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【TGS2014】SCE吉田修平氏インタビュー、洋ゲー人気やMojang買収の見解語る

精力的にゲーム業界でプレゼンスする、SCEワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏。東京ゲームショウ 2014のビジネスデー会期中、国内ゲームメディアの取材に応じ、様々なトピックについて自身の見解を語りました。

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世界中のファーストパーティースタジオを監督するかたわら、Twitterなどで日々ゲームファンとダイレクトに交流し、最近ではCEDECでVR技術の基調講演を行うなど精力的にゲーム業界でのプレゼンスを続ける、SCEワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏。東京ゲームショウ 2014のビジネスデー会期中、国内ゲームメディアの取材に応じ、PlayStation 4のタイトル供給、『Destiny』をはじめとした国内での洋ゲー人気、VR技術「Project Morpheus」、そしてMicrosoftのMojang買収話まで、様々なトピックについて見解を語りました。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

――ゲーム機は、ここ数年スマホとの対比が語られます。その中で、ある意味PS4が想定以上に売れたというのは、経済アナリストたちから見ても想定外だったのではないでしょうか。

吉田修平氏: そうですね。アナリストたちは、専用機の時代は終わった、みたいな風潮でした。PS3やXbox 360の売上が徐々に落ちてきて、それ以前にWiiはもっと落ちていましたし、2008年くらいからそのまま帰ってこないという見方です。たとえばXbox OneはXbox 360よりも速いペースで売れていますし、両方合わせたら相当な売上になっていて、発売前までの彼らの論調ががらっと変わりましたね。

――ゲームに対する需要が、カジュアルとがっつり遊ぶのと二極化しているということなのでしょうか。

吉田修平氏: そうですね。我々作っている側からみると、PS3からPS4に移行するにつれて、1タイトルあたりの投資が増えています。ユーザーも目が肥えてきて、とくにFree-to-Playでよく遊べるものも増えているので、お金を払うんだったらそれなりものじゃないと嫌だ、という。

実は、中間層のタイトル(ダブルA)がごそっと抜けているのです。ダブルAタイトルを売っていたパブリッシャーさんも経営が成り立たなくなり消えていきました。その結果、トリプルAの規模が大きくなり、タイトル数は減っても1タイトルあたりの売上は上がっている。そこがやはりPS4で新しい技術になって、いっそうはっきりしたのではないでしょうか。

――『Destiny』は発売初日で5億ドル以上の収益を上げたそうですが、PS4自体、発売からまだ普及しきっていない中でそういう数字が出るのは、ひとつの象徴的な出来事ではないでしょうか。

吉田修平氏: 『Destiny』も『Watch Dogs』も『GTA V』も『The Last of Us』も、かなり気合を入れて長い期間と開発費をかけて作っているタイトルですよね。従って、それがユーザーにダイレクトにいっているのは、とてもヘルシーだと思います。

――海外はすごく好調だけど、日本は雰囲気としてはそこまで行ってない、というイメージがあります。年末に向けて、タイトルを揃えるのは当然だと思いますが、日本においてユーザーを取り戻すために、どういったアイデアで攻めていこうと考えているのでしょうか。

吉田修平氏: それは日本のコンテンツしかないですね。海外のコンテンツはすごいものがすでに出ていて、PS4の発売前の段階で、早くPS4を出してくれとパブリッシャーに言われたくらいです。つくり手側がもう準備できていたのです。やはりPCの市場もあるので、PCをベースにマルチプラットフォームの環境を整えていたデベロッパーは、いつでも出せる、という状態でした。

日本の場合、携帯機やモバイルもあって分散しているので、PSPからPS Vitaへの移行もゆっくりです。でも両方に出して、ユーザーが徐々にシフトしていったら軸足を変えていく。PS3の普及そのものもゆっくりでしたし、そういう形で進むと私は見ています。今回、9月1日のPlayStation Conferenceで、多くの国内パブリッシャーが新作をPS3とPS4、またはPS VitaとPS4両方で出すと発表してくれたのは、とてもうれしいです。縦マルチと言われていますが、ユーザーによってはPS4版を買って、解像度の高さや遊びやすさを色んなところが気持ちいいのを知ってもらえれば、徐々にユーザーが増えていって、パブリッシャーも軸足を移していくと思うのです。PS3からPS4への移行がゆっくり着実に起こっていくための第一歩が示せたと思っています。

