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中華ゲーム見聞録:なぜ日本人名…?香港・九龍が舞台の探偵ADV『端木斐 VS 小林正雪』―開発者インタビューもお届け!

「中華ゲーム見聞録」第14回目は、中華圏の2大人気探偵ゲームの主人公たちが夢の共演を果たすミステリーADV『端木斐 VS 小林正雪(Fei Duanmu VS Kobayashi)』のプレイレポートをお届けします。開発者インタビューもあります。

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「中華ゲーム見聞録」第14回目は、中華圏の2大人気探偵ゲームの主人公たちが夢の共演を果たすミステリーADV『端木斐 VS 小林正雪(Fei Duanmu VS Kobayashi)』のプレイレポートをお届けします。

本作は『端木斐異聞録』(日本語あり)の開発者である致意氏と、『小林正雪』の開発者である傅真(Janus)氏の共同開発によって生み出された作品で、11月1日にSteamで配信されました。『端木斐異聞録』は2017年3月にSteamで配信されて以来人気を博し、1万7000本以上を売り上げています。DLCによる追加シナリオ『人でなしの恋』(中国語・簡体字のみ)も同年10月に配信されました。

『小林正雪』のほうは2015年にiOSで配信された中国の大人気作品です(日本版も配信されています)。2016年には続編も配信し、シリーズ化しています。またSteamで1作目のリメイク版『小林正雪 復讐の密室』も12月に配信予定です。開発者の一人である傅真氏に貴重な話を伺えたので、本記事の最後にインタビューを掲載します。「なぜ主人公が日本人名なのか」についても意外な事実が判明したのでお楽しみに!

『端木斐 VS 小林正雪』のトレイラー

本作の内容ですが、先ほど紹介した作品の探偵たちによるミステリーADVゲームです。小林正雪は刑事事件特捜班の若き隊長。そして端木斐は、実は普通の大学生。コーヒー好きで、なぜか不思議な事件に関わってしまう不幸な体質のようです。この2人がいったいどんな事件に巻きこまれていくのか。さっそくプレイしていきましょう。

舞台は香港の九龍城寨


開始時のキャラクター選択画面

ゲームを開始すると、まずキャラクター選択です。本作では端木斐と小林正雪、どちらでプレイするかが選べます。扱う事件自体は同じものですが、それぞれの視点によって見えてくるものが違うという構造。どちらにするか迷いますが、ここは小林正雪でいきましょう。


開幕ドラマといくつかの質問の後に、小林正雪を主人公とするパートが始まりました。舞台は早朝の香港・九龍城寨内。小林は捜査のために朝早く起こされて眠そうです。けっこう適当で軽い性格ですね。画像の女性は小林の部下の松田碧。「眠かったら水をぶっかけてやりましょうか」と、小林に対してかなり厳しいご様子です。

それと九龍城寨(正式には「九龍寨城」)ですが、現在では解体されてしまって公園になっています。昔は無計画にビルを増築しまくり、大きなビルの塊になっていました。警察の目が届かずスラム化し、薬物中毒者や犯罪者がいる一方で普通に生活している人たちもいて、カオスながらも自治の成り立った空間がそこにありました。写真集を何冊か持っていますが、眺めているだけで結構楽しいです。『クーロンズゲート』や『シェンムーII』の舞台にもなっていますね。ちなみに広東語で「九龍」は「ガウロン」と読みます。「クーロン」という読み方はおそらく日本語の「9(く)」と「ロン」が合わさった、日本人独特の読み方かと。


こちらが隊長の小林。女ったらしでいつもヘラヘラしている軽い男ですが、推理能力は一流です。「2R」という悪の巨大組織が事件にかかわっているようで、松田を巻きこみたくないため、連れていくことを渋っています。

会話パートの動画。フルボイスかつ口の動きも

ゲームの会話パートですが、フルボイスだけでなく人物の頭や口も動きます。小林と松田のやり取りですが、結局松田に押し切られ、ともに九龍城寨の中へ向かうことになりました。

九龍城寨内に侵入



九龍城寨内に入ると、独特のケーブルだらけの廊下にご対面。計画的に建築をせず、その場その場で配線を増やしていったため、このようにごちゃごちゃな状態に。そして息子を探している老婆が登場。とりあえず落ち着かせると、老婆はどこかへと行ってしまいました。何でしょうか?


九龍城寨を上空から見た図。ほとんど隙間なくビルが建てられています。中央あたりに住んでいる人など、生活が大変そうですね。この画面では移動先を決められます。小林が腹を減らしているので、食堂へ行きましょう。


なかなかよさそうな食堂ですが、服務員の態度が悪いようです。最近はそうでもなくなってきましたが、中国のレストランはサービス悪いのが普通みたいなものでした。九龍城寨内は食堂だけでなく売店や工場、学校、旅館、医療施設などもあって、小さな街といった様相になっています。


注文した料理が運ばれてきたとき、もう一人の主人公である端木斐が登場。服務員とぶつかり、料理は小林にぶちまけられてしまいました。腹を立てた小林ですが、松田が仲裁します。小林が洗面所へ衣服を洗いに行っている間に、端木斐はどこかへ行ってしまいました。

殺人事件発生!



