エビ型宇宙人の襲来?を描く、異色の疑似ドキュメンタリーSF「第9地区」【コントローラーを置く時間】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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エビ型宇宙人の襲来?を描く、異色の疑似ドキュメンタリーSF「第9地区」【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回は「第9地区」です。

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(C) 2009 District 9 Ltd All Rights Reserved.
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ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。

そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回ご紹介するのは、監督ニール・ブロムカンプの長編デビュー作「第9地区(原題:District 9)」(2009)です。

南アフリカに襲来したのは、エビ型の難民エイリアン


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監督としてのニール・ブロムカンプを一躍注目の人物へと昇華させた映画「第9地区」。南アフリカ共和国・ヨハネスブルグの郊外上空に謎の巨大円盤が襲来し、街はプチパニック。上空で立ち往生した巨大な宇宙船は、どうやら航行するための重要装置が故障した様子で、船内には途方に暮れた大勢の難民エイリアンが……。地球外からの訪問者に戸惑いを隠せない政府は、乗船していたエイリアンを地上に輸送し、彼らを“第9地区”と呼ばれる隔離エリアに収容するのでした。

人間とは異なる文化、価値観を有するエイリアン。彼らが共生するなんて初めから不可能で、人間とエイリアンの小競り合いは必至の状況でした。おまけに、人類はエイリアンの外見を軽蔑し、あざ笑うように“エビ”と呼称する始末。街中には「エイリアンおことわり」の看板がそこかしこに散見されるなど、エイリアンに対する差別意識はすぐに広まっていったのです。次第に“第9地区”は、ギャング集団などが入り乱れるスラムと化していくのです。

ある時、エイリアンの管理を担う超国家組織MNUの職員ヴィカス(シャールト・コプリー)は、エイリアンが隠していた謎の液体を浴びたことで、身体に不調をきたし始めます……。サイエンス・フィクションの殻を被ったリアルなドキュメンタリー描写は異色で、クライマックスのシーケンスはアクション映画よろしく爆発のオンパレード。ビデオゲームさながらの臨場感と、奇抜なメカニックの登場など、飽きさせない映像表現がスクリーン狭しと襲いかかります。さらに、人類とエイリアンの対立を背景に、移民問題やそれに通ずる差別意識など、世知辛い現代に対して投げかける、うまい風刺も特徴です。

また注目したいのは主人公の演技。南アフリカ出身のニール・ブロムカンプ監督は、同じ南アフリカ出身の友人、シャールト・コプリーを主役に抜てき。実は、本作におけるコプリーのセリフは、大部分がアドリブだというから驚き……!! 元々は、映像制作スタジオで、監督を目指すクリエイターだったコプリー。映画初主演にして、意外な演技力を開花させたコプリーは、その後、超大作から低予算映画まで、幅広い作品に姿を見せています。

監督ブロムカンプの長編初監督となった「第9地区」は、アカデミー賞において作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞にノミネート。ブロムカンプは「エリジウム」(2013)、「チャッピー」(2015)と立て続けにフィルモグラフィを更新し、近年では『Anthem』の実写短編映画「Conviction」を手がけています。

ビデオゲームの実写化企画が一転、監督デビューまでの道


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本作のプロデューサーとして名前を並べるのは、「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」シリーズの映画監督ピーター・ジャクソン。ジャクソンは2006年に、Xboxプラットフォームの代表作として名高い人気FPSゲーム『Halo』の実写映画化に着手。発売元の米マイクロソフト社と綿密な協議を重ね、2007年夏の公開を目指して、企画を煮詰めてきました。その話合いの中で、映画版『Halo』の監督として白羽の矢が立った人物こそ、ニール・ブロムカンプだったのです。

ブロムカンプは過去に、『Halo』のライブアクショントレーラー「Landfall」を監督し、単なる予告編とは思えないほどの完成され尽くした映像と、圧倒的なクオリティで高い評価を残した俊英でした。多数のショートフィルムで経験を積んだブロムカンプは、こうした経歴から映画版『Halo』の監督として温かく迎えられたのです。しかし交渉は困難を極め、企画の先行きが不安視されはじめます。


監督をはじめ、既に主要スタッフの大半が集められていた状況で、残すは撮影開始のゴーサインを待つだけだったそうですが、発売元の米マイクロソフト社と、製作スタジオとの間で交渉が難航。映画化の予算、契約金の取り決めといった諸々の事情から折り合うことができず、協議は平行線のまま、ただ時間だけが過ぎていったのです。

最終的に、両者は歩み寄りの姿勢を見せることなく、プロジェクトは頓挫。ブロムカンプの長編デビューは先延ばしかと思われました。しかしプロデューザーのピーター・ジャクソンは、既に招集していたスタッフたちで別の映画を撮るべきと提案。そこで、ブロムカンプが過去に手がけた短編映画「Alive in Joburg(原題)」(2005)をブラッシュアップし、長編映画としてリブートすることをアドバイスしたことで、長編映画企画が前進しました。

こうしてブロムカンプは「第9地区」を製作し、衝撃デビューを飾りました。映画版『Halo』のために集められたリソースは、傑作「第9地区」の誕生に大きく貢献したのです。挫折と失敗を経験し、そこから傑作を生み出したブロムカンプ。タダでは諦めない映画人としてのプライドには、底知れぬパワーが宿っていたのでしょう。



映画「第9地区」はU-Nextで視聴可能。「エリジウム」「チャッピー」といったブロムカンプ作品の源泉は、「第9地区」から湧き出しているのです。
《Hayato Otsuki》

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