――吉田さんは本体の発売日に、「もうちょっと海外タイトルを日本でアピールしないとだめだよね」と言いました。

吉田修平氏: その気持は今でも変わっていません。『Destiny』、『The Last of Us』、『GTA V』などの動きを見ていると、少しずつですが海外のタイトルが好きというユーザーが増えているのはとても実感しています。今後も増える一方だと思っています。やはり海外で作られるゲームの技術、発想、投資額も含めて、私はたくさんの海外デベロッパーと仕事していますが、本当に楽しくて仕方ありません。それが徐々に日本のユーザーにも伝わってきて、海外のメーカーで長くプロモーションすることはありませんから、日本で目につきにくい、食わず嫌いのような状態です。

昔の海外ゲームは、作りが粗かったり、バグが多かったり、ローディングが長かったりと、ユーザーにやさしくありませんでした。それにくらべ、日本のゲームクリエイターの細かいところへの配慮は昔も今も素晴らしいところがあるので、最近はそういった部分も海外で非常に研究されています。海外は人の異動が多いですが、ノウハウや情報の共有が盛んで勉強熱心です。日本は異動が少ないぶん、師匠から教え子へ、口から口へ手から手へ伝えていくやり方が多い。今はCEDECのようなイベントもあり良くはなっていますが。もちろん、日本で生まれて日本でしか作られないアニメや漫画のようなコンテンツもあります。日本の文化がそのままゲームになった『龍が如く』もですね。

それらを除くと、欧米では非常にクオリティが高く発想の素晴らしいインディーゲームがたくさん出てきています。PS4でもPS Vitaでも、欧米で毎週のようにリリースされているのので、もっとたくさん日本で出して「こんな面白いのがあるんだ」と、ユーザーに知ってもらえるように、SCEJAが中心になって努力していく必要があります。ただ、将来については少しずつ海外ゲームを遊ぶユーザーが獲得できているので、時間はかかるかもしれませんが楽観しています。しかし短期的には、国内メーカーさんの新しいコンテンツが、PS4を持っていれば出てくる環境、雰囲気作りが大事だと思っています。

――『Destiny』が欧米に続いて日本でも発売されました。ユーザーの反響、特に欧米のユーザーやメディアからは色々な意見がありますが、それらをどう見られていますか? もうひとつ、『Destiny』はActivisionとBungieの間で10年規模の契約が結ばれていますが、SCEJAとしても今後10年規模で国内ローカライズを展開していくお考えですか。

吉田修平氏: 『Destiny』がどういう形で提携や期間が決まったかはお話できませんが、ActivisionやBungieと、PS4のローンチに向けて、去年2月にニューヨークのイベントで同時に発表しました。やはり、PS4でやりたいこと、まさに実現しようとしているタイトルだと分かったので、SCEAとSCEEがActivisionと話をして、盛り上げていこうという話になったのです。その流れで、日本でもSCEJAが一緒にやりましょう、さらに一歩進んでPS4だけでというところまで行きました。

発売後の反響については、みなさん印象は同じようで、ゲームの手触り感だったり、システムだったり、スケールだったり、それは素晴らしいと。ただ、コンテンツが一部限られていて、似たようなミッションが多いという部分で、評価しづらいという部分があるのかと。とはいえ、10年契約という話もあるように、ずっとコンテンツを作り続けていくというプランがありますから、バリエーションやボリュームが足りないと言われるのは、基本の操作感やゲーム性が問題あると言われるより、ずっと健全だと思います。私やデベロッパーはある種分かっていたことで、色々計画して今後コンテンツが増えていけば、進化が理解されるでしょう。だらだら遊んでもずっと楽しい、長く遊べるタイトルだと思います。


――Project Morpheusについてお訊きします。私も会場で体験してみて、やはり未来を感じる一方で、実際にこれをどう売っていくか、どう商品に落としこんでいくのか、セッティングが大変だったり扱いづらいこともあり、難しい製品だなと感じました。家庭用で毎回それをするのはしんどいのかなと。確かに視界が遮断された没入感は魅力ですが、商品としてもっと色々なシチュエーションで使えるような、活用方法の想定は考えられているのでしょうか。

吉田修平氏: 使い勝手に関しては、ものすごくこだわりたいと考えています。今の段階でかなりがんばってはいて、Oculus Riftと比較されると、向こうはゴーグル型で押さえつける形なのが、こちらは頭で重さを支えるということで、ディスプレイの部分を自由にして、メガネを掛けても使いやすいとか、頭を支えたほうが重さも感じないという工夫もあります。ただ、やはり目を全部覆ってしまうので、ユーザーが1人で買って繋いで、どうやったらいいか分からない、ということが無いようにするのは、重要な開発テーマとして守っています。

