1年に1度しかないお祭り騒ぎのような商談会でメディア向けの基調講演をしない――それに不満を見せる海外メディアがいれば、「逃げたのか」と言ってしまう一部のゲームファンまで見られる始末。一見逃げ腰に見える任天堂の真意とは? 任天堂を取り巻く状況を振り返り、そのねらいを慮ってみましょう。
2011年10月28日。任天堂の「第2四半期(中間)決算説明会」で岩田聡社長はインターネットを通じて社長自らが任天堂の最新情報をお届けする「Nintendo Direct」が生まれた背景について以下のように語りました。
・投資家が知りたい情報とゲームファンが知りたい情報は重なる部分があるが、食い違う部分もある
・投資家への情報発信とゲームファンへの情報発信は明確に分けるべきではないかと考えている
・ソーシャルメディアの普及で、発信した情報が歪んだ形で広まってしまうのを何度か経験している
これらをまとめて解消するのが「Nintendo Direct」だったというわけです。マリオの生みの親であるゲームデザイナー宮本茂氏は「アイデアとは複数の問題を一気に解決するものである」と語っていますが、それにならうなら「ニンテンドーダイレクト」はまさにアイデアでした。企業間のビジネスをB to B(Business to Business)、企業と個人の消費者間のビジネスをB to C(Business to Consumer/Customer)といいますが、その区分けは「Nintendo Direct」の誕生でより明確になりました。
話をE3に戻しましょう。例年プラットフォームホルダーや大手ゲームメーカーが開催するプレスカンファレンスは、消費者(ゲームファン)も見られるとはいえB to Bに属するものです。だからこそB to Bはあくまで現地の会場で行うのみとし、E3を楽しみにしてくれる熱心なファンたちにはB to Cに特化した情報を届けよう……岩田社長の考えを振り返れば、昨年のE3でプレスカンファレンスが行わず「Nintendo Direct」が配信されたのはむしろ自然な流れと言えるでしょう。
その甲斐あってか、国内のニコニコ生放送では高評価を納め、海外でも"メガマン(ロックマン)、『スマブラ』新作に参戦!"の報を見て狂喜乱舞するゲームファンを映した動画などがネットで見られました。ですが、海外大手メディアのIGNはE3 2014で任天堂が配信する「Nintendo Digital Event」について「我々の期待にかなうものであるかはまだ分からない」と慎重な姿勢を見せています。新しいことが常に成功するわけではありませんが、「B to Bの場であるE3で、ゲームファンのためにB to Cも一緒にやろう」という両面作戦は逃げというより攻めの姿勢と言えます。
昨年に続き任天堂がE3で見せる、新たなプロモーション戦略の行方に注目しましょう。
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