■VRモード開発で苦労した点は?スタッフ達に話を聞いた
VRモード体験後に冒頭に少し触れた、ブランドディレクター河野一聡氏とプロデューサー下元学氏、そしてVRプロデューサーの玉置絢氏に、VRモードに関連したインタビューを行いました。
――現バージョンのVRモードは、昨年のものに比べて大きくクオリティが上がっていました。この1年の間にクオリティを上げるは大変でしたか?
下元氏: もうね…、量もね…、地獄そのものでした…(笑)。
河野氏: (下元氏と玉置氏の両名を指し示しながら)それぞれ地獄です(笑)。
下元氏: 河野が『エースコンバット』シリーズのトップにいて、私がキャンペーンというか7の全編を通したプロデューサーです。VRは玉置が担当しているのですけれど、キャンペーンに関しても河野は間延びした無駄な体験を嫌うんですよね。「全ては凝縮された濃い体験であるべき」という信条は開発スタッフも賛成していて、「そうあるべき」と作っているのですけれど、クオリティが足らないものや間延びしたものは出来上がったものでもバッサリと切っていくんですよ。
結果それが高いクオリティに繋がっているのですけれど、その切り方と切ったものを取り戻すためにどうするかというブラッシュアップは、(河野氏を示しながら)「クオリティの鬼」に開発スタッフ一同応えられるように今もなお取り組んでいます。この1年のブラッシュアップは、かなり気合を入れてやっています。
玉置氏: 『エースコンバット7』というタイトルの中でVRモードはPS4、PS VR限定のものですし、1つの「本編にくっついているもの」に過ぎなくはあるのですけれど、やっぱりナンバリングタイトルに関わるという重責は、背中に感じながらやっています。
もともと私はPS3の『エースコンバット インフィニティ』のリードゲームデザイナーだったのですけれど、それを経て、ついにナンバリングの開発に参加するからには「何かしら良くない所が1個でも残っていたら駄目だ」という気持ちで磨き上げました。そこの所のクオリティアップからは逃げられないし逃げてはいけないし、自分自身もファンとして「『エースコンバット6』が出てから何年経ったんだ!」という気持ちを持っているので、至らないところがあったらいけないという気持ちでやっています。
河野氏: 下元はストーリーや音楽、映画的なカットシーンを含めたナンバリングとして「あの『エースコンバット』だ!」というものを作るために腐心しました。玉置は戦闘機っていう素材の良さを限界まで追い詰めて、全体量から言うと(VRモードは)1モードに過ぎないのですけれど、限界までクオリティ高めてをギュッと凝縮した挑戦をして貰っています。
――玉置さんは『サマーレッスン』の開発に関わっていたと紹介されましたが、ジャンルが違う『エースコンバット7』VRモード開発で違いを感じたところはどこでしたか?
玉置氏: 最初に気をつけたのはカメラの扱いの違いです。『サマーレッスン』はカメラが動かないゲームですが、『エースコンバット』はもの凄いスピードで飛ぶゲームであるため、その上でも如何に快適なゲームプレイを提供できるか、という所に細心の注意を払いました。
もともと弊グループにおいては、バーチャル系のゲームは色々なタイトルでやっていて、知見のあるメンバーが多数揃っています。そんなスタッフを「エースコンバット7」のVRチームとして迎えまして、お客様には快適なプレイになるように、それでいて浮遊感・飛んでいるという感覚を残せるように……という良い塩梅を調整することに注力しております。撃墜する・撃墜されるような爽快感と恐怖は『サマーレッスン』にはなかったものですが、「エースコンバット」として当然そこにも注力しましたので、個人的にも「全然違う面白さがある!」という驚きを開発中に感じましたし、これは良いものができたと思いました。
――VRモードで「ここを見て欲しい!」という部分を教えて下さい
玉置氏: 私は、メディアさん限定でお出しするまでずっと大事に隠していたさっきの迫力のシーン(離陸時にB-52と最接近で並走するところ)ですね。ここには本当に色々なギミックが詰まっています。360度使えるのを利用して、色々なものを仕込んでいるので、1回やっただけではわからないようになっています。是非、何回も体験していただければすごく嬉しいなと思います!
下元氏: VRモードを体験していただくとわかるのですが、もう一度飛ぶだけの気持ちよさを、初心に戻って感じられます。エースコンバットシリーズを長く遊ばれている方には特にこのモードで、飛ぶことの楽しさをもう一度感じて貰えればと思います。
河野氏: 僕はずっと言っていますが、「『エースコンバット』の行き先の一つの未来を先に体験していただける」という部分が一番の見どころだと思います。
――昨年の河野氏のTGS 2017インタビューで、今作のVRモードは「シリーズの未来の体験」と言っていました。もし次回作があるとしたら全編VR対応を目指してみたいですか?
河野氏: (VRモードにおいて)『エースコンバット』の根は一緒ですが、どんどん膨らませて伸ばしていくと今のナンバリングの『エースコンバット』と全く違う方向に行くのです。次回作と言うより「2本作りますか?」というのに近い質問で、それをどうするかは今回発売してからお客様の反応次第かと思います。
下元氏: キャンペーンミッションでお客様から期待されている演出やストーリーは、VRの1人称だと語れない演出になってくるんです。『エースコンバット』シリーズを支えてくださっているユーザーの方から望まれているナンバリングを作ろうとすると、それはVRのベストな形とは異なったものになってしまいます。今回はユーザーの皆さんからそれぞれの方向性に関して、遊ばれたご感想をいただきたいと思っています。
河野氏: VRだと会わないはずの敵パイロットが目の前にいてしゃべっていたり、体験がおかしくなってしまうんですよね。
玉置氏: 誰の目線でもない、三脚やクレーンに配置されたカメラから語られるようなカットシーンが出来ないんですよね。映画的なシーンのはずが「自分が幽体離脱して宙に浮いているし、これは一体誰目線なんだ!?」って感じになっちゃうので。だいぶ演出方法が違ってしまいます。
河野氏: まったく別のものになってしまうんです。
――となると、将来作品がVRに完全対応するとしたら今と全く別の方向性の作品となるのでしょうか?
一同: そうですね。
河野氏: 今回もそうですけれど、VRをやるからには最初から「パイロットの視点以外は作らないで欲しい」という話をしたんです。他人の視線になったとたん興醒めするので。なので、全ては1人称で自分がパイロットだと没入し続ける必要があるんですよね。例えば作るとしたら、全て1人称の『エースコンバット』を作らなければいけないので、ドラマも変わってきますし、それは今作っている『エースコンバット』のナンバリングと呼ばれるオリジナルのものとは全く別物と思っています。それぞれのベストの方向性は全く別なはずです。
――最後にVRモードを含めて『エースコンバット7』を楽しみにしているユーザーに向けたメッセージをお願いします
下元氏: 『エースコンバット』シリーズを待ち望んでいるコアファンの方には、もちろんご期待いただけるものとして作っておりますし、これから『エースコンバット』を初めて遊ぶユーザーの方にも、7から始めても分かる・楽しめる内容で作っています。公開したトレイラーへのコメントで「『エースコンバット』をやったことないけれど面白そうだ」というお客様がいらっしゃいました。是非、手にとって頂けたらと思います。
玉置氏: さっきの1年間のブラッシュアップは大変だったという話をしましたけれど、でも全体的にVRモードを作ったときは凄く楽しかったんですよ。何故かと言えば、VRになったエースコンバットというものを初めて体験してみて「こういうところがVRになると楽しいんだ!」という発見がいっぱいあったんです。その発見というのには、お客様ご自身が発見されるものもいっぱいあると思うので、VRモードを実際に遊んで頂いて「こういうところが『エースコンバット』で楽しいところだったんだ!」と再発見していただきたいですね。そうお伝えしたいです!
河野氏: 僕はこのVRに加えて『ACE5』や『ACE6』があって、後、豪華なブックレットをやって、ナンバリングとして「お客様をどれだけ喜ばせるのか」っていうぐらい色々な喜ぶことを用意したつもりなので、是非とも興奮して「凄いな『ACE7』って!」ってなってもらうと嬉しいです。
――ありがとうございました
PS4/Xbox One/PC向けソフト『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』は、PS4/Xbox One版が2019年1月17日に、PC版が2019年2月1日に発売予定。価格は通常版が7,600円(税別)、デラックスエディション(ダウンロード販売のみ)が10,100円(税別)PS4向け初回限定生産版コレクターズエディション(店頭販売のみ)が12,400円(税別)です。「VRモード」はPS4版(PS VR必須)のみに収録されています。