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『Deracine(デラシネ)』発売イベントレポート──フロム・ソフトウェアが「VRで古典的なアドベンチャー」に挑む

フロム・ソフトウェアと、ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPAN Studioが送るVRタイトル『Deracine(デラシネ)』販売開始!合わせて開催された発売イベントの模様をお届けします。ファンの方々から飛び出した直接の質疑応答にも注目!

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『Deracine(デラシネ)』発売イベントレポート──フロム・ソフトウェアが「VRで古典的なアドベンチャー」に挑む
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2018年11月8日販売開始となった「VRアドベンチャー」である『Deracine(デラシネ)』の発売記念イベントが、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaゲームコーナーの一角にて同日開催されました。駆け付けたフロム脳(!?)なファンの方々との「近くてアツイ」トークセッション、その模様をお伝えします。

ステージには、ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPAN Studio プロデューサーの山際眞晃さん、フロム・ソフトウェア広報担当の小倉康敬さんと北尾康大さんが登壇。専門チャンネルでのアナウンスや、ゲームイベントでの司会などで活躍されている荒木美鈴さんをMCに迎え、迫力ある手作りの「黒板アート」を背景にしての開幕となりました。


背景に掲げられた「『デラシネ』黒板アート」は、各地でライブ的に制作されるなど「黒板」の特色を生かした活動をされている「すずき らな」さんによる作品。ご本人のTwitterの中では、写実的な作風によって本当にチョークで描かれたのかと驚きで息をのんでしまうような、多彩で(すぐ消えてしまうので物理的にも)儚い作品の一端を窺い知ることができます。[すずき らなさんのTwitterアカウントはこちら]

本日のイベントでは『デラシネ』の作風に応じた雰囲気をお伝えした上で「黒板アート」を制作して頂いたとのことです。

「実在感ある古典的なアドベンチャーゲーム」を目指して



企画段階から思ったよりも制作に時間が掛かったと言われる『デラシネ』は、フロム・ソフトウェアの『Bloodborne』DLC制作打ち上げの席にてはじめて話が持ち上がったのだとか。

舞台は古い寄宿学校。そこに住む少年少女6人と校長先生を登場人物としつつ、プレイヤーは一転……キャラクター達からは「直接見ることができない妖精」として関わる立場に。

プレイヤーと「寄宿学校に住む人々」とは互いに異なる時間を生きており、人々にとって停止した時間の中に存在するのが「妖精(プレイヤー)」であるという設定です。この為、人々からは認識することができず、妖精の方からも直接的には認識させることができません。

しかしながらプレイヤーは一部の物体に働きかけることができるので、その結果によっては「人々の視点ではいつの間にか物がなくなっていた」などの体験という様な形で、登場人物に何かを伝えていくことができます。

物語は「妖精(プレイヤー)」の存在を信じる一人の少女が、何とかして他のメンバーへその存在を伝えようと奮闘する場面から始まります。

ゲームのシステムとしては「古典的なアドベンチャーゲーム」と主張される通り、定位置から観測できそうな部分を探し、インタラクトを試していくという流れがメインとなります。アクセスできる物体はハイライトされるなど、分かりやすさへの配慮も見られ、複雑・技巧的な操作は要求されないようです。

取材陣も、集ったファンの方々も「フロム・ソフトウェアの新作」という警戒心(?)を隠せずにいる中、話題は実際のプレイ画面の紹介へと続きます。

VRだからできる自発性──「実在感と非実在感」



PSVRを装着して現れたのはソニー・インタラクティブエンタテインメントマーケティング部の橋本宏平さん。本作は「PlayStation Move」コントローラー2本が必須となっている為、この点には注意が必要です。

画面に現れたのは「何かを覗き込んだ状態で停止している少女」の姿。ゲーム内では、妖精(プレイヤー)の移動は完全に自由ではなく、ある程度決められた地点を選んでいくという設計です。とはいえ、地点間の距離は大人数名分程度の間隔で配置されており、移動はシャープなので、むしろVRにおける「酔い止め」など機能的な配慮の結果と言えるでしょう。その意味でも、確かに「古典的なアドベンチャー」の姿をしています。

少女に近づくと手紙を持っていることが分かります。妖精が行えるアクションとして、その手紙を取り上げるといったアプローチができる訳ですが、直後に少女が動きだし「手紙が突然なくなったことに驚いて妖精が来てくれたのだと喜ぶ」イベント描写が発生します。

このように何らかのアクションに対してイベントが起こるという繰り返しを基本としたゲーム進行となる訳です。その中で得られた断片的な情報を手掛かりに、登場人物たちの背景を推測していく部分で「フロムらしさ」の濃い部分が出ているとのこと。


「古典的なアドベンチャーゲーム」で何故VRタイトルなのか?という疑問には、その探索と推測のゲーム性がひとつの答えを見せてくれます。

ゲーム画面には、いわゆるHUD情報が基本的に表示されておらず、妖精がインタラクトできる物体についても「選択肢」のようなものが明示されません。その物体をどのように扱うか、更に言えばどのように発見するかといったことも、プレイヤーの発想力に委ねられている部分があります。

そうした探索性に最も相性が良いVRという発想と、フロム・ソフトウェア独特のテキストが折り重なり、発見と考察の味を深めたものとなっているようです。発見できるものは目に見える範囲にあるとは限らず、また発見したものには様々なフレーバーテキストが設定されているので、フロム・ソフトウェアの「隠された世界観」に思いを馳せることが好きな方にはオススメの作品と言えるでしょう。

飛び出した濃い質問──「人を選ぶ作品ではある」


ゲームプレイの紹介を終えて、早速質疑応答に。まずはMCの荒木さんからはじまり、集ったファンたちから様々な質問が飛び出しました。ここでは要約してお伝え致します。




──他のVR作品との違いはどこにあるか?

「実在感」を持ってもらえるのではないか。自分(プレイヤー)のことをキャラクター達に知ってもらえないという状況の中で、どのように知ってもらえるのかといったゲームプレイは、登場人物との距離感を独特なものにしていると思う。

──VR設備を持っていないが……買っても大丈夫!?

それは「モトが取れる」ということ!?(笑

……実は海外のレビューでは評価が割れている。物凄く面白い!とするレビューもあれば、「こんな面白いシステムがあったが、もっとここを楽しみたかった」というレビューもあった。

あまり合わなかったという意見も正直ある。ニッチなタイトルだと考えているので、トレイラーなどを見て「この世界観は好きだな」と思って貰えれば本当にオススメできると思う。

──今作のテキストは「ソウル」シリーズの宮崎さんが書かれたもの?

『デラシネ』のテキストは全て宮崎が書いている。更に、物語を追いかけるゲームなので、セリフ量も多い。宮崎の作風がお好きなのであればオススメしたい。本作のテキストは作品の大きな部分を占めている。

『DARK SOULS』シリーズはアクションがメインである中で散りばめられたテキストがあったが、それらを楽しめたのであれば、本作も楽しめるでしょう。

──その「クセ」は強い?

違った雰囲気ではあるが、かなり強い。「古い少女漫画」のテイストを入れるなど、これまでに比べて新しい雰囲気も感じてもらえるのでは。

──フロム・ソフトウェアのシリーズに同名のキャラを見かけるが、今作にもその名前を見つけた。何か設定がある?(質問では特定の名前が上がりましたが、ネタバレを配慮し伏せています)

恐らく正解は宮崎の中にもないのでは……?でも、頭の中にはあるでしょう。実は、あまり開発陣などにも明かされていない。これまでのシリーズでも同様で、彼の頭の中だけにしまってあるものは多い。そうしたもののひとつでしょう。

よく宮崎は「答えを知っては面白くない」という様なことを言う。であるからこそ、今回のような質問も飛び出してきたと考えると面白い。

──これまでの作風とは大きく違いを感じるが、制作で新たに気付いた点は?

まずはVRというステージは自分たちにとって新しい。アクションやメカで勝負しているわけでもない。その意味で新鮮なものを感じていたが、作品の「つくり方」の基本は大きく変わらなかった。

しっかりと世界観を構築する、その説得力の為に正しくデザインする、そうした部分は(VRとしてチーム規模は小さかったものの)これまでと全く変わらず取り組めた。

──『デラシネ』はキャラクターの表情など、細かい表現が見られる。これまでとは違った苦労があったのでは?

これまでフロム・ソフトウェアはあまり表情を出す作品はなかった。しかし今回はかわいい少女の表現などがメインとなり、新しい挑戦だった。この挑戦がうまく伝われば嬉しい。

キャラクターと同年代となる海外の子役の方にモーションをお願いしたりといった作り方もしている。フェイシャル(表情)表現、手の表現などは、今回のこだわった点のひとつなので、ぜひ注目してほしい。

購入者特典の手渡しとインタビュー



イベント終了後は、登壇者からファンの方々へ一人ずつ、作品と特典を手渡しする時間が設けられました。受け取られるファンの方々は思い思いの言葉をかけ、特典のノートに登壇者がサインし、記念撮影をするなど、ひとりひとりにじっくりと向き合われていました。

作品を手渡しする時、ファンの方々も登壇者の方々も大変に良い笑顔をしていたのが取材の中で最も印象深かった瞬間です。制作に携わる立場として、直接プレイヤーと触れ合うという体験は、どれほどの喜びがあるのでしょうか。

最後に、取材陣によるインタビューの機会がありましたので、一部を紹介してイベントレポートとさせて頂きます。




──フロム・ソフトウェアの作品として珍しく「女の子が正統派にカワイイ!」と感じた。どんなこだわりがあったか。

VRとして没入感が高い状態にあり、ずっと一緒にいたいという魅力は必要だと考えた。そこに居たくなるような造形は目指した。デザイン画、モデルの時点でもこだわっていたし、「二次元的」ではない自然なものを目指して制作した。

──企画が出た頃の宮崎さんとの話はどういった感じに?

これからVRが出るという話をしている時、宮崎へ「クリエイターとしてどうか」というヒアリングをした。その時に「こういうのが面白いのでは」という草案があがり、(山際氏が)プロデューサーとしてそれは良さそうだと考えスタートした。

──『デラシネ』でフロム・ソフトウェアを知る方へ向けてアピールを

実は「フロム脳」的なものを考えていた訳ではなかった。自分たちとしても、明確にそれがどういうものか分かっていないところもある。なので、今回のイベントでも「フロム脳」な方向けのアピールのつもりはなかった。

今作については、トレイラーなどから「どんなお話になるのだろう」という興味から入って頂ければと思っている。また『デラシネ』の様な世界観のゲームは珍しいと思うので、こうした雰囲気が好きな方は楽しんで頂ければと思う。

──制作で最も力をかけた部分は?

どこにと言えば難しいが、やはり「実在感」を重視した事。先ほどの「カワイイ」という評価にしても、そこに実在しているかのような「自然な可愛さ」を目指したり、ゲームとしては時間が止まっている世界で「探索している感じ」を楽しめるかといった部分にトライ&エラーを重ねた。

──「宮崎さんの頭の中」という話題について、制作陣の皆さんが敢えて「宮崎さんに聞いてみたいこと」があるとすれば?

実際、聞けば答えてくれる。凄く隠したい!という訳でもないはず。また、敢えて曖昧な設定のままにしているものもたくさんある。

その上で「聞きたくない」というのが正直な所。ゲーム体験としても「プレイヤーの想像の余地」から生まれるものを目指しているというのもある。

──今日のイベントでファンの方からあった印象的な話は?

中には意外と「はじめてフロム・ソフトウェアの作品を買った」という方もいて、それは純粋に嬉しかった。各作品をまたいだ繋がりを想像して自分(プレイヤー)の中で紡いでいくのが楽しいと言われる方もいた。

──妖精やファンタジックな印象の作品へどのように向かっていったか?

最初のコンセプトとして「実在感」と「自分が認識されない存在」というテーマは定まっていた。そこから妖精や舞台といった設定が生まれていった形となる。

製品情報


《Trasque》

一般会社員 Trasque

会社員兼業ライターだけどもうすぐ無職になりそう

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