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GDCで語られた『オリとくらやみの森』における開発体制とオーディオへのこだわりとは

「GDC 2016」にて、『オリとくらやみの森』のサウンドを担当した2名のオーディオクリエイターが講演。本作のサウンドについての講演を行い、制作の舞台裏があかされました。

ゲーム文化 カルチャー
GDCで語られた『オリとくらやみの森』における開発体制とオーディオへのこだわりとは
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全世界に広がるインディゲームのムーブメント。尖ったゲーム内容もさることながら、リモート開発をはじめとした、新しいゲーム開発のスタイルへの挑戦という意味でも、業界の最先端を突き進んでいます。2015年に発売され、全世界で高い評価を得た『オリとくらやみの森』も、そうしたタイトルの一つ。GDC2015のアニメーションに関する講演に引き続き、本年も2名のオーディオクリエイターによって、制作の舞台裏があかされました。

Gareth Coker Musicコンポーザー:ガレス・コカー氏

講演者はWabi Sabi Sound創始者でオーディオディレクターのアンドリュー・ラッキー氏と、Gareth Coker Musicでコンポーザーをつとめるガレス・コカー氏です。講演タイトルは「'Ori and the Blind Forest': Sonic Polish Through Distributed Development(『オリとくらやみの森』分散開発におけるサウンドの洗練)」で、両氏は「デジタル流通時代のゲーム開発で多くのことを学んだ」と語りました。

◆世界各地で分散開発、ミーティングはSkypeを活用



『オリとくらやみの森』は、森に棲む小さな精霊「オリ」を主人公とした、『メトロイド』ライクな横スクロールアクションゲームです。手描き風のグラフィック、フルオーケストラ編成の音楽、繊細に作りこまれたアクションなどが一体となって、プレイヤーを冒険の旅にいざないます。オリジナル版に続き、2016年委発売された追加シナリオ『Definitive Edition』もメタクリティックで87点という高得点をマークしました。

本作を開発したMoon Studiosは2010年に設立された独立系のスタジオで、全世界のスタジオや開発者とインターネット上でリモート開発を行っている点が特徴。本作においてもサウンドはロサンゼルス、プログラムは英国といった具合です。最初に顔合わせも行われましたが、参加できなかったメンバーが大半だったほど。ミーティングにはスカイプが多用され、一度も顔を合わせたことがないメンバーも多いといいます。


一般的にプロジェクトの成功はメンバー間の距離に反比例すると言われます。特にゲームのような「手戻りの多いプロジェクト」はそれが顕著です(そのため繁忙期には協力会社からの出向受け入れが頻繁に行われます)。Skypeをはじめ、さまざまなツールが普及している現在でも、それは変わりません。ラッキー氏は「バーチャルなスタジオ文化をネット上に作ることが非常に重要だった」と語りました。

核となるのはオーナーシップで、全員が経営者視点を持ち、フラットな組織を保つこと。全員が全員の制作物をレビューしあえる、自由な雰囲気がポイントです。そのために必用なのが、身も蓋もない言い方ではありますが「優秀な人材を加えること」。特に聞き上手であることが重要だとされました。「発言の内容も重要ですが、なぜその発言がなされたのか、理由や経緯を理解することが大切です」(Lackey氏)。

Wabi Sabi Sound創始者:アンドリュー・ラッキー氏

また「対立する二つの意見に対して、中途半端に折衷案を出すのは良くない」とも指摘されました。実際にMoon Studiosが主導するプロジェクトでは、「1.みんなが合意してハッピーになる」「2.どちらかが提案を引っ込める」「3.時間がなくなる」のいずれかの状況になるまで徹底的に議論し、プロジェクトが中断してしまいます。コミュニケーション手段が限られるリモート開発では、特にこれが重要だとします。

そのためには、プロジェクトのゴールを最初に設定し、開発メンバーが全員で共有することが重要であること。そして、いざ開発が始まったら、そのゴールに対してメンバーがそれぞれ、「個別に」開発を進めていくやり方をディレクターが許容すること。そしてできるだけ早い段階で開発中のゲームがレビューできるようにして、高速にイテレーションを回していくことだとされました。

◆ゲーム開発とゲームオーディオが一体化


セッションの後半では議論がゲームサウンドに移りました。本作の特徴の一つに映像とサウンドが一体となって、豊かなナラティブ体験をプレイヤーに提供している点があります。中でもラッキー氏は「一人用のナラティブゲームにおいて、インタラクティブミュージックの活用は非常に重要」だとします。そのためにはゲーム開発の早い段階でゲームサウンドが加わり、一緒になって開発を進めていく必要があります。


コカー氏は「ゲームサウンドにはプレイヤーに世界観を提示するマクロな役割と、主人公とプレイヤーの距離を縮めるというミクロな役割がある」と整理しました。その好例ともいえるのがフィールド上で流れる平和的な音楽と、バトル中の激しい音楽です。ちなみに本作は多くのバトルを避けることができ、ゲームプレイの大半がステージ探索で占められるとのこと。結果としてバトルBGMはボス戦に偏りがちだといいます。

そのうえでコカー氏は本作の世界観や、オーケストラ編成によるサウンド録音という特性もふまえて、「パーカッション(打楽器)の使用をできるだけ避けるようにした」と説明しました。もっとも、こうしたリズム楽器が不在では、音楽が平板になりがち。そのため多用されたのが「ドッドッド・・・」「トゥクトゥクトクゥ・・・」といったパルス音(連続して繰り返される、心臓の鼓動音や脈拍のような音)です。

コカー氏は「オーケストラによる音楽はプレイヤーをゲームに引き込み、パルス音はプレイヤーの感情を自然な形で、より高ぶらせてくれます」と説明します。こうした演出ができたのも、早い段階からゲームオーディオが開発にたずさわり、方向性を決められたから。「ゲーム開発でよくある、いくつかのアートワークやリストをもとに、アセットとして音楽を大量生産するようなやり方では、こうした体験は提供できません」(コカー氏)


本作のオーディオに対するこだわりはカットシーンにもおよびました。ストーリーボードの段階で作曲が始まり、カットシーンの制作に応じて修正を追加。音楽の尺にあわせてカットシーンを編集することもあったといいます。時には音楽によってカットシーンの演出意図を明確にできたことも。ラッキー氏は「作曲家も制作中のゲームをプレイすべきで、特にナラティブを重視したゲーム開発では必須の要素だ」と語りました。

ゲーム開発チームとオーディオ担当が一緒になってゲームを作り、早い段階でプロトタイプを作ってイテレーションを高速に回す・・・。講演内容をまとめると極めて教科書的な内容に落ち着きますが、両氏は「時間はかかるが、これが王道で、近道はない」とします。
また、それを可能にするためにも「フラットな組織形成と運用」がポイントで、特に世界市場で戦うためには重要な要素だと締められました。

《小野 憲史》

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