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【JRPGの行方】第8回 スマホ時代の「王道」と「追憶」

様々なメーカーから競うように「大作RPG」がリリースされていた全盛期。翻って今はシリーズ作品、過去のリメイク、まれに新作という感じですが、ではかつての百花繚乱のRPGたちは、どこに消えたのでしょうか?

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【JRPGの行方】第8回 スマホ時代の「王道」と「追憶」
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■ソーシャルRPGの“JRPG”化

さてここで、前回の『「TOP 10 WAYS TO FIX JRPGS」再考』をさらに再考してみたいと思います。

    10.)人々は生きているか
    9.)戦闘やダンジョンのリサイクル
    8.)キャラクターのダイアログボックス
    7.)制限された世界とリニアな物語
    6.)キャラクター設定の画一化
    5.)異質なキャラクターボイス
    4.)オフライン・シングルプレイに固執
    3.)ノー・モア・セーブポイント
    2.)ステレオタイプな物語設定
    1.)代わり映えしないコマンド戦闘

セーブ関連やオンライン要素など、スマートフォンというプラットフォームによってクリアした項目もいくつかあります。基本的にはあらゆる操作に対して進行状況は保存されていますし、ソーシャル要素として、程度の違いはあれど他者と交流することができます。

一方でどうでしょうか。戦闘やダンジョンは繰り返され、ダイアログボックスはますます盛ん。自由に動ける世界はなく、物語は配信スケジュールに沿って進んでいく……。世界観、物語、キャラクター、戦闘など、海外から改善されるべきと指摘されていたことが、ソーシャルRPGにおいては、むしろ積極的に取り入れられてはいないでしょうか。

わたしは、ソーシャルRPGが「RPG」であろうとするために、自ら“JRPG”の特徴を受け継ごうとしているのではないか、と考えます。過去のRPGに対する、ある種の“既視感(一度もプレイしたことがないのに、すでにプレイしたことがあるように感じる)”を担保に、ソーシャルゲームは自らをRPGたらしめているのではないか。「JRPGであることの甘受」が、むしろ作品における「王道」や「本格」を示すものになっているのではないか。

実は「既視感」と「王道・本格」はコインの裏表であり、ソーシャルゲームという新しい性質に、RPGというなじみのあるゲーム性を盛り込むために必要だったと考えます。「過去のRPGへの接近が、ソーシャルRPGにおける王道である」ーー。ちなみに、これはRPGとしての問題であり、ソーシャルゲームとしての品質やおもしろさとは無関係の話です。そして、もちろんこれまでの流れに与しない、目新しい作品もあります。

なぜ、ソーシャルゲームは「RPG」を謳いたがるのでしょうか。

■「追憶」と「憧憬」

ソーシャルゲーム以外にも、もちろんスマートフォンにはRPGがあります。そのひとつが「移植」です。過去の名作をスマホで遊べる! というのは、ゲーム機同士の移植以上に大きな誘因となります。RPGが向かった先のもうひとつに「ゲーム実況」があります。共感や昔語りを生むRPGは、ゲーム実況における主要ジャンルのひとつです。自分の知らない作品よりはむしろ、かつて感動を味わった有名作品の方が、その役割を果たしているかもしれません。

わたしは、今の日本のRPGをとりまく二大キーワードとして「追憶」と「憧憬」を挙げたいと思います。かつてゲーム界の王様だった「RPG」を想い、憧れる。ゲームを作る側、ゲームを遊ぶ側の両方にある、RPGに対しての追憶と憧憬が、今のRPGの状況を生み出しているということです。過去のRPGを思い出すために“既視感”は作動し、憧れのRPGに近づくことで“王道”RPGを謳う。

JRPGとは「西洋によって後進性、不変性、奇矯性、官能性といった性質を付与され類型化された“異質な”日本のRPG」。今のソーシャルRPGは、日本のRPGが盛んだった時代に培われたJRPGらしさを積極的に引き受けることで、自らをRPGたらんとしているように思うのです。
《Kako》
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