【オールド洋ゲー野郎Z】『Jagged Alliance 2』(1999年) | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【オールド洋ゲー野郎Z】『Jagged Alliance 2』(1999年)

古き良き洋ゲーの名作を読者の皆様にご紹介するオールド洋ゲー野郎Z連載、第二回はあのSir-Techが送る部隊物戦術ストラテジーの名作『Jagged Alliance 2』を紹介いたします。

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【オールド洋ゲー野郎Z】『Jagged Alliance 2』(1999年)
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Game*Spark読者の皆様、大変お待たせしました。前回の記事『Vietcong』より大きく間が空いてしまいましたが、古き良き洋ゲーの名作を、徹底的にご紹介する連載「オールド洋ゲー野郎Z」第二回をお届けします。今回は『Wizardry』本編シリーズでお馴染み、あのSir-Techが送る部隊物戦術ストラテジーの名作『Jagged Alliance 2』をピックアップ。

『Jagged Alliance』シリーズとは?

早速『Jagged Alliance 2』の紹介へと移りたいところですが、まずはシリーズの概要と第一作『Jagged Alliance』の解説を行うことにしましょう。『Jagged Alliance』は、軍事的に不利な状況下に置かれた依頼者から依頼を受けたコマンダーであるプレイヤーが、PMCである“A.I.M.”(Association of International Mercenaries)のメンバーを始めとした、個性豊かな傭兵達の雇用・マネジメントを行いながら、敵の進行を防ぎつつ戦略マップを一つ一つ解放してゆき、勢力を整え、作品ごとの大目的の達成を目指すシミュレーションRPGシリーズです。



第一作『Jagged Alliance』は1994年6月に、『Wizardly』シリーズで有名なSir-Techよりリリースされました。南大西洋に浮かぶ架空の島Metaviraを舞台に、革命的な医薬品の原料となる、未だ人工栽培に成功していない木の独占を狙い、武力による島の制圧へと乗り出した科学者グループへと対抗するために雇われたコマンダーとなって、60名近い個性豊かな傭兵達の中から任意のメンバーを揃え、島の開放を目指す内容です。2009年には海外にてニンテンドーDS向けにもリリースされています。


『Jagged Alliance』

島の開放や解放したエリアの維持などの戦略的な要素と、能力値や外見が個性豊かなだけでなく、音声入りの会話や、個々の性格や相性などによってゲーム内の行動にも強い影響のある傭兵達のマネジメント。そしてRPG的なバランスではあるものの、しっかりとした内容のターン制の戦術級ストラテジーの戦闘シーン、といったシリーズの基本的な要素は本作の時点で存在しています。


『Jagged Alliance』

しかしながら、戦術ストラテジーとしては、同年3月に、2016年においてもリブート最新作『XCOM2』が大人気の『X-COM』シリーズの第一作が発売されており、同作の高さの概念や地形破壊などといった先進的な要素を含む、その特に完成度の高い内容と比べればどうしても見劣りしてしまうものでもありました。


『Jagged Alliance』

初代『Jagged Alliance』にはその後、スピンオフとなる『Jagged Alliance: Deadly Games』が発売されています。内容としては衛星技術を用い宇宙を我が物と企むテロ組織へと対抗するもので、次作以降にてA.I.M.の傭兵の一人として雇用可能な“Gus Tarballs”が依頼人NPCとして初登場しています。本作は戦略マップが無く、順にミッションをクリアしていくスタイルになっており、マルチプレイヤーへの対応やミッションエディタを備えているのも特徴です。

シリーズ代表作『Jagged Alliance 2』、その魅力に迫る



Jagged Alliance 2』は1999年4月にEUで、7月23日に北米でTalonSoftより発売されました。開発は前作同様Sir-Techですが、パブリッシャーとしてのSir-Techは1年前の1998年にその歴史に幕を下ろしており、同社の開発部門であるSir-Tech Canadaのみが生き残った形となったため、新たなパブリッシャーの元でのリリースとなっています。


初期設定画面、難度や登場する武器種類の量などの設定が可能

ゲームのストーリーは、残忍な女王Deidrannaに支配された架空の小さな島国Arulcoを舞台に、彼女の元夫、元国王であり謀殺されたと思われていたEnrico Chivaldoriの依頼を受け、島へと赴いたプレイヤーが傭兵たちとともに、女王の殺害を目指すものです。


戦略画面、目指す最終目的地は島南端のMedunaだ。マップ上3か所にある鉱山は主な収入源になる

本作の基本的なゲーム構成は初代『Jagged Alliance』と同様のものですが、各部において比べ物にならないほどのパワーアップを果たしています。最もたるものは、戦術画面が斜め見下ろし式となり、視線判定がより自然になったことや、高さの概念が導入されたことです。これにより、リアルになっただけでなく、屋根を使った迂回や狙撃など、取れる戦術が大幅に広がりました。更には、爆発物を使った建物の破壊など、マップに加えられた変更はゲーム中ずっと引き継がれていることも、自由度の幅を広げるのに拍車を掛けています。


戦術画面、傭兵達が状況に応じて様々な台詞をしゃべってくれるのも魅力

ちなみに、『Jagged Alliance 2』は同様の戦闘画面を持った『X-COM: UFO Defense』同様、見かけこそ2Dですが、内部の視線判定や銃弾の当たり判定処理には簡易な3Dが用いられています。ですので、戦闘中の判定について、決してただそれらしく描画しているだけで無いのは驚くべき部分であるかもしれません。


余談だが、死体もすぐに消えずに腐乱しカラスに啄まれていく。傭兵達がその運命を辿らないようにしたい所だ

また、戦略面においても、複数の部隊に分けて総勢18名の傭兵を同時に扱えるようになっただけでなく、敵味方ともに戦略マップ上の部隊の現在位置や、移動時間の概念が追加されて非常に進化しているのは大きなところでしょう。


移動経路も中継地点を決め、かなり複雑に設定できる

ゲームの魅力を支える傭兵たちの個性もパワーアップしているだけでなく、本作では、ある大きな要素がゲームに加えられることになりました。それがプレイヤーキャラクターメイクの要素。前作まではあくまでコマンダーとしてのみの立場であったプレイヤーが、今作では1キャラクターとして傭兵たちと肩を並べて戦うことができるようになり、感情移入度合いもひとしおです。また、厳密にはプレイヤー自身とは別の扱いなので、もしプレイヤーキャラクターの身に何かあっても即ゲームオーバーとならないのはありがたい所。


傭兵心理テストサイト“I.M.P.”。心理テストに答えることで様々な個性のプレイヤーキャラクターが作れる


傭兵は経歴も様々。契約額もピンキリだ、中には別途医療保険を要求する者も多い


時には別の依頼へ行く者も。その依頼で死亡する場合まであるので注意が必要だ

そして『Jagged Alliance 2』を語るにあたって欠かせない点の一つが、ゲーム内webサイトの作り込み。“A.I.M.”はもちろん、前述のキャラクターメイクに用いる心理テスト“I.M.P.”や中盤より新たに加わることになる新傭兵組織“M.E.R.C.”、そして兵器や花屋の各種の通販サイトに至るまで、1998年当時的な作り込みがなされており、当時でも思わずニヤリとさせられたものですが、2016年の現代においては非常に懐かしい気分になれることひとしお。MacOS 8.xを模したような、プレイヤーが用いるノートPCのUIなども同様です。通販サイトに至っては通販の送り先が設定できる(もちろん間違えれば届かない)などの小ネタも。


兵器通販“Bobby Ray”のサイト。ゲーム開始時はまだ開業していない


花屋の通販画面。追加オプションやギフトカードまでつけられる

話をゲーム本編へと戻すと、通常の進行ならば、最初の目的はEnricoの元政治的ライバルであった、Miguel Cordona率いるレジスタンスを助け、その力を借りるために彼らを支援することになります。その後は島を少しづつ開放しながら、援軍の傭兵を呼び寄せたり、外国より優れた兵器などを輸入し、圧倒的な物量の女王軍に対抗する手段を得ていく流れになるでしょう。その過程では島の各地に住む、個性豊かな住民と交流し、様々なクエストに発展する例も多く、最後までゲームがただの反復作業とならないのも素敵なところです。重要なNPCの中には、新規ゲームの度に居場所が変わるキャラクターなどがいるのもパターンの固定化を防いでいます。


最初に出会うことになるFatima。レジスタンスにも顔の利く彼女にEnricoの手紙を見せれば道が開けるだろう


彼がMiguel。支援体制を整えるためにまず近隣のDrassen空港の占領と食料調達を求められる


最初の傭兵以外の仲間Ira。Miguelに同行を頼むと代わりに紹介される。射撃能力は低いが医療技術がある

個性豊かなのは友好的な住民だけではありません。倒すべき目標の女王も直属の部下のEliot共々、ゲームの進行に合わせてコメディチックなやり取りを存分に見せてくれます。彼らの複数回に渡って繰り広げられるやり取りは必見です。同様に本作に存在する“Sci-Fi”オプションについても語っておく必要があるでしょう。ゲーム開始時に設定できるこのオプションは、ゲーム内に荒唐無稽なSF的イベントを加えるもので、女王の策略により島の鉱山からは謎の怪生物が次々湧き出し、その対処に迫られる、などといった事態に……。


強力な銃器を持ち込めば辺境の敵は物の数ではないが、空港を奪取するまでは補給のめどが付かない。時には弾薬1発単位での管理も必要


敵の存在しているセクターに踏み込めば戦闘開始だ


戦闘はオートバトルも可能だが、特に装備が整っていない序盤は致命的な結果を招きやすい。気を付けよう

女王たちの個性や荒唐無稽なSF要素は本作を「シリアスな軍事ストラテジー」からはかけ離れたものにしていますが、代わりに醸し出される、愛すべき80年代の良くてB級、ともすればZ級なアクション映画臭が個性豊かな傭兵達と相まって、気分はさながら洋画を追体験しているかのよう。本作に続く続編群ではコメディ・SF要素はなりを潜めており、雰囲気こそシリアスさが強調されていますが、箱庭としての楽しさを考えれば、Sir-Techならではのこのユーモアは馬鹿にできるものではないでしょう。


「Eliot, You idiot !」(ビンタ)、この愉快なお決まりのやり取りは最後には驚愕の事態に……ぜひ確かめてほしい

また、本作の最終目標は「女王の殺害」であることは既に述べていますが、特定イベントの有無によってエンディングに些細な変化はあるものの、その過程を一切問われないのも、本作を非常にリプレイ性に溢れた傑作としている魅力的な部分です。

下の動画を見て頂けると分かりやすいでしょう。ゲーム中、自軍傭兵が敵に降参するなどし、強制収容所へと連れて行かれた場合、そこへと女王が尋問に来るイベントが用意されているのですが……。


もうお分かりかも知れません、この動画では、該当イベント中の女王の経路にブービートラップを仕掛けておくという、裏技とも言える手法でのクリアに成功しています。この攻略法は本当に極端なものですが、他にも茨の道ながら、一部の優秀な傭兵を用い、スタートからMiguelと会うこともなく、一切の補給無しで徒歩による強行軍にて女王の屋敷に到達、ゴルゴ13のごとくスマートに暗殺を成し遂げるプランや、モーターなどによる飽和爆撃にて屋敷ごと女王の抹殺を図るプランなど、ゲームルール上に存在するあらゆる戦略・戦術の可能性が許容されています。


手持ちの全てのリソースと相談して、思うままに攻略できる楽しさはひとしお

このように、細部まで作り込まれた箱庭としてだけでなく、戦略・戦術両面において自由な行動を可能とするサンドボックス的なアプローチも持つオープンワールドは、今でも色褪せることのない魅力を本作に与えています。

人気を博した本作は初代同様、スタンドアローンの続編である『Jagged Alliance 2: Unfinished Business』がリリースされています。内戦の終結後、Arulcoの近隣の島であるTraconaに建設されたミサイル基地を破壊するために活動する、この続編は、初代のスピンオフ『Jagged Alliance: Deadly Games』がそうであったように、戦略要素のない一本道で構成されており、シナリオエディタも備えていました。本編からキャラクターデータのコンバートが可能であったのも魅力でした。

シリーズの更なる続編にも期待がかかっていましたが、残念ながらSir-Tech本体同様、本作を制作したSir-Tech Canadaも、『Wizardly』シリーズ最終作『Wizardry 8』の発売後、2003年にその長い歴史に幕を下ろすことになってしまいました。

次ページ:様々なメーカーからリリースされた数々のシリーズ続編、その内容に迫る
《Arkblade》

関連業界のあちこちにいたりいなかったりしてる人 Arkblade

小さいころからPCゲームを遊び続けて(コンソールもやってるよ!)、あとは運と人の巡りで気がついたら、業界のあちこちにいたりいなかったりという感じの人に。この紹介が書かれた時点では、Game*Sparkに一応の軸足を置きつつも、肩書だけはあちこちで少しづつ増えていったりいかなかったり…。それはそれとしてG*Sが日本一宇宙SFゲームに強いメディアになったりしないかな。

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