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【コラム】『FF15』の終わりなき旅―歪な世界の多重リアル構造【ネタバレ注意】

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【注意】本記事には『ファイナルファンタジーXV』のエンディングに言及した重大なネタバレが含まれています。具体的な言及は避けていますが、ゲームをクリアしていない方は閲覧・取り扱いに注意してください。


2016年11月29日、日本のRPGシリーズの代表格、FFシリーズ最新作『ファイナルファンタジーXV』発売――。発表から数年、紆余曲折の末にようやく発売された本作は、毀誉褒貶という状況ではありますが、それでも国内外で一定の存在感を示してくれました。

良いところも悪いところも含め、わたしが『FFXV』を一言で表すなら「異形のRPG」です。どのあたりが「異形」なのか。過去のFFと何が決定的に違うのか。主にゲームデザインの観点から「リアル=現代/現実/現在」「物語」「JRPG」というタームを使って考えてみたいと思います。

また、公式サイトのABOUTに記載されている「新たな世代のための新たな礎」という言葉についても考えます。新たな世代とはなにか、礎となるためになにが必要だったのか。

本稿は、レビューではありません。ゲームとして品質がどうだったのか、ほとんど言及や評価をしていない、コラム・オピニオン記事です。大変長文の内容となるので、ご了承ください。


■全てのFFを架空にする

仲間たちとのドライブには、『FFVI』のサウンドトラックCDに収録されている「ティナのテーマ」が似合う。不安や寂寥感の中でも、前に進むための力強さを表現している。ドライブだから飛空艇系なんて安易だし、ノリノリのバトル曲なんてもってのほかだ――。

なんてことを思いながら、同時にひとつの疑問をいつも抱いてきました。このFFの楽曲は、いったい”だれが”聞いているのだろう、と。

もちろんプレイヤーのわたしは聴いています。そしておそらくノクティスたちも聴いている。そう、彼らは「FFの音楽を聴いている」のです。FFのキャラクターが過去のFFシリーズの音楽をショップで購入し、それを車のミュージックプレイヤーに入れて、ドライブ中に聴いているのです。


なんでもないことのようですが、これはつまり「これまでのFFはフィクションです」と言っているのと同じことです。なぜなら、その音のほとんどは向こうの世界には実際には存在しない、こちらのプレイヤーにだけ聞こえているものだからです。ティナ自身は「ティナのテーマ」を聞いたことがない。

『どうぶつの森』や『龍が如く』など、作品の中に別のゲームを入れることで当該作品のリアリティを高める、ということは以前から行われてきました。プレイヤーがいるこちらの世界でゲームとして存在するものが、あちらの世界にも同じようにある、ということは、どちらの世界も同じレベルにあることを示すことになるからです(ちなみにここでいうレベルとは「キャラクターの成長度を表す数値」ではなく、同じ高さ・地平といった程度に考えてください)。

FFの中にFFがある、というのは『龍が如く』の中に『バーチャファイター』があることよりずっと衝撃的なことです。極端な言い方をすれば『FFXV』は“これまでのFFを踏み台にして”リアリティを高めようとしているのです。


『FINAL FANTASY XV』の世界にFFというゲームが存在し、そのサウンドトラックを聴いていると仮定します。そうなってくると『BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV』や『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』のサウンドトラックがあるのがとても不自然に思えてきます。ノクティスらにとって同じ世界で、同じ時間に実際に起こっているものにサウンドトラックが存在するはずがないからで、それが存在するということは、それらは「物語」にすぎない、ということになるからです。

これをレガリアのカラーリングと同じように「これはそういうものだから」と片付けてしまってもいいですが、その場合、ノクティスらは音楽を聴いているふりをしているだけで、実はなんにも聞こえていないことになります。


実際に『FFXV』の世界にFFというゲームが存在するのかどうか、その真偽は大した問題ではありません。プレイヤーにそう思わせることが重要です。プロンプトが時折くちずさむ「パパパパーンパーンパーンパッパパーン」というFFではおなじみの「勝利のファンファーレ」が、あちらの世界でもFFで使われているかどうかはわかりません。そうかもしれない、と思えることが重要です。

■リアル=現実のレベル

『FFXV』は一貫して「リアル」ということにこだわった作品となっています。ひとつには「リアル=現代」的な舞台ということがあげられますが、それ以外にもいくつかあります。本作はこれまでのFFをフィクションとして扱うことで、これまでのFFと並列のレベルではなく、プレイヤーの世界と並ぶ「リアル=現実」レベルに位置しようとつとめています。上述のサントラはその象徴です。


プレイヤーの世界で架空のものは架空のものとして、現実に存在するものはその通りに扱うことで、『FFXV』の世界はプレイヤーの世界と同じレベルにあることをアピールしています。『ジャスティスモンスターズ ファイブ』『キングスナイト』「コールマンのキャンプ用品」「カップヌードル」などもその例です(タイアップがただの宣伝ではなく、ゲームのリアリティを高めるのに寄与することは言うまでもありません)。

※『キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-』:FFXVの世界で大ブームのスマホゲーム。こちらの世界では2017年配信予定。

プロンプトの写真も重要です。プロンプトが撮った写真は、わたしたちの世界のSNSで共有できます。これは少しおかしなことです。プロンプトが撮った写真は、本来あちらの世界のSNSで共有するべきものです。でも、プレイヤーが撮ったキャプチャー画像と同様にこちらの世界のSNSで共有できてしまう。まるで『中山美穂のトキメキハイスクール』のように、あちらの世界とこちらの世界の通信がつながっているのです。

※『中山美穂のトキメキハイスクール』: 1987年発売のアドベンチャーゲーム。ゲーム中の電話番号で中山美穂のメッセージを聞くことができた。


これはプレイヤーであるわたしたちと、プロンプトは同じレベルにあるということを示しています。舞台を現代的にしたことだけがリアルなのではなく、これまでのFFと決別し現実に近い上部構造へ移行すること。これが『FFXV』の「リアル」であり、『FFXV』は『中山美穂のトキメキハイスクール』と同じリアリティのレベルにあるのです。


ファンファーレを口ずさみ、やたらと自分たちをキングスナイトに喩え、こちらの世界にリア充的な写真を送りつけるプロンプトは、このリアルを体現する、極めて重要なキャラクターだといえます。プロンプトは中山美穂だったのです。



『FFXV』はこれまでのFFと比べひとつ上のリアリティへ移行した――。では、これは十全に成功していると言えるのでしょうか。

次ページ: ゲーム世界から浮いている

《Kako》

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