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【特集】『ファーミングシミュレーター17』を遊ぶ前に知るべき「大規模農業」の世界―専門家が解説!

農業の「今」を熟知している専門家に『ファーミングシミュレーター17』のゲーム画面を見てもらい、本作が実際の農業の現場をどれくらい再現できているのか、そして、国内や海外の大規模農業の現状について詳しい話を訊いてきました。

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今回取材したのは、北海道にある農業機械の輸入販売会社コーンズ・エージー

ドイツのゲームメーカーGIANTS Softwareが開発し、国内ではインターグローがパブリッシャーを務める、PS4向け農場経営シミュレーションゲーム『ファーミングシミュレーター17』。3月23日の発売が迫る中、Game*Spark編集部は、北海道に本社を置く酪農・農業機械の輸入販売会社コーンズ・エージーを訪問。農業の「今」を熟知している専門家に『ファーミングシミュレーター17』のゲーム画面を見てもらい、本作が実際の農業の現場をどれくらい再現できているのか、そして、国内や海外の大規模農業の現状について詳しい話を訊いてきました。

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コーンズ・エージー取締役農機環境部長の橋場恭太氏

――本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いします。

橋場恭太氏(以下、橋場): コーンズ・エージー取締役農機環境部長の橋場と申します。私は北海道の農業を専門にしている酪農学園大学を卒業して、コーンズ・エージーに入社しました。今年でちょうど勤続20年になります。実家が酪農家でして、親が弊社の取引相手だったのと、私自身が機械が好きな性分だったこと、畑作や稲作など農業にはさまざまな分野がある中で、弊社は酪農に特化しているため入社したという経緯があります。これまでいろいろな代理店さんやメーカーさんと取引させていただいているのですが、海外と直接取引できる点が面白いところです。専門はトラクターと、それにまつわる農業機械を長年担当しています。

――コーンズ・エージーはどのような会社なのでしょうか。

橋場: コーンズ・エージーはグループ会社の1つでして、フレデリック・コーンズという英国人が同郷のパートナーであるW.G.アスピナルと始めた会社です。150年以上前になる1861年に横浜で輸入品を国外へ持っていく貿易商として始まったのが、コーンズグループの起源になります。コーンズ・エージーは、グループの中で農業機械に特化した会社でして、農業分野の取り組みは50年と、グループ内ではまだ若い会社です。

――取り扱っている農業機械は北米のものよりもヨーロッパのメーカーのものが多いですよね。

橋場: 農業に関しては、米国は日本と比較すると風土の違いが大きいので、どちらかというと風土が近い欧州のものが日本で適応しやすいということがあります。農業の規模についても、日本とかなり似ていると思います。

■農業のテクノロジーは、この20年間移り変わりが本当に早かった


――日本における大規模農業について教えてもらえますか。

橋場: 農業は、畜産であったり畑作であったりとジャンルが分かれていますが、北海道ですと畑作と酪農の規模が大きいです。そこに目を向けると、どこの業界でも人手不足はありますが、特に農業に従事する人は、1次産業という位置づけからしましても基本的な労賃があまり高くない傾向にあります。これはどこの国でも同じだと思います。そこで、人を確保するのが困難であったり、規模を大きくするには人手が必要だったりするので、どう解決するのかというところで機械の存在が出てきています。最近ですと家電と同じで、人工知能や自動化、スマホなどの様々なデータを自宅で管理しながら経営の改善に活かすというのが現代の大規模農家に必須なものになっています。

――現代の農業は最先端のテクノロジーを駆使していると。

橋場: そうです。農業のテクノロジーに関しては、この20年間の移り変わりは本当に早かったです。弊社が扱っている搾乳ロボットは、20年前だと扱い始めの初年度でした。現在は農業のハイテク化の影響で国の補助金といった後押しがありまして、これから規模を拡大する農家さんには搾乳ロボットなどは急速に定着してきています。昔はそういった機械を買う人は変わり者だと言われていたりと、普及するまでには時間がかかりました。


――国内の農業機器メーカーも様々な製品を出していると思いますが、海外メーカーの製品はどのような違いがあるのでしょうか。

橋場: 搾乳ロボットに関しては、国内メーカーは存在していないんです。一時期、国産化しようと開発の動きはありましたが。国内でも作って作れないということはないと思うのですが、国内だけで開発費を回収することはかなり難しいですので、世界中に販路を広げないと搾乳ロボットのようなロボットはペイできないと思います。

――そうなると、海外の展示会などへはよく足を運んでいるのでしょうか。

橋場: 毎年、年に数回、欧州だけでなく北米の農業機械の見本市にも担当の者が視察に行ったり、現地の農場にも実際に足を運んで、生の情報を得ています。真似するだけでは日本の状況には合いませんので、独自の対応を行っていき、現在の形になっています。

――農業者はグローバルな視野が必要なんですね。

橋場: 農家の後継者になる若い方は、海外に研修という形で行ってたりします。海外でやっていることを見て刺激を受け、日本に戻ってきて似たようなことをやってみたりしていますね。

■ファーミングシミュレーター17の再現度は「すごい」


――では実際に『ファーミングシミュレーター17』のゲーム画面を見ていただこうと思います。チュートリアルでは農作業をどのように始めていけば良いか体験できますが、実際の農作業との違いなどはありますか。

橋場: すごいですね。これは専門用語を翻訳するのが大変だったのではないでしょうか。畑を耕す手順とかもちゃんとやっています。行程とか作業で使われる機械も忠実です。機械によっては何に使うのか社員でもわからないものがありますので、このゲームは会社の研修でも使えるかもしれません。あと、子供たちへも食べ物がどのように作られるかの教材としても使えるのではないでしょうか。

――ゲームではトラクターのアタッチメントを自分で外したり取り付けることができますが、実際の車両もそうなんでしょうか。

橋場: そうです。コマツの車両でもそうですが、運転者が操作してパチンと外すことができ、取り付けもできるようになっています。


――「キャリアモード」では、このような広いフィールドを自由に行き来しながら作物や家畜を育てていきます。ワンタッチで作業を切り替えることもできますし、作業者を雇ってオートでやってもらうこともできます。街には銀行もあり、お金を借りたり返済が可能です。

橋場: バイオガスプラントもあるんですね。これは家畜の糞尿や作物でメタンガスを発生させて発電のエネルギー源にするための施設です。日本にも電気の買い取り制度がありますが、ドイツでは売電制度が結構前からあり、畑の中にバイオガスプラントを多く見ることができるんです。

――それは初めて知りました。他の機能としては、農機のショップ画面を呼び出すことで簡単に売買することができます。トラクターだけでも多くの実在メーカーが登場しています。

橋場: チェコのメーカーまであってマニアックですね(笑)。パーツのカスタマイズの範囲や限定モデルの仕様とかも実際のトラクターと全く一緒で驚きました。弊社で取り扱っているドイツファールの「9シリーズ」もありますね。


――ゲームで登場する農機で、コーンズ・エージーさんが実際に取り扱われている製品はどれくらいあるのでしょうか。

橋場: 収穫用の刈り取り機は弊社で扱っている2社ともあって驚きました。ランボルギーニとドイツファールのトラクターもあったので嬉しかったですね。

――『ファーミングシミュレーター17』をプレイするにあたって、知っておいたほうが良い大規模農業の知識やポイントなどはありますか。

橋場: どの作物がどれくらいの収益があるのかを知っておくと良いかもしれません。あとは、実際の農業はどのくらいのお金がかかるのかを理解することでしょうか。普通の車が数百万の価格帯であるのに対し、トラクターは数千万の価格帯であるとか、農業はこのようにお金をかけているのだという金銭感覚を身に着けておくと、ゲームを有利に進められるかもしれませんね。

――なるほど。農業者の総ビジネス視点での金銭感覚が大事だということですね。橋場さん、お話ありがとうございました。


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普段、仕事で扱う農機がたくさん登場する『ファーミングシミュレーター17』の再現度の高さに、驚きを隠せなかった様子の橋場氏。最先端の農業事情や技術について、熱心に説明してくれました。次回は、知られざる「農機」の世界に焦点をあてた特集記事をお届けする予定です。

『ファーミングシミュレーター17』は、PlayStation 4を対象に、2017年3月23日発売予定です。
《Daisuke Sato》
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