。

前述の通り、Square Enix の『Tomb Raider』 はPS4ユーザーの装着率が高いようですが、1月度の北米ソフトウェア全体の売上のうち47%(本数では約227万本)はXbox One または Xbox 360向けのタイトルであり、マイクロソフトプラットフォーム強しっ!とハードのことに触れなかったマイクロソフトが語ったようです。

さて、本連載では、こんな感じでさらりとマーケットのことに触れていきます。2月は日本も同じですが市場としてはとても冷え込む時期(日本はPS4発売があるから今年は冷えてないですね!)。ただ、あえてこの時期に投入してビッグタイトルとかち合わず目立ってしまうソフトも現れたりしますね。ということでまた来月も語っていきますので、よろしくお願いします!


    ■著者紹介
    記野直子
    カイオス株式会社 代表取締役
    青山学院大学文学部卒業。日産自動車株式会社を経て、ゲーム好きが高じゲーム業界へ転身。コナミ株式会社、株式会社バンダイ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントにてゲームソフトの海外展開、ゲームソフト発キャラクター展開などに従事。2007年よりカイオス株式会社代表。
 
《記野直子》
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