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「ハクソー・リッジ」は戦争映画の枠を超えた信念の物語だ!【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回は「ハクソー・リッジ」です。

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(c) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
  • (c) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
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ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。

今回ご紹介するのは、メル・ギブソン監督による伝記映画「ハクソー・リッジ(原題:Hacksaw Ridge)」(2016)です。

信念を貫く、ある英雄の実話


(c) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
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『Battlefield V』『Call of Duty: WWII』を筆頭に、ここ数年の人気FPSシリーズは、第二次大戦への原点回帰が見受けられます。最新のグラフィックスで描く、第二次大戦の生々しい戦場は、ビデオゲームの進化をより顕著に感じとれることでしょう。

さて、このタイミングで観てほしい映画こそ、「マッドマックス」(1979)のメル・ギブソンがメガホンを執る、アカデミー賞2部門受賞の傑作「ハクソー・リッジ」。第二次世界大戦を題材に、ひとりの青年の揺るぎない行動を捉えた実話。迫り来る敵を前にしても、絶対に武器を持とうとしない青年を描いています。その行動の理由は、聖書の一節「汝、殺すことなかれ」です。

デスモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、かつて学んだこの教訓を胸に誓って、沖縄の激戦地へと赴くのです。敬虔なキリスト教徒として、彼が強く固持する信念は、時に差別や偏見、暴力によって砕かれようとします。「なぜ彼だけが武器を持たないのか」と。

良心的兵役拒否者とは、デスモンド・ドスのように義務兵役を拒否する一部の兵士を指し示す言葉。大抵の場合は、こうした宗教の習わしが背景にあるのだそう。とはいえ、隣の仲間が武器を持たないとなれば、それは死活問題だし、誰だってよくは思わないでしょう。彼らのような良心的兵役拒否者は売国奴といったレッテルを貼られ、最悪の場合は死刑に処されるなど多岐の迫害に苦しめられたといいます。

ドスに対して除隊をすすめる上官、けれど彼は聞く耳を持たないのです。なぜ彼はここまでして兵士を志願するのでしょうか。そして、なぜ彼はここまでして信念を貫くのでしょうか。この疑問に対して、映画は真摯なまでに答えを用意しています。そこには、聖書の教えという単純な答えではなく、もっともっと奥深い理由があったのです。

「ハクソー・リッジ」は戦争映画なのか


(c) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
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映画の冒頭では、ドスが身をもって学んだ聖書のエピソードが描かれます。幼少期に、些細なけんかで兄を傷つけてしまった彼は、十戒のポスターを目にし、転機ともいうべき教訓「汝、殺すことなかれ」を学ぶのです。

青年となったドスは、医療機関に勤める看護師ドロシー(テリーサ・パーマー)と出会います。ここでは、ドスとドロシーの恋愛描写がじっくりと映し出されます。ドスはその後、軍隊への志願を経て、過酷な訓練に挑みます。頑なに信念を曲げないドスは、思いがけない人物の助けを借りて、武器なしでの出征を認められるのです。武器を持たない衛生兵として、戦地・沖縄へ。

後半では、沖縄・前田高地の戦いを舞台に、戦争の恐怖が描かれます。疲弊しきった兵士たち、山積みの遺体、ウジが湧く肉片……。前半の作風とはまるで異なる雰囲気です。まさに、監督メル・ギブソンの本領発揮といったところでしょうか。

ここからは、阿鼻叫喚の戦場を、ただ血なまぐさく描いているだけです。日本兵を悪として描くこともなければ、米軍を善と捉えて描いているわけでもないのです。これは戦争映画ではない、ひとりの青年の人生を描いた成長譚といっていいのかもしれません。

この映画における戦争という事実は、青年ドスの人生を綴る上で、ただの背景にしかすぎないのです。そういう意味で「ハクソー・リッジ」は戦争映画の枠を大きく飛び越えています。これは、ある青年がヒーローとして生まれ変わるまでを描いた英雄譚でもあるのです。



映画「ハクソー・リッジ」は、Netflix/U-Nextにて視聴可能。これは若き青年の信念の物語です。
《Hayato Otsuki》
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