しかしあのVRでは圧倒的に今までなかったことができるので、仮に我々がやらなくても絶対に世の中に普及すると思っていて、すごい可能性を感じているので、自分たちでそれを広めたい。そのために一生懸命取り組んでいます。PS4も必要な存在です。パワフルなマシンで動かさないとリアルタイムの映像は作れません。PS4が好調に普及しているのは、Morpheusをどうやって売っていくかという面で追い風になっています。PS4を買っておくとこういうことも出来るんだ、というのが感じてもらえれば、PS4のさらなる普及に拍車がかかるのではないかと。

――今週、Microsoftが25億ドルで『Minecraft』のMojangを買収したニュースが話題になりましたが、吉田さんの見解をお聞かせください。

吉田修平氏: じつは昨日、(Microsoftの)フィル・スペンサーにパーティーで会って、「おめでとう!」って言いました(笑)。『Minecraft』のPlayStation版をやめます、って言われたら大変なことですけど、そんなことはないじゃないですか。ノッチの言葉でも聞いたのは、フィル・スペンサー含め、『Minecraft Xbox 360 Edition』で出来た信頼関係があり、彼が会社を去っても、任せられる相手としてMicrosoftがあったということだと思います。

――25億ドルという買収額も大変な数字です。金額が大きすぎてネガティブにとらえている人も多い印象がありますが、ひとつのインディータイトルがあそこまでの規模に成長するのは夢があります。およそ2680億円という金額に対する価値換算を吉田さんはどう評価されていますか?

吉田修平氏: そうですね、最近の買収金額はインフレ気味で上がってきていますね。やはり、欧米の会社、シリコンバレー的なところがブームになっていて、お金も回っているし景気の良さがあると思います。『Minecraft』の25億ドルをどう見るか、色々評価の方法はあるかもしれませんが、結局のところ、高いか安いかは、買った会社がそれをどうするか次第なんですよね。

Microsoftの発表を見る限り、短期的にはリクープできるという話もあって、既に収入のあるビジネスですから、その収入とのれん代の償却費用が同じくらいになっているのでは、と私は推測しました。ただし、それを10年なり15年と何年続ければリクープできるのかなと、それだけの話ではないのだと。つまり、それをテコにして新しい市場に入ったり、新しいユーザーを獲得するとか、今ないビジネスを作り出すことができれば、買収の価値があったということになります。そこで何を狙っているかは外の人間には分かりません。FacebookのOculus Rift買収の20億が高いか安いかと同じ話ですね。

――Mojangの創設者Markus“Notch”Persson氏が、買収にともなってスタジオを辞めるという話がありました。彼は開発の一線から退いていて、『Minecraft』のファンベースが大きくなりすぎた結果、Twitterなどのソーシャルでファンとやりとりする中で距離感ができてしまい、責任の大きさに耐えられなくなった、という話を打ち明けていました。吉田さんも普段、PlayStationのファンに対してTwitterで頻繁にやりとりされていますが、そういう重みみたいなものは感じられるのでしょうか?

吉田修平氏: やっぱりそれはありますよ。毎日朝起きたら、「PlayStationで何が良くないか」をTwitterで聞かされるわけです。時には、ものすごく強烈な言葉で。悪意を感じたらミュートすることもあるのですが、そうでなくてもファンの方が困っていたり、PlayStationにないフィーチャーを他社が発表して「なぜこれが無いんだ」と言われたり。しかし、それは仕事の上でとても便利なのです。とにかくフィードバックが早いので、なにか問題があったり、バグがあったりしたら、寝ている間は別として、私がいちばん最初に社内で発見すると思うのです。同じような声が多い時は、関連部署に報告したりして、仕事面で非常に役に立っています。あとは何かを発表した時に、ファンがどう思っているのかを即座にわかるのは、ありがたいです。それと同時に、出来ていないことへの批判、何かに怒っているユーザー、単に悪意のある声などが混在して寄せられてくるので、時折、精神的にきついなと思うことはあります。それでも、「PS4を買ったよ!」「プラチナトロフィーとったよ!」といったうれしい声もたくさん来るので、仕事での利点も踏まえて私にとっては楽しいことやプラスの方が大きいです。

――分かりました。本日はありがとうございました。
《Rio Tani》
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