食事の後、九龍城寨内をあちこち探索していると、「東方大酒店」というホテルで人が死んでいるとの連絡が入ります。九龍城寨内のホテルですね。現場に急行すると、そこには部下の金月児という女性がいました。


案内されて死体のある部屋へ向かいます。男が首を吊って死んでいました。一見自殺のように見えますが、この方法だと中断するのも簡単。人間には生存本能もありますし、実際に自殺を成功させるのは難しいのではないかと小林は指摘します。


死体の発見者に会いに行くと、そこには先ほど食堂にいた男が!端木斐です。食堂での件があって以来、二人の仲は険悪。「疫病神」「チンピラ」と互いを罵ります。有能な松田がまた仲裁に入り、とりあえずは事件に集中することに。


端木斐の話では、彼のそばにいる柳キン(漢字は画像参照)という女性の右目は、超常的なものを見ることができるとのこと。死体が発見できたのもその目の力だとか。この女性は『端木斐異聞録』のヒロインのようですね。小林は超常的な話は信じないため、馬鹿馬鹿しいと言います。


とりあえず先ほどの現場に戻って調査再開。ここではポイントクリックによって調査を行っていきます。果たして小林は事件を解き明かすことができるのか。そして端木斐と協力してやっていけるのか。この続きは自分の目で確かめてみてください。

開発者へのインタビュー


物語の導入部分からスリリングな展開で、さらに小林正雪や端木斐の人物像が面白いため、飽きずに楽しんでいくことができました。また会話時にキャラクターが動くのがいいですね。以下は開発者である傅真氏へのインタビューです。


――まずは自己紹介をお願いします。

傅真氏:『小林正雪』の開発者、傅真(Janus)です。香港の出身で、5年前にゲーム開発を始めました。これまでにiOSで『小林正雪』シリーズを2つ配信しています。

――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?

傅真氏:私自身がミステリーファンで、特に日本の探偵ドラマや漫画が好きでした。17年前からすでに推理クイズや物語を書き始めていました。5年前、これまで書き溜めてきた小説類をゲーム化しようと考えたのが、私がゲーム開発者として歩み出したきっかけです。

本作は『端木斐異聞録』の開発者である致意氏とともに構想を練ったもので、お互いのゲームの主人公を共演させようということになりました。2017年末ごろから開発を始め、完成まで10カ月ほどかかりました。シナリオ研究にほとんどの時間を費やし、さらに我々はそれぞれ他に仕事があるので、開発期間は比較的長かったです。

――本作の特徴を教えてください。

傅真氏:本作の特徴はもちろん『小林正雪』と『端木斐異聞録』の2つの中華探偵ゲームのコラボです。2つのゲームの特徴やシステムをうまく融合させ、新しいゲームを創り出すことができました。

本作で最も力を入れたのは、2作品の主人公たちがどちらもすごいように見えるようにすることです(笑)。両方の主人公を際立たせるため、あえて2人分のシナリオラインを作りました。これはゲーム開始時に選ぶことができます。2人が扱う事件は同じものですが、違う角度から見ることによって、異なったもののように感じられるでしょう。

――本作が影響を受けた作品はありますか?

傅真氏:日本で金田一少年とコナンがコラボしたり、逆転裁判とレントン教授がコラボしたことを知り、中華圏でもこのような探偵たちのコラボをとても作りたいと思っていました。開発時にはいろいろな推理ゲームを参考にしましたが、流行りものの要素以外にも自分たち独自のものを出せるよう努めました。

――なぜ「小林正雪」という名前にしたのですか?

傅真氏:17年前、高校生のときに初代PSをよく遊んでいました。特に好きだったゲームは『ときめきメモリアル』です(笑)。あのときは中国語の翻訳などあるはずもなく、我々は日本語のままで遊んでいました。意味は分からなかったのですが、それでもとても楽しんでいました。ほとんどのADVゲームは最初に主人公の名前の入力を要求されます。日本語がまったくわからないので、50音の中から適当に漢字を選んだ結果、「小林正雪」が誕生しました。

以降、特に日本のゲームを遊ぶときにはすべて「小林正雪」にしています。小説を書いたときも主人公は「小林正雪」と、ずっと使い続けてきた名前です。ただ『小林正雪』のゲームは、名前以外はほとんど日本と関係がなく、香港風味のものになっています。

――本作の日本語対応予定はありますか?

傅真氏:あります。今翻訳中です。ちなみにiOS版の『復讐の密室―小林正雪探偵シリーズ1』はすでに日本語翻訳されています。Steamで配信するリメイク版も現在進行中で、システムの改善なども行っています。ご興味のある方はぜひともご期待ください。

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

傅真氏:日本は以前からずっと好きな国でした。日本のゲームやアニメ、ドラマなどは私の成長とともにあった宝物です。私は日本の皆様も楽しめる、香港の特色のあるゲームや作品を作りたいと思っていました。今後も日本の皆様と交流の機会があることを願っています。ありがとうございました!

――ありがとうございました。



本作で日本の名前が使われている理由は、意外にも「開発者が日本のゲームを遊ぶときにつける主人公の名前だから」でした。昔は、中国では翻訳なしで日本語のゲームをプレイする人たちが多かったので、日本名を使っても違和感がないのでしょう。本作のもとになっている作品は日本語版が配信されているため、興味のある方はぜひともプレイしてみてください。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字・繁体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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