【オールド洋ゲー野郎Z】『Vietcong』(2003年) | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【オールド洋ゲー野郎Z】『Vietcong』(2003年)

PCゲームが日本で再注目されている昨今。本企画では古き良きを振り返るという趣旨のもと、10年以上前に発売されたものを中心に、ジャンルを問わず幅広く骨肉な作品の数々をお届けしたいと思います。第一回は2003年にリリースされたFPS『Vietcong』をご紹介します。

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    海外産ゲームの存在が日本でも当たり前になり、だれでも手の届くところにある昨今。しかし、骨太な“洋ゲー”が日本では珍しかった時代もあります。今でこそSteamやGOG.comで簡単に手に入れられますが、当時は入手困難な作品も少なくありませんでした。本企画では、そんな伝説的ともいえる古き良き洋ゲーの名作を、ジャンルを問わず編集部が厳選、実際にゲームをプレイしながら徹底紹介していきます。

記念すべき「オールド洋ゲー野郎Z」連載第一回では、2003年にリリースされたFPS金字塔『Vietcong』をご紹介します。

開発協力にはあの有名メーカーも名前を連ねたシングル主体のベトナム戦争FPS

本作『Vietcong』が発売されたのは2003年3月26日。開発はチェコのゲームメーカーPterodonです。開発協力には『Mafia』などでお馴染みのIllusion Softworksが名前を連ね、当時Take2傘下のパブリッシャーであったGathering of Developersからのリリースでした。開発元のネームバリューも薄く、当時決して大々的に宣伝された作品ではありませんでしたが、発売後そのシングルキャンペーンにおけるゲームプレイが大きく評価され、当時のコアな洋ゲーファンの間では一躍ベトナム戦FPSといえばこれ、と言われるほどの評価となりました。その後、拡張パック「Fist Alpha」、セット版「Purple Haze」がリリース。更にミッションパック「Red Dawn」が無料配信されています。


本作にはUS版UK版で表現の違いがある。UK版では非常に汚い“それっぽい”言葉が楽しめる。
また本編は日本語版も発売されていた

ちなみに本作には続編『Vietcong 2』も存在しています。セミリアルなバランスはそのままですが、テト攻勢をテーマに市街地主体となって大分雰囲気も変わったものになっています。1でのジャングルでの戦いが魅力的だっただけに残念なところでしょうか。

ゲームはベトナム戦争におけるアメリカ軍介入が本格化した2年後、1967年を舞台に、特殊部隊所属の主人公Steve Hawkinsとなってミッションをクリアし、ベトナム戦争を生き抜いていく「キャンペーンモード」設定を決め、敵全滅を目的として戦う「クイックファイト」デスマッチやチームデスマッチ、キャプチャーザフラッグなどの5つのルールを備えた「マルチプレイヤー」の3つのモードが用意されています。


本編タイトル、主にシングルが高評価ではあるが、マルチも実装されている

全体的なゲームバランスはセミリアル。武器はメインのライフル・サブの拳銃ともに携行は一種類のみ。リーンやアイアンサイト視点を備え、姿勢での命中率の変化などももちろん実装されていますが、ダメージバランスそのものは敵味方とも通常難易度であれば即死はまずないといった具合です。これだけであれば一般的なFPSと同様に思えますが、本作はAIとよく再現されたジャングルとベトナム戦争の雰囲気を持ってその大きな魅力を作り出しているのです。

2003年としてはカバーの利用が非常に優れた手強いAI

2003年のゲームとは思えないほどに巧みにカバーを使ってくる本作のAIは、実にいやらしい動きをしてくれます。本作では舞台となる時代を反映してか高難度でないならば敵味方とも決して命中率は高くなく、元々の接敵距離が短いのもあり必然的に近距離戦が増えるのですが、迂回も綺麗にこなすこのAIはいつの間にか横へと回りこみ致命的な打撃を与えてくるという、ジャングルでの対ゲリラの緊張感をプレイヤーに与えてくれます。ここでは敵味方ともヒットアニメーションこそあれど即死が少ないのも大きな効果を発揮していて、「弾を当てた敵が本当に倒れたのか」といった判断が要求されることでより一層緊張感を引き立てています。


一旦戦闘態勢に入ればすぐにAIは近場のカバーへと走りだす。その後は適切に遮蔽を保ちながら迂回を行ったり少しづつ頭を出しては攻撃してくる。実にいやらしい

感知範囲もそう不自然すぎることもなく、手強くはあれども理不尽さを感じる事態が少ないのもいいところです。ただし欠点もあります。味方に顕著なのですが移動パスを愚直なまでに辿ろうとしてしまうので、トンネル面や、一部の場面でスタックが多発してしまいます。とは言えそれを見る回数も少なく、そう目立つこともありませんので、該当しそうな狭い場所で注意しておけば大丈夫でしょう。


見通しが悪いのも相まって本当に近接戦になることが多い

グラフィックに劣るものの、巧みに表現されたジャングルと戦場の雰囲気

次に雰囲気です。本作のグラフィック自体は2003年としては多少見劣りするものですが、雰囲気作りは本当に素晴らしく、ジャングルの植生の雰囲気だけを取ってみても非常にそれらしい雰囲気になっています。もちろん触れれば一発即死のブービートラップも各所に仕掛けられており、手強いAIと合わせて先の見えない恐怖と戦うベトナム戦争の空気を上手く感じさせてくれます。


先の見えないジャングルの雰囲気がよく表現されている


渓流の空気感も中々の物


恐ろしいブービートラップ。ポイントマンがこれらを発見したならば、近づいて慎重に解除しなければならない


倒した敵を調べることで彼らの銃の弾薬やメディキットの他にこういったフレーバーアイテムが手に入ることも。各々に主人公のコメントもある


マップも一応存在しているが、実際に手に持って見る形なので暗い所などでは注意が必要。
一部の場面では支援砲撃要請もできるが、着弾までに結構な時間を要するので、戦況を読まないと危険なことも

その雰囲気を更に盛り上げるのが最大5人の分隊の仲間たち。キャンペーンは各々に個性と特殊能力を持った彼らと共に進んでいくこととなります。例えば話しかけることで部隊を先導し、次の移動ポイントへとプレイヤーを導いてくれるポイントマン。敵やブービートラップがある場合は立ち止まってハンドシグナルで伝えてくれるのも嬉しい所。本作は1人でも仲間が死ぬとゲームオーバーとなってしまう形ですが、メディックはプレイヤーや仲間のHPを随時回復し、そのストレスを大幅に減らしてくれます。米軍装備の弾薬が尽きたならエンジニアに話せば助けてくれることでしょう。彼らへの命令機能自体は貧弱ですが、もちろん彼らも敵同様優秀なAIを持っていますので一安心。プレイヤーは戦闘と雰囲気を感じることに集中できます。そして一番雰囲気を盛り上げるのがゲーム中、HQと連絡を繋いでくれるラジオマン。都度彼の手を借りてHQとの連絡を繰り返す様は非常にそれらしさを感じさせてくれます。度々挿入される主人公を含む6人のやり取りも楽しく、決して心細いだけでないのもゲームをより楽しくしています。


主人公Steve Hawkins。作中では彼のセリフも多い


仲間の一人、機関銃手Hornster。プロローグにて彼は“前任”の末路を語ってくれる。
拡張パック「Fist Alpha」はNui Pek基地の建設までの困難におけるその“前任”の目覚ましい活躍を描いたもの。
大活躍した“前任”もあっさりと死体袋入りしてしまうのがベトナムの怖さか


頼りになるポイントマンLa Duy Nhut。彼の背後を付いていくことで適度な緊張感でゲームが進行できる


ラジオマンDefort。この通信パートが雰囲気を盛り上げる。その他の仲間も個性豊かだ


主人公たちの拠点Nui Pek基地、決して後方の安全な土地などではないため襲撃に合うことも……本作はこの基地を巡る一連の戦いを描いている

ミッションも内容豊富で、目的も様々、ジャングル以外のロケーションもあり、有名映画を思わせるシチュエーションもあれば、乗り物や銃座を用いての進行も、と飽きさせない作りとなっています。しかしながらいかんせんミッションの長さや難易度がまちまちなのが玉に瑕。短いミッションは数十分で終わるものですが、長いミッションは十分すぎるボリュームのシーンが5シーン近くある上に後半は単独行動、とEasyでも数時間以上かかるほど……。頼みの綱のクイックセーブもNormal以上では、回数制限ありでおいそれと使えません。通常のセーブポイントが少なくないのが救いでしょうか。


ベトコンと言えばの地下トンネル。もちろん内部は長い上迷路のように入り組んでいて、迷わないようにするのも一苦労


乗り物パートも。画像はボートでの移動


もちろんありますステルスミッション。見つかるとほぼ即失敗なので気をつけよう、救いは敵が死体やサイレンサー付きの武器の銃声を感知しないことか


ミッション後にはデブリーフィング画面もある、長大なミッションだと必然的に戦果も凄いことに……


主人公はミッションでの出来事を日記につけていたりもする、ミッション間に起こった他愛ないやり取りなども伺え感情移入の度合いを深めてくれる。しかしこの主人公意外と絵が上手い

最新OSでの動作には有志パッチ「VCStarter」必須

そんな本作ですが、実のところ公式バージョンではDX10以降の環境下(Windows Vista以降)にて動作いたしません。しかしながら有志により「VCStarter」と呼ばれるパッチが制作され、DX10以降の環境下での動作が可能となっています。この「VCStarter」では一部のビジュアル的な不具合の修正も行われているので、もし今後本作を入手する機会があったなら導入しておきましょう。


ミッション間に訪れることのできる射撃訓練場には段々と鹵獲品を始め装備が充実してくる


Mission5からついに念願のM16が。とは言え、もちろん初期のA1モデルの20発マガジン。
更に主人公は、マガジンからの給弾を確実なものとするため、2発抜いて1マガジン18発で使用。
近代戦FPSに親しみ深いプレイヤーは心ともないかもしれないが、ジャムるよりは余程マシ

上述の現行環境下での問題のせいか、昨今のGOG.comなどの過去作品の再販リリースでもなかなか名前が出ない本作。欠点も決してないわけではないですが、見事に表現されたジャングルでのベトコン戦の雰囲気はこのまま埋もれてしまうには惜しい出来。いつか再販されることを願いたいところです。

《Arkblade》

関連業界のあちこちにいたりいなかったりしてる人 Arkblade

小さいころからPCゲームを遊び続けて(コンソールもやってるよ!)、あとは運と人の巡りで気がついたら、業界のあちこちにいたりいなかったりという感じの人に。この紹介が書かれた時点では、Game*Sparkに一応の軸足を置きつつも、肩書だけはあちこちで少しづつ増えていったりいかなかったり…。それはそれとしてG*Sが日本一宇宙SFゲームに強いメディアになったりしないかな